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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科63巻6号

2009年06月発行

文献概要

今月の臨床 HRTの新ガイドラインを読み解く

新ガイドラインのポイント

著者: 水沼英樹1

所属機関: 1弘前大学医学部産科婦人科

ページ範囲:P.781 - P.785

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はじめに

 わが国ではHRTガイドラインとして,2001年に厚生省長寿科学総合研究の3年間の活動を集約した「高齢女性の健康増進のためのホルモン補充療法ガイドライン」が上梓され1),また2004年にはその改訂版が発行されて,わが国のHRTの施行法,注意点などに関してのコンセンサス形成に大きな役割を果たしていた2).このようなHRTを取り巻く上昇機運の中,WHIショックと称されるWomen's Health Initiative中間報告が行われ3),以来,HRTは世界的に大きな後退を余儀なくされてしまった.このWHIの中間報告がもたらした社会的影響は少なくなく,特に医療者にとって,副作用の発生を必要以上に恐れるあまり,HRTを本当に必要としている女性に対してもその使用を忌避するなどの弊害も出てきていた.WHIで得られた結果は特に米国においてそれまでの安易な使用に対する警鐘となったが,一方では科学的に詳細な検証が加えられ,現在ではどうすればより安全なHRTが行えるかについての知識も集積されてきた.日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会では日本更年期医学会との協同事業として本邦におけるHRTガイドライン(案)の作成に当たってきたが,本ガイドライン(案)3)は所定の手続きを経て本年4月に正式にガイドラインとして認定されるにいたった.今回認定された新ガイドラインはWHI以降に得られた新たなエビデンスに基づき作成されたものであり,新しいコンセンサス形成に活用され,HRTの標準化に寄与することが期待される.本稿では本ガイドライン作成に携わった立場からそのポイントを述べることとする.

参考文献

1) 大内尉義編 : 高齢女性の健康増進のためのホルモン補充療法ガイドライン.メジカルレビュー,2001
2) 武谷雄二,他(編) : 改訂高齢女性の健康増進のためのホルモン補充療法ガイドライン.メジカルレビュー,2004
3) 本邦におけるホルモン補充療法ガイドライン(案).日産婦誌61 : 35─97,2009
4) Salpeter SR, Walsh JM, Greyber E, et al : Brief report : Coronary heart disease events associated with hormone therapy in younger and older women. A meta─analysis. J Gen Intern Med 21 : 363─366, 2006
5) Writing Group for the Women's Health Initiative Investigators : Risks and benefits of estrogen plus progestin in healthy postmenopausal women : principal results from the Women's Health Initiative randomized control trial. JAMA 288 : 321─333, 2002
6) Anderson GL, et al : Prior hormone therapy and breast cancer risk in the Women's Health Initiative randomized trial of estrogen plus progestin. Maturitas 55 : 103─115, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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