臨床婦人科産科63巻8号

2009年08月発行

症例

術前診断に難渋した虫垂子宮内膜症を伴った卵管留膿症の1例

著者： 鈴木茉衣子¹ 久納孝夫¹ 尾上重巳¹ 吉田克嗣¹ 小出紀正¹ 貝沼圭吾¹ 安藤徹¹ 鳥本雄二¹ 廣瀬省吾²

所属機関： ¹稲沢市民病院外科 ²稲沢市民病院産婦人科

ページ範囲：P.1093 - P.1096

文献概要

　症例は40歳代の女性．腹痛を主訴に当院受診．CTで腹水貯留を認め，骨盤内に蛇行した造影効果のある管状構造物を認めた．骨盤内膿瘍による汎発性腹膜炎と診断し，腹腔鏡検査を施行した．術中膿性腹水を認め，虫垂炎が原因の腹腔内膿瘍形成と考えたが，骨盤内を詳細に検索すると，卵管留膿症であった．右卵巣を温存し，卵管を摘出した．組織的にも卵管留膿症であった．虫垂には子宮内膜症を認めた．女性骨盤内膿瘍では卵管留膿症も念頭におかなければならないと思われた．虫垂に子宮内膜症を認め，チョコレート嚢胞の既往より，卵管子宮内膜症による卵管閉塞が卵管留膿症の原因である可能性が示唆された．

参考文献

1） 谷口千津子，加賀俊章，沼田由紀，他 : 敗血症ショックにより診断された卵管留膿腫の1例．産婦の実際55 : 729─733，2006

2） Simms I, Catchpole M, Brugha R, et al : Epidemiology of genital Chlamydia trachomatis in England and Wales. Genitourin Med 73 : 122─126, 1997

3） 安達美和，本郷淳司，中村圭一郎，他 : 確定診断に苦慮した卵管卵巣膿瘍の1例．産婦中四会誌52 : 174─179，2004

4） 藤原俊孝，早川克己 : 腹痛のCT診断，婦人科疾患．臨床画像23 : 200─207，2007

5） 倉澤剛太郎 : 画像診断Q＆A．レジデントノート7 : 1463─1464，2006

6） 鈴木一史，桑鶴良平，三橋紀夫 : 腹痛のCT診断，虫垂とその鑑別疾患．臨床画像23 : 185─189，2007

7） 伊香加納子，笹　秀典，長谷川ゆり : 子宮内膜症に合併した重症骨盤腹膜炎，卵管留膿腫の1例．日本産婦人科感染症研究会学術講演会抄録集21 : 60─66，2004

8） 小林　博 : 消化管子宮内膜症．臨婦産46 : 88─90，1992

9） 中川辰郎，養田俊之，尹太　明，他 : 急性虫垂炎に合併した虫垂子宮内膜症の1例．外科診療10 : 1541─1544，1991

10） Uohara JK, Kobara TY : Endometriosis of the appendix. Report of twelve cases and review of literature. Am J Obstet Gynecol 121 : 423─426, 1976

11） Shmuel J, Shtamler B, Suprun H : External endmetriosis of the vermiform appendix with symptoms of acute appendicitis. Int J Gyencol Obstet 8 : 38─41, 1970

12） 稲本　裕 : 子宮内膜症に関する数的観察．産婦人科MOOK26，子宮内膜症（坂本正一編）．pp11─23，1983