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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科63巻3号

2009年03月発行

文献概要

今月の臨床 多胎妊娠―母児のリスクとその管理

多胎妊娠と注意すべき胎児形態異常

著者: 増崎英明1

所属機関: 1長崎大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.221 - P.227

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はじめに

 産科の臨床において,双胎妊娠は絨毛膜と羊膜の数から,1絨毛膜双胎と2絨毛膜双胎に分類される.このことは超音波断層法が汎用されるようになって得られた成果であり,臨床的にきわめて重要な情報を提供する.すなわち,2絨毛膜双胎の管理は早産予防が中心であるのに対し,1絨毛膜双胎ではさらに双胎間輸血症候群に対する注意を要することなどである.しかし双胎のそれぞれの児を一個体として捉えるならば,双胎児の遺伝情報の違いを知る必要があり,卵性診断が求められる.胎児形態異常の成因や取り扱いを考える際は,特に卵性診断が必要である.ただし双胎妊娠の卵性を出生前に知ることは必ずしも容易とはいえず,超音波検査による膜性診断がなお重要であることは変わりない.この際,1絨毛膜双胎はすべて一卵性双胎であるが,2絨毛膜双胎のおよそ20%もまた一卵性双胎であることを理解しておく必要がある.なぜならば,一卵性双胎はいわゆる胚性クローンであり,その表現型は通常同一であると考えられるのに対して,2絨毛膜双胎の表現型はそれぞれ異なっているからである.それでは一卵性双胎では常に両者の表現型が一致するかというと必ずしもそうではない.臨床的ないし分子遺伝学的に一卵性双胎であることが明らかであるにもかかわらず,両児に個体差(表現型の異同)を認める場合がある.無心体双胎はその典型ともいえるが,双胎間輸血症候群においても両児の大きさや後頸部の皮膚の厚み(nuchal translucency:NT)などの表現型にやはり個体差を認めることは少なくない.ここでは双胎妊娠において比較的特異的に認められる胎児形態異常を取り上げ,その成因などについて解説する.

参考文献

1) Masuzaki H, Miura K, Yoshimura S, et al : A monozygotic twin pregnancy discordant for acardia and X─inactivation pattern. European Journal of Obstetrics and Gynecology and Reproductive Biology 117 : 102─104, 2004
2) Nakayama D, Masuzaki H, Yoshimura S, et al : Monozygotic twins discordant for single umbilical artery and congenital heart disease. Am J Obstet Gynecol 179 : 256─257, 1998
3) Masuzaki H, Miura K, Yoshiura K, et al : A monozygotic conjoined twin pregnancy discordant for laterality of cleft lip. Gynecologic and Obstetric Investigation 57 : 100─102, 2004
4) Sebire NJ, Hughes K, D’Ercole C, et al : Increased fetal nuchal translucency at 10─14 weeks as a predictor of severe twin─to─twin transfusion syndrome. Ultrasound Obstet Gynecol 10 : 86─89, 1997
5) 三浦清徳,増崎英明 : 不妊治療と双胎妊娠発生機序.臨婦産62 : 247─253,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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