臨床婦人科産科63巻8号

2009年08月発行

症例

画像診断で悪性腫瘍との鑑別が問題となった約6か月間にわたる長期絨毛遺残の1例

著者： 佐藤賢一郎¹ 森下美幸¹ 鈴木美紀¹ 水内英充² 水内将人³ 両坂美和³ 松浦基樹³ 北島義盛⁴ 塚本健一⁵ 藤田美悧⁵

所属機関： ¹新日鐵室蘭総合病院産婦人科 ²旭川みずうち産科婦人科 ³札幌医科大学産婦人科 ⁴札幌セントラル女性クリニック ⁵新日鐵室蘭総合病院臨床・病理検査室

ページ範囲：P.1097 - P.1101

文献概要

　今回われわれは，悪性腫瘍との鑑別が問題となった約6か月間にわたる絨毛遺残例を経験した．

　症例は32歳，約6か月間にわたる続発性無月経，2005年11月には妊娠反応陽性，2006年4月上旬から続く不正性器出血，子宮腔内の超音波異常所見で，同年4月中旬に他院産婦人科より紹介された．CA125，CA19─9，CEAはすべて基準範囲内，血中hCG 9.5 mIU／ml（基準2.7以下）であった．経腟超音波で，充実部分と液状部分が混在する不定形な所見を示し，子宮壁は全体的に血流豊富な印象で，子宮腔内の充実性部分のPI値0.30，RI値0.25であった．MRIでは子宮腔内にはT1強調像で低信号，T2強調像で高信号に描出される液状成分と，T1，T2強調像にて低信号で造影T1脂肪抑制像で造影効果を示す充実部分を認めた．

　経頸管的切除術の予定としていたところ，子宮内容物の自然排出を認めた．病理組織所見では血腫を壊死性変化を呈する絨毛が取り囲む像が認められた．

参考文献

1） 日本産科婦人科学会／日本産婦人科医会 : 産婦人科診療ガイドライン産科編2008．pp45─46，2008

2） 日本産科婦人科学会編 : 産科婦人科用語解説集，改訂第2版．金原出版，pp308─309，2008

3） 日本産科婦人科学会／日本産婦人科医会 : 産婦人科診療ガイドライン産科編2008．pp50─55，2008

4） Betel C, Atri M, Arenson AM, et al : Sonographic diagnosis of gestational trophoblastic disease and comparison with retained products of conception. J Ultrasound Med 25 : 985─993, 2006

5） 岡　朱美，五味淵秀人，小早川あかり，他 : 診断に苦慮した絨毛遺残の一例．日産婦東京地方部会誌55 : 291─294，2006

6） Jain K, Fogata M : Retained products of conception mimicking a large endometrial AVM : complete resolution following spontaneous abortion. J Clin Ultrasound 35 : 42─47, 2007

7） 尾谷　功，梅咲直彦 : 初期流産後性器出血及びhCGの高値が持続したため絨毛性疾患と鑑別が困難であった子宮粘膜下筋腫の1例．産婦進歩55 : 261，2003