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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科65巻11号

2011年11月発行

文献概要

今月の臨床 常位胎盤早期剥離─ワンランク上の診断と治療 治療におけるポイントと課題

1.早剥の出血に関するリスク分析

著者: 松岡隆1 仲村将光1 長谷川潤一1 市塚清健1 関沢明彦1 岡井崇1

所属機関: 1昭和大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.1340 - P.1344

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 周産期合併症の中で常位胎盤早期剥離(早剥)はしばしば母体死亡の原因となる.1991~1992年のわが国での母体死亡230例のうち,原因を調査できた197例の検討で13例(6.6%)が早剥症例であり,DICまたは出血性ショックを合併していた.また,前置胎盤による死亡は7例(4例は癒着胎盤合併)であった1).つまり早剥による母体死亡は前置胎盤によるものよりも頻度が高い.早剥が重症となる原因の1つはDICであり,早剥ではDICを合併しやすく,胎児生存例では約10%,子宮内胎児死亡を伴う場合は約40%に発症すると言われている2)

 早剥に合併するDICは腎不全などの臓器不全を引き起こし,その治療には大量輸血を必要とすることもある.さらには多量出血のために子宮全摘を必要とすることにもなりかねない.分娩が無事終了した後も溢血したCouvelaire子宮は収縮不良により弛緩出血を引き起こす.このように早剥による多量出血は母体救急疾患と考えるべきである.現に東京都では母体救命搬送システムで,平成21年3月25日~平成23年1月31日の間に発生した107件(一般通報31件,転院搬送76件)の母体救命症例のうち最も多かったのは出血性ショックであり,次に多かったのが産科DICであった(図1).この搬送システムの適応症例は表1に示す通りで,重症の早剥は産科救急疾患とすべきである.しかし,後の調査で母体救命搬送システムにのらない重症早剥症例が意外と多かったことが分かっている.これは早剥が産科特有の疾患であるため産科の中で対応されることが多く,またその重症度のリスク分析が十分でないことが原因と考えられる.よって早剥症例においては,その重症度を的確に判定し治療対応することが重要であると思われる.

参考文献

1) 武田佳彦 : 厚生省心身障害研究 : 妊産婦死亡の防止に関する研究.平成8年度研究報告書.1996(II)
2) Pritchard JA, et al : On reducing the frequency of severe abruptio placentae. Am J Obstet Gynecol 165 : 1345─1351, 1991
3) 松岡 隆 : 胎盤異常並びに諸因子の多変量解析に基づく分娩時出血多量の予知に関する研究(Prediction of Massive Hemorrhage at Delivery by Multivariate Analysis Technique).日本産科婦人科學會雜誌61 : 1821─1832, 2009
4) 小林隆夫 : 産科出血とその対策 : 周産期診療プラクティス.産婦治療96(増刊号) : 772─778,2008
5) 真木正博,寺尾俊彦,池ノ上克 : 産科DICスコア.産婦治療50 : 119─124,1985
6) 田中利隆,竹田 省 : 常位胎盤早期剥離におけるDICの予防と対応 : 特集常位胎盤早期剥離の取り扱い.産婦の実際60 : 581─594,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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