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文献概要
今月の臨床 ハイリスク妊娠─ここがチェックポイント
妊娠リスクスコア
著者: 久保隆彦1
所属機関: 1国立成育医療研究センター周産期診療部産科
ページ範囲:P.1372 - P.1377
文献購入ページに移動わが国の周産期医療の背景
妊産婦死亡からの分析(長屋班報告書を利用した)では,2年間の全妊産婦死亡のうち,救命可能であったと考えられた妊婦は臨床症状が発生し最初にかかわった施設に3人以上常勤産婦人科医師がいた施設に比較し,1人開業医であった場合の分娩数当たりの発生数は3.7倍にもなった.確かに,わが国の分娩の約99%は病院あるいは診療所の施設分娩であり,医療行為のできない助産所あるいは自宅分娩は1%以下とわずかであったが,産科医の減少・分娩施設の閉鎖に伴い都会では自宅・助産所分娩が増加しつつある.さらに,わが国の産科医療体制の特徴ではあるが施設分娩の約半数は1人開業医が大半を占める診療所である.したがって,わが国の分娩の約半数が1人開業医で行われていることと医療の存在しない自宅・助産所での分娩は今後の母子の安全が憂慮される.
われわれ産科医にとっては当然ではあるが,分娩には常に死に至る急変が付き物である.わが国の妊産婦死亡は10万出生当たり6~7人と世界でも有数に低値であるが,それでも年間分娩数から算出すると,交通事故による死亡率とほぼ等しく,約250人に1人の妊婦は死に至る危険性があることが確認されている.さらに医療介入が十分でないアジア・アフリカの妊産婦死亡率はわが国の百倍から千倍(10万出生当たり500~1,500の母体死亡)であり,全世界の妊産婦死亡率が250人に1人であることから,この数字が妊娠分娩の本来持つ母体のリスク率といえる.もちろん,わが国では母体死亡に至ることはきわめて少ないものの,母親の罹病,児の死亡,後遺症の発生が母体のリスクに比例することも重要な問題である.
妊産婦死亡からの分析(長屋班報告書を利用した)では,2年間の全妊産婦死亡のうち,救命可能であったと考えられた妊婦は臨床症状が発生し最初にかかわった施設に3人以上常勤産婦人科医師がいた施設に比較し,1人開業医であった場合の分娩数当たりの発生数は3.7倍にもなった.確かに,わが国の分娩の約99%は病院あるいは診療所の施設分娩であり,医療行為のできない助産所あるいは自宅分娩は1%以下とわずかであったが,産科医の減少・分娩施設の閉鎖に伴い都会では自宅・助産所分娩が増加しつつある.さらに,わが国の産科医療体制の特徴ではあるが施設分娩の約半数は1人開業医が大半を占める診療所である.したがって,わが国の分娩の約半数が1人開業医で行われていることと医療の存在しない自宅・助産所での分娩は今後の母子の安全が憂慮される.
われわれ産科医にとっては当然ではあるが,分娩には常に死に至る急変が付き物である.わが国の妊産婦死亡は10万出生当たり6~7人と世界でも有数に低値であるが,それでも年間分娩数から算出すると,交通事故による死亡率とほぼ等しく,約250人に1人の妊婦は死に至る危険性があることが確認されている.さらに医療介入が十分でないアジア・アフリカの妊産婦死亡率はわが国の百倍から千倍(10万出生当たり500~1,500の母体死亡)であり,全世界の妊産婦死亡率が250人に1人であることから,この数字が妊娠分娩の本来持つ母体のリスク率といえる.もちろん,わが国では母体死亡に至ることはきわめて少ないものの,母親の罹病,児の死亡,後遺症の発生が母体のリスクに比例することも重要な問題である.
参考文献
1) 久保隆彦 : 日本の妊産婦死亡の分析─長屋班報告を利用して,厚生労働省科学研究補助金厚生労働科学特別研究事業「産科領域における安全対策に関する研究」平成15年度総括・分担研究書,pp10─20,2004
2) 久保隆彦,中野眞佐男,中林正雄 : 妊婦のリスク評価,厚生労働省科学研究補助金厚生労働科学特別研究事業「妊婦のリスク評価に関する基礎的研究」平成15年度総括・分担研究書,pp92─111,2004
3) A J Knox, L Sadler, et al : An obstetric scoring system : Its development and application in obstetric management. Obstet Gynecol 81 : 195─199, 1993
掲載誌情報