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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科65巻11号

2011年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 常位胎盤早期剥離─ワンランク上の診断と治療

早剥の疫学―最近の傾向

著者: 山田崇弘 ,   水上尚典

ページ範囲:P.1298 - P.1300

 常位胎盤早期剥離(早剥)の発症頻度はその母集団により違うことがあるものの全分娩の1/100~1/200程度といわれ,全早産の10%ほど,あるいは全死産のうち10~20%ほどは早剥によるものとされている1, 2).その周産期死亡率は全体の周産期死亡率に対し10倍以上高く3),もし救命できても15%ほどは最初の一年に神経学的異常が指摘される1).早剥はしばしば母体死亡の原因ともなり1991~1992年のわが国の母体死亡例のうち詳細な調査が可能であった197例中13例(6.6%)が早剥かつ播種性血管内凝固症候群(DIC)による死亡であった4)

 本稿では2004年に日本産科婦人科学会によって行われた全国調査の結果を元にわが国の早剥の実情について概説する.

病態解明の現状

著者: 小林隆夫

ページ範囲:P.1302 - P.1307

概念および分類

 常位胎盤早期剥離(abruptio placentae : 以下早剥)は,妊娠20週以降で,正常位置付着胎盤が胎児娩出以前に胎盤の組織または血管の一部に破綻をきたし,出血により子宮壁から部分的または完全に剥離し,重篤な臨床像を呈する症候群と定義される.発症頻度は,報告者によって差異はあるものの,通常全妊婦に対し0.49~1.29%で,なかでも重症のものは0.1%程度である.本症は性器出血を主徴とする各種妊娠合併症のうち特に母体および児死亡率の高いものとして知られ,諸家の報告によれば,母体死亡率は5~10%,児死亡率は30~50%といわれている1~4).また,産科DIC(播種性血管内凝固症候群)の原因の約50%を占めるとされ,妊産婦死亡の原因となる疾患の1つである.早剥には,軽症から中等症,重症のものまであるが,一般的に用いられるPageの分類を表1 1~3, 5)に示した.なお,剥離の程度により部分性早期剥離(abruptio placentae partialis),完全早期剥離(abruptio placentae totalis)とも呼ばれる.

病因とリスク因子

著者: 平松祐司 ,   延本悦子 ,   増山寿

ページ範囲:P.1308 - P.1312

 常位胎盤早期剥離(以下,早剥)は全妊娠の0.4~1.3%に発症し,母児の死亡にも直結する重要な疾患である.米国の7,508,655単胎妊娠の集計では46,731例の早剥が発生しており,頻度は0.62%である1).早剥合併妊娠の周産期死亡率は幅広い分布を示すが,それは発症週数,児体重,胎盤剥離面積などに依存している.表1には児出生体重別の周産期死亡を示すが,正常妊娠で最も周産期死亡率の低い出生児体重3,500~3,999 gの群では,早剥があると周産期死亡の相対危険率は25倍に増加する1)

 早剥のはっきりした病因は不明であるが,50以上のリスク因子が知られており,年齢,経産回数,生活習慣,既往歴,母体因子など多岐にわたる.表2にはTikkanenのレビュー2)に取り上げられた因子を示す.また,表3には単胎の初産婦5,630,854例,経産婦11,026,768例の報告から各種リスク因子を比較したものを示す.本論文での早剥発生率は単胎4.8,多胎5.9(対1,000妊娠)である3)

診断におけるポイントと課題

1.早剥の臨床所見

著者: 大口昭英 ,   松原茂樹

ページ範囲:P.1313 - P.1316

常位胎盤早期剥離の定義

 常位胎盤早期剥離は,「胎児が娩出される前に胎盤を早期剥離に導く脱落膜の出血」と定義される1).常位胎盤早期剥離を診断するための標準的診断基準はないが,その状態を臨床的に特徴づける所見は性器出血と腹痛であり,これらは通常過剰な子宮収縮,頻脈,そして,胎児心拍パターンの異常を伴うことが多い1)

2.常位胎盤早期剥離の超音波所見

著者: 増﨑英明 ,   東島愛

ページ範囲:P.1318 - P.1324

 常位胎盤早期剥離(早剥)は産科診療の中でも重篤な救急疾患である.早剥は正常位置に付着している胎盤が,妊娠中または分娩経過中に,胎児娩出前に子宮壁から部分的または完全に剥離する病態である.剥離の程度によりさまざまな臨床像をとるが,胎盤を介した胎児への血流が部分的あるいは完全に遮断されるため,胎児は低酸素状態となり,胎児機能不全や子宮内胎児死亡をきたす.また母体にはDICを生じるなど重篤な疾患といえる.そのため本症を的確に診断することは産科診療においてきわめて重要であるが,必ずしも容易ではない.妊娠末期に腹痛や性器出血が突然出現するような典型例は,発症からの経過は急速で診断は比較的容易であるが胎児死亡のリスクが高い.そのような典型例のほかに,切迫早産と区別がつきにくく慢性的な経過をたどる非典型的な早剥も少なくない.早剥はさまざまな臨床像をとることを前提として,まずは症状から疑い,それらに超音波断層法を行ってみることが診断のきっかけとなることが多い.ここでは早剥の臨床所見とともに,主に超音波所見について解説する.

3.早剥のCTG所見

著者: 桂木真司 ,   池田智明

ページ範囲:P.1326 - P.1333

 胎盤早期剥離症例のモニタリングでは,variable deceleration, late decelerationの出現頻度が多く,剥離面積が100%に近い重症例においては,分娩前には胎児徐脈が特徴的である.切迫早産として管理されているものの中に胎盤早期剥離症例が潜んでおり,注意が必要である.切迫早産症例の胎児心拍数モニタリングにおける異常パターンを見逃さないことは胎盤早期剥離の管理上とても重要なことである.

4.総合的判断と早期診断

著者: 古川誠志 ,   鮫島浩

ページ範囲:P.1335 - P.1339

 常位胎盤早期剥離はさまざまな臨床所見を呈する.例えば腹痛や性器出血以外に,嘔吐といった消化器症状が認められることもある.当初は軽度の子宮収縮以外の症状を呈さず,切迫早産として管理が始まる症例もまれではない.発症時期も妊娠中期から後期までさまざまである.また病態の進行度合いもさまざまである.このように多彩な臨床所見のため,疑わなければ見過ごされ,治療介入が遅れる常位胎盤早期剥離は多い.そのため,典型例を除けば対象患者に認められる事象を総合的に判断し,臨床的な常位胎盤早期剥離の診断が求められる.

 そこで本稿では総合的判断を行ううえで大事なポイントと早期診断について言及する.

治療におけるポイントと課題

1.早剥の出血に関するリスク分析

著者: 松岡隆 ,   仲村将光 ,   長谷川潤一 ,   市塚清健 ,   関沢明彦 ,   岡井崇

ページ範囲:P.1340 - P.1344

 周産期合併症の中で常位胎盤早期剥離(早剥)はしばしば母体死亡の原因となる.1991~1992年のわが国での母体死亡230例のうち,原因を調査できた197例の検討で13例(6.6%)が早剥症例であり,DICまたは出血性ショックを合併していた.また,前置胎盤による死亡は7例(4例は癒着胎盤合併)であった1).つまり早剥による母体死亡は前置胎盤によるものよりも頻度が高い.早剥が重症となる原因の1つはDICであり,早剥ではDICを合併しやすく,胎児生存例では約10%,子宮内胎児死亡を伴う場合は約40%に発症すると言われている2)

 早剥に合併するDICは腎不全などの臓器不全を引き起こし,その治療には大量輸血を必要とすることもある.さらには多量出血のために子宮全摘を必要とすることにもなりかねない.分娩が無事終了した後も溢血したCouvelaire子宮は収縮不良により弛緩出血を引き起こす.このように早剥による多量出血は母体救急疾患と考えるべきである.現に東京都では母体救命搬送システムで,平成21年3月25日~平成23年1月31日の間に発生した107件(一般通報31件,転院搬送76件)の母体救命症例のうち最も多かったのは出血性ショックであり,次に多かったのが産科DICであった(図1).この搬送システムの適応症例は表1に示す通りで,重症の早剥は産科救急疾患とすべきである.しかし,後の調査で母体救命搬送システムにのらない重症早剥症例が意外と多かったことが分かっている.これは早剥が産科特有の疾患であるため産科の中で対応されることが多く,またその重症度のリスク分析が十分でないことが原因と考えられる.よって早剥症例においては,その重症度を的確に判定し治療対応することが重要であると思われる.

2.常位胎盤早期剝離(早剝)のDIC対策と治療

著者: 加藤誠 ,   伊東宏晃 ,   金山尚裕

ページ範囲:P.1346 - P.1351

 日本産科婦人科学会産婦人科用語集によると,常位胎盤早期剝離(以下,早剝)は,「正常位置,すなわち子宮体部に付着した胎盤が,妊娠中または分娩経過中の胎盤娩出以前に,子宮壁より剝離するもの」と定義されている1).早剝の危険因子は,妊娠高血圧症候群,早剝既往,切迫早産(前期破水,絨毛膜羊膜炎),外傷(交通事故など),喫煙,麻薬などがある.妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛と同時に異常胎児心拍パターンを認めた時は,早剝を疑い,超音波検査,血液検査(血小板,アンチトロンビン活性,FDPあるいはD-dimer,フィブリノゲン,AST,LDHなど)を行う.早剝は,合併症として播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome : 以下DIC)を引き起こしやすく,産科DICの原因の約50~60%を占めるとされている.産科DICによる大量出血は出血性ショックのハイリスクであり,その適切な取り扱いは母体の生命予後を左右するといっても過言ではない.産科DICは,急激に進行するという特徴を持ち,不可逆的になる前に早期に診断し,早期に適切な治療すなわち迅速なDICの評価とその補正を行い全身状態の改善を図ることが重要である.

3.帝切のタイミングとIUFDの取り扱い

著者: 関博之 ,   村山敬彦

ページ範囲:P.1352 - P.1356

 常位胎盤早期剥離(以下早剥)の発症頻度は0.5~1%1, 2)と考えられているが,重症例や胎児死亡に至る症例は減少しつつあると報告3, 4)されている.しかし,早剥による児の死亡率は119/1,000 3)と高く,母体にとっては消費性凝固障害を起こす代表的な疾患で,高率に播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症してしばしば母体死亡の原因ともなる.したがって,早剥の管理は周産期医療においてきわめて重要な問題である.特に子宮内胎児死亡(IUFD)を合併した早剥の分娩方法の選択に関しては,わが国ではいまだ方針の統一がなされておらず,その選択には苦慮する場合がしばしばある.以下,文献的考察に筆者らの経験を加え,筆者らの施設での対応の仕方について述べる.

4.救急搬送における問題点

著者: 山田学 ,   杉本充弘

ページ範囲:P.1358 - P.1362

 全分娩のうち0.5~1%の症例が臨床的に常位胎盤早期剥離(早剥)と診断される1~3).早剥の中には胎盤剥離が軽微なために母児の予後に悪影響を及ぼさないものもあるが,広範な胎盤剥離によって胎児側には低酸素症・酸血症,母体側には播種性血管内凝固(DIC)や出血性ショックといった,致死的となりうる病態が短時間のうちに進行する重症例も少なくない.重症の早剥に対しては産科スタッフのみならず,新生児の蘇生救命を担当する小児科・新生児科や母体の全身管理にかかわる麻酔科・救急科の協力が必要になる.

 日本の分娩は2009年の日本産婦人科医会全国調査によると,約50%が診療所(施設当たりの常勤医数平均1.4人),約30%が周産期センター以外の一般病院(施設当たりの常勤医数平均4.3人),約1%が助産所といった比較的マンパワーの少ない施設で取り扱われている4).早剥のリスク因子として早剥既往や妊娠高血圧症候群などが挙げられる(別稿「病因とリスク因子(p1308)」参照)が,リスク因子のない妊婦が早剥を発症することもまれではない.したがってリスクの低い妊婦の管理を主として行っている小規模分娩施設であっても早剥に遭遇することは避けられない.その際には症例の重症度と自院のマンパワーに応じて救急搬送をするか否かを決断し,迅速に実行しなければならない.

 本稿では総合周産期センターとして救急搬送を受ける側の立場から,実際の搬送症例を例示しながら早剥救急搬送の問題点と対策案を提示する.

早剥の胎盤病理

著者: 中山雅弘

ページ範囲:P.1364 - P.1370

 胎盤早期剥離は,痛みや,出血,子宮増大などの徴候があり,胎盤が早期に子宮壁と分離するものであり,胎盤から考えると,胎盤後血腫と辺縁出血が該当する.大部分は胎盤にはっきりした異常所見がみとめられる.母体面に胎盤後血腫が見られ,変性・壊死やときに脱落膜の変形がみられる.ときに胎盤後血腫が認められずに,辺縁出血のみが認められることもある.あるいは,早期のものでは胎盤にその痕跡を残さないこともある.臨床的な早剥と,胎盤後血腫・辺縁出血との関連を当科の30年間のデータで示す.また,早剥との関連でよく問題となる,Breus’ moleやchronic abruption-oligohydramnios sequence(CAOS)についても記載する.

母子の予後と次回の分娩管理

著者: 川名有紀子 ,   安達知子 ,   中林正雄

ページ範囲:P.1371 - P.1375

 常位胎盤早期剥離(以下早剥)は,全分娩の0.2~1%に生じる代表的な産科救急疾患である.事前の予知が困難なうえに,発症後の病態の進行が急速であり,緊急帝王切開などの速やかな対応にもかかわらず,母体,胎児,新生児に重篤な経過をたどる症例が多い.

 これまで,早剥の原因,予知などが多角的に検討されてきたが,いまだ明確な発症機序は解明されておらず,誘因やリスク因子が検討されるにとどまっている.

 本稿では,これまでの知見に自験データをまじえ,早剥分娩における母子の予後とリスク因子,早剥既往妊婦の管理について概説したい.

連載 FOCUS【新連載】

放射性物質による環境汚染の影響を危惧する妊娠・授乳婦人への対応―日本産科婦人科学会はどのような情報提供を行ってきたか

著者: 水上尚典

ページ範囲:P.1376 - P.1381

放射性物質による環境汚染に学会から情報発信

 2011年3月11日,magnitude 9.0の巨大地震が日本を襲った(東日本大震災).まもなく巨大津波が押し寄せ,各地(主に北海道,東北,関東沿岸)に甚大な被害をもたらした.その1つに東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)事故がある.地震により炉心の活動は停止したが炉心溶融(melt down)を避けるために持続的冷却の必要があった.しかし,そのための予備電源すべてが失われ,地震数時間後に炉心溶融が起こったとされる.

 放射性物質による環境汚染が現実のものとなり,日本産科婦人科学会(当時,吉村理事長)は放射能被曝から妊娠婦人・授乳婦人・乳児を守る必要性から,大至急の課題として「学会員ならびに一般向けお知らせ作成」を決断した.第一報(2011年3月15日公開)は主に放射性ヨウ素(131I)被曝に対する安定ヨウ素剤予防服用に関してであったが,まさにその当日(2011年3月15日)から翌日にかけて安定ヨウ素剤予防服用が必要であった市民が出現した可能性がある.その後,学会ではホームページを通じて,7月21日までに計6回(3月15日,3月16日,3月24日,4月18日,5月2日,7月21日)の見解を発表し,妊娠婦人や授乳婦人に情報提供を行った.本稿では,それらの情報の要点を紹介し,放射性物質による環境汚染の影響を危惧する妊娠婦人・授乳婦人にどのように対応したらよいのかについてまとめる.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

妊娠中に診断されたクローン病合併妊娠の1例

著者: 手塚真紀 ,   小林浩一 ,   佐原力三郎 ,   酒匂美奈子 ,   河口貴昭 ,   橋本拓造

ページ範囲:P.1382 - P.1387

症 例

■患者

 40歳,1回経産婦.

■主訴

 妊娠29週時に,腹痛,下痢,粘血便,るいそう.

■既往歴

 なし.

■現病歴

 生来便秘であったが,最終月経の頃より1日10回を超える下痢,痔核脱出感を認めたが放置していた.

 妊娠13週3日,近医A産婦人科を初診.消化器症状があるため,B総合病院産婦人科への転院と内科受診を勧められたが,内科・妊婦健診は受診せず,下痢も放置していた.しかし,次第に下痢の回数が増加し,粘血便や1日20回以上の下痢を認めるようになってきたため,妊娠24週4日,B総合病院内科を受診し,症状から炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease : IBD)を疑われ,当院を紹介された.

Estrogen Series・100

ホルモン療法と心疾患の関連は?

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1388 - P.1389

 およそ20年前,ホルモン療法は心血管系に保護的に働くとされていた.その根拠は主に観察的研究にあった.その後,大規模なランダム化コントロール研究がなされ,現在では更年期後の冠動脈疾患(coronary heart disease : CHD)の予防に,ホルモン療法は適応がないことが明らかになっている.今回はACOG(米国産婦人科学会)のCommittee Opinion No.420から,その要旨を引用したい1).なお,この要旨ではエストロゲンのみの使用はET(estrogen therapy),エストロゲン+プロゲストゲンの組み合わせの使用はHT(hormone therapy)と表記されている.

 以下,この問題に関する諸研究を年代を追ってみてみたい.

サクラの国のインドネシア・18

東日本大震災と支援

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.1390 - P.1391

インドネシア人看護師と震災支援

 震災から1か月半後の5月上旬,インドネシア人看護師と話をしていたところ,被災地に届けるために米を10 kg買ったという.なぜ米なのかと聞くと,不足していると聞いたからという.インドネシアの主食も米である.主食の選択肢が増えて需要が低下してきている日本と異なり,インドネシア人は米が好きである.インドネシアのマクドナルドのメニューにはご飯があるのに,日本のマクドナルドにはないと指摘されたことがある.

 すでにたくさんの支援物資が届き,一部では保管に困る話も聞こえている.米だけでは善意が届かない可能性がある.代表的なインドネシア料理ナシゴレンを作って避難所に配るという案も出たものの実行するのは難しい.

OBSTETRIC NEWS

早産管理のパラダイムシフト

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1392 - P.1394

 早産の原因は多数ある.主な原因は,自然早発陣痛,早期破水,そして子宮頸管無力症(子宮頸管不全症),さらに治療的早産もある.

 この20年,早発陣痛や早産に対する対応には,パラダイムの転換が起こった.

研究の工夫

安価な材料で作成したTissue Microarray―TMAを用いた研究の効率化

著者: 飯田幸司 ,   中山健太郎 ,   宮崎康二

ページ範囲:P.1395 - P.1397

 組織マイクロアレイ(tissue microarray : TMA)はパラフィン包埋組織の一部を多数並べて新しいパラフィンブロックに再包埋して数十~百を超える組織を一枚のスライドグラスに貼り付けて,免疫染色やin situ hybridization(ISH),fluorescence in situ hybridization(FISH)を一度に多数の検体で行うことができる技術で,1998年にKononenら1)が開発して以来その有用性が多数報告されている.しかしTMA作成には高価な専用のアレイヤー装置と冶具が必要であるため身近な器具を使う方法がいくつか報告されている2, 3).今回われわれは安価な汎用工具である電気ドリルとステンレスチューブを加工した先端冶具を使ってパラフィンブロックをくり抜いてコアを得て,両面テープによる貼り付け倒立包埋法でTMAブロックを作製し,それらを用いて研究の効率化に成功したので報告する.

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投稿規定

ページ範囲:P.1398 - P.1398

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1399 - P.1399

バックナンバー

ページ範囲:P.1401 - P.1401

アンケート用紙

ページ範囲:P.1402 - P.1402

次号予告

ページ範囲:P.1403 - P.1403

編集後記

著者: 岡井崇

ページ範囲:P.1404 - P.1404

〈野次〉

 子供の頃父親に連れられて,今は取り壊されてしまった難波の大阪球場に,年に数回は行った記憶がある.カードは南海ホークス対西鉄ライオンズが多かった.私と弟がライオンズの(今はタイガース),父親がホークスのファンだったからだ.

 大阪の野球ファンは柄が悪い.バッターボックスに立つ敵の選手に強烈な野次を飛ばす.「たまには前に飛ばしたりや,立派なバットが泣いてるで!」「お前の振りは宝くじと同じや,めったに当たらん!目つぶって振ってみー,当たるかもしれんな~!」周りはほとんど同チームのファンで,ユーモラスな野次には喝采が送られる.大抵がアルプススタンドの上段の方の騒ぎだから,もちろん,選手には聞こえない.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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