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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科63巻4号

2009年04月発行

雑誌目次

I 不妊の検査・診断 A排卵因子 【各種ホルモン測定・負荷試験】

1.GnRH負荷試験の判定方法について教えてください.絶対値での基準はあるのでしょうか.

著者: 堀川道晴

ページ範囲:P.321 - P.323

[1]はじめに

 排卵障害による無月経は,視床下部,下垂体,性腺のいずれかの障害によって起こる月経障害である.障害部位を診断する方法としては,下垂体および性腺より産生されるホルモン(LH,FSH,PRL,E2など)の基礎値の測定,プロゲステロンを投与して子宮出血の有無により第1度無月経を診断するゲスターゲンテスト,第2度無月経もしくは子宮性無月経を判定するためのエストロゲン・ゲスターゲンテスト,そしてGnRH(gonadotropin releasing hormone)負荷試験が用いられる(図1).GnRH負荷試験とは,視床下部ホルモンのGnRH(LH─RH)を投与することにより,視床下部,下垂体,性腺の異常の部位と程度を下垂体から分泌されるLHとFSHを経時的に測定することにより,評価する方法である.

2.卵巣予備能を反映するホルモン検査について教えてください.

著者: 堀川道晴

ページ範囲:P.325 - P.327

[1]はじめに

 卵巣予備能とは,ある時点で保有している排卵することが可能な卵胞の数という量と,その受精能,妊娠能という質の観点から定義される.卵巣予備能の検査法について表1に示す.このうち,血液検査より入手できるものは基礎FSH値,エストラジオール値,インヒビンB値,AMH値である.各ホルモンの相互作用について図1に示す.FSHは月経前より上昇し始め,胞状卵胞以降の卵胞発育を促す.発育し始めた胞状卵胞よりインヒビンBが分泌され,FSH産生を抑制する.また,さらに主席卵胞が決定され,発育を続けると顆粒膜細胞よりインヒビンA,エストラジオールが分泌され,さらにFSH産生を抑制し,主席卵胞の維持に努めるようになる.

3.最近のEIA法でのホルモン値の評価について詳しく教えてください.

著者: 堀川道晴

ページ範囲:P.329 - P.331

[1]はじめに

 産婦人科疾患における内分泌学的原因検索としてのホルモン測定は,そのホルモンの分泌のパターンや月経周期によって常に変動している.1990年代まではIRMA法であるスパックSが主流であり,さまざまなホルモン測定の基準はスパックSを使用して正常値が設定されてきた.しかしながら,IRMA法は放射性同位元素を取り扱うためそれなりの設備を必要とし,安定性の問題から酵素反応を標識したEIA法やCLEIA法が現在の主流になっている.また,より抗原抗体反応を促進するため磁気分離をするCLIA法や,より時間の短縮を目的に酵素反応ではなく電解エネルギーでルテニウム錯体を発光させることによるECLIA法が今後の主流になって行くことになると思われるが,標準品の違いやモノクローナル抗体の違いにより測定値のずれが生じるため,いわゆる標準機とするスパックSと自分の使用している測定系の差を理解し,正常範囲を確認することが重要である.

【超音波検査】

4.卵巣の予備力を評価するAFC(antral follicle count)や卵巣容積の測定方法について教えてください.

著者: 髙橋健太郎 ,   清水良彦

ページ範囲:P.333 - P.335

[1]はじめに

 昨今の女性のライフスタイルの変化に伴い,比較的高齢女性が不妊治療を受けるケースが増加しており,40歳以上の女性も稀ではない.そこで一般的な不妊治療に加齢が妊孕能に及ぼす影響を加味して対処することが求められている.すなわち,不妊治療を行う前に個々の症例において,卵巣にどの程度の卵子が残っているかどうか(卵巣予備能)を的確に判断したうえで治療方針をたてることが重要である.

 排卵機構における卵胞発育過程と卵子数の変化をGougeon1)は次のように説明している.Resting follicleがgonadotropin sensitiveとなって卵胞発育が始まり,preantral follicleが3周期かけてpreovulatory follicleとなり,排卵が起こる.一般的には多数のpreantral follicleが発育周期に入るが,排卵周期に入るまでにかなりの数の卵胞が閉鎖に向かい,排卵周期に入った発育可能卵胞は10~15個まで減少する.しかし,poor responderではこの発育可能卵胞数は1~数個と少なくなっている.排卵誘発における卵胞刺激はこの時点から行うので,排卵周期に入った発育可能卵胞数が少ない症例の卵胞刺激は不成功に終わることが多い.

 Assisted reproductive technology(ART)の成功率を左右するものは,患者の加齢に伴う卵巣予備能の低下(卵の質の低下,採卵数の低下)によるものが最も考えられ,個々の症例の卵巣予備能をART施行前に的確に把握することは,ARTの予後(採卵数,妊娠率)を推測することのみならず,医療提供側にとってはARTにおける卵巣刺激方法の工夫や改善の動機づけとなり,患者側においては自分の卵巣の妊孕能の限界を知り,いたずらな期待感を防ぐ手段となることが考えられる.また,40歳以下の比較的若年者においても,調節卵巣刺激(controlled ovarian stimulation:COH)に予期せず反応しないpoor responderを事前にスクリーニングすることで無効なCOHを回避できる.さらに,poor responderは将来早発閉経(premature ovarian failure:POF)につながる可能性もあり,その早期の把握もQOLの観点から重要である.

 卵巣予備能検査には,血中FSH基礎値,血中エストラジオール基礎値,インヒビンB,抗ミュラー管ホルモン(anti─müllerian hormone:AMH),胞状卵胞数(antral follicle count:AFC),卵巣容積,卵巣血流,クロミフェンチャレンジテスト(clomiphene citrate challenge test:CCCT),卵胞刺激ホルモン卵巣予備能テスト(FSH ovarian reserve test),ゴナドトロピンアゴニスト刺激テスト(gonadotropin agonist stimulation test)がある2)

 本稿においては,患者に侵襲を与えず,外来で簡便に施行できるAFCと卵巣容積(図1)について解説する.

5.多囊胞性卵巣症候群の卵巣所見はどのように判定するのか,国内外のデータに基づいて教えてください.また,臨床的な指標で,卵巣所見と相関しているものは何かありますか.

著者: 髙橋健太郎 ,   清水良彦

ページ範囲:P.336 - P.339

[1]はじめに

 多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)は,卵巣の多囊胞性変化に内分泌学的異常,およびその結果としてのさまざまな臨床症状を伴った複雑な病態を呈する内分泌疾患であり,不妊外来や一般婦人科内分泌外来でよく遭遇する疾患である.PCOSの卵巣形態は表面が凸凹に隆起した卵巣の腫大と白膜の肥厚を伴い,被膜下に長径10mm未満の閉鎖卵胞が多数存在し,組織学的には,間質細胞の増生,内莢膜細胞の過形成と顆粒膜細胞の変性萎縮が認められる(図1).近年,超音波診断装置の発達により,PCOSの卵巣形態が経腟超音波で非侵襲的に観察が可能となり(図2),2003年のRotterdam Consensus Meetingでの新しいPCOSの診断基準(ESHRE/ASRM 2003)1)および2007年に作成された本邦におけるPCOSの診断基準2)においても経腟超音波検査における卵巣所見が採用され,卵巣の小卵胞のカウントルールが明確に記載された.

 本稿では,経腟超音波検査法を用いたPCOSの卵巣形態の判定所見,および卵巣所見と関連する内分泌指標について解説する.

【染色体検査】

6.排卵障害にかかわる染色体異常,特に早発閉経における異常の特徴と検出率について教えてください.

著者: 清水良彦 ,   髙橋健太郎

ページ範囲:P.341 - P.343

[1]はじめに

 染色体異常を伴う卵巣性排卵障害は,原発性と続発性に分けられ,原発性はTurner症候群とpure gonadal dysgenesis,続発性はpremature ovarian failure(早発閉経)が代表である.早発閉経は40歳未満の高ゴナドトロピン(血中FSH値が40mIU/ml以上)性無月経と定義されている.自然早発閉経の頻度は約1%と推定されており1),本邦におけるデータでも,40歳未満で自然閉経した女性は0.54%と報告されている2).早発閉経の「failure」という語源は卵巣機能が正常ではないが必ずしも完全な卵巣機能の停止を意味するものではなく,早発閉経は間歇的なエストロゲンの産生や排卵が認められ,5~10%は妊娠・分娩の可能性がある3)

 早発閉経の病因と関連性があると考えられる染色体異常の検討から,石原4)は早発閉経患者の染色体異常の頻度は本邦では16%であったとし,そのすべてがX染色体上に認められ,X染色体の欠失,すなわちpairing failureの程度と発症年齢には反比例の傾向が認められたと報告している.また,正常核型の早発閉経症例でも家族歴の聴取ではそのうち18.2%で母親が早発閉経であったと報告4)しており,早発閉経は優性形質として受け継がれる遺伝性を有していると考えられる.

 早発閉経患者の遺伝子異常は多数報告5)されており,常染色体,X染色体のいずれにも存在する.本稿では特に重要でトピックである早発閉経関連遺伝子について解説する.

7.不妊女性に対して染色体検査を実施すべき時期や条件について教えてください.また,不妊症にかかわる染色体異常にはどんなものがあるか具体的に教えてください.

著者: 熊澤由紀代 ,   福田淳 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.345 - P.347

[1]目 的

 不妊症における染色体検査については,いつ検査を施行するかの明確な指針はなく,各施設によって異なっているのが実情である.月経異常あるいは不育症と染色体異常は,密接に関連していることから,染色体検査が必須な検査項目となり得るが,不妊症においては第一の検査ではない.しかし,原因不明の受精障害を高率にきたす場合や,反復流産の既往がある場合においては,染色体異常の頻度が上昇するので,染色体検査を実施することが望ましい.Forestaら1)は,不妊女性の遺伝学的検査の実施時期について,次のように提案している.無月経や高ゴナドトロピン血症を伴う過少月経を認める場合は,不妊症のスクリーニング検査の1つとして染色体検査を施行する.その他の症例は,表現型が正常女性である場合,不妊期間が1年以上経過した段階で染色体検査を施行することを提唱している.この基準を参考にして,症例に応じた染色体検査時期を考えるとよいだろう.

 染色体検査は遺伝子学的検査であるから,「日本生殖医学会理事会・倫理委員会の報告および会告」,「遺伝学的検査に関するガイドライン」を遵守して実施する.また,染色体異常が発見された場合には,遺伝相談により今後の妊娠予後についての予測が可能であることなどを説明し,同意を得てから検査を行う.

【甲状腺機能検査】

8.甲状腺機能検査に影響を及ぼす因子,検査を行うに当たっての注意点について教えてください.

著者: 熊澤由紀代 ,   福田淳 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.348 - P.349

[1]はじめに

 甲状腺は,ヒト頸部前面に存在する重要な内分泌器官であり,甲状腺ホルモンを合成・分泌している.甲状腺ホルモンは,全身の諸臓器に作用し,個体の発育,成長,蛋白・糖代謝の調節など,さまざまな生理作用を有し,恒常性の維持をつかさどっている.

 甲状腺機能異常は性成熟期の女性に発症頻度が高く,男性の4~5倍の頻度と報告されている1).甲状腺ホルモンと生殖機能に関しては月経異常や不妊症が挙げられ,卵巣機能と密接なかかわりを有している.不妊症のスクリーニング検査として,甲状腺機能検査は必要な検査項目の1つである.

【卵胞発育モニタリング】

9.自然周期と卵巣刺激周期の卵胞モニタリングの違い,注意点について教えてください.

著者: 熊澤由紀代 ,   福田淳 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.350 - P.351

[1]目 的

 自然周期においての卵胞発育モニタリングでは,排卵の時期を推定し,性交のタイミングや人工受精の時期を決定する.また,卵巣刺激周期のモニタリングでは,ゴナドトロピン療法の投与量の調節やhCG製剤に切り替えるタイミングを決定する.

 卵胞発育モニタリングの方法としては,経腟超音波断層法による卵胞径の計測,血中・尿中エストロゲン値の測定,血中・尿中LH値の測定などが用いられている.

10.卵胞発育のモニタリングをしていたところ,前回までみえていた卵胞が確認できなくなりました.排卵が起きてしまったのでしょうか.対処について教えてください.

著者: 田村博史

ページ範囲:P.352 - P.353

[1]はじめに

 卵胞発育モニタリングは排卵の時期を推定し,性交や人工授精のタイミングを決定することにある.主に経腟超音波断層法による卵胞径の計測により行われる.卵胞は境界明瞭な円形のlow echo像として描出され,卵胞径は卵胞の最大径とそれに直交する径の2方向を測定する.卵胞径18mm以上で卵胞成熟とするが,補助的に血中エストラジオール値1),尿中LH測定(排卵検査キット)2),頸管粘液検査などで排卵の時期を推定する.

【基礎体温】

11.経腟超音波検査により排卵予測が可能であるのに,基礎体温測定を行う臨床的意義について教えてください.

著者: 田村博史

ページ範囲:P.354 - P.355

[1]はじめに

 基礎体温(basal body temperature:BBT)は,体温の日内変動のなかで最も低い体温をいい,体温を変動させる因子の少ない早朝覚醒時に測定する.安価,簡便である内分泌検査であり,不妊症患者においてBBT測定は重要な検査であるが,患者自身に頼る検査法であるため,その必要性や意義を理解し,正確に測定する必要がある.

【子宮内膜日付診】

12.子宮内膜日付診の適応,方法,臨床的意義について教えてください.

著者: 田村博史

ページ範囲:P.357 - P.359

[1]はじめに

 子宮内膜日付診は,分泌期の子宮内膜の形態学的変化を観察し,子宮内膜の成熟度の判定や黄体機能の間接的な評価として利用されてきた.しかし近年,子宮内膜日付診を黄体機能不全の診断として使用することに否定的な報告が多くみられ1, 2),内膜組織採取時に痛みを伴うこともあり,不妊症のスクリーニング検査としてルーチン化していない施設も多い.

13.治療周期の子宮内膜機能の評価法について教えてください(超音波上の厚さ以外には,何に注意すればよいでしょうか).

著者: 高橋俊文 ,   網田光善 ,   倉智博久

ページ範囲:P.361 - P.363

[1]はじめに

 不妊症患者における子宮内膜機能の評価とは,子宮内膜の胚に対する受容力を評価することである.着床期の子宮内膜には胞胚を受け入れることが可能な時期が想定されており,implantation windowと呼ばれている1).ヒトにおけるimplantation windowの時期は,黄体期中期の約5日間であると考えられている1).よって,黄体中期の子宮内膜が胚の着床に対して良好であるか否かを適切に評価することは,治療周期の妊娠成立の可能性を予測するうえで重要である.これまで,子宮内膜機能検査として,超音波検査と子宮内膜日付診が行われてきた.超音波検査は,簡便,迅速でありかつ非侵襲的であることから,子宮内膜機能評価法としては理想的である.以下,超音波検査を用いた子宮内膜機能評価法について述べる.

 正常周期での子宮内膜の超音波所見は,月経終了後は1~3mmの線状像で描出され,卵胞期では機能層が厚みを増して,いわゆる“triple─line”パターンを示す(図1a).中央の線状のエコーは前・後壁内膜の接する面を示しており,両側壁の側にある線状エコーは基底層と機能層の境界を示している.両エコー間の距離は両側子宮内膜機能層の厚みを示す2)

 超音波検査による子宮内膜機能評価は,①子宮内膜の厚さ,②エコーパターン,③子宮動脈血流または子宮内膜血流などのパラメーターについて,検討がされてきた.

【頸管粘液検査】

14.頸管粘液検査の時期,判定法,臨床的意義について教えてください.

著者: 高橋俊文 ,   網田光善 ,   倉智博久

ページ範囲:P.364 - P.365

[1]はじめに

 頸管粘液は,エストロゲンの作用により頸管腺から分泌が促進される.そのため,頸管粘液は排卵期に増加するとともにその性状が変化し,精子の子宮内腔への進入を促進する.一方,プロゲステロンの作用によって分泌が抑制される.頸管粘液検査は,エストロゲンの作用を反映し,卵胞計測が困難な症例でも,排卵日の予測が可能である利点を有している.また,頸管粘液検査は,頸管因子による不妊症の診断には,今日でも重要な検査である1)

【トルコ鞍MRI】

15.血中PRL値とトルコ鞍MRIから何がわかるのでしょうか.また,トルコ鞍MRIのピットフォールについて教えてください.

著者: 高橋俊文 ,   網田光善 ,   倉智博久

ページ範囲:P.366 - P.367

 血液中のプロラクチン(PRL)の値が正常範囲を超えて高値を示す場合,高PRL血症という.血液中のPRL値が上昇すると,乳汁漏出や排卵障害が起こり,乳汁漏出性無月経を呈する.正常成熟期女性の血中PRL値の平均値は5ng/ml前後であり,測定系がスパック─S PRLでは15ng/ml以上,アーキテクトPRLでは30ng/ml以上であれば高PRL血症と診断される1).厚生省の間脳下垂体機能障害調査研究班が行った原因疾患別頻度の調査結果(表1 2))によると,高PRL血症の原因として下垂体腺腫(プロラクチノーマ)が最も多く,約1/3を占める.プロラクチノーマは全下垂体腺腫の30~40%を占め,女性に多く発生する(男女比は1:8).

 頭部のMRI検査は視床下部・下垂体における高PRL血症の原因となる占拠性病変の検出に大変有用である.PRL値が100ng/ml以上の場合,プロラクチノーマの可能性が高い.プロラクチノーマは腫瘍の大きさにより,マイクロアデノーマ(10mm未満)とマクロアデノーマ(10mm以上)に分類される.PRL値が200ng/mlを超える場合は,マクロアデノーマであることが多い.一方,PRL値が30ng/ml程度の軽度の高PRL血症であっても,マイクロアデノーマ,非機能性腺腫,中枢神経系の奇形などの可能性もあるので,薬剤の服用やその他の高PRL血症の原因がない場合は,トルコ鞍のMRI検査を行うべきである3, 4).また,30mmを超える大きなプロラクチノーマの場合,測定上の問題で実際のPRL値より低く検出されることがある(hook effect)5).マクロアデノーマの6~14%にhook effectが認められるとの報告があるので診断に際して注意する必要がある6).高PRL血症の鑑別診断手順と治療方針を図1に示す.

I 不妊の検査・診断 B卵管因子 【子宮卵管造影剤】

16.子宮卵管造影検査で卵管閉塞と診断した場合の注意点について教えてください.また使用する造影剤には水性と油性がありますがそれぞれの特徴についてわかりやすく教えてください.

著者: 右島富士男 ,   森本義晴

ページ範囲:P.369 - P.373

[1]卵管造影検査の重要性

 女性因子の不妊原因のなかで最も多いとされているのが卵管因子による不妊で不妊原因の約20~30%とされている.子宮側からは精子の遡上経路として,卵管采側からは排卵された卵子をpick upし,受精とそれに続く初期胚の成長に必要な卵管液の分泌や受精と発育の場を提供している.

 補助生殖技術(assited reproductive technology:ART)の発達は不妊症に悩む患者に多大なる恩恵を与え一定の成功を修めているといえる.しかしもとをたどればARTは本来ならば卵管腔内で行われる機能を肩代わりしたものである.

 現在の医学においてもこの卵管の機能をすべて評価することは不可能であるが,画像診断学的には評価が可能で画像診断学的所見と臨床的データを判断することによって,的確な情報を提供できるものと考えられる.現在のところ卵管の画像診断学的データを最も詳しく提供してくれる検査法は子宮卵管造影法(hysterosalpingography:HSG)であり,その重要性はARTの進歩した今でも変わりはない.

【子宮卵管造影】

17.ヨード系の造影剤が使用できない患者の対処法について教えてください.

著者: 長田尚夫

ページ範囲:P.375 - P.377

[1]はじめに

 子宮卵管造影は,管腔臓器である子宮・卵管に造影剤を注入することによって子宮腔の形態,卵管の疎通性,骨盤内癒着の有無を診断する.本法には,ヨード造影剤を用いて行う子宮卵管造影検査(hysterosalpingography:HSG)が古くから行われているが,ヨード造影剤が使用できない場合(ヨード過敏症や重篤な甲状腺疾患のある患者など)には,検査手段を変える必要がある.

 ヨード系造影剤が使用できない患者の対処法には,①子宮腔の検査を目的とする場合には,通水,レボビスト®を用いて行う超音波下子宮卵管造影検査(子宮卵管エコー図検査),または子宮鏡検査がある.②卵管の疎通性を検査する場合には,レボビスト®を用いて行う超音波下子宮卵管造影検査または腹腔鏡検査(色素通水検査)がある.③卵管周囲癒着を検査する場合には,腹腔鏡検査がある.

 ここでは,通水,レボビスト®を用いて行う超音波下子宮卵管造影検査について述べる.

18.腹腔鏡検査が必要な患者は,子宮卵管造影検査で判定することができるのでしょうか.詳しく教えてください.

著者: 沖利通

ページ範囲:P.379 - P.381

[1]はじめに

 アメリカ生殖医学会では「不妊検査おける腹腔鏡検査の対象は,子宮内膜症や骨盤付属器癒着の証拠があるか強く疑われるときに行う.あるいは,明らかな卵管病変があるときも行う」と3つの場合推奨している1).このうち,子宮卵管造影検査(hysterosalpingography:HSG)は卵管病変の診断に威力を発揮する.本稿では,不妊患者における腹腔鏡検査の必要性を概説し,さらに,HSGの異常所見別の管理法を述べる.

【腹腔鏡検査】

19.どのようなときに,どのようなタイミングで腹腔鏡検査を導入すべきか教えてください.

著者: 沖利通

ページ範囲:P.383 - P.387

[1]はじめに

 1990年代半ばまでは,アメリカ生殖内分泌医の89%は不妊初期検査として腹腔鏡検査を行ってきた1).子宮卵管造影(hysterosalpingography:HSG)で卵管異常が認められた場合は速やかに,正常の場合は最終確認の意味で腹腔鏡検査が行われていた.

 しかし,95年以降は体外受精胚移植(in vitro fertilization:IVF)の妊娠率が20%となり,卵管性不妊に果たす腹腔鏡の役割は急激に縮小した.ASRM2006の報告2)は,「不妊検査おける腹腔鏡検査の対象は,子宮内膜症や骨盤付属器癒着の証拠があるか強く疑われるときに行う.あるいは,明らかな卵管病変があるときも行う」とし,腹腔鏡の適応範囲は狭くなった.本稿では,腹腔鏡検査の導入時期の原則と各論を述べる.

20.卵管周囲の癒着状況,卵管采の状態をみて,実際にはどのように卵管を評価するのでしょうか.具体的に教えてください.

著者: 沖利通

ページ範囲:P.388 - P.391

[1]はじめに

 腹腔鏡下に卵管周囲および卵管采の状態をみて,客観的に卵管を評価する方法にAFSの付属器癒着スコアがある1).その後10年間に,このスコアと術後の妊孕性の間にはあまり関連性がみられないとの報告が相次いだ2).同じころに,IVF技術は成熟期に入り,癒着を中心とした卵管機能評価法と妊孕性に関する研究論文は激減した.本稿では,現在までに報告された卵管癒着に関する診断法とその臨床成績について述べる.

21.卵管因子を疑う症例には,従来の全身麻酔下に行う診断的経腹的腹腔鏡検査より侵襲が低い経腟法がよいと聞いています.その詳細について教えてください.

著者: 平野由紀 ,   柴原浩章 ,   永山志穂 ,   大丸貴子 ,   高見澤聡 ,   鈴木光明

ページ範囲:P.392 - P.395

[1]はじめに

 女性側の不妊原因のうち,卵管障害は約40%と最も多く,なかでもクラミジア感染症による卵管通過障害や卵管周囲癒着などの卵管障害は不可逆的である.

 卵管性不妊症の診断には,一般に子宮卵管造影(hysterosalpingography:HSG)を行う.HSGは子宮・卵管の形態,および卵管通過性の診断と同時に,拡散像により骨盤内の癒着の有無を推定できるが,その診断能には限界がある.すなわち,経腟的腹腔鏡(transvaginal hydrolaparoscopy:THL)とHSG所見を比較すると,卵管通過性の一致率は82.4%,卵管周囲癒着の一致率は67.6%と,HSGの正診率は比較的低い1).よって,HSGだけの情報でいきなり体外受精・胚移植(in vitro fertilization─embryo transfer:IVF─ET)を適応するべきではなく,診断的腹腔鏡検査を行うことが望ましい.ところで,診断的腹腔鏡検査は短時間で完了できるため,挿管を伴う麻酔や全身管理を要する経腹腹的腔鏡は侵襲が大きすぎるのではないかという指摘があった.そこでわれわれは1999年よりTHLを導入し,卵管性不妊症の診断を積極的に行い,その後の不妊症治療方針の決定,すなわち経腹的腹腔鏡下に行う癒着剥離術や卵管再疎通術の適応,あるいはIVF─ETを選択すべきかの判断に利用してきた2)

 THLの利点は表13)に示すように,経腹法と比較して,腹部切開が不要,静脈麻酔あるいは局所麻酔で対応が可能,外来でも可能実施で,入院日数は短期間で十分,液相下での観察は気相下で行う観察よりも鮮明であるなどがある.また,このような経腟的操作は,日常診療でダグラス窩穿刺,あるいは経腟的採卵などの操作に習熟するわれわれ産婦人科医にとっては,経腹的内視鏡操作より簡便であると考える.

 一方,THLの不利な点として,単一鉗子による操作で視野も制限されることから,手術的操作には不向きである.

I 不妊の検査・診断 C子宮因子 【卵管疎通性検査】

22.卵管通気法,子宮卵管造影,超音波下卵管通水法の使い分けについて教えてください.

著者: 平田哲也 ,   大須賀穣 ,   武谷雄二

ページ範囲:P.396 - P.397

[1]はじめに

 卵管通過障害は,女性側の主要な不妊因子の1つであり,スクリーニング検査として必須の検査項目である.卵管疎通性検査の実施時期は月経終了後から排卵までの期間である.

【子宮鏡検査】

23.子宮鏡検査の適応,方法,臨床的意義について教えてください.

著者: 平田哲也 ,   大須賀穣 ,   武谷雄二

ページ範囲:P.398 - P.399

[1]はじめに

 子宮奇形,子宮内腔の病変は,受精卵の着床が障害され,不妊または不育症の原因となる.子宮鏡による子宮内腔の検査は外来レベルで行える検査であり,超音波検査と異なり直接子宮内腔を観察できる.さらに,子宮鏡下手術による治療の可否についても診断可能である.外来レベルでの診断精度を高め,診療の幅が広がるという点で非常に有効な検査法である.

 以下,子宮鏡検査の適応,方法,臨床的意義について述べる.

I 不妊の検査・診断 D男性因子 【精液検査】

24.精液検査の適応,方法,臨床的意義について教えてください.また,精液検査の精度を上げるための方法はあるのでしょうか.

著者: 岩本豪紀 ,   吉田淳

ページ範囲:P.401 - P.403

[1]はじめに

 精液検査は,男性の妊孕能を評価するうえで必須の検査であり,結果によって治療方針が左右される重要な検査である(図1).このため,不妊を主訴とするカップルが受診した際には,原則スクリーニングとして全例に行われるべき検査である.従来,精液検査はWHOマニュアル1)に則って行われてきたが,検査の標準化・quality controlはほとんど行われていなかったため,検査結果に多様性を生じる状態となっていた.この問題に対応するため,日本泌尿器科学会監修の「精液検査標準化ガイドライン」2)が2003年7月に刊行された.ガイドラインに則った検査法の詳細は「精液検査標準化ガイドライン」を参照されたい.また,ガイドラインには精液検査の精度を上げるためにCD─ROMが添付されており,精子濃度測定トレーニング用画像,精子運動率測定トレーニング用映像が収められている.これを用い,測定誤差が大きくならないよう定期的にトレーニングしていくことが重要である.しかしながら,ガイドラインに則った検査法は,われわれ臨床医が診療中に行うには手技がやや煩雑であり,日常診療では簡便性,操作性で優れているMakler計算盤を用いた検査法が広く普及している.ただし,Makler計算盤を用いた精液検査では,以下の問題点が指摘されている.

 (1)100×106/ml以上では測定が困難.

 (2)ゴミなどが混入した場合,基盤とカバーグラスの間隙が広くなる可能性があり,測定値が不正確になる.

 (3)長期の使用によりガラスの平面性の喪失をきたし,測定値が不正確になる.

 このため,Makler計算盤はこれらの点を念頭に置きつつ使用すべきである.

【尿道分泌液・前立腺液の検査】

25.尿道分泌液・前立腺液検査の適応,方法,臨床的意義について教えてください.

著者: 岩本豪紀 ,   吉田淳

ページ範囲:P.404 - P.405

[1]はじめに

 尿道分泌液,前立腺液の検査は,精路,副性器の炎症性疾患などを疑うときに行われる一般検査である.精路,副性器感染症と妊孕性の関連には議論のあるところであるが,多くの報告が男性不妊症と精路,副性器感染症の臨床的関連について言及している.抗生剤治療による炎症所見の改善とともに精子機能も改善するとする報告も多く,精路,副性器感染症の存在は妊孕性に悪影響を与えると考えられ,積極的な治療対象と考えられている.すなわち,男性不妊症の日常診療において精路,副性器感染症は軽視されるべきではない.男性不妊症の臨床上,精路,副性器感染症を疑わせる所見としては,主に膿精液症と血精液症を呈する場合ということになるが,これらの症候を有する患者には尿道分泌液,前立腺液の検査は必須の検査と考えられる.

【精子機能検査】

26.精子機能検査の適応,方法,臨床的意義について教えてください.また,それぞれの検査法の使い分けはどのように行うのでしょうか.

著者: 高尾徹也 ,   辻村晃

ページ範囲:P.407 - P.409

[1]はじめに

 男性不妊症の検査として,まず施行される精液検査では精子数,運動率,奇形率などを調べることができるが,それらのパラメータでは異常所見がみられない場合がある.その場合,女性側の因子に問題がなければ,精子の機能に問題がある場合が考えられる.精子は,精巣から精巣上体,精管を通過していく間に受精能が獲得され,最終的には卵との受精の際には先体反応やhyper activationと呼ばれる過程が必要とされる.その過程で異常がみられれば受精が起こらない.したがって,男性不妊症患者のうち,精液検査で特に異常がみられず,受精が成立していない患者に対して精子機能検査は適応になる.乏精子症,運動率低下症例も複合的な原因が考えられるため,施行する意義はあると考えられる.ただし,実際には一般臨床では,精子機能検査は保険診療の問題でルーチン検査としては使用されていないのが現状である.以下に,いくつかの検査を解説する1~4)

【各種ホルモン測定と負荷テスト】

27.視床下部─下垂体─精巣間内分泌調節機構に関連したホルモン測定と負荷テストの適応,方法,臨床的意義について教えてください.

著者: 高尾徹也 ,   辻村晃

ページ範囲:P.411 - P.413

[1]はじめに

 男性不妊症患者の診断には,内分泌検査として,LH,FSH,テストステロン,遊離テストステロン,プロラクチン,エストラジオールなどの測定を行う.ホルモン分泌には日内変動があるため,午前中の採血が推奨されている.図1に視床下部─下垂体─精巣軸の模式図を示す.視床下部,下垂体,精巣はお互いに合成分泌するホルモンにより促進,抑制を受け,調節されている.視床下部からは,GnRH(gonadotropin releasing hormone)が分泌され,下垂体からのFSH,LHの分泌を促す.逆に血中テストステロン,エストラジオール濃度が高くなると,GnRHの分泌は抑制される.LHは下垂体前葉から分泌され,精巣のleydig細胞を刺激し,テストステロンの産生を促す.テストステロンは全身の多くの標的臓器に対してさまざまな働きをもつ.精巣内では,精細管内のsertoli細胞に働き造精機能を助ける.テストステロンは,視床下部,下垂体に作用し,GnRH,LH,FSHの分泌を抑制する.FSHも下垂体前葉から分泌され,精細管内のsertoli細胞に働き,精子形成を促す.sertoli細胞からは,種々の物質が産生されている.そのなかでインヒビンは下垂体に作用し,LH,FSHの分泌を抑制する.プロラクチンも下垂体前葉から分泌され,leydig細胞を刺激し,テストステロンの過剰産生を抑制する働きがある.

 造精機能障害を呈する男性不妊症患者では精巣機能低下により,低テストステロン血症を引き起こすことが多く,その場合には視床下部─下垂体─精巣間のネガティブフィードバック機構が作用しないことからゴナドトロピンが上昇し,高ゴナドトロピン性精巣機能低下症となる.逆に下垂体前葉ホルモンであるゴナドトロピン分泌障害から精巣機能低下を生じたものは低ゴナドトロピン性精巣機能低下症と呼ばれ,造精機能障害の原因の1つである1)

 一般的なホルモン値から考えられる病態,および稀なゴナドトロピン欠損症の病態を表1にまとめた2~4)

 負荷テストは,視床下部,下垂体,精巣の機能的予備能を検査する方法である.負荷試験の適応になるのは,低ゴナドトロピン性性線機能低下症を疑う場合が多い.すなわち,FSHやLH,テストステロンが低値の場合に施行される.以下種々の負荷試験について概説する.1つ注意をしなければならない点はFSH,LHが低値でテストステロンが正常か高値の場合である.この場合には,先天性副腎過形成(congenital adrenogenital hyperplasia:CAH)の可能性があるため,副腎皮質ホルモンの検査や遺伝子診断を行う必要がある.文献上,CAHに対してコルチゾールの補充を行い,無精子症症例から精子が出現したという報告もある5)

【染色体検査・Y染色体微小欠失】

28.無精子症における遺伝的検査の意義はわかりますが,高度乏精子症においても染色体検査を勧めるべきでしょうか.わかりやすく教えてください.

著者: 高尾徹也 ,   辻村晃

ページ範囲:P.415 - P.417

[1]はじめに

 男性不妊症患者では,染色体異常の頻度が一般集団のそれと比べて高いといわれている.松田1)の集計では,精子濃度2×106/ml以下の乏精子症患者でも性染色体異常および常染色体異常の頻度は1.7%,3.3%,全体で5%であったとしている.性染色体異常には,クラインフェルター症候群,47, XYYなどがあり,常染色体異常にはロバートソン転座,常染色体相互転座,逆位などがある.

 体外受精,顕微受精では,これらの染色体異常による不妊症であっても挙児可能であることから,次世代への染色体異常の伝播が引き起こされる.したがって,補助生殖医療を受ける不妊カップルへの十分なカウンセリングが必要となると考えられる2).以下に,代表的な疾患を概説する.

29.男性の染色体異常も精液所見に影響するでしょうか.また,男性不妊症があった場合は,夫の染色体検査も行うべきかどうか教えてください.

著者: 高栄哲

ページ範囲:P.419 - P.421

[1]男性不妊症における染色体異常

 男性不妊症にみられる染色体異常の第1位はクラインフェルター症候群であり,第2位はY染色体長腕上の微小欠失である(表1)1).前者は染色体検査によって,後者は特異プローブを用いたSTS(sequence tagged─site)─PCR(polymerase chain reaction)法によって診断可能である.

 精液検査において無精子症であり,さらに精巣サイズのきわめて小さい(14ml以下)場合,染色体検査は必要である.内分泌学的には高ゴナドトロピン性性腺機能低下症が多いので,ゴナドトロピンの検査も必須である.

 実際に,細胞生物学的(検査会社へ依頼できる検査)染色体検査で確認できるのは,47, XXYなどのクラインフェルター症候群をはじめとする性染色体の数の異常(その他,XX maleやXYY症候群などがあるが,きわめて稀)がある.また,性染色体の形態的異常や常染色体の転座なども確認できる.

 一方,Y染色体の微小欠失は細胞遺伝学的には検出できないが,特異プローブを選べば,患者未血から採集したゲノムDNAを用いて検出できる.

【超音波画像診断法(陰嚢内容)】

30.陰嚢内容の超音波画像診断の適応,方法,臨床意義について教えてください.

著者: 高栄哲

ページ範囲:P.422 - P.423

[1]陰嚢超音波エコーの適応

 超音波画像検査は低侵襲であり,簡易な方法であるので,すべての男性不妊症を主訴とする患者に適応はある.

 陰嚢内容は精巣,精巣上体,精索から構成され,陰嚢超音波エコーによって容易にこれらを区別することができる.まず,超音波エコー検査を行う前に,問診触診が重要であることはいうまでもない.無痛性陰嚢内容の腫脹は,陰嚢水瘤か精巣腫瘍を考え,有痛性腫脹は,急性精巣上体炎か精巣捻転症を考える.

【精管造影・精巣生検】

31.精管造影・精巣生検の適応,方法,臨床的意義について教えてください.

著者: 高栄哲

ページ範囲:P.424 - P.425

[1]閉塞性無精子症

 男性不妊症の診断は,精液検査,ホルモン検査から始まる.無精子症の場合,閉塞性,非閉塞性の鑑別が重要である.一般に,FSHおよび精巣サイズによって診断される場合が多い(図1).しかし,本来,精巣生検によって得られた組織像に精子形成を認めることによって診断されるべきであるが問題点も多い.

I 不妊の検査・診断 E頸管因子 【Huhnerテスト・Miller─Kurzrokテスト】

32.Huhnerテスト・Miller─Kurzrokテストの適応,方法,臨床的意義について教えてください(特に判定基準について詳しく教えてください).

著者: 藤井俊策 ,   福原理恵 ,   福井淳史

ページ範囲:P.426 - P.429

[1]はじめに

 子宮頸管は腟内に射出された精子にとって第一の関門で,そこを十分な数の精子が通過して子宮腔に侵入できるかが妊娠成立の重要なポイントである.それを評価する検査が,HuhnerテストとMiller─Kurzrokテストである.Huhnerテストは通常,性交後試験(postcoital test:PCT)と称され,性交後に頸管粘液中の運動精子を調べ,頸管因子,男性因子,免疫因子をスクリーニングする検査として認知されている1).Miller─Kurzrokテスト(MKT)はPCTのin vitro試験である.ただし,PCTやMKTが正常だからといって精液検査を省略することはできない2)

I 不妊の検査・診断 F免疫因子 【抗精子抗体】

33.抗精子抗体の検出にはどの検査法が優れているのでしょうか.女性側と男性側に分けて,わかりやすく教えてください.

著者: 藤井俊策 ,   福原理恵 ,   福井淳史

ページ範囲:P.431 - P.433

[1]抗精子抗体の検査法

 精子抗原は数多くあり,それらに対応する抗精子抗体(anti─sperm antibody:ASA)も多様である.すべてのASAが不妊の原因となるわけではなく,不妊症と関連があるのは精子不動化抗体のように精子運動性を障害する抗体や,精子頭部に結合して受精を阻害する抗体である.ASA検査は自然妊娠の可否1),人工授精(artificial insemination with husband's semen:AIH)の成否2)などを予測するうえで有用と報告されている.スクリーニング検査として勧められてもいるが,どの検査法も保険適用になっていない.そのため,ASA陽性の可能性が高い症例,すなわちHuhnerテストまたはMiller─Kurzrokテスト異常,無力精子症,原因不明不妊,AIHや生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)の反復不成功など症例を限定して行われることが多い.ASAの検出法は数多くある(表1)が,検査センターに依頼可能または一般的な検査室でも実施可能で,不妊との関連が明らかにされている検査法について述べる.手技の詳細はWHOラボラトリーマニュアル3)などに記載されている.

34.抗精子抗体が陽性の場合は自然妊娠しないのでしょうか.また,陽性の場合は,全例,体外受精に進むべきか教えてください.

著者: 藤井俊策 ,   福原理恵 ,   福井淳史

ページ範囲:P.435 - P.437

[1]抗精子抗体陽性例の妊孕性

 女性の血中に存在する抗精子抗体(anti─sperm antibody:ASA)や射出精子に結合した男性のASAは,精子の運動性や受精機能を障害して自然妊娠を妨げる可能性がある.ASAの種類や量によっては,人工授精(artificial insemination with husband's semen:AIH)や生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART),さらには顕微授精が必要になることもある.しかし,検出する抗体の種類や検査法によってASAの生物活性は異なり,ASA陽性例が必ずしも不妊となるわけではない.

II 不妊の治療 A女性因子に対する薬物療法 【クロミフェン療法・シクロフェニル療法】

35.クロミフェン療法について教えてください.また,シクロフェニル療法との使い分けはどのように行いますか?

著者: 辰巳賢一

ページ範囲:P.438 - P.439

[1]クロミフェン療法とは

 クロミフェンに限らず,排卵誘発剤を使用する主な目的は3つある.

 第一に,無排卵あるいは希発排卵の症例の排卵誘発を目的とする場合である.第二は,排卵誘発剤を用いることにより,複数の卵胞を発育させ複数の卵子を排卵させることにより妊娠の確率を上げる,すなわち過排卵を目的とする場合である.第三は,原因不明不妊に対し排卵誘発剤を投与することにより,妊娠率が上がることを期待する場合である.排卵誘発剤は,いずれの目的に用いるのかを明確に意識して使用する必要がある.

36.クロミフェン療法の副作用について教えてください.子宮内膜がどの程度まで薄くなると妊娠しなくなるのですか.クロミフェン療法は何周期まで続けてよいでしょうか.

著者: 辰巳賢一

ページ範囲:P.440 - P.441

[1]クロミフェン療法の副作用

 クロミフェンの副作用には3つのタイプがある.第一に,生殖器以外に対する一般的な副作用,第二にクロミフェンのanti─estrogen作用による生殖器に対する副作用,そして第三に長期投与により遅発的に出現する可能性のある副作用である.クロミフェン投与のみで,重篤な卵巣過剰刺激症候群を起こすことはまずない.

37.クロミフェン療法の長期的にみた副作用として,婦人科悪性腫瘍が指摘されています.最新の知見について教えてください.

著者: 和泉俊一郎 ,   村野孝代

ページ範囲:P.443 - P.445

[1]はじめに

 クロミフェンは手軽な内服薬でありながら,高い効果が得られる薬剤として,現在卵巣機能不全(I度無月経),および排卵障害を有する不妊症の治療などに広く用いられている.投与方法も内服であり,注射薬の排卵誘発剤と比しても,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)など重大な副作用の出現頻度も低く,産婦人科医にとっては手軽に処方できる薬の1つである.しかし対象となる疾患が慢性的な病態に陥りやすいという性質上,いったん投与を開始すると,1年以上の長期にわたって継続されることも少なくない.したがって長期使用に伴う副作用,特に悪性腫瘍の発生危険率は興味のもたれる点である.

【グルココルチコイド投与法】

38.グルココルチコイドの排卵誘発作用に関するエビデンスはあるのですか.また適応と投与方法(投与薬剤,投与量,投与期間)についても教えてください.

著者: 和泉俊一郎 ,   村野孝代

ページ範囲:P.447 - P.449

 グルココルチコイドの排卵誘発作用に関するエビデンスは,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)の症例に対し,その有効性が認められている.

 PCOSとは卵巣の形態的変化(多嚢胞性変化),内分泌異常(血中LH/FSH比の高値,高アンドロゲン血症)を伴う排卵障害があり,特有の臨床症状(不妊,多毛,肥満,インスリン抵抗性糖尿病)を呈する内分泌疾患である.このPCOSのなかでも極端な男性化徴候を示すものがStein─Leventhal Syndromeとして1935年に報告され,PCOSの概念が整理されるきっかけとなった.また,近年は,PCOSでインスリン抵抗性を認める症例が多く存在することが明らかになり,メタボリック症候群として問題視されている.おそらく背景に存在する内分泌異常は個々の症例によって異なり,現在ではPCOSがすべて同一の病因に起因するものではなくさまざまな病因を反映した疾患群として考えられている.

【ゴナドトロピン療法】

39.ゴナドトロピン療法に用いるhMG製剤とFSH製剤,リコンビナント製剤はどのように使い分けるのでしょうか.また,現在国内で使用できる製剤の黄体化ホルモン含量なども教えてください.

著者: 京野廣一

ページ範囲:P.451 - P.453

[1]治療の概要

 Two cell/two gonadotropin説に示されるように,FSHとLHは協調して性腺である卵巣の顆粒膜細胞と莢膜細胞を刺激し,前胞状卵胞期以降の卵胞発育を制御している.また,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(hypo─hypo)の患者においてFSHとLHがともに卵胞発育に不可欠であることより,LHはFSHと同様に重要な役割を担っていることに異論をとなえる人はいない.ただ,卵巣刺激をする際,すべての患者にLH添加が必要かというと決してそのようなことはない.Kolibianakisら1)がHum Reprod Update 2007でreviewしているように,まったくLH添加の有用性を否定する報告も多数みうけられる.彼らは内因性のLHで十分と考えている.しかし,臨床の場で個々の患者に対応する場合,LHを添加したほうがよい症例に遭遇することも事実である.どのような症例にLH添加が望ましいかであるが,論文検索や経験からhypo─hypo,高年齢,血中LH濃度(基礎値や卵巣刺激中)の低い患者が対象となり,個人的には約10~20%の症例でLH添加がよい結果をもたらすと考えている.本稿ではゴナドトロピン製剤の使い分けをどのようにしたらよいか,hCG添加の効果,その基礎的裏づけ,血中hCG値と胚クオリティ・継続妊娠率,LH添加が望ましいと考えられる症例と添加量について述べる.表1に示したように,日本で使用可能なゴナドトロピン製剤は尿由来と遺伝子組換えの製剤に分けられる.尿由来の製剤はFSH : LHの比率が3:1と1:1のものと,ほとんど純粋なFSH製剤の3種類がある.遺伝子組換え製剤として1種類使用可能である.また,表22)に示したように,uhMGは製剤によってLHやhCG含量が異なり,それが微妙に胚の質や継続妊娠率に関与する報告もあり,今後検討する必要があると思われる.

 生殖医療目的で卵巣刺激をする際,GnRHアゴニストやGnRHアンタゴニストを使用してLH surgeを抑制する.基本的にはuFSHかrFSHを使用する.rFSHのほうがuFSHより生物学的活性が高いので,個人的にはrFSH 150 IUとuFSH 225 IUがほぼ同等の効果があると考えて,投与量を決めている.rFSHで反応がよくない場合や35歳以上の場合に,卵胞期中期からuhMGに切り替えたり,uFSHやrFSHにuhCG 50~100 IU添加したりする場合がある.hypo─hypoの場合に刺激開始からuFSHあるいはrFSHにrLH75 IUを添加するが,高価なため,uhCG50 IUで代用するのが普通である.また,簡便にLHやhCGを含んでいるuhMGを使用することも可能である.タイミング法や人工授精目的で卵巣刺激する場合は単一卵胞発育が目標なので,rFSHやuFSHを少量から開始して漸増する投与が望ましいと思われる.以下に,最近のhCGやLH添加の文献を紹介する.

40.GnRHおよびゴナドトロピン律動投与法の有効性について,詳しく教えてください.

著者: 京野廣一

ページ範囲:P.454 - P.455

 単一卵胞発育をめざす方法である.携帯用注入器として,SP─31(ニプロ:2006年製造販売中止)やZyklomat(Ferring Germanyで取り扱い,日本では認可されていない)を用いる.静注の場合は24ゲージの留置針を前腕静脈に挿入し,皮下注射の場合には26ゲージの翼状針を腹部皮下に留置する1).最近では,Omnipodは2008年6月にdeviceを持っているInsulet CorporationとFerringのスイス本社がGnRHのpumpとして開発する契約を締結し,2009年の発売をめざしている.

 月経周期5日目よりFSH 150 IUを投与開始し,卵胞径が11mmになった時点でGnRH(ヒポクライン®)20μgを2時間に1回皮下投与するパルス療法に切り替える.卵胞径が18mmになった時点でhCGを5,000IU投与し排卵させた後,黄体期治療(高温相の2~3日目より2~3日ごとにhCG 3,000単位を3回)も行う.用いるポンプ(SP─31)を図1に示す.タバコの箱程度の大きさで,患者本人が刺入する.スカートで隠れるので外からは見えず,入浴の際はいったん抜いて,入浴後はまた刺入する.GnRH製剤1Aを1回溶くと大体1周期分(4~5日分)である.視床下部性排卵障害に対する治療成績(表1)2, 3)を示す.FSH─GnRHパルス療法では,20例43周期に実施して,発育卵胞数ほぼ1個,周期別排卵率88.3%,周期別妊娠率11.6%(5/43),多胎率0%, OHSS率0%の報告がある.それに対して,FSH通常法ではおのおの,4個,88.6%,18.2%(8/44),12.5%,40.9%,FSH低用量持続療法では,2個,80.0%,20.0%(5/25),0%,12.0%で,OHSS率が高い傾向にある.よりリスクの高い多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)(表2)2, 3)では,発育卵胞数は視床下部性の約2倍になる.排卵率,妊娠率では三者に大きな差はない.

 FSH─GnRHパルス療法では,多胎率は0で,OHSSは約13%発生しているが,FSH低用量持続療法(25%)や通常法(43%)に比べて有意に低値である2).ただし,現状の日本ではポンプが入手困難であることや保険適用でないのでこの方法は難しいと思われる.

41.体重減少性無月経患者のゴナドトロピン療法がうまくいきません.有効な卵巣刺激法について教えてください.

著者: 京野廣一

ページ範囲:P.456 - P.457

[1]体重減少性無月経とは

 体重減少性無月経患者(表1)は,ほとんどが第2度無月経で血中LH,FSH値が低値である.このような症例で通常の卵巣刺激のようにuFSHやrFSHを単独で投与した場合,卵胞発育不良,血中E2値低値,子宮内膜菲薄,受精率低値などの問題が多くみられる.この場合の基本的な卵巣刺激としてはFSH+LHを同時に投与するのがコツといえる.その前に,体重減少性無月経患者には適正な体重と正常な月経周期に戻るように指導することが大切である.時には正常な食生活習慣を見つけるまで食事指導をすることも必要である.神経性食欲不振症(表2)の場合には,心療内科でのカウンセリングや高カロリー輸液で栄養を補うことも考慮する.特別新しい治療はなく,重症な神経性食欲不振症になる前に心療内科的治療の必要性を早期に認識する必要がある.婦人科医師・精神科医師・栄養士によるチーム医療が有益である.

 神経性食欲不振症の発症率は近年,増加傾向にあり,思春期女子の1%と推定されている.

42.ゴナドトロピン製剤投与法の変法について教えてください.変法は,一般的方法より優れているのでしょうか.

著者: 伊藤理廣 ,   五十嵐茂雄 ,   岸裕司 ,   今井文晴 ,   峯岸敬

ページ範囲:P.459 - P.461

[1]一般的なゴナドトロピン療法とは

 月経(あるいは消退出血)開始3~5日後にhMG(HMGテイゾーなど)を150単位連日投与し,卵胞発育を促し,超音波断層法にて首席卵胞の平均径が18mmを超えた時点で,hCG製剤(プレグニール®,ゴナトロピン®など)5,000単位投与し,排卵へ導く治療法である.通常1週間から10日間の投与でhCG切り替えとなる.発育不良のときはさらに75~150単位ずつ増量する場合もある.hCG投与日あるいは翌日にタイミングをとるように指導するか,人工授精を計画する.多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)では,hMGは原則禁忌であり,この場合は月経3~5日後にpureFSH(フォリルモP®など)を用いる.リコンビナント製剤も使用可能だが,保険適用はない1, 2)

43.遺伝子組換え型ヒトFSH製剤を排卵誘発に用いる場合,海外では発売する会社によって推奨する開始用量が違います.この相違の理由について教えてください.また,同じ活性単位であっても,遺伝子組換え型製剤は尿由来の製剤よりもヒトの卵胞に対する活性は高いのでしょうか.

著者: 伊藤理廣 ,   五十嵐茂雄 ,   岸裕司 ,   今井文晴 ,   峯岸敬

ページ範囲:P.462 - P.463

[1]推奨開始用量の違い

 現在,日本で入手可能な遺伝子組換え型ヒトFSH(リコンビナントFSH)は,ゴナールF®(follitropin alfa:メルクセローノ)とフォリスチム®(follitropin beta:シェリングプラウ)であるが,日本で女性の排卵誘発の保険適用があるのは,フォリスチム®のみである.

 ヨーロッパにおいて,推奨開始用量はメルクセローノ社(旧セローノ)のゴナールF®は75IUであり,シェリングプラウ社(旧オルガノン)のPuregon®(=フォリスチム®)は50IUである.これは,後述するように,製品の単位が従来からの尿由来製剤と同一活性単位であっても,遺伝子組換え型製剤はヒトの卵胞に対する臨床的な活性は高いという治験結果を得たため,この結果をもとに製品段階でヨーロッパ内の委員会の承認を得る際に,Puregon®は開始用量を50 IUに下げたが,ゴナールF®は下げずに75IUのままとしたことに由来するものである.したがって,両者の基本的な活性が異なるというわけではない.

44.低用量FSH療法の開始量,投与期間などのプロトコールについて,具体的に教えてください.

著者: 伊藤理廣 ,   五十嵐茂雄 ,   岸裕司 ,   今井文晴 ,   峯岸敬

ページ範囲:P.464 - P.465

[1]低用量FSH療法=低用量漸増療法

 排卵障害の患者に対して,ゴナドトロピンを使用する際に問題となる卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)や多胎妊娠の発生を防止するため,発育卵胞数を極力少なくするが,確実に単一(に近い)排卵を誘導するのに有効な方法である.[42]で述べたとおり,ステップダウン法のほうが単一排卵の点で優れるという知見もあるが,投与量のさじ加減が微妙であり,低用量漸増療法のほうがステップダウン法に比べて,管理が容易と考えられている.

【カウフマン療法】

45.排卵誘発法としてのカウフマン療法の適応,位置づけについて教えてください.

著者: 山下正紀

ページ範囲:P.467 - P.469

[1]カウフマン療法とは

 「カウフマン(Kaufmann)療法」とは,1933年,ドイツのCarl Kaufmannが卵巣を摘出した女性に,エストロゲンとプロゲステロンを順次投与して月経様の性器出血を起こしたと報告したことにより知られることとなった,月経の再開を目的とした治療法である1).エストロゲン─プロゲステロンを一定期間,周期的に投与することが,カウフマン療法の基本概念である.

 日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会「思春期における続発無月経の病態と治療に関する小委員会」が行ったアンケート結果(1997~1998年度検討結果報告)から,挙児希望がない思春期の続発性無月経においては,第1度無月経の77.1%,第2度無月経の実に95.5%において,このカウフマン療法が単独で,もしくは「クロミフェン療法」との併用で選択されていることがわかる2)

46.カウフマン療法における投与薬剤量の設定について,具体的に教えてください.

著者: 山下正紀

ページ範囲:P.471 - P.473

[1]カウフマン療法の基本的な考え方

 「カウフマン(kaufmann)療法」には,厳密な意味での定まったプロトコールはない.基本的には,エストロゲン投与に続き,エストロゲンに加えるかたちでプロゲステロンを投与する.すなわち,正常排卵周期のホルモン環境を再現する,いわゆるエストロゲン─プロゲステロン療法の1つである(図1).

 なお,更年期以後に行われる治療であり,性成熟期の生理的なホルモンレベル以下の薬剤量を投与する「ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)」とは,区別されるべきものである.

47.IVF周期前のカウフマン療法において,低用量ピルを用いた場合のメリットとデメリットについて教えてください.

著者: 奈須家栄 ,   楢原久司

ページ範囲:P.474 - P.475

 症例によって刺激前の卵巣環境は異なるため,それぞれの環境をよく理解し,できるだけ良好な胞状卵胞(antral follicle)を揃えておく必要がある.特に最近では,刺激周期前に低用量ピルを1~2周期服用することにより閉鎖不全の卵胞遺残が減少し,良好胚が得られる確率が上昇するとの報告がされており,月経不順,過去に良好胚を得られなかった症例では考慮すべき方法である.しかし,その周期数あるいは低用量ピルの種類,ゴナドトロピン投与開始時期については,まだ意見が分かれている.

 現在最も多く用いられている方法は,一層性の低用量ピルを刺激前周期に14~28日間投与し,FSH値を低下させてから刺激周期に入るものである.低用量ピルを投与することによって,内因性FSH値とLH値が抑制され,baseline ovarian cystの形成が抑制されること,妊娠周期にGnRHアゴニストを使用する心配がないこと,胞状卵胞のサイズが均一化すること,ある程度採卵日を調整することができることなどの利点が挙げられる.Baseline ovarian cystはGnRHアゴニストのflare upによるものであるが,これが存在すると卵巣刺激の効果や妊娠率などが低下するという報告もあれば,関連がないとする報告もある1, 2).低用量ピルとGnRHアゴニストは5日間ほどオーバーラップして使用する.

48.早発卵巣不全が疑われる患者に対するカウフマン療法で,なかなかFSHが下降しない場合には,どのように対処したらよいでしょうか.わかりやすく教えてください.

著者: 奈須家栄 ,   楢原久司

ページ範囲:P.477 - P.479

[1]はじめに

 カウフマン療法で,なかなかFSHが下降しない場合には,gonadotropin─releasing hormone agonist(GnRHアゴニスト)の4~8週間投与でFSHを下降させることが可能である.

【ドパミンアゴニスト療法】

49.各種ドパミン作動薬の特性の違いについて,わかりやすく教えてください.

著者: 竹下直樹

ページ範囲:P.481 - P.483

[1]はじめに

 不妊原因のうち,女性因子として排卵障害は大きな要因であり,その原因として高プロラクチン血症(高PRL血症)は重要である.高PRL血症の91.4%が乳汁漏出を認め,全無月経患者の約20%が高PRL血症を呈する1).ドパミン作動薬(ドパミンアゴニスト)はその治療薬として有効であり,現在,副作用の少ない薬剤も使用されている.ここでは,ドパミン作動薬の種類について述べ,実際の治療法について解説する.

50.ドパミン作動薬の投与期間はどれくらいがよいでしょうか.適応疾患別に教えてください.

著者: 竹下直樹

ページ範囲:P.484 - P.485

[1]はじめに

 ドパミンアゴニスト療法は,下垂体のプロラクチン(prolactin:PRL)産生・分泌を抑制する.したがって,排卵障害の大きな要因となる高PRL血症に対して有効な治療法である.PRLは乳汁分泌ホルモンとして認識されているが,その生理作用は多岐にわたり,全身の細胞増殖・機能に対して必須のホルモンである.PRL受容体は下垂体のみに存するのではなく,卵,胚,子宮内膜,黄体にも存在し,着床制御,卵胞発育など生殖機能に大きく影響していると考えられる1, 2).ドパミン作動薬は下垂体外のPRL産生・分泌に影響を及ぼさないため,適切な使用は生体内の内分泌環境(血清PRL濃度)を調節することが可能であると考えられる2)

 ここでは,代表的な疾患(症候)に対する,ドパミン作動薬の使用例を解説する.

【インスリン抵抗性改善薬】

51.卵質不良の改善にインスリン抵抗性改善薬は有効でしょうか.処方の実際について教えてください.

著者: 小田原靖 ,   吉井紀子 ,   保坂猛 ,   祖母井英

ページ範囲:P.486 - P.489

[1]はじめに

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)の症例に対する不妊治療薬としてメトホルミンなどのインスリン抵抗性改善薬が広く用いられている.しかしながら,その適用と有効性についてはさまざまな意見がある.当院は主にART治療を行っているため,一般不妊治療で排卵に至らない,排卵を誘発しても妊娠に至らない,あるいは単一卵胞発育が困難で多胎のリスクを伴う場合,などの理由でART治療を前提として来院するPCOS症例が多い.しかしながら,このような症例にARTを行ってみると年齢に比して卵質,胚質が不良であるケースがみられる.本稿では卵質不良の改善という観点からインスリン抵抗性改善薬の有効性について論じてみたい.

52.多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発におけるメトホルミン療法の実際とその位置づけについて教えてください.

著者: 松崎利也 ,   苛原稔

ページ範囲:P.490 - P.493

[1]多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)の不妊治療とメトホルミン

 メトホルミンは,ビグアナイド系の経口血糖降下薬であり,その作用機序は肝臓における糖新生の抑制,末梢での糖利用の促進,腸管での糖吸収抑制など多彩である.PCOSで病態が改善するのは,インスリン抵抗性の改善により血中インスリン値が低下し,その結果,インスリンで促進されている卵巣のアンドロゲン産生が低下することが主な作用機序である1)

53.インスリン抵抗性改善薬をインスリン抵抗性のない痩せた多嚢胞性卵巣症候群症例や多嚢胞卵巣のみのhigh responder症例へ投与した場合の有効性について教えてください(本当に効果があるのでしょうか).

著者: 松崎利也 ,   苛原稔

ページ範囲:P.495 - P.499

[1]非肥満多嚢胞性卵巣症候群にインスリン抵抗性改善薬は有効か

 欧米の多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)はインスリン抵抗性を有する肥満例が多く,インスリン抵抗性改善薬が用いられてきた.しかしながら,日本のPCOSは非肥満例が8割を占め,非肥満例にインスリン抵抗性改善薬が効果的かは重要課題である.非肥満PCOSにメトホルミンを投与した報告は少数であるが,それらの報告のなかで非肥満またはやせと称している群の治療成績を抜粋して表1にまとめた1~12).また,作用がメトホルミンよりも強いチアゾリジン系のインスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾン,ロシグリタゾン7)には,メトホルミンと同等またはそれ以上の排卵誘発作用があると推測されるが,まだ報告が少ないので今回は省略する.

 Ngら1)はクロミフェン抵抗性のPCOSに限定して,中国人のPCOSにメトホルミンを3か月間投与した.BMIは17.9~30.8と非肥満を含む対象で,メトホルミンの排卵誘発効果はまったくみられなかったと報告している.それ以外の報告は,メトホルミンの投与で排卵誘発または正常月経回復の効果が得られたとしているものが多く2~11),高度の肥満群よりもむしろ非肥満群が奏効しやすいと述べている報告もある2, 4).しかしながら,海外の論文では,BMIが25を超え,日本では肥満例に該当する(表2)症例が,非肥満ややせとして取り扱われていることが多いことに注意が必要である.

II 不妊の治療 B手術療法 【開腹による子宮形成術】

54.開腹による子宮形成術の適応,方法,臨床的意義について教えてください.

著者: 宇賀神奈月 ,   泉谷知明 ,   深谷孝夫

ページ範囲:P.500 - P.502

[1]はじめに

 先天性子宮奇形は,多種多様のタイプに分類されている.そのなかで,中隔子宮や弓状子宮は不妊症および不育症の原因となることもあり,必要に応じて治療の対象になる.中隔子宮に対しては,近年子宮鏡下手術が広く応用されつつある.しかし,開腹手術を要する子宮奇形症例も存在するため,その適応や手術法について理解しておくことは重要である.他方,開腹下での子宮形成術は侵襲が大きいため,適応を十分に考慮するとともに手術に習熟しておく必要もある.本稿では,開腹による子宮形成術の意義,適応,方法について述べる.

【腹腔鏡下手術】

55.ART治療以前の患者が卵管水腫や卵管遠位端の閉塞を呈しています.この患者の手術方針について教えてください(温存か切除か).

著者: 菅麻里 ,   泉谷知明 ,   深谷孝夫

ページ範囲:P.503 - P.505

[1]はじめに

 卵管性不妊は,女性側における不妊原因の35~40%を占め,重要な不妊原因の1つである.卵管性不妊の原因として,最も多いのは卵管間質部閉塞であり,その次に多いのが卵管水腫である1).卵管水腫,卵管遠位端の閉塞を認めた場合の治療方針は,ARTと手術療法がある.ただし,ARTを選択した場合でも,妊娠率向上を期待して,ART施行前に卵管切除などの手術を行う場合がある.

 本稿では,卵管水腫と卵管遠位端閉塞の手術療法について述べる.

56.腹腔鏡下手術での術後癒着防止の方法について教えてください.何が一番有効なのでしょうか.

著者: 舩渡孝郎

ページ範囲:P.507 - P.509

[1]はじめに

 術後癒着問題に関しては,多くの外科系の医師が昔も今も悩んでいる課題である.癒着発生機序に関してはさまざまな研究がなされている1).また,腹腔鏡下手術は開腹手術に比べ癒着の少ない利点2, 3)があるが,特に妊孕能を温存する手術(筋腫核出術4),内膜症手術,卵巣腫瘍手術など)には術後癒着防止としていろいろな工夫がなされている.

 多くの癒着の原因としては,

 ・感染

  ・手術器具の不完全な消毒

  ・術野の不完全消毒(腹腔鏡下手術では,臍部の術前処置を完全にすることが重要)

  ・手術室の落下菌(腹腔鏡下手術では影響は少ない)

 ・長期にわたるドレーン留置(異物)

 ・不完全な止血

 特に内膜症の手術において頻度が高い

 ・全身状態の問題

 ・長時間手術による術野の乾燥(腹腔鏡下手術では影響は少ない)

 などが列記される.

 また,上記の問題点の対策に付け加えて早期離床を促し,腸管の蠕動運動を早くに回復させることも重要であると考える.その点腹腔鏡下手術は低侵襲手術のため,術後疼痛が少なく,早期離床が可能で癒着予防にもつながる.

57.チョコレート嚢胞がある不妊症例に対する核出術は,癌化を考慮し,積極的に行うべきでしょうか.最新の知見を教えてください.

著者: 舩渡孝郎

ページ範囲:P.511 - P.513

[1]はじめに

 チョコレート嚢胞が妊孕能低下の原因になるか否かはまだ議論の多いところであるが,卵管周囲・采の癒着が不妊症の原因になることは明らかである.また,過去においては,閉経期を迎えたら積極的な治療は必要ないと思われてきた.しかしながら,近年卵巣癌における病理学的検討では,卵巣類内膜癌や卵巣明細胞腺癌において子宮内膜症が高率に合併していることから関連が調査され,小林1)の静岡県内の疫学調査において嚢腫の存在が超音波で確認された臨床的チョコレート嚢胞の0.72%に卵巣癌が発見された.50歳以上のチョコレー嚢胞の2.14%に卵巣癌が合併していたことにより,治療法が変わってきた.また,嚢腫の大きさと癌化との関係が着目され,40mmを超えるチョコレート嚢胞では癌化が認められ,100mmを超えるとその頻度は増大した(表1).年齢別では40歳以降の癌化率が高く,更年期以降のチョコレート嚢胞の取り扱いに慎重にならなければならない(表2).すなわち,癌化を考慮するのなら挙児希望がない40歳以上のチョコレート嚢胞はサイズによらずoophrectomyするのが望ましい2)との意見もある.

58.子宮筋腫と不妊の関係について教えてください.また,治療が必要なときはどのようなときでしょうか.

著者: 明楽重夫

ページ範囲:P.514 - P.517

[1]はじめに

 子宮筋腫は婦人科の良性腫瘍のなかで最も多くみられ,30歳以上の1/3~1/4が子宮筋腫に罹患しているといわれている.近年の晩婚化にともない,不妊治療において子宮筋腫を有する症例が増加している.

 実際の臨床において,子宮筋腫を有する不妊症例をみたとき,患者年齢,不妊期間,不妊原因,子宮筋腫が妊娠に及ぼす影響,子宮筋腫と不妊の関係,筋腫核出術後の妊娠における留意点などを総合的に判断して治療方針を決定しなくてはならない.

59.多嚢胞性卵巣症候群に対する腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD)の特徴と手技の実際について教えてください.

著者: 明楽重夫

ページ範囲:P.518 - P.521

[1]はじめに

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrom:PCOS)は月経異常,不妊,多毛,肥満などの特有の臨床症状と,卵巣の多嚢胞性変化,血中LH≧FSHや高アンドロゲン血症などの内分泌異常を主徴とする疾患である.1935年,SteinとLeventhalによってはじめて唱えられ,卵巣の部分切除術後に正常月経周期の回復と妊娠の成立が報告された.以後楔状切除として確立されてきたが,効果が一時的なことや術後癒着をきたす欠点があった.1984年,腹腔鏡下手術による卵巣焼灼術が報告され,近年の腹腔鏡手術の発展とともに卵巣楔状切除術に代わって腹腔鏡下卵巣多孔術(laparoscopic ovarian drilling:LOD)が盛んに行われるようになった.本稿ではLODの適応,成績とその手技の実際について述べる.なお,PCOSの診断基準,薬物療法の詳細については他稿を参照されたい.

【子宮鏡下手術】

60.アッシャーマン症候群治療としての子宮鏡下手術の実際について教えてください.

著者: 岩崎信爾 ,   岡井崇

ページ範囲:P.523 - P.527

[1]はじめに

 子宮腔癒着症はアッシャーマン症候群として知られている.Ashermanは外傷性の子宮腔癒着1)と閉塞性無月経症2)とに区別しており前者は一般に月経障害はきたさず,後者は子宮頸部の癒着による無月経および月経困難を起こすと報告している.頻度的に多くはないが決して珍しい疾患ではなく,不妊症・月経過少症・無月経や反復流産症例などにおいてときどき遭遇する疾患である.

61.不妊症で子宮内膜ポリープ,粘膜下子宮筋腫がある場合,子宮鏡下の病巣摘出と不妊治療のどちらを優先すべきでしょうか.具体的に教えてください.

著者: 岩崎信爾 ,   岡井崇

ページ範囲:P.528 - P.531

[1]はじめに

 子宮筋腫と子宮内膜ポリープは不妊治療を行っていれば必ず出会う疾病である.表1に当科通院中の不妊症例において超音波検査にて子宮内膜異常を認めた症例(478例)に対して行った子宮鏡(hysterofiberscopy:HFS)の結果を示す.

 HFSで子宮内膜ポリープを認めた場合,切除すべきか,経過観察でもよいのかの判断は難しい.子宮筋腫に関しても大きな漿膜下・筋層内筋腫や粘膜下筋腫の症例や,少しでも早く体外受精をしたい高齢の筋腫合併患者に対し,手術を優先すべきか一般不妊治療や体外受精を優先すべきか悩むところである.実際には明確な指針はないのが現状であり,本章ではいくつかの文献を示し,その取り扱いについて考察したいと思う.

II 不妊の治療 C人工授精 【人工授精の方法】

62.人工授精実施のタイミングと方法について教えてください.また,その成功率と治療の限界はどのくらいでしょうか.

著者: 見尾保幸

ページ範囲:P.533 - P.535

[1]はじめに

 人工授精(artificial insemination)は,何らかの原因により卵管内の卵子への到達精子濃度が低下し,妊娠成立が妨げられている場合の選択肢である.

 当然のことながら,自然妊娠成立に不可欠な要因としては,①良質卵子の排卵,②卵管采の卵子捕獲,③必要十分な健常精子の存在,④正常受精の成立,⑤良質な胚発生,⑥卵管の胚移送機能,⑦着床可能な子宮内環境などが考えられる.このうち,人工授精で妊娠成立を期待するためには,上記の③以外の条件がすべて備わっている必要がある.筆者の知るオーストラリアを始め,欧州各国では,この原則を十分に踏まえ,基本的に,精液検査と合わせて,本法実施前に診断学的腹腔鏡検査(lap/dye test)を行い,骨盤内所見(卵管疎通性,卵管采形状,卵管・卵巣周囲癒着の有無など)を直視下に評価し,適応夫婦を決定している.

 しかし,わが国では,挙児希望夫婦に対する治療を進めるうえで「ステップアップ(step─up)」の考え方が広く受け入れられており,治療法の選択の際に,何よりも手短で,簡便な取り組みから優先的に実施される傾向が強い.その結果として,タイミング法→人工授精→体外受精→顕微授精といった,一方向の順序で治療が選択されることが多く,人工授精はタイミング法に次ぐ第二選択の治療と位置付けされている.しかし,筆者は,その考えに同調できず,むしろ,適正な実施方法に基いて,上述の適応夫婦に対してのより自然な妊娠成立を得るきわめて有効な治療法と考えている.

63.AIDの妊娠率と問題点について教えてください.

著者: 見尾保幸

ページ範囲:P.536 - P.537

 非配偶者間人工授精(artificial insemination donor:AID)は,夫以外の男性から提供を受けた精子を妻の頸管内,あるいは,子宮腔内に注入することにより授精をはかる方法であり,無精子症を主とする重度造精機能障害の夫婦が対象となる1).適応夫婦を選択する際には,少なくとも配偶者間人工授精(artificial insemination with husband's semen:AIH)の場合と同様に,男性因子以外の原因を除外できていることが原則となり,実際の実施に関しても,その手順はAIHと同じである.また,当然のことながら,本法の実施には,大きな社会的,倫理的,家庭的問題が含まれており,これらを十分に踏まえた遂行が重要であるが,われわれが何より最優先に深く考慮すべきは,本法により誕生する子どもたちの安寧であり,本法にかかわる当事者の揺るぎない自覚,深い認識,そして,大きな決断が必要であることは言を待たないが,本稿でその内容に触れることはあえて差し控え,他稿に委ねたい.

 わが国においては,AIDは1948年以降特定の医療機関で実施され,1996年それを追認する形ではあるが,日本産科婦人科学会が「『非配偶者間人工授精と精子提供』に関する見解」を会告として示し2),現在わが国では,これに基づいて一部の医療機関において実施されている.最新のわが国におけるAID治療成績が日本産科婦人科学会から報告されており(表1)3),それによると,妊娠率は対症例23.2%,対周期6.3%である.

64.精液の濃縮は人工授精で妊娠率を向上させるのでしょうか.詳しく教えてください.

著者: 西川明花 ,   丸山哲夫 ,   吉村泰典

ページ範囲:P.538 - P.539

 配偶者間人工授精(artificial insemination with husband's semen:AIH)は,夫の精液および精子を人工的に妻の性器内に注入する方法であり,一般的には子宮腔内人工授精(intrauterine insemination:IUI)が行われる.

 IUIは体外受精と比較して低侵襲であることに加え,自然周期においても,クロミフェンやhMG,rFSHによる卵巣刺激周期においても施行可能であり,時間的・経済的に制約が少ないことから,実際の不妊治療の流れにおいて自然妊娠,タイミング法で妊娠に至らない場合にARTに移行する前のステップとしてIUIが選択される頻度が高い.特に男性因子による不妊症に対して,重度の症例については卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)が選択されるが,上記の理由から軽度の乏精子症や精子の運動率不良症例については多くの施設においてIUIが第一選択で行われているのが現状である.

65.人工授精の実施時期は,hCG投与からどのくらいの時期がベストといえるでしょうか.詳しく教えてください.

著者: 西川明花 ,   丸山哲夫 ,   吉村泰典

ページ範囲:P.540 - P.541

 子宮腔内人工授精(intrauterine insemination:IUI)において妊娠率を上げるための条件として,なるべく多くの運動精子を子宮腔内に注入することに加え,排卵とタイミングを合わせて授精を行うことが重要である.子宮腔内で受精能力を獲得し,先体反応を起こした精子の生存期間は10数時間であり,排卵し卵管内に取り込まれた卵の生存期間は8~10時間であるとされている1).そのため体内で受精を期待するには排卵の時期にできるだけ一致させてIUIを行う必要がある.

 自然周期における生理的なLHサージ開始から排卵までの時間は,1980年のWHOによる多施設研究では24~56(平均32)時間,ほかの報告では36~38時間とされている2).LHサージに擬似したhCG投与も同様であり,Andersenら3)は,クロミフェンにて卵巣刺激を行った32人の原因不明または男性因子による不妊女性に対し,hCG投与後に超音波検査にて卵胞破裂を確認するまでの時間を計測したところ,平均38.3時間(SEM=0.54 : range=34~46)であったとしており,そのほかにも36~38時間で排卵が開始するとの報告が多い.

【精子調整法】

66.受精能の高い運動精子を回収する最適な方法について教えてください.

著者: 笠井剛 ,   平田修司 ,   星和彦

ページ範囲:P.542 - P.544

[1]はじめに

 腟内に射精された精子には,運動性はあるが,受精能力はまだない.子宮頸管,子宮内腔,卵管を上昇していく過程で,精漿が除去され,受精能力を獲得していく.精子が受精能力を得る過程は,capacitationとして知られ,精子細胞膜の流動性を増加させるコレステロールの喪失や,活性酸素の産生などが引き金となって,一連の精子細胞表面および細胞内の変化が起こる.受精能力を獲得した精子は,zona pellucida蛋白と接触することによって先体反応を引き起こし,透明帯を通過し,卵黄膜と融合することが可能になる.また,精子はcapacitationと同時に,精子運動パターンの変化,hyperactivationを起こす.この運動性の変化は,精子が透明帯を通過するために必要な動きであるとされている1, 2).これらの変化は,精子が卵子と出会う適切なタイミングで起こらないと,精子は死んでしまい受精に関与できない.

 人工授精の目的は,受精の場である卵管膨大部により多くの運動良好精子を無菌的(安全に)に送り込むことであるので,精子を濃縮し,運動良好精子を回収し,不要物を除去する目的で基本的には,精子は処理してから,注入される.また,精子は精漿と分離することで,capacitationを起こしやすくなり,引き続く先体反応が起こりやすくなるので,受精を促すことになる.精液を調整することによって,受精能を獲得した精子の受精能力を有する期間はいまだ明らかにされていないが,10数時間とも2,3日ともいわれている.

 理想的な精子処理法としては,短時間で処理が可能,簡便,安価,運動精子が多く回収できること,精子DNAや細胞膜に傷害を与えないこと,死滅精子,白血球,細菌を取り除くこと,decapacitation factorやreactive oxygen species(ROS)を取り除くことなどが挙げられる.運動性が良好な精子は,運動能以外の機能,すなわち先体反応,hyperactivationなどの機能も高く妊孕性が高いと考えられている.運動性が高い精子ほどICSIでの受精率が高いこと3),運動性が低い精子ほどmtDNAの断片化が多いこと4),精子DNAの断片化が多いこと5)が報告されている.運動性の高い精子ほど,受精能の高い精子といえるので,運動性の高い精子を回収することが重要である.

【精子凍結保存法】

67.精子凍結保存法の適応と実際について教えてください.

著者: 笠井剛 ,   平田修司 ,   星和彦

ページ範囲:P.545 - P.547

[1]はじめに

 ヒトの精子の凍結保存は,実験的には1776年1)にまでさかのぼるといわれているが,実際に臨床応用されたのは,凍結保護剤としてグリセロールが使われるようになった後で1953年のBunge and Sherman2)のAID(artificial insemination with donor sperm)による報告が最初である.本邦でも,1958年飯塚らにより,凍結保存精子によるAIDの成功例が報告されている3).以後,精子の凍結保存は,AIDにおいて精子の供給に用いられてきた.しかし,1990年代に入り補助生殖医療の進歩に伴い,重症乏精子症に対し,顕微授精を行うことを前提として,数少ない妊娠可能な精子を確実に保存するために精子の凍結が普及するようになった.さらに精巣生検などで得られた少数の貴重な精子を確実に保存する必要性が高まってきている.

68.精子性状が不良な場合の精子蘇生率を上げる工夫について教えてください.

著者: 笠井剛 ,   平田修司 ,   星和彦

ページ範囲:P.549 - P.551

[1]はじめに

 ヒトの精子は,哺乳動物のなかで最も凍結・融解に強いといわれているが,凍結によって精子は少なからず損傷を受ける.それには細胞膜の流動性の消失による細胞膜の機能低下,酸化ストレスの影響,DNAのfragmentationの増加,細胞骨格の変化などが関与している.これらの影響の結果,融解精子は運動率や精子運動速度の低下を起こす.

II 不妊の治療 D生殖補助医療(ART) 【調節卵巣刺激法】

69.現時点で最適と考えられる調節卵巣刺激法について教えてください.

著者: 福井淳史 ,   藤井俊策 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.552 - P.554

 体外受精・胚移植(IVF─ET)を施行する際には複数の成熟卵胞を得ることが必要で,そのためにhMG製剤やrhFSH製剤による卵巣刺激が行われている.しかし,卵胞の発育に伴い大量のエストロゲン分泌が起こるために,そのポジティブフィードバック作用により内因性のLH分泌が誘発され,採卵前の排卵や卵の質の低下など,IVF─ETの成績を著しく低下させてしまう.したがって,内因性のLH分泌をいかに抑制できるかは,IVF─ETの成績を向上するための必須の要件であり,その方法としてGnRHアゴニストやアンタゴニストが応用されている.欧米ではGnRHアンタゴニスト法が普及しており,アゴニストとほぼ同数に施行されている1)が,GnRHアンタゴニストの導入が遅れたわが国では,アゴニストを用いた排卵誘発法がいまだに一般的であり,本稿ではGnRHアゴニストを用いた排卵誘発法を中心に解説する(GnRHアンタゴニストについては別項で述べられているので,そちらを参照されたい).

 GnRHアゴニストは下垂体に直接作用し,GnRH受容体をダウンレギュレーションすることにより,下垂体からのゴナドトロピン放出を抑制する.しかし,ダウンレギュレーションが完成するまでには数日かかり,その間下垂体からはいわゆるflare─upと呼ばれる一過性のゴナドトロピンの放出が起こる.これは卵胞発育を刺激するので,このflareを避けるか,あるいは利用するかにより排卵誘発法は,long法,short法と大きく2つに分けられる.

70.ゴナドトロピン反応不良例への調節卵巣刺激法について教えてください.

著者: 福井淳史 ,   藤井俊策 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.555 - P.557

 最近の平均初婚年齢および初産年齢の上昇に伴い,挙児希望年齢も高まりをみせている.さらに第二次ベビーブーム世代が30歳台後半を迎える現在,比較的高齢になってから挙児希望を主訴に訪れるカップルが増加している.妊孕能は30歳頃から次第に低下することが知られており,35~40歳をすぎると急激に低下し,一般には41歳が妊孕性の終了時期と考えられる1).このような患者においては卵巣の反応性も低下していることが多く,排卵誘発治療に苦慮することも多い.また,若年者においても排卵に至るまでに非常に多量のhMG製剤を必要とするものや,きわめて少数の卵胞発育しか認められない,いわゆるpoor responderが存在しており,これらの症例の卵巣予備能を知ることが反応性を予測するうえで有用である.

71.GnRHアンタゴニストを用いた調節卵巣刺激の実際と長所および短所について教えてください.

著者: 福井淳史 ,   藤井俊策 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.558 - P.560

[1]GnRHアンタゴニスト法の実際

 体外受精・胚移植(IVF─ET)を施行する際には,複数の成熟卵子を得るためにhMG製剤やrhFSH製剤による卵巣刺激が行われている.しかし,卵巣刺激の際にpremature LHサージが起こってしまうと,採卵前に排卵してしまったり,卵の質が低下してしまったりして,IVF─ETの成績低下を招いてしまう.このpremature LHサージを防止するためにGnRHアゴニストやGnRHアンタゴニストが用いられる.

 GnRHアンタゴニストは,GnRHアゴニストと異なりゴナドトロピンのflare─upがなく,また直接下垂体を抑制するので,短時間で迅速に作用させることが可能である.GnRHアンタゴニストには四世代あり,第一世代はヒスタミン遊離作用が強く臨床応用には至らなかった.現在臨床に用いられている製剤は第三世代のcetrorelixとganirelixであり,本邦で使用可能なGnRHアンタゴニストは2006年に発売となったcetrorelix(セトロタイド®)である.

【採卵】

72.卵を採取するためのコツについて,詳しく教えてください.

著者: 吉田英宗

ページ範囲:P.561 - P.563

[1]はじめに

 採卵は,体外受精の治療過程において唯一侵襲的な治療行為である.事実血管損傷,他臓器損傷などの合併症の可能性はゼロではない.つまり一言でいうならば,採卵はいかに安全にかつ発育した大切な卵を効率よく回収するかが重要である.実際には各施設でさまざまな工夫を凝らしていると思われるので,この稿では当院(吉田レディースクリニック)で行っている採卵を紹介する.

73.採卵後に付属器膿瘍をきたした既往のある患者です.このような例に対する予防策や待機期間について教えてください.

著者: 吉田英宗

ページ範囲:P.564 - P.565

[1]はじめに

 子宮内膜症性卵巣嚢腫あるいは粘度の高い卵巣嚢腫を採卵時に穿刺すると感染のリスクが高いことが知られている.幸いなことに筆者自身は経験がない.そのため本稿では,報告を基にしながら筆者の私見を交え,解説する.

【体外受精および培養】

74.卵子は採取されるものの,胚盤胞まで到達するものがありません.次回はどのように対処すべきか教えてください.

著者: 吉田英宗

ページ範囲:P.567 - P.569

[1]はじめに

 臨床上,数回ARTを施行しても良好胚盤胞がまったく得られない症例にもたびたび遭遇する.

 胚の発生過程では,受精後,通常11~18時間後に前核が確認できるようになり,第1卵割周期は約30時間持続する.卵割が順調であれば受精後2日で2~4細胞,3日で8細胞期となる.Compactionは8細胞期以降に起き,拡張期胚盤胞は5日目以降で認められる.通常ヒトでは受精卵の胚盤胞到達率は約50%であり,その発生停止の原因は胚の染色体異常,または卵子形成過程の異常による卵子発生能低下などであると考えられている.連続して胚盤胞に到達しない症例には,高齢者,低反応者,子宮内膜症患者,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)症例に多くみられるが,若年の原因不明症例も存在する.おのおのの症例において,低下した卵子発生能を回復させること,現在リザーブしている卵そのものの質を改善することは困難であり,治療も非常に困難をきわめる.臨床の場でできることは,患者が現在保有している卵子の状態をいかに低下させずに,卵子発育をはかれるかという一点であろう.画一的治療法では困難と思われるが,高齢者および低反応者,子宮内膜症症例,PCOS症例についての当院の排卵誘発法について述べる.

【顕微授精】

75.ICSIする際の精子の選別について詳しく教えてください.

著者: 蔵本武志 ,   江頭昭義

ページ範囲:P.571 - P.573

[1]はじめに

 近年,生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)を用いて妊娠出産にいたる患者数は急速に伸び,わが国の出生児の約56人に1人は体外受精児である.培養システムの向上にしたがい,高い着床率が報告される胚盤胞移植が導入され,多胎防止の観点から最近では単一胚盤胞移植(single blastocyst transfer:SBT)も積極的に行われている1).しかし,体外受精(in vitro fertilization:IVF)と比較して顕微授精(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)では胚盤胞形成率が低いことも報告2)されており,ART技術が向上するにしたがい,直接卵子に精子を注入するICSIでは,よりDNAの損傷の少ない質の高い精子を選別する重要性が増した.ここでは良好な受精卵を得るために基本となるICSI時の精子選択方法について紹介する.

76.Rescue ICSIについて詳しく教えてください.

著者: 蔵本武志 ,   江頭昭義

ページ範囲:P.575 - P.577

[1]はじめに

 体外受精(in vitro fertilization:IVF)において,まったく受精しない受精障害が約5~20%存在する.この受精障害の原因としては,精子機能異常や精液所見が不良などの精子側因子と卵子機能異常や卵巣刺激により成熟卵が採取できていないなど,卵子側因子が考えられる.患者にとって,卵巣刺激法を用いてIVF行ったにもかかわらず,まったく受精しないことは,経済的だけではなく肉体的・精神的にも大きな負担となるのは明らかである.

 そのため,IVFでの受精障害を回避する方法としては,

 1)Split ICSI:採卵した卵子を分けてIVFとICSIを同日に実施する方法

 2)Rescue ICSI:IVF後の未受精卵にICSIする方法

 がある.

 この項では主にrescue ICSIについて述べる.

【胚移植】

77.二段階胚移植について教えてください.

著者: 栁田薫

ページ範囲:P.578 - P.579

 良好胚を移植しているにもかかわらず,妊娠に至らない反復不成功例が存在する.いわゆる着床不全であり,よい対策がなく苦慮しているのが現状である.現在までにこのような着床不全に対して考えられた方法は,胚を卵管に移植する受精卵卵管内移植法(zygote intrafallopian transfer:ZIFT),アシステッドハッチング,胚移植時にフィブリン糊やヒアルロン酸の使用,子宮内膜への機械的刺激,二段階胚移植法,子宮内膜刺激胚移植法(stimulation of endometrium embryo transfer:SEET)などである.

 着床現象は胚と子宮内膜のクロストーク(相互応答)により成立すると考えられている.胚が子宮内膜上皮に接着すること,子宮内膜上皮下に浸潤していくことは,種々の接着因子,サイトカインおよびリガンドが関与し,相互的に作用し合って着床過程を進行させる.二段階胚移植は媒精後2日目(day2)に胚移植を行い,さらに5日目(day5)にも得られた胚盤胞を移植する方法である1, 2).はじめに移植された胚が子宮内膜とのクロストークを介して,着床環境としての子宮内膜の形成を修飾する.その結果,その次に移植された胚盤胞の着床率が増加することを期待するものである.また,子宮内膜の胚受容能の観点から考えると,胚受容能が最も高くなる時期(implantation window)については十分に把握されていないのが現状で,良好胚を移植しても妊娠に至らないことが繰り返し起こる場合には,子宮内膜の胚受容能が良好な時期に移植していないことが考えられる.そのような場合にも,二段階胚移植は有効と考えられる.

78.子宮内膜刺激胚移植法について教えてください.

著者: 栁田薫

ページ範囲:P.580 - P.581

[1]はじめに

 子宮内膜刺激胚移植法(stimulation of endometrium embryo transfer:SEET)は,2007年にGotoら1, 2)によって発表された胚移植法である.胚は着床までの間,子宮側の胚受容能を発現させる,あるいは高める胚因子を産生していると考えられている.通常のday2やday3での胚移植法では,移植後に初期胚から胚盤胞まで発生する間,子宮内に胚因子が作用していることが考えられる.現在,成績の向上を目指した方法に胚盤胞移植があるが,実地臨床での胚盤胞移植の成績はせいぜい40%を超える程度で,良好胚を選別している割には顕著な有効性を示しているとはいい難いのが現状である.しかし,胚盤胞移植では子宮内膜への情報提供がない状態で,いきなり胚盤胞期胚が移植されていることになり,ここに問題点がある可能性がある.そこで,胚の培養液上清の少量を胚移植の前に子宮内に注入しておく方法が考えられた.

【黄体補充】

79.プロゲステロンの投与経路には,経口投与,筋肉注射,腟坐剤投与の3つがあります.これらの使い分けについて教えてください.

著者: 原田省

ページ範囲:P.582 - P.583

[1]はじめに

 プロゲステロン(P)の投与経路としては,経口投与,筋肉注射,腟坐剤の3種類があり,それぞれに特徴を有する.

80.体外受精時の黄体補充の方法について教えてください.注射以外の方法でも問題ないのでしょうか.

著者: 原田省

ページ範囲:P.584 - P.584

 体外受精・胚移植周期においては,大多数の例でGnRHアゴニストが用いられている.したがって,下垂体からのLH分泌は抑制されており,黄体機能低下が懸念される.GnRHアンタゴニストの場合についても使用期間はアゴニストに比較して短いが,下垂体機能抑制による黄体機能不全への対策を必要とする.Human chorionic gonadotropin(hCG)は黄体賦活のために用いられるが,補充療法とは異なるのでここでは触れない.

 プロゲステロン(P)の投与経路は前述のように,経口投与,筋肉注射,腟坐剤の3種類がある.PrittsとAtwood1)によるメタアナライシスでは,Pの筋肉注射と腟坐剤が比較された5つの無作為化比較試験が取り上げられている.合計で891例のART周期の検討では,Pの筋肉注射は腟坐剤に比較して有意に妊娠率が高かった.しかしながら,筋肉注射は油性製剤であることから疼痛が強く,発赤などの副作用もあり,頻回の投与は敬遠されている.

81.ART周期の黄体補充に関して,近年,子宮内膜症に適応となったディナゲスト®を応用できる可能性はありますか.詳しく教えてください.

著者: 原田省

ページ範囲:P.585 - P.585

 ディナゲスト®(ジエノゲスト)は,子宮内膜症治療薬として開発された新しい経口プロゲスチン製剤である.プロゲスチン療法は40年以上の歴史をもつ子宮内膜症の治療法であるが,本邦では有用な薬剤が市販されていなかったため,一般的な治療法とならなかった.ジエノゲストは,旧東ドイツのイエナファーマ社で開発された19─ノルテストステロンの誘導体である.17α位にシアノメチル基,9位と10位の炭素の間に二重結合が導入され,経口投与により強いプロゲステロン作用を有し,アンドロゲン作用や肝機能障害が少ない.ステロイドホルモン作用を,転写活性促進作用を指標としてみると,プロゲステロン受容体のみを活性化し,グルココルチコイド,ミネラルコルチコイド,エストロゲン受容体には反応せず,抗アンドロゲン作用を有することが示されている.したがって,プロゲステロン以外のホルモン作用がないことから副作用も少ない.

 子宮内膜症患者に2mg/日で24週間投与されると,内膜症病変の縮小や消失が観察され,同時に月経痛や骨盤痛が軽減されることが示されている1).本邦での臨床試験成績でも,子宮内膜症の月経痛や子宮可動性の制限などの自他覚所見が対照薬であるスプレキュア®と同等に改善することが示された2)

 ジエノゲストを14日間反復経口投与して子宮内膜の分泌期様変化を検討すると,0.45mg/日の投与で完全な分泌期様変化が誘導され,このときの総投与量から比較すると,ノルエチステロンや酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)に比して約10~20倍の活性を有する.したがって,経口投与で子宮内膜に対する作用がきわめて強いことがわかる.

【胚凍結】

82.胚凍結の問題点および注意事項について教えてください.

著者: 向田哲規

ページ範囲:P.586 - P.587

[1]はじめに

 ヒト生殖補助医療(ART)において,余剰胚の凍結保存は重要な治療技術の1つであり,現在ではさまざまな凍結法が臨床的に用いられている.その理由としては,体外受精で得られた胚のうち,新鮮な胚を移植した後の余剰胚を凍結保存しておくことにより,採卵周期の胚移植で妊娠が成立しなかった場合でも,その後の周期で融解後の生存胚を移植することにより,妊娠が可能となるためである.そのうえ凍結胚の利用により,採卵を毎回行う必要がないことから,患者の負担が軽減され,採卵周期当たりの妊娠率を向上させることができる.また,1回の移植胚数を減らすことで多胎の防止にも役立ち,子宮内環境不良や卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)の発症・増悪が考慮される場合など,新鮮胚を移植することが不適当な場合では,すべての胚を凍結保存し,その後の自然周期,または子宮内膜作成周期で移植することも可能である.

 細胞を低温保存(凍結する)際の方法の基本は,①細胞傷害を起こす細胞内氷晶形成をどのように防ぐかと,②そのため脱水過程で細胞内へ浸透する耐凍剤による細胞毒性をいかに少なくするかである.現在,①比較的低濃度の耐凍剤と平衡化させながら徐々に温度を低下させる緩慢凍結法と,②高濃度の耐凍剤と平衡化させ,急激な温度低下により氷晶形成を生じさせず固化した状態にするガラス化法がある1)

 これらの方法を用いて,卵や胚を低温保存(凍結保存)する際の問題点や注意事項には,次に挙げる低温保存の原理とそれゆえ起こる傷害と密接な関係があるので,1つずつ列記する.

 基本的に細胞をその生存性を損なうことなく低温保存するには,液体が固化(ガラス化)する温度である-130℃以下に保つ必要があり,このために用いられるのが液体窒素(-196℃)である.細胞はこの低温保存状態において受ける傷害以外に,温度を低下させる脱水過程,融解のため上昇する加水過程においても次に述べるようなさまざまな傷害を受ける.精子のような小型の浮遊細胞は,比較的低濃度の耐凍剤(cryoprotective agent:CPA)を加えて,そのまま低温の液体窒素の気相に放置することによって凍結保存することができる.しかし,卵や胚は細胞サイズが大きく含まれる水分量が多いので,次に示すような種々の傷害が起こる得るため,このような方法を用いることはできない.

83.胚盤胞凍結の際にAH(透明帯補助孵化法)を行う方法があると聞きました.その有用性について教えてください.

著者: 向田哲規

ページ範囲:P.588 - P.590

 凍結胚移植は,融解後生存した胚を,自然排卵周期か外因性のエストロゲン・プロゲステロン剤投与による子宮内膜作成周期で移植することにより,採卵周期のような卵巣過刺激による子宮内膜とは違った環境下に移植できるという利点がある.そして,胚盤胞に達した胚のみ低温保存し,融解後生存した胚を移植できる融解胚盤胞移植法は,胚の質的診断がより正確となるため,従来の分割胚の凍結融解胚移植の妊娠率よりよい結果となっている.しかしながら,凍結融解という人工的手技に起因する融解胚移植の着床不全の原因の1つである透明帯の硬化による孵化不全が影響する可能性がある.

 一般的に透明帯は,媒精,人工的な培養環境によって変化を起こし,硬化する可能性があると報告されており,特に凍結融解過程は,耐凍剤への曝露,冷却(脱水)過程,LN2への曝露,LN2内での長期保存,加温(加水)過程などによって,さらに透明帯が硬化することが知られており,初期分割胚を融解後胚移植する際にAHを施行することで有意な着床率の向上が報告されている1).このため,ガラス化胚盤胞融解移植法においても,同様な機序により透明帯の硬化を生じ,孵化(hatching)が妨げられる可能性がある.

84.体外受精治療で胚盤胞の融解胚移植を行うには,自然周期ではいつがよいか教えてください.また,その指標には何が最適ですか.

著者: 福田愛作

ページ範囲:P.591 - P.593

[1]はじめに

 近年,生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)が不妊治療の主流となるとともに多胎妊娠の増加が社会問題化してきている.本邦においても,単一胚移植が35歳以下の患者に求められるようになり,結果として凍結保存技術は不妊専門施設においては必要不可欠のものとなった.当初は胚移植後の余剰胚の保存が主たる目的であった凍結保存技術が,余剰胚の凍結のみならず,卵巣過剰刺激症候群の増悪を予防するための前核期受精卵の全面凍結や多胎予防のための単一移植後の余剰胚の凍結にも広く用いられるようになってきている.凍結保存の必要性が増加すると同時に新しい凍結保存法であるvitrificationの技術がわが国で発展し,世界の凍結法を変えるまでに至っている1).ここへきて胚盤胞までの培養液の進化と相まって胚盤胞単一移植法が拡がりをみせ,胚盤胞vitrification凍結が飛躍的に増加している.この凍結胚盤胞をいかにして自然周期で融解胚移植を行えばよいかを,自験例をもとに解説する.

【IVM】

85.IVM─IVFで成果を上げている施設があるようですが,この方法の問題点について教えてください.

著者: 福田愛作

ページ範囲:P.594 - P.599

[1]はじめに

 未熟卵体外成熟─体外受精─胚移植法(in vitro matulation, in vitro fertilization and embryo─transfer:IVM─IVF)は,無刺激もしくは少量FSH/HMGを投与した卵巣の小卵胞より未成熟卵を採取し,体外成熟卵から得られた受精卵を子宮内に移植する方法である.IVM─IVFの臨床応用は,1991年に未熟卵由来胚がドナー胚として用いられたのに始まり1),1994年には多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)患者に不妊治療の一環として初めて用いられた2).最大の利点は,卵巣刺激をほとんど,もしくはまったく行わないため,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)の危険性がないことである.また,注射に伴う肉体的,精神的苦痛,さらには時間的制約,経済的負担軽減につながる.IVM─IVF妊娠率はIVF─ETに比べ低いといわれてきたが,世界的にみてもその妊娠率は徐々に上昇してきている3~6).PCOS症例ばかりでなく,正常月経周期婦人や体外受精反復不成功例にも応用され,成果を挙げている7, 8).われわれは,本邦初の成功以来9, 10)方法に改善を重ね,現在ではIVFに匹敵する妊娠率を達成し,PCOSおよびPCO症例に対してARTの第一選択としている.本稿では,PCOS(PCO症例を含む)に対するIVM─IVFの方法と成績を提示するとともに,各工程における問題点を取り上げた.

【着床前診断】

86.着床前診断適応と生検法のコツについて教えてください.

著者: 末岡浩

ページ範囲:P.600 - P.603

[1]はじめに

 生殖医学と遺伝学の発展に基づき,その融合分野の新たな医療技術として,着床前診断(preimplantation genetic diagnosis:PGD)の概念が発生した1).本邦における実施については技術的問題のみならず,倫理議論のハードルを超えて2005年から実施に至っている.この前段階として,日本産科婦人科学会が1998年10月にわが国のガイドラインを発表するに至った.特に適応については,多くの議論がなされ,現在なお1例ずつの倫理審査のなかで検討されている.実施するうえで重要なポイントとなる適応と生検法について解説する.

【その他のART】

87.精子細胞を用いた治療について教えてください.

著者: 田中温

ページ範囲:P.605 - P.607

[1]精子細胞を用いた顕微授精の適応

 精巣精子抽出法(testicular sperm extraction:TESE)で精子が認められず,最も発達した生殖細胞が精子細胞である場合,または精巣内精子がわずかに認められるが,その形態が奇形であったり,生存性のない不動精子だった場合,または運動性は多少認めても,精子頭部に形態的な異常を認めた場合には,そのような精巣内精子を使わずに,成熟段階上一歩手前の精子細胞を用いたほうが受精率,その後の胚発生率は高くなる1).無精子症の約20~30%がこの精子細胞を用いる治療の適応となる.

88.孵化促進法(assisted hatching)の有効性について教えてください.

著者: 矢野浩史

ページ範囲:P.609 - P.613

[1]はじめに

 良好胚を移植しても着床しない原因の1つとして,胚のハッチング(孵化)障害が考えられている.卵管内で受精した卵子は,分割を繰り返して胚盤胞となり子宮に到達する.透明帯は胚の発育増大に伴い,内部の静水圧上昇や融解酵素などにより伸展菲薄化され,胚盤胞の収縮,拡張運動の活発化により透明帯に亀裂が生じてハッチングする.一方,透明帯は加齢とともに変性し,透明帯の硬化(zona hardening)などの質的変化が起こるといわれている1).生殖補助技術(assisted reproductive technology:ART)により得られた胚では,加齢と同様な変化が透明帯に起こり,ハッチング障害の原因となっていることが示唆されている2).孵化促進法(assisted hatching)とは,このように変化した胚の透明帯を切開あるいは菲薄するなどの処置を施してハッチングを補助し,移植胚の着床率改善を目的とする技術である.孵化促進法は従来,機械的方法および化学的方法により行われてきた.機械的方法ではマイクロガラスピペットや金属メスにより透明帯が切開(zona dissection)2)され,化学的方法では酸性タイロード(acid Tyrode)などの強酸性薬剤あるいはプロナーゼ(pronase)などの酵素薬剤により透明帯を開孔(zona opening)3),菲薄(zona thinning)4, 5)あるいは溶解(zona removal, free)6)される.しかしながら,機械的方法および化学的方法では個々の透明帯性状の相違やエンブリオロジストによる技術差などから均一に処理することは困難であり,マニピュレーターのセッティングや操作の煩雑さあるいは薬剤による胚への影響などの問題点も多い.最近,これらが解決される半導体レーザー(1.48μm diode laser)を使用したレーザー法(laser assisted hatching:LAH)が普及してきた.本稿では,LAHを紹介し,孵化促進法の有効性について述べる.

II 不妊の治療 E男性因子に対する治療 【薬物療法】

89.男性不妊症に用いられる薬物療法の具体的投与方法について教えてください.また,有効性に関するエビデンスはありますか.

著者: 松下知彦 ,   岩本晃明

ページ範囲:P.615 - P.617

[1]はじめに

 男性不妊症にはさまざまな原因があり,また原因不明のことも多い.そのため原因に応じた特異的な治療ができるとは限らない.例えば特発性造精機能障害の薬物療法には有意に精液所見が改善したとの報告は散見されるのみであり,経験的に使用されているにすぎない薬物療法である.

 本稿では男性不妊症に用いられている薬物療法について適応と投与具体例,注意点について概要を述べる.

【精索静脈瘤根治術】

90.精索静脈瘤の程度と造精障害や精液所見が必ずしも一致しないのはなぜですか.わかりやすく教えてください.

著者: 松下知彦 ,   岩本晃明

ページ範囲:P.618 - P.619

[1]精索静脈瘤と造精機能障害

 精索静脈瘤とは精索内の蔓状静脈叢が怒張,鬱血した状態である.そのため精巣内温度が上昇し,造精機能障害が発生し,精液所見の悪化の原因となるとされている.

 その他の原因として腎や副腎よりの静脈血中の代謝物質(カテコールアミン,レニン,コルチゾールなど)の逆流によって内精索静脈中にプロスタグランディンやセロトニンの濃度が上昇し,これらの物質よる障害が起きるとする説,精索静脈内の鬱血のため低酸素状態に陥り造精機能に影響するという説もある1)

【精巣内精子採取術】

91.Conventional TESEとmicrodissection TESEの適応と方法,使い分けについて教えてください.

著者: 岡田弘

ページ範囲:P.621 - P.623

 精巣内採取術(testicular sperm extraction:TESE)は,射精液中に精子の認められない無精子症や射精障害の患者に対して,精子を獲得する手段として行われる.この結果得られた精巣精子は受精能がないため,通常の体外受精では用いることができず,すべて顕微授精(ICSI)に供されることになる.したがって,TESE─ICSIで1つの完結したARTの治療単位である.

 無精子症は,精路閉塞がその原因である閉塞性無精子症(obstructive azoospermia:OA)と精子形成障害が原因である非閉塞性無精子症(nonobstructive azoospemia:NOA)に分けられる.OAの治療の第一選択は,精路再建であるが,精管欠損や閉塞距離が長いため再建不可能な場合には,TESEないしは顕微鏡下精巣上体管精子吸引術(microsurgical epidydimal sperm aspiration:MESA)が行われる.TESEに比較してMESEのほうが運動精子を多数獲得できるため,施設によってはOAに対してはMESAを行っている場合もあるが,採取された精巣上体液中に白血球の混入が多いことや,顕微鏡手術(microsurgery)の技術が必要であることや術後の疼痛がTESEよりも強いことから,多くの施設ではTESEが行われている.

92.採取された精巣組織からの効率的な精巣内精子保存法について教えてください.

著者: 岡田弘

ページ範囲:P.624 - P.625

[1]背 景

 精子凍結保存の歴史は古く,特に哺乳動物精子の凍結保存は,人工授精による品種改良を目的として畜産を中心に行われていた.この過程で,凍結保存液と凍結機械の改良が行われた.細胞の凍結保存は,細胞質内に凍結過程で形成される氷による細胞傷害をいかに克服するかが問題であった.哺乳動物の精子のなかで,ヒト精子は最も細胞質が少なく,凍結保存時の氷による細胞傷害が少ないため,不妊治療に対する臨床応用(人工授精)を目的として,商業ベースでその方法に改良が加えられてきた.最初の報告は,1953年のBunge and Shermanによってなされた1).本邦では,1958年飯塚ら2)によって,ヒト凍結保存精子による人工授精の報告がなされたのが,臨床応用の最初の報告である.

 精子凍結保存は,射出精子がその対象であったが,近年の生殖補助技術(assisted reproductive technology:ART)の進歩とともに,精巣精子を対象とする機会が増加している.特に,非閉塞性無精子症患者(nonobstructive azoospermia:NOA)では,顕微鏡下精巣精子採取術(microdissection testicular sperm extraction:MD─TESE)の進歩により,50%前後の確率で精子回収が可能となった([91]参照).しかしながら,約半数の症例で精子回収が不能であることから,採卵とMD─TESEを同日に行うと精子回収ができずに採卵が無駄になることを避けるために,まずMD─TESEを行い回収した精巣精子を凍結保存し,これを後日顕微授精(ICIS)に用いるTESE─ICSIがNOAの治療法の主流になっている.

III 不育症の検査・診断 A遺伝因子 【染色体異常】

93.染色体異常と不育症との関連について教えてください.また,不育症カップルの染色体検査の至適時期はいつでしょうか.

著者: 山本樹生

ページ範囲:P.626 - P.627

[1]不育症の原因としての染色体異常の頻度

 Coulamは,不育症の原因として,ホルモン異常29%,子宮の器質的異常10%, 胎児の染色体異常6%,免疫異常40%,不明15%を,牧野ら1)は,内分泌異常10%,子宮内腔異常15%,染色体異常10%,自己抗体20%,不明45%とし,杉浦2)らは染色体異常は22.5%としており,報告により多少違いがある.

 しかし,杉浦ら2)の流産回数による反復流産の染色体異常の検討によると,流産回数が増えるにつれて染色体異常が減少するが,2~4回の流産ではまだ50%以上の染色体異常があるとしている.このため,2~4回の反復流産では,自然流産の染色体異常の頻度に比し,染色体異常はかなり少ないとの考えを訂正する必要がある.

III 不育症の検査・診断 B免疫因子 【抗リン脂質抗体】

94.抗リン脂質抗体症候群の診断基準について教えてください.また,不育症の原因となる抗リン脂質抗体のなかで,関与の大きいものは何でしょうか.

著者: 山本樹生 ,   青木洋一 ,   中村晃和

ページ範囲:P.629 - P.631

[1]抗リン脂質抗体の種類

 抗リン脂質抗体は,リン脂質に対する自己抗体のみではなく,リン脂質に結合するβ2─グリコプロテイン─I(GPI),プロトロンビン,キニノーゲンなどの分子に対する抗体からなる.抗リン脂質抗体としては,抗カルジオリピン抗体,抗CL/β2─GPI抗体,抗フォスファチジルセリン抗体,抗フォスファチジルエタノールアミン抗体,ループスアンチコアグラントなどが知られている(表1).その1つである抗CL/β2─GPI抗体はカルジオリピンにもβ2─GPIにも結合せず,カルジオリピンに結合したβ2─GPIの新しい抗原結合部位に結合する抗体で血栓症などの病態との関連性が高く病原性が強い.

III 不育症の検査・診断 C子宮因子 【子宮奇形】

95.中隔子宮と双角子宮の鑑別診断法について教えてください.

著者: 宮川智幸

ページ範囲:P.632 - P.633

 子宮奇形が本当に不育症の原因になっているかどうかを診断することは,必ずしも容易ではない.正常な経産婦における子宮奇形の頻度は明らかではないが,不育症の患者での子宮奇形の頻度は9.0%と報告されている1).不育症患者で見つかる子宮奇形のうち,中隔子宮が最も多く,双角子宮はむしろ珍しいといえる.

 中隔子宮(septate uterus)とは,子宮の外観は正常で,通常の子宮と変わらないが,線維性の隔壁で隔てられた2つの子宮内腔をもつものをいう.中隔が内子宮口まで達して,子宮内腔を完全に2つに隔てている完全型(complete,図1a),内腔の一部のみ中隔で隔てられている部分型(partial,図1b)に分けられる2)

【頸管無力症】

96.頸管無力症の診断基準・診断方法について教えてください.

著者: 宮川智幸

ページ範囲:P.634 - P.635

[1]はじめに

 頸管無力症(cervical insufficiency,cervical incompetence:CI)とは,「妊娠16週以降にみられる習慣流早産の原因の1つである.外出血とか子宮収縮などの,切迫流早産徴候を自覚しないにもかかわらず,子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態である」と定義されている1).しかし,誰もが認めるCIの明確な診断基準はなく,その診断方法も正確なものは存在しないのが現状である.従来,妊娠中期の流早産既往歴や子宮口開大・胎胞脱出などの内診所見をもって,臨床的にCIと診断していたが,早産予防は難しく,もっと早い段階での診断が望まれた.早産予知のために,経腟超音波検査による子宮頸部の評価が連続的・客観的に可能となり,切迫流早産徴候を伴わない頸管短縮例や内子宮口の開大(funneling)例を広義のCIに含めるようになった.CIの疾患概念そのものが変化し,必ずしも切迫流早産との鑑別は容易でなくなっている.

III 不育症の検査・診断 D内分泌・代謝因子 【内分泌・代謝異常】

97.生殖内分泌異常,甲状腺機能異常,糖尿病の検査の実際について教えてください.

著者: 竹下俊行

ページ範囲:P.636 - P.637

[1]はじめに

 内分泌代謝異常と不育症との関連は,古くから指摘されている.不育症の原因を特定するのは必ずしも容易ではないが,とりわけ内分泌代謝因子が単独で原因となっていることを指摘できる症例は少ない.ここでいう内分泌代謝異常のなかには,黄体機能不全,高LH血症,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS),高プロラクチン血症,甲状腺機能低下症・亢進症,糖尿病などが含まれる.

 日産婦生殖内分泌委員会(ヒト生殖のロス(習慣流産など)に対する臨床実態の調査小委員会 : 齋藤 滋小委員長)では,不育症の病態を明らかにするために推奨されるスクリーニング項目を列挙した1).そのうち,内分泌・代謝異常に関する項目は表1に示すとおりである.

98.不育症における甲状腺機能異常の病態について教えてください.本当に流産との関係はあるのでしょうか.

著者: 竹下俊行

ページ範囲:P.639 - P.641

[1]甲状腺ホルモンの直接的影響

 甲状腺ホルモンは,顆粒膜細胞,黄体,卵子に直接作用するので,その機能が損なわれれば卵巣機能に影響する.高度の甲状腺機能低下は,卵巣機能不全を惹起し,不妊の原因となる.軽度の甲状腺機能低下では,妊孕性は保たれるが,胎盤でのステロイド産生に支障をきたし,流産の原因となる.また,TRHが増加することにより,プロラクチンの上昇を招くのも不妊・不育の原因の1つである1)

 過剰な甲状腺ホルモンの妊孕性に及ぼす影響は,甲状腺ホルモン受容体の変異(TRβ:Arg243Gln)をもつ167名の分析から明らかになった.患者の甲状腺ホルモン,TSHは,きわめて高値であり,胎児は胎盤を通過した高濃度のTSHにさらされることになる.母親が罹患している場合の流産率は22.8%で,父親のみが罹患2.0%,対照群4.4%に比べ明らかに高率であった2)

 このように,甲状腺ホルモン自体が,妊孕性,妊娠維持に大きな影響をもっていることは明らかであるが,不育を主訴にして外来を受診する女性で,顕性甲状腺機能低下,亢進症を呈することは稀である.多くは,不育症原因検索スクリーニングを行って,初めて発見されるが,その程度は軽微である.

IV 不育症の治療 A手術療法 【頸管縫縮術】

99.予防的頸管縫縮術の適応と禁忌について教えてください.頸管縫縮術は本当に効果があるといえるのでしょうか?

著者: 髙木耕一郎

ページ範囲:P.643 - P.645

[1]頸管無力症の概念

 頸管無力症とは妊娠16週ごろ以後にみられる習慣流産の原因の1つであり,外出血や子宮収縮などの,切迫流産徴候を自覚しないにもかかわらず子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態であるとされている.歴史的には1850年台,欧米で月経困難症や不妊症に対して頸管切開による頸管拡張手術が行われていたが,その手術後の妊娠において流早産が起こることから,1955年,インドのムンバイの産婦人科医であるShirodkar1)が患者本人の大腿筋膜片を使って,内子宮口の高さで頸管を縫縮する手術を考案した.この報告では妊娠4~7か月に4回以上,流早産を繰り返した女性30例を対象としており,Shirodkarは習慣流産の原因として,頸管の括約筋が弱いものが95%を占め,残りの5%は子宮の低形成,ないし奇形であろうと考察した.続いて1957年にMcDonald2)が同様の症例70例を対象に,絹糸を用いた頸管縫縮術を考案して報告した.このように歴史的には外傷性と考えられる頸管無力症に対して頸管縫縮術が考案されたことは興味深い.頸管無力症の原因と診断ををそれぞれ表1,2に示す.

IV 不育症の治療 B薬物療法 【薬物療法】

100.抗リン脂質抗体症候群の薬物療法の開始時期,妊娠中の管理法,投与中止時期について具体的に教えてください.

著者: 髙木耕一郎

ページ範囲:P.647 - P.649

[1]背 景

 抗リン脂質抗体には,多種のリン脂質に対する抗体が含まれており,それらは血小板や血管内皮細胞を標的として,血栓症や流産,胎児死亡などを引き起こすと考えられている.したがって,血栓予防の目的で抗血小板作用を期待した低用量アスピリン療法が,抗リン脂質抗体症候群(anti─phospholipid antibody syndrome:APS)の治療に用いられてきた.抗リン脂質抗体と妊娠初期流産との関連については関連ありと考えられているが,低用量アスピリン(low dose aspirin:LDA)単独治療の有効性については否定的な意見が優勢である.これまでの検討において,現在提唱されているAPSの診断基準が満たされているものは少ないため,血栓症や流・死産歴などを考慮に入れて細分化したグループを対象とした個別的治療が提唱されている.まず,アスピリン療法の初期流産予防効果を検討する対象となるのは,必然的にワーファリンなどによる抗凝固療法の対象となる血栓症既往や全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)のように確立された別の治療法の対象となる例を除外した症例であろう.表11~8)に血栓症の既往やSLEがなく,反復する妊娠初期流産,または最低1回の胎児死亡をもつ女性における無作為対照試験のメタアナリシス結果を示す.無治療とLDAとを比較した研究はTulppalaら1)とPattisonら2)の研究であるが,前者はLDA群と無治療群ともに生産率は17%と低く,LDAの効果は認められなかったとする一方,後者では無治療群とLDA群ともに80~85%と高い生産率を示し,LDAの有効性を検討するまでもなく,これらの比較的リスクの低い群では治療の必要性がないことを示唆している.その他の検討は,LDAとLDA+ヘパリン療法との比較であり,Raiら6),Kutteh 8)はLDA単独での生産率が40%程度と低いのに対し,ヘパリンを併用することにより,それぞれ71%,80%への改善を認めたとしている.

 それぞれの検討において,症例数,APSの診断基準,使用された薬剤の投与量などの差があるためか,無治療でも予後の良好な例と,予後不良例とが混在していることが推察される.

IV 不育症の治療 C免疫療法 【免疫療法】

101.不育症患者の同種免疫異常の治療法として,夫リンパ球移植による免疫療法や,OK 432(ピシバニール)療法,ガンマグロブリン大量投与法などがあります.それぞれの位置づけ有効性,保険適用などについて教えてください.

著者: 藤井知行

ページ範囲:P.650 - P.651

[1]はじめに

 胎児の染色体の半数は父親由来である.したがって,胎児は父親の抗原を保有し,母体からみると(半)同種移植片であり,本来母体の移植免疫反応により拒絶されるはずである.しかし,実際は9か月間子宮内で生存,発育する.この現象には特殊な妊娠維持免疫反応(同種免疫反応)が働いているとされ,この破綻により不育症が生じる場合があると考えられている.同種免疫反応異常を示唆する検査所見として,白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)の夫婦間相同性や,母体ナチュラルキラー細胞の活性の高さなどが報告されているが,確定的なものは存在していない.したがって原因不明とされたもののなかに同種免疫異常による不育症が存在するとして,多くの場合,免疫療法が実施されている.なお,免疫療法が対象とする不育症は,主として,流産を反復する習慣流産である.また,すべての免疫療法に健康保険適用はない.

102.過去に出産歴のある患者(続発性の習慣流産)に対する免疫療法の適応について教えてください.また,抗核抗体などの自己抗体が陽性の場合も実施可能でしょうか.

著者: 藤井知行

ページ範囲:P.652 - P.652

 同種免疫異常は,患者が生来保有している異常であり,2次的に発症するものではないと考えられる.したがって生児を得たあとの続発性習慣流産は本来,免疫療法の対象とはならないと考えられるが,一部の施設では,治療対象とされ実施されている.また,夫リンパ球免疫療法の副作用は,皮内注射部位の発赤,腫脹や掻痒感,感染などであるが,患者に自己免疫異常が誘導されたとの報告もある.自己免疫異常を有する患者はそれ自身が習慣流産の大きな原因であり,また,上記副作用の危険も高いと考えられ,夫リンパ球免疫療法の対象とすべきではない.

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編集後記

著者: 岡井崇

ページ範囲:P.660 - P.660

〈社会の要請〉

 前号の編集後記に記した「スーパー母体搬送システム」の案が本日の東京都周産期医療協議会で了承され,協議会の決定として正式に都に報告される運びとなりました.ともにこのシステムの樹立を目指してきた日赤医療センターの杉本部長とは喜びを分かち合い,日大産婦人科の山本教授には深く感謝すると同時に,発案者として感慨ひとかたならぬ思いがしています.

 しかし,東京都では,一般救急医療の領域でも搬送困難事例は少なくなく,救急医療の担当者からはなぜ母体救命にだけ特別なシステムが必要なのかとの疑問を呈されてもおります.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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