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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科64巻11号

2010年11月発行

文献概要

症例

妊娠37週で発症した妊娠関連発症劇症1型糖尿病と考えられた1例

著者: 佐藤賢一郎1 森下美幸1 鈴木美紀1 田原泰夫2 山内一暁3 水内英充4 水内将人5 北島義盛6

所属機関: 1新日鐵室蘭総合病院産婦人科 2新日鐵室蘭総合病院小児科 3新日鐵室蘭総合病院内科・循環器科 4みずうちウィメンズクリニック 5札幌医科大学産婦人科 6セントラル女性クリニック

ページ範囲:P.1573 - P.1577

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 今回,妊娠37週で発症した妊娠関連発症劇症1型糖尿病と考えられた1例を経験した.

 症例は27歳,1経妊・1経産で糖尿病の家族歴はない.身長155.5 cm,非妊時体重45.0 kg(BMI 18.6)であった.妊娠8週4日で初診し,その後,特に異常なく経過していた.36週4日の妊婦健診時に尿糖(1+),その1週間後の37週4日には尿糖(2+)のため,その翌日に75gOGTTを施行したところ妊娠糖尿病と判定された.

 2日後に入院としたところ,毎食前の血糖値は300 mg/dlを超え,HbA1c 5.6%,尿ケトン体(3+),第4病日の血中C-peptideは0.5 μg/ml,尿中C-peptideは7 μg/dayであった.膵ランゲルハンス島細胞抗体(ICA)は陰性で妊娠関連発症劇症型1型糖尿病と考えられた.ただちにインスリン強化療法を開始し血糖値の改善を認めたため,妊娠38週4日で帝王切開を施行した.児は2,910 g,健常で,現在,母体は内科にて1型糖尿病でインスリン投与している.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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