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今月の臨床 QOLを考慮した婦人科がん治療 【機能温存・副作用軽減】
5.リンパ浮腫,リンパ嚢胞を予防する術式と対応
著者: 佐々木寛1 飯田泰志1 武石明精2
所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属柏病院産婦人科 2東京慈恵会医科大学附属柏病院形成外科
ページ範囲:P.1553 - P.1556
文献購入ページに移動リンパ浮腫とはリンパ管やリンパ節の先天的な発育不全,または二次的な圧迫,狭窄,閉塞などによってリンパ流の阻害と減少のために生じた浮腫である.主として四肢にみられ,原因不明の原発性と原因が明らかな続発性に分けられる.リンパ浮腫の80%以上は続発性であり,続発性下肢リンパ浮腫のおもな原因は婦人科手術におけるリンパ節郭清である.婦人科癌におけるリンパ節郭清の範囲は子宮頸癌では骨盤内,子宮体癌および卵巣癌では骨盤内から傍大動脈に及ぶ.婦人科癌におけるリンパ節郭清の基本概念は血管を剥き出しながらリンパ節をすべて切除することである.リンパ浮腫は重症化すれば発赤,疼痛や蜂窩織炎などにより歩行障害を引き起こして日常生活を著しく妨げる.患者はQOLが低下し,またボディイメージを損ねることにより,精神的な苦痛を受ける.がん治療の成績が向上する一方,このような術後の合併症を回避しQOLを向上させることは急務といえる.従来,下肢リンパ浮腫について術後治療は行われてきたが,効果の期待できる予防的な術式は確立されていないのが現状である.今回われわれは厚生労働省助成第3次がん克服10か年戦略事業(QOL改善を目指した外科療法の開発),下肢リンパ浮腫の予防手術(子宮体癌における大腿リンパ管・細静脈吻合による術後リンパ浮腫予防手術)について報告する.
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