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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科64巻11号

2010年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 低用量OCの普及をめざして

低用量経口避妊薬(OC)承認後10年を経て

著者: 北村邦夫

ページ範囲:P.1481 - P.1489

はじめに

 米国に遅れること40年.わが国で低用量経口避妊薬(oral contraceptives : OC)が承認されたのが1999年6月,その3か月後に発売となった.以来,10年を経てわが国のOC事情はどう変わったのだろうか.承認がこれほどまでに遅れた理由にはHIV/AIDSの拡大,副作用や少子化の進行などが挙げられていたと認識しているが,これらの懸念は払拭されたのだろうか.筆者らが行っている全国調査の結果やOC関連の電話相談の動向などから,OC承認・発売からの10年間を追った.

OC普及を妨げている要因

著者: 田邊清男

ページ範囲:P.1492 - P.1495

はじめに

 欧米では長い歴史を有している低用量経口避妊薬(oral contraceptives : OC)が日本で認可されたのは平成11年6月であり,以来10年余が過ぎた.当初は,OCの使用が外国のように順調に伸びることが予想されていたが,使用量は徐々には増加してはいるものの,いまだその使用率はわずかである.

 本稿では,わが国と外国の女性の避妊(特にOC)に対する考え方,あるいは使用環境について考察し,そこから浮かび上がってくるOC普及を妨げている要因を考えるとともに,わが国における今後のOCの普及を図るにはどのような点を考慮していくべきかについて考えてみた.

ガイドライン改定の影響

著者: 蓮尾豊

ページ範囲:P.1497 - P.1501

はじめに

 欧米に遅れること約40年,1999年9月に低用量経口避妊薬(oral contraceptives : OC)がわが国でも処方可能となった.以前から数種類の高用量・中用量ピルが避妊として使われていたが,本来は月経困難症や卵巣機能不全などの適応症を持った治療薬として認可されていたものである.わが国の女性は40年近くにわたってホルモン量の多い薬剤を避妊に用いていたことになる.より副作用の少ないOCの認可によりわが国でも普及が急速に進むのではという期待もあったが,そのスピードはあまりにも緩徐である.この原因を一元的に語ることはできないが,1999年のOC認可に伴って日本産科婦人科学会を含めた関係6団体によって「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」が作成されたが,ここに掲載された処方に際して推奨される検査項目の内容と多さが,OC普及のブレーキになったことは確かなことであろう.このガイドラインが2005年12月に改訂され,日本産科婦人科学会雑誌2006年3月号に全文が掲載された1).改訂版の内容をみると,OC処方前の多岐にわたる検査項目が削除され,問診と血圧測定を必須としたこと,現時点でのエビデンスに基づいた解説と,WHOのOC処方基準を重視したものとなっている.まさに待望の改訂であり,OC普及につながるものと期待されたが,2007年の国連報告では普及率トップのドイツの52.6%はいうに及ばず,北朝鮮の3.7%に比べてもはるかに低い1.1%にとどまっている.

 OC情報センター(http://www.pill-ocic.net/index.html)の報告では毎年服用者数は増加しているものの,発売後10年に当たる2009年時点での服用者数は約66万人程度(2~3%)と推定されている.ガイドラインの改訂が意味するところを今一度,産婦人科医自身が理解し,その主旨を女性に伝えることがOC普及にとって最も重要なことである.改訂の基本方針と具体的な改訂のポイントを表1に示し2),それぞれの意味するところについて述べる.

OC処方の実際

著者: 間壁さよ子

ページ範囲:P.1503 - P.1509

はじめに

 低用量経口避妊薬(oral contraceptives : OC)の処方においては,「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」が2005年に改訂され,患者の自費負担による過剰な事前検査がなくなり,問診を重視して血圧測定を義務づけるだけに簡略化された.このことにより多くの医師が女性のQOLを高めるためにOCを処方するようになったことは喜ばしいことである.

 本稿では,このOC処方の増加と処方内容の実情,問題点について,筆者らが設立した非営利組織「オーキッドクラブ(2000年9月 : URL http: //www.orchid-club.gr.jp)」が医師を対象として実施したアンケート調査の分析結果をもとに報告する.また筆者の診療所がある港区(外国大使館,領事館が80以上ある)における多国籍の女性たちへのOC処方の実情,わが国のOCユーザーの高齢化,そして最近遭遇した,月経困難症や不正出血などの治療薬としてOCを処方する場合には,若い女性であっても悪性の病変が潜んでいる可能性を鑑別診断する必要があると痛切に感じた不幸な症例についても報告する.

OCからHT―女性のQOL改善のために

著者: 福原理恵 ,   福井淳史 ,   水沼英樹

ページ範囲:P.1510 - P.1513

はじめに

 低用量ピル(oral contraceptives : OC)はエチニルエストラジオールとプロゲストーゲンを配合した合剤で,確実な避妊効果に加え,月経困難症の緩和,月経周期の正常化,さらには痤瘡の治療などさまざまな副効用を有するため,女性のQOLを高める薬剤として現在普及が進んでいる.一方,ホルモン(補充)療法(hormone therapy : HT)は更年期症状の緩和や骨粗鬆症などエストロゲン欠落に起因する高齢女性のQOLを改善,維持することを目的とする療法であり,エストロゲンとプロゲストーゲンを投与するという点で共通する.しかしながら,両者は使用されるエストロゲンの種類や生物学的効果が異なるという大きな相違点を持つ.卵巣機能低下が始まり,更年期への準備段階である40代女性においては,妊孕性も有していることから,避妊や性成熟期におけるさまざまな疾患の治療,さらには退行期疾患の予防などの点で,臨床の場面において,低用量ピルからHTへの切り替えについて迷うことも少なくない.本稿では,低用量ピルとHTの違いやまたそれに基づく切り替えについて述べる.

OCの禁忌と重篤な合併症―リスク因子の抽出と早期対応法

著者: 若槻明彦

ページ範囲:P.1514 - P.1519

はじめに

 子宮筋腫や子宮内膜症は思春期から性成熟期女性において高頻度に発症し,月経過多や貧血あるいは月経痛などの症状を伴い,QOLを著しく低下させる.低用量ピル(oral contraceptives : OC)は本来の避妊効果に加え,月経過多や月経痛の改善などの副次的効果がある一方,いくつかの副作用も存在する.その多くは悪心,嘔吐などの消化器症状,不正性器出血,乳房緊満感などのマイナートラブルが中心であるが,稀に重大な副作用として静脈血栓症や心血管疾患,悪性疾患などの発症を認める.わが国ではOCは1999年に認可されたものの,その使用頻度は欧米諸国に比較して少ない.この大きな理由としてはOCの副作用にあると考えられる.

 本稿では,OCの副作用と使用禁忌症例,さらには重篤な合併症に対する予防,対応策について概説する.

OCと婦人科がんの最新情報

著者: 五十嵐秀樹 ,   成味恵 ,   倉智博久

ページ範囲:P.1521 - P.1527

はじめに

 経口避妊薬(oral contraceptives : OC)と婦人科がんとの関連は「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版,平成17年12月,日本産科婦人科学会編)」1)に記載されている(表1).子宮頸癌はOC使用による相対危険度は増加するが,卵巣癌,子宮体癌はリスクが半減することが知られており,このリスクの半減は大きなOCの副効用である.この稿ではOCと婦人科がん(卵巣癌,子宮内膜癌,子宮頸癌)および乳癌の関連について最新の知見を紹介する.

OC服用女性の意識の変化

著者: 対馬ルリ子

ページ範囲:P.1528 - P.1535

はじめに

 1960年,女性の解放を夢見たマーガレット・サンガーの情熱と,多くの一般女性たちの協力と,ホルモン研究者たちの努力とが結実して発売されたピルが世に出てから50年が経った.日本でも低用量経口避妊薬(oral contraceptives : OC,もしくはピル)がはじめて避妊薬として認可・発売されてから10年余が経っている.

 ピルは,女性のリプロダクティブヘルスを支えるホルモン薬であるが,この50年間に,女性は子どもを産み育てる家庭内の存在から,自身も仕事を持ち,地域や組織,国家においても活躍できる存在として,急速に存在感を増してきた.

 一方,現在の日本は,社会における男女共同参画が先進国中で最も遅れていると評価されている.この状況において,低用量ピルが,安全で確実な避妊薬としてばかりでなく,パートナーがいなくても,快適な月経,コントロール可能な月経周期,安定した体調や肌を保証し,増えている女性の病気(子宮内膜症,子宮体癌や卵巣癌)を減らす存在として,女性のQOL(quality of life)を支える効果は大変大きいと思われる.しかし,ピルを上手に使いこなすには,正しい情報と,高い自己価値感,受診しやすい医療環境,常に複数の選択肢から選択できる自由,信頼できる医師との関係が必須である.逆に社会での女性の存在感が大きくなければ,ピルの服用には結びつかない構造が存在する.

 ピルに関する正しい情報を得,実生活に生かすことができる現代女性が今後も増えてくれることを,またそれを,わが国の医療・保健が力強く支えてくれることを,心より願っている.

緊急避妊薬

著者: 都築たまみ ,   泉谷知明 ,   深谷孝夫

ページ範囲:P.1537 - P.1541

はじめに

 緊急避妊(emergency contraception : EC)とは,無防備な性交やレイプなどによる望まない妊娠を回避するために用いられる避妊法である.ECには,緊急避妊薬(emergency contraception pills : ECPs)を用いる方法と子宮内避妊器具(intrauterine device : IUD)を用いる方法がある(表1)1, 2)

 WHOがECPsとして推奨し,世界的に広く用いられているLNG単独剤は,現在わが国では承認に向け審査中であり,早ければ来年には使用可能となる予定である.そこで本稿では,今後わが国でもECの主流となるであろうLNG単独剤と現在わが国でECとして最も行われているYuzpe法を中心に概説する.

OCの効用

1.思春期の月経異常

著者: 甲村弘子

ページ範囲:P.1542 - P.1545

はじめに

 低用量経口避妊薬(oral contraceptives : OC)は世界で広く用いられ,女性のQOLを向上させることが高く評価されている.OCが女性の生活改善薬とされる点は以下の3点に集約される.

(1)高い避妊効果を有していること

(2)月経に関する愁訴を改善すること

(3)いくつかの疾患の予防に役立つこと

 このうちの(2),(3)がOCの副効用といわれているものである.わが国ではOCの普及率が欧米諸国に比べてきわめて低く,今後生活改善薬としてのOCを普及させるには,避妊を目的として使用することばかりでなく,上に挙げた(2),(3)の目的でさらに用いられるようになることが望まれる.すなわち性成熟期の年代の女性ばかりでなく,中学生,高校生など思春期の女性,40代から閉経前までの年代の女性を含んだ幅広い年代に対してどのようにアプローチしていくかが課題である.特に思春期の年代でのOCの使用経験は,それに続く避妊目的でのOCの使用につながっていくため重要視されるべきであろう.

 本稿では,このような視点から思春期の年代の月経に関する愁訴に対し,OCを利用して対処できる諸問題について概説する.

2.月経周期の調節・月経困難症

著者: 安達知子

ページ範囲:P.1546 - P.1549

はじめに

 女性が日常的に最も経験しやすい月経に関する大きなストレスは,大切なイベントに月経が重なる可能性が生じることと,女性の1/4以上に認められるというきわめて強い月経痛(月経困難症)である.

 経口避妊薬(oral contraceptives : OC)は間脳・下垂体・卵巣系の調節機序を上手に利用したホルモン剤であり,副作用なくきわめて簡単かつ確実に,人工的に月経周期を延長あるいは短縮でき,種々のイベントに月経が重ならないようにコントロールできる.また,月経困難症はとくに若い女性には頻度が高いが,OCによってこれが軽減するばかりでなく,経血量も減少して月経に関する心身の負担が減少するため,万一大切なイベントに月経が重なっても,自然周期よりは楽に対応しやすい.ここでは,月経周期コントロールの考え方,実施方法,月経困難症の頻度や原因,OCの作用機序などについて解説する.

3.子宮内膜症

著者: 原田省

ページ範囲:P.1550 - P.1553

月経困難症と経口避妊薬(oral contraceptives : OC)

 月経困難症は月経に随伴して起こる病的症状をいい,痙攣様の激しい下腹部痛と腰痛を主とした症候群である.分泌期内膜から産生されるプロスタグランディン(prostaglandin : PG)による子宮筋の収縮が疼痛の主要な原因と考えられている.月経時にみられる吐き気,嘔吐,腰痛,下痢,頭痛などの全身症状はPGとその代謝物質が体循環に流入したために起こるものと説明されている.黄体期後期に血中プロゲステロン濃度が低下すると,アラキドン酸の産生とcyclooxygenase経路が活性化される.その結果,分泌期子宮内膜のPGレベルは増殖期の約3倍に増加し,月経時にはそれ以上に上昇する.機能性月経困難症の患者では,無症状の女性に比較して子宮内膜におけるPG産生が多い.月経中のPGの放出は,月経開始から48時間の間に起こり,月経困難症の症状が最も強い時期に一致している.PGのなかでもPGF2αが主要な原因物質と考えられている.

 OCは子宮内膜の増殖を抑制し,PG濃度が最も低い卵胞期初期の状態を形成することで作用を発揮する.避妊目的だけでなく,経血量や周期の調整ができるという利点もある.ピルによって機能性月経困難症患者の90%以上で疼痛が軽減されるといわれているが,無作為化比較試験(RCT)によるエビデンスは少ない.コクランレビューのメタアナリシスによると,プラセボあるいは無治療をコントロールとした低用量あるいは中用量ピルによるRCTはこれまでに6つあり,プラセボに対してオッヅ比は2.01と約2倍の疼痛改善効果が報告されている1).しかしながら,レビューアーが結論で述べているように,これらの試験はいずれも1960から1970年代と古く,現在主として用いられている低用量ピルのデータや症例数が少なく,試験の質は低い.

4.前周期OC負荷が卵胞発育,IVF成績に及ぼす影響について

著者: 奥裕嗣 ,   森本義晴

ページ範囲:P.1554 - P.1557

はじめに

 患者の卵巣予備能を考慮した個別化卵巣刺激を実施し,良好胚を得ることは採卵,培養,胚移植,黄体補充と並んで,ARTの成績を左右する重要な因子である.海外では治療前周期の経口避妊薬(oral contraceptives : OC)負荷が卵胞期初期の内分泌環境を改善し,IVFの成績が向上するとの報告が多く認められる.そこで,治療前周期に中用量と低用量のOCを負荷したときの,卵胞発育などIVFの成績に及ぼす影響について海外の文献と自験例を比較しながら報告する.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・59

卵巣疾患と術前診断した虫垂膿瘍の2例

著者: 中村学 ,   中尾光資郎 ,   水谷亜紀子 ,   宮本純孝 ,   西村俊信 ,   富田初男 ,   安藤昭彦

ページ範囲:P.1559 - P.1563

症例(1)

■患者 44歳,1経妊・1経産.

■主訴 不正出血,下腹部痛.

■既往歴 特記すべきことなし.

■家族歴 特記すべきことなし.

■現病歴

 1か月前より不正出血を繰り返していた.10日前に近医産婦人科を受診し,卵巣腫大を指摘されたと同時に止血剤を処方され内服していた.その頃より軽度の上腹部痛が続いていた.今回,下腹部痛が出現し,他医を受診.下腹部腫瘤を指摘され,卵巣嚢腫茎捻転の疑いで当院へ救急搬送された.

病院めぐり

神戸市立医療センター中央市民病院

著者: 北正人

ページ範囲:P.1565 - P.1565

 当院は神戸港の沖合にある人工島ポートアイランドに位置する,神戸市の基幹病院です.その歴史は古く,大正13年に市立神戸診療所としてスタートし,成長・発展を遂げながら昭和56年にポートアイランドに移転し,現在に至っております.病床数は912床,常勤医師136名,初期研修医39名(歯科含む),後期研修医101名の大所帯です.うち,産婦人科は常勤医8名,後期研修医4名,非常勤2名です.

 当院には3つの顔があります.1つは神戸市の救命・救急センターとしての顔です.北米型ERを有し,年間4万人の救急患者と7千台の救急車を受け入れています.NICU・周産期母子医療センターのある産婦人科でも多くの救急患者を受け入れており,特に他科の協力が必要な脳血管疾患・循環器疾患・外傷などを有する妊婦の受け入れや悪性腫瘍・腹腔鏡の緊急手術に強みを発揮しています.

症例

骨盤臓器脱を伴った陳旧性会陰裂傷の1例

著者: 清水美代 ,   加藤淑子

ページ範囲:P.1567 - P.1571

 第3度,4度の会陰裂傷は負傷直後に適切な縫合が行われないと,ときに縫合不全を起こし瘢痕化することがある.このような陳旧性会陰裂傷は加齢により骨盤臓器脱を起こすことがある.

 今回,骨盤臓器脱を伴った陳旧性会陰裂傷を経験した.腟閉鎖,肛門括約筋縫合を含む会陰裂傷縫合術を行ったところ,術後経過は良好であった.

 今回の手術,術後経過に関して文献的考察を加えながら報告する.

妊娠37週で発症した妊娠関連発症劇症1型糖尿病と考えられた1例

著者: 佐藤賢一郎 ,   森下美幸 ,   鈴木美紀 ,   田原泰夫 ,   山内一暁 ,   水内英充 ,   水内将人 ,   北島義盛

ページ範囲:P.1573 - P.1577

 今回,妊娠37週で発症した妊娠関連発症劇症1型糖尿病と考えられた1例を経験した.

 症例は27歳,1経妊・1経産で糖尿病の家族歴はない.身長155.5 cm,非妊時体重45.0 kg(BMI 18.6)であった.妊娠8週4日で初診し,その後,特に異常なく経過していた.36週4日の妊婦健診時に尿糖(1+),その1週間後の37週4日には尿糖(2+)のため,その翌日に75gOGTTを施行したところ妊娠糖尿病と判定された.

 2日後に入院としたところ,毎食前の血糖値は300 mg/dlを超え,HbA1c 5.6%,尿ケトン体(3+),第4病日の血中C-peptideは0.5 μg/ml,尿中C-peptideは7 μg/dayであった.膵ランゲルハンス島細胞抗体(ICA)は陰性で妊娠関連発症劇症型1型糖尿病と考えられた.ただちにインスリン強化療法を開始し血糖値の改善を認めたため,妊娠38週4日で帝王切開を施行した.児は2,910 g,健常で,現在,母体は内科にて1型糖尿病でインスリン投与している.

IVRを用いて止血し得た帝王切開術後出血の2例

著者: 神保正利 ,   中島義之 ,   小泉仁嗣 ,   藤原礼 ,   土山哲史 ,   坂井昌人 ,   正岡直樹

ページ範囲:P.1579 - P.1583

 今回われわれは,帝王切開術後の腹腔内出血に対し,Interventional radiology(IVR)により止血し得た2例を経験した.

 症例1は左卵巣嚢腫(子宮内膜症性嚢胞)破裂による腹腔内出血(妊娠28週2日),症例2は常位胎盤早期剥離(妊娠30週5日)にて緊急帝王切開術を施行した.2症例ともに術中大量出血により術後DICとなり,腹腔内出血による出血性ショックを発症したために,抗DIC治療を行うとともに緊急で経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization : TAE)を施行,出血源である動脈の塞栓を行った.

 TAEは出血源となっている血管の同定がしやすく,止血効果が高いことや,低侵襲であるために全身状態不良例に対しても緊急で行えるものの,迅速な対応が求められるためIVR科医師との連携システムを構築しておくことが重要である.

お知らせ

真菌症フォーラム第12回学術集会─Mycoses Forum

ページ範囲:P.1519 - P.1519

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投稿規定

ページ範囲:P.1586 - P.1586

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1587 - P.1587

次号予告

ページ範囲:P.1591 - P.1591

編集後記

著者: 神崎秀陽

ページ範囲:P.1592 - P.1592

 数年前から,地区の中核施設,大学,医師会などに行政も加わった,周産期医療システムの再構築についての検討が日本各地で行われてきています.大阪府でも,一次から三次までの周産期救急体制についての検討会が定期的に開催され,各施設間での情報共有に基づく相互理解を図りながら,当番となるコーディネータ(医師)の指導での救急妊婦搬送はほぼスムーズに行われるようになりました.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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