文献詳細
今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 A女性因子に対する薬物療法 【ゴナドトロピン療法】
40.GnRHおよびゴナドトロピン律動投与法の有効性について,詳しく教えてください.
著者: 京野廣一1
所属機関: 1京野アートクリニック
ページ範囲:P.454 - P.455
文献概要
月経周期5日目よりFSH 150 IUを投与開始し,卵胞径が11mmになった時点でGnRH(ヒポクライン®)20μgを2時間に1回皮下投与するパルス療法に切り替える.卵胞径が18mmになった時点でhCGを5,000IU投与し排卵させた後,黄体期治療(高温相の2~3日目より2~3日ごとにhCG 3,000単位を3回)も行う.用いるポンプ(SP─31)を図1に示す.タバコの箱程度の大きさで,患者本人が刺入する.スカートで隠れるので外からは見えず,入浴の際はいったん抜いて,入浴後はまた刺入する.GnRH製剤1Aを1回溶くと大体1周期分(4~5日分)である.視床下部性排卵障害に対する治療成績(表1)2, 3)を示す.FSH─GnRHパルス療法では,20例43周期に実施して,発育卵胞数ほぼ1個,周期別排卵率88.3%,周期別妊娠率11.6%(5/43),多胎率0%, OHSS率0%の報告がある.それに対して,FSH通常法ではおのおの,4個,88.6%,18.2%(8/44),12.5%,40.9%,FSH低用量持続療法では,2個,80.0%,20.0%(5/25),0%,12.0%で,OHSS率が高い傾向にある.よりリスクの高い多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)(表2)2, 3)では,発育卵胞数は視床下部性の約2倍になる.排卵率,妊娠率では三者に大きな差はない.
FSH─GnRHパルス療法では,多胎率は0で,OHSSは約13%発生しているが,FSH低用量持続療法(25%)や通常法(43%)に比べて有意に低値である2).ただし,現状の日本ではポンプが入手困難であることや保険適用でないのでこの方法は難しいと思われる.
参考文献
掲載誌情報