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今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス III 不育症の検査・診断 D内分泌・代謝因子 【内分泌・代謝異常】
98.不育症における甲状腺機能異常の病態について教えてください.本当に流産との関係はあるのでしょうか.
著者: 竹下俊行1
所属機関: 1日本医科大学産婦人科学教室
ページ範囲:P.639 - P.641
文献購入ページに移動[1]甲状腺ホルモンの直接的影響
甲状腺ホルモンは,顆粒膜細胞,黄体,卵子に直接作用するので,その機能が損なわれれば卵巣機能に影響する.高度の甲状腺機能低下は,卵巣機能不全を惹起し,不妊の原因となる.軽度の甲状腺機能低下では,妊孕性は保たれるが,胎盤でのステロイド産生に支障をきたし,流産の原因となる.また,TRHが増加することにより,プロラクチンの上昇を招くのも不妊・不育の原因の1つである1).
過剰な甲状腺ホルモンの妊孕性に及ぼす影響は,甲状腺ホルモン受容体の変異(TRβ:Arg243Gln)をもつ167名の分析から明らかになった.患者の甲状腺ホルモン,TSHは,きわめて高値であり,胎児は胎盤を通過した高濃度のTSHにさらされることになる.母親が罹患している場合の流産率は22.8%で,父親のみが罹患2.0%,対照群4.4%に比べ明らかに高率であった2).
このように,甲状腺ホルモン自体が,妊孕性,妊娠維持に大きな影響をもっていることは明らかであるが,不育を主訴にして外来を受診する女性で,顕性甲状腺機能低下,亢進症を呈することは稀である.多くは,不育症原因検索スクリーニングを行って,初めて発見されるが,その程度は軽微である.
甲状腺ホルモンは,顆粒膜細胞,黄体,卵子に直接作用するので,その機能が損なわれれば卵巣機能に影響する.高度の甲状腺機能低下は,卵巣機能不全を惹起し,不妊の原因となる.軽度の甲状腺機能低下では,妊孕性は保たれるが,胎盤でのステロイド産生に支障をきたし,流産の原因となる.また,TRHが増加することにより,プロラクチンの上昇を招くのも不妊・不育の原因の1つである1).
過剰な甲状腺ホルモンの妊孕性に及ぼす影響は,甲状腺ホルモン受容体の変異(TRβ:Arg243Gln)をもつ167名の分析から明らかになった.患者の甲状腺ホルモン,TSHは,きわめて高値であり,胎児は胎盤を通過した高濃度のTSHにさらされることになる.母親が罹患している場合の流産率は22.8%で,父親のみが罹患2.0%,対照群4.4%に比べ明らかに高率であった2).
このように,甲状腺ホルモン自体が,妊孕性,妊娠維持に大きな影響をもっていることは明らかであるが,不育を主訴にして外来を受診する女性で,顕性甲状腺機能低下,亢進症を呈することは稀である.多くは,不育症原因検索スクリーニングを行って,初めて発見されるが,その程度は軽微である.
参考文献
1) Krassas GE, Pontikides N, Kaltsas T, et al : Disturbances of menstruation in hypothyroidism. Clin Endocrinol 50 : 655─659, 1999
2) Anselmo J, Cao D, Karrison T, Weiss RE, et al : Fetal loss associated with excess thyroid hormone exposure. JAMA 292 : 691─695, 2004
3) Stagnaro─Green A, Roman SH, Cobin RH, et al : Detection of at─risk pregnancy by means of highly sensitive assays for thyroid autoantibodies. JAMA 264 : 1422─1425, 1990
4) Prummel MF, Wiersinga WM : Thyroid autoimmunity and miscarriage. Eur J Endocrinol 150 : 751─755, 2004
5) Poppe K, Velkeniers B, Glinoer D : The role of thyroid autoimmunity in fertility and pregnancy. Nat Clin Pract Endocrinol Metab 4 : 394─405, 2008
6) Reznikoff─Etievant MF, Cayol V, Zou GM, et al : Habitual abortions in 678 healthy patients : investigation and prevention. Hum Reprod 14 : 2106─2109, 1999
7) Glinoer D : (Editorial)Thyroid immunity, thyroid dysfunction, and the risk of miscarriage. Am J Reprod Immunol 43 : 202─203, 2000
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