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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科64巻4号

2010年04月発行

文献概要

今月の臨床 これを読めばすべてわかる―最新の産婦人科超音波診断 II 婦人科領域における超音波診断 [付属器疾患の超音波診断]

1.卵巣機能性腫瘤

著者: 小林浩一1 手塚真紀1 坂巻健1

所属機関: 1社会保険中央総合病院産婦人科

ページ範囲:P.442 - P.445

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 卵巣機能性腫瘤には,排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS),あるいは,多嚢胞卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS),妊娠初期のいわゆるルテイン嚢胞や,さらに骨盤内癒着を原因とするperitoneal inclusion cyst(pseudocyst),黄体期にみられる出血性黄体嚢胞などが挙げられる.OHSSでは多数の黄体嚢胞の集合により両側性,多嚢胞性に腫大した卵巣と腹水がみられるのが特徴である.PCOSでは卵巣にネックレスサインと呼ばれる多数の小嚢胞が認められるのが特徴であるが,画像診断だけではホルモン異常のない症例も多くみられ,総合的な診断の補助的な位置づけである.ルテイン嚢胞は,漿液性嚢胞腺腫などの卵巣嚢腫合併妊娠との鑑別が問題となる.ルテイン嚢胞の場合,ほとんどが妊娠12~14週以降は縮小傾向を示すので経過観察が必要となる.Pseudocystは,開腹手術や子宮内膜症,骨盤内感染症,さらに炎症性腸疾患などによる骨盤内癒着のために生じた閉鎖腔に腹水が貯留して嚢胞状を呈するものである.出血性黄体嚢胞は,腫瘤の内容が血液であるため子宮内膜症性嚢胞との鑑別が問題となる.多くの出血性黄体嚢胞では,子宮内膜症性嚢胞に比べ腫瘤内のエコーパターンが薄く糸を引くようなパターンを呈するのが特徴で,慣れてくると両者の鑑別は比較的容易なことが多いが,ときに鑑別困難な症例も存在するので注意が必要である.また,出血性黄体嚢胞の存在は,しばしば卵巣出血の原因となっていると考えられ,注意が必要である.

参考文献

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3)Condous G, Khalid A, Okaro E, et al : Should we be examining the ovaries in pregnancy? Prevalence and natural history of adnexal pathology detected at first-trimester sonography. Ultrasound Obstet Gynecol 24 : 62-66, 2004
4)岩田 卓,山下 博,新井宏治,他 : 誤診しやすい腫瘍・類腫瘍7. Peritoneal inclusion cyst─嚢胞性卵巣腫瘍との鑑別.産と婦74 : 676-683,2007
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7)小林浩一 : 卵巣出血.産と婦74 : (Suppl.).239-243,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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