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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科63巻2号

2009年02月発行

雑誌目次

今月の臨床 性感染症up to date

性感染症の最近の動向

著者: 松田静治

ページ範囲:P.110 - P.115

性感染症の最近の動向

 近年,HIV感染をはじめ性感染症(STD,STI)の増加の背景には,性の自由化,性行為の多様化といった風潮が根底にある.STDの抱える問題として,病原微生物の多様化,無症状感染の広がりや性器外感染の増加に加えて,患者の低年齢化がある.

性感染症の予防

著者: 岩室紳也

ページ範囲:P.116 - P.119

治療のプロと健康教育のプロは違う

 「どうして性感染症なんかになってしまうのか?」

 性感染症の治療を行っていた臨床医,治療のプロとしての自分にとって,性感染症の予防を進めることはきわめて簡単なことで,不足する知識を補う正確な情報提供と,多くの人が語れないコンドームについて伝えればいいと考えていた.しかし,性感染症予防に長く携わるなかで,今さらながら治療のプロと健康(予防)教育のプロとはまったく異なる専門性であることを思い知らされている.

思春期と性感染症

著者: 赤枝恒雄

ページ範囲:P.121 - P.125

はじめに

 ここでは思春期の性感染症(sexually transmittied infections : 以下,STIという)ではなく,思春期とSTIの関係を“すこやか21”の方針も含め検討してみた.

 思春期の定義は前期(10~14歳),後期(15~19歳)とされているから,およそ思春期=10代と置き換えて話を進めていく.筆者は産婦人科医であるので,女子を中心とした話になっていることをお許し願いたい.

 STIの現状は性行動の現状でもあるので,10代の子どもたちの性行動の現状,そして知識のない子どもたちに影響を与えている社会,とりわけ強烈な影響を与えている風俗と呼ばれるセックス産業や低年齢化を誘導しているメディアを中心とした大人社会の現状についても分析していく.

 STIの数字の変化はここではできるだけ省略し,ほかの文献1)に譲るとして,思春期とSTIの関係を分析することに努めた.

性教育の現状と課題

著者: 島崎継雄

ページ範囲:P.126 - P.129

はじめに

 1960年代後半から1970年代の前半にかけて日本ではそれまでの「純潔教育」から「性教育」という呼び方に変わっていった.当時,多くの小学校では「男の子は教室から出て行って……」と先生から声を掛けられ,女子児童だけに初経指導(そのころは初潮指導と呼ばれていた.何と懐かしい言葉だろう)が行われていた.性教育という用語が市民権を得るようになるにつれ,「性教育は家族・学校・地域で実践されなければならない」といわれるようになった.社会のありようを考えれば,このことは当然のことであろうが,その時代「性教育は学校で実施されるものだ」という考え方が主流であり,家庭や地域でどう性教育をするのか「ここはお父さんの出番ですよ」などと,お父さんと息子が一緒にお風呂に入って発毛について話をすることが,さも先端の家庭における性教育であるかのように言われてきた.30~40年前の話である.

 上述の話の良否は別にして,性教育は社会活動・生活のあらゆる場面で行われていることは確かであろう.ここでは与えられた課題の拡散を避けるために,学校における性教育について話を進めることとしたい.

妊娠と性感染症

著者: 立松美樹子 ,   斎藤滋

ページ範囲:P.130 - P.133

はじめに

 性感染症は,性的接触を介して感染する疾患で,生殖年齢にある男女を中心とした大きな健康問題である.特にクラミジア感染症,HIV感染症などが増加している.女性では20~40歳に最も罹患者が多く,また近年では若年化しているため,妊娠中に性感染症を合併し,母子感染による次世代への影響など問題となることが多くなると考えられる.また妊娠時の免疫系の特徴として,異物である胎児を許容するために細胞傷害活性を持つNK細胞活性が著明に抑制されていることや,拒絶反応に関与するTh1細胞が低下し,Th1細胞により誘導される細胞傷害性細胞活性が抑制されていることがある.そのため妊娠時は細菌,ウイルス感染の防御力が低下重篤化,再活性化が生じやすい.

 本稿では,性感染症のなかで頻度が比較的高く,母子感染(胎内感染,産道感染,母乳感染)を起こし胎児に問題となる疾患について,それぞれ簡単に述べる.詳細については次項に譲る.

【性感染症への対応と治療】

1.単純ヘルペスウイルス(性器ヘルペス)

著者: 早川謙一 ,   早川潤

ページ範囲:P.135 - P.141

はじめに

 単純ヘルペスウイルス1型および2型(herpes simplex virus 1, 2 : HSV-1, 2)の感染によって発症する性器ヘルペス(genital herpes : GH)は女性にとってより深刻な性感染症である.

 女性におけるGH初感染,初発症状は男性に比べはるかに重症で,GHからの脳髄膜炎も報告されている.母子感染や再発の恐れも女性にとって深刻な悩みであろう.

 ここではGHの診断と治療のほか,女性特有の性周期(ホルモン)とGHの発症,再発が免疫を介して深くかかわっている可能性があることについても考えてみたい.

2.パピローマウイルス

著者: 井上正樹

ページ範囲:P.143 - P.149

はじめに

 乳頭腫(パピローマ)は古代ローマ時代から知られておりイチジク(Fig)などと称され,艶笑話や美容上の話題になっても,医学的には注目されることはなかった.医学的な光が当てられるのは乳頭腫がウイルス感染で生じることが明らかになった20世紀初頭である.子宮癌は古くから性行為との関連が疑われ媒体となる種々の物質・細菌・ウイルスが想定され検証されてきたが,実証には至らなかった.20世紀後半の分子生物学の技術的進歩を背景として,1983年にzur Hausenらによって子宮頸部癌組織にHPV(human papillomavirus)16型genomeが高率に存在することが報告され急速に注目された1).そして,多くの研究者がHPV研究に参画し,疫学研究や分子レベルの基礎研究が進められHPVが子宮頸癌の原因ウイルスであることが明確になった2)

 今日,これらHPV研究の成果は臨床現場で生かされようとしている.がん検診への導入やHPVワクチンの開発である.特に,ワクチンはHPV感染予防であるため,性交渉が低年齢化するなかで思春期からの接種がわが国を除く多くの国で実施されている.

3.周産期におけるHIV/エイズ,その現状と対策─厚労省研究班の成績をもとに

著者: 稲葉憲之 ,   大島教子 ,   西川正能 ,   岡崎隆行 ,   庄田亜紀子 ,   根岸正実 ,   林田志峯 ,   稲葉未知世 ,   和田裕一 ,   喜多恒和 ,   外川正生 ,   塚原優己 ,   名取道也 ,   牛島廣治 ,   戸谷良造 ,   五味淵秀人 ,   早川智 ,   尾崎由和 ,   吉野直人 ,   田中憲一 ,   熊曙康

ページ範囲:P.151 - P.155

はじめに

 わが国におけるHIV感染は近年増加傾向にあり,この傾向は先進国のなかでは唯一の例外である.特に女性感染者の増加が顕著であり,感染妊婦も2003年以降増加傾向にあった.2007年には妊婦のHIV感染増加はようやく漸減傾向に移行したが,大きな国家的・社会的・医学的問題であることに変わりはない.われわれは厚生労働省エイズ対策研究事業の研究班として若年女性・妊婦のHIV感染,ならびにHIV母子感染ゼロを目指して,①周産期におけるHIV感染対策の現状把握,②日本の国情に合致した最も有効な母子感染防止対策の確立と標準化,③HIV母子感染およびその対策に関する医療関係者のみならず一般国民に対する啓発教育・広報活動の推進を一貫して行ってきた.

 以下,わが国の周産期におけるHIV感染妊婦の動向,母子感染の実状をまず紹介し,次いで具体的な対策について考察する.したがって,「対応と治療」とは若干異なることをお許し願いたい.

4.肝炎ウイルス

著者: 菅内文中 ,   溝上雅史

ページ範囲:P.157 - P.161

はじめに

 肝炎ウイルスはA型肝炎ウイルス(HAV),B型肝炎ウイルス(HBV),C型肝炎ウイルス(HCV),D型肝炎ウイルス(HDV),E型肝炎ウイルス(HEV)の5種類が広く認知されている.さらに一時はHGV(GBV-C),TTウイルス,SENウイルスが提唱されたが,現在は肝炎ウイルスとしては認知されていない.また,ほかにEBウイルス(EBV)やサイトメガロウイルス(CMV)のような全身随伴症状の1つとして肝炎を伴うものは肝炎ウイルスに含めないのが一般的である.HBVはDNAウイルスで,その他はRNAウイルスである.感染経路は主としてHAVとHEVは経口感染で,HBV,HCVとHDVは血液感染である(表1).STD(sexually transmitted disease)として認められているのはA,B,CおよびD型であるが,わが国における急性肝炎発症やキャリア化の点からはA,B,C型肝炎ウイルスが臨床的に重要となる.本稿では,性感染症としての肝炎ウイルスとしてA,B,C型肝炎について述べる.

5.クラミジア

著者: 野口昌良

ページ範囲:P.163 - P.165

はじめに

 クラミジアに感染している男性との性行為により腟内に排出された精液に混入するクラミジアが女性に感染する.このとき,腟内から子宮頸管にクラミジアは侵入し,まず子宮頸管の円柱上皮細胞内に入りここで増殖する.さらに上行性に子宮腔内に侵入し,ここから卵管にまで侵入し,卵管采を経由して腹腔内に拡散する.このような過程で卵管においては卵管炎や卵管周囲癒着が発症する.また卵巣とその周辺にもクラミジアが感染し,子宮付属器炎も発症する.

6.淋菌

著者: 松本哲朗

ページ範囲:P.166 - P.169

はじめに

 淋菌(Neisseria gonorrhoeae)はクラミジア・トラコマティスとともにきわめて重要な性感染症病原体であり,淋菌感染症はいまだに中心的な性感染症である.尿道炎,子宮頸管炎をはじめとして,咽頭,結膜,直腸など広い範囲で感染症を起こし,薬剤耐性菌が増加し,診断・治療上の問題点が指摘されている.厚生労働省が行っている定点調査によると,わが国ではクラミジア感染症も淋菌感染症も2002年から2003年にかけてピークを迎え,その後やや減少傾向にある.

 淋菌感染症は,図1に示すように尿道炎・子宮頸管炎をはじめとして,精巣上体炎,前立腺炎,直腸炎,骨盤内感染症(PID),咽頭感染,結膜炎,播種性淋菌感染症などを惹起する.最近の傾向として,尿道炎,子宮頸管炎などの性器の感染症に加え,性器外の感染症が増加している.特に,淋菌の咽頭感染は,オーラルセックスを介する淋菌感染症の増加に大きな役割を演じている.また,淋菌における多剤耐性化は治療薬の減少となり,治療上の問題点になっている.

7.梅毒

著者: 谷口晴記 ,   田中浩彦 ,   伊藤譲子 ,   吉田佳代 ,   朝倉徹夫

ページ範囲:P.170 - P.173

はじめに

 歴史的には,梅毒の伝播は1493年にコロンブスがアメリカ大陸から持ち帰ってから始まったという一方で,コロンブス以前からすでにスペインやフランスに伝播していたという説もある.いずれにせよ以後ヨーロッパから世界中に蔓延し,モーツアルト,ベートーベンやシューベルトも罹患していたといわれる1).1940年代にペニシリンによる治療が奏効して以来,梅毒の発生は激減した.しかし各国で幾度かの再流行がみられている.近年,HIVの出現により,同じ性行為感染症である梅毒は改めて注目されている.WHOは1999年に全世界で1,200万人の新規梅毒患者の発生を予測しており,その90%以上が開発途上国であるとしている2).日本では1980年代に一時増加がみられたもののその後報告が減少していたが,感染症法の下での感染症発生動向調査によると2007年には,714名の届け出があり再び増加の傾向にあるといえる(図1).

8.トリコモナス

著者: 三鴨廣繁 ,   山岸由佳

ページ範囲:P.174 - P.175

はじめに

 腟トリコモナス症は,Trichomonas vaginalis原虫による感染症であり(図1),日本では減少傾向にあるが,地域による感染率に差がある1).日本においては,腟トリコモナス症の感染者の年齢層が幅広く,中高年者においてもしばしば認められる.また,腟トリコモナス症は,性交経験のない女性や幼児においても散見されるため,下着・タオル・便器・浴槽・診察台などを介した感染経路が存在すると考えられている2)

9.性器カンジダ症(genital candidiasis)

著者: 久保田武美

ページ範囲:P.176 - P.179

はじめに

 性器カンジダ症はカンジダ属によって起こる性器の感染症である.原因となる菌種についてはC. albicansが最も多く,C. glabrataがこれに次ぐ1).女性での主な病型は腟炎,外陰炎であり,この腟炎と外陰炎は合併することが多いので,一般に外陰腟カンジダ症(vulvovaginal candidiasis)といわれている.女性特有の疾患であり,男性での罹患例は少ない.男性が罹患した場合の主な病型は亀頭包皮炎である.このところ性器カンジダ症に関しては学術的な努力が蓄積されてはいるが,大きな技術的進歩はないようである2).ただ,日本において変わった点は腟錠,腟坐剤,クリームがOTC(over the counter drug : 一般用医薬品)として検討されており,あるものは発売され,またほかのあるものは発売予定であることである.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・41

GISTとの鑑別を要した小腸子宮内膜症症例

著者: 西丈則

ページ範囲:P.180 - P.183

症 例

 患 者 : 26歳,0経妊・0経産

 主 訴 : 卵巣腫瘍を指摘された.

 既往歴 : なし.

 現症歴 : 挙児希望にて近医を受診したが,卵巣腫瘍を認めたため当科に紹介となった.月経痛が強く,月経期間の2日間はNSAIDs服用で対応していた.初診時の経腟超音波検査で,左側卵巣に二胞性で5×3.5 cmに腫大したチョコレート嚢胞が認められた.また,ダグラス窩に少量の腹水が認められた.

 検査所見 : CA 125 105.7 U/ml,CA 72-4≦3.0 U/ml,LDH 174 IU/l,RBC 4.14×106/μl,WBC 5.560/μl,Hb 11.7 g/dl,Ht 36.3%,CRP 0.07 g/dlであった.

病院めぐり

―富士重工業健康保険組合―総合太田病院

著者: 眞田利男

ページ範囲:P.186 - P.186

 富士重工業健康保険組合総合太田病院の前身は,中島知久平が大正6年5月に,尾島町に中島飛行機株式会社(当初,中島飛行機研究所と称す)を創設したことに由来します.昭和13年11月,太田製作所の敷地内に太田製作所附属太田病院を開設しましたが,終戦とともに一時消滅しました.

 戦後,昭和21年1月10日,新たに太田市八幡寮の一棟で富士産業健康保険組合太田病院が発足しました.診療科目は内科,外科,産婦人科,歯科の4科で,入院定員は68名でした.その後,各科が増設され,462床にまで増床され分娩も年間900件を超えるようになりました.病院も景気がよく,平成2年には当院から米国のスバル工場に病院負担で医師派遣まで行ったときがありました.しかし,医師不足により現在は445床まで減少し,内科病棟は2棟のうち1棟を閉鎖,NICU病棟の小児科への吸収・縮小化を行い,16床あったNICUの病床が4床にまで減少しました.分娩も一時中止となってしまいました.婦人科は外部よりパート医の手伝いもあり,月,木,金曜日の手術日に腹腔鏡,子宮鏡,開腹,経腟手術を月に20例ほど行っています.

―帝京大学―ちば総合医療センター

著者: 梁善光

ページ範囲:P.187 - P.187

 帝京大学ちば総合医療センターは,帝京大学医学部の3番目の付属病院として1986年に13診療科,315床で開院した総合病院です.千葉県の房総半島のつけ根の東京湾に面した側(内房地区)の小高い丘の上にあります.その後,増築・診療科新設により,現在では19科,517床となっています.当初の名称は帝京大学医学部附属市原病院であり,“帝京市原”と親しまれてきましたが,開院20周年を機に病院名を改称しました.貝原学前教授の退任後,梁善光が教室を主宰しており,スタッフは教授,准教授,講師各1名と4名の助手の7名です.独自の入局者に加えて,帝京大学本院や東京大学と連携して員数を確保しています.

 千葉県は,人口密集の東葛・千葉地区と半過疎の房総・北総・東総地区に二分されます.前者の医療事情は東京と同じですが,後者のそれは東京の隣県なのにまさに過疎地域そのものです.当院はこの半過疎地区にあるため,大学病院でありながら市民病院的な役目も担っており,産婦人科の全分野にわたって水準以上の医療を要求されます.そのようななか,日本産科婦人科内視鏡学会,日本生殖医学会,日本婦人科腫瘍学会などの専門医,指導医を擁してそのニーズに応えています.

BSTETRIC NEWS

子宮収縮抑制剤2008年(Mercerの講義)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.188 - P.191

 切迫早産の治療薬に子宮収縮抑制剤が多用される.最近,早産の臨床研究の専門家Mercer BM(Case Western Reserve大学 : 米国オハイオ州)が行った講義の概略を紹介する.米国で10年以上,早産に関する研究の第一線で活躍してきた医師の講義なので,証拠に基づく現況を学ぶうえで有用である.

 講義の目的は,①米国おける子宮収縮抑制剤使用の現況,②現在使用できる子宮収縮抑制剤の作用機序と早産に関連する新生児合併症を減少させるうえでの有効性に関する証拠の検討,③破水前の早発陣痛または破水後の子宮収縮抑制剤の適切な使用,に関する講義である.

もうひとつのインドネシア セックスワーカーを通してみたリプロダクティブヘルス・10

選ばれざる医療

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.194 - P.195

望まない妊娠と性器出血

 ある日,性感染症診療所でスタッフがざわざわしていた.ひとりのセックス・ワーカーから電話が入ったという.無月経であった女性に性器出血がみられ,人工妊娠中絶を希望しているらしい.

 性感染症診療所では子宮内容除去術を施行していない.必要な場合には,近くの医療機関を紹介する.

症例

円錐切除後に生じた頸管閉鎖が原因となった子宮留血腫・両側卵管留血腫の1例

著者: 朝野晃 ,   太田聡 ,   島崇 ,   早坂篤 ,   櫻田潤子 ,   和田裕一

ページ範囲:P.196 - P.199

 症例は47歳で,cold knifeによる円錐切除術の2年後に頸管閉鎖による無月経と下腹部痛を訴え,子宮留血腫と両側卵管留血腫を生じた.外子宮口は判別できず,頸管拡張が困難なため,子宮全摘術,左付属器切除術,右卵管切除術を施行した.円錐切除術後は,頸管狭窄および閉鎖を生じる可能性があり,術後の外子宮口の観察および月経の状態の把握が重要であると思われた.

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編集後記

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.208 - P.208

 周産期医療はその話題がマスコミに載らない日がないといっていいほど,国民の関心事となっている.最近の話題は,東京での「脳出血による妊婦死亡」であった.多くの病院が「妊婦の受け入れ困難」で,最初に連絡を受けた墨東病院が受け入れたが,救命できなかった.地域の総合周産期センターであった墨東病院がセンターとして機能できていなかったのであるが,その背景には産婦人科医不足がある.せいぜい4人,5人の産科医で毎日2人ずつ当直をするということが土台無理な話で,10人でも十分ではない.

 さらに,「妊婦の受け入れ困難」の要因の1つがNICUの不足であるという論議となるや,文科省は突然,25億円の予算を用意するから,すべての大学病院にNICUを設置せよというお達しを出した.例によって,文科省のお達しは突然で,現場の状況をまったく勘案しない机上の空論である.一体,行政側は,予算をつけてハードを設置すれば医療の現場のさまざまな問題が解決すると信じているのであろうか?新生児の専門医が十分に確保できないでNICUが設置されても,まともに稼動するはずはない.NICUが設置されていない地方大学などでは,2~3人程度の新生児専門医で新生医療を担当しているのが現状である.ここで6床もNICUを設置して十分に稼動させるためには,県内の一般病院から新生児専門医を引き上げてこなければならないことは目に見えている.一般病院でNICUを設置している病院ではそのあおりを受けてNICUの運用は難しくなるであろうことが危惧されるわけで,これで果たして地域の「妊婦受け入れ困難」が減少するであろうか?

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

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増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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