文献詳細
文献概要
今月の臨床 常位胎盤早期剥離─ワンランク上の診断と治療 治療におけるポイントと課題
1.早剥の出血に関するリスク分析
著者: 松岡隆1 仲村将光1 長谷川潤一1 市塚清健1 関沢明彦1 岡井崇1
所属機関: 1昭和大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.1340 - P.1344
文献購入ページに移動早剥に合併するDICは腎不全などの臓器不全を引き起こし,その治療には大量輸血を必要とすることもある.さらには多量出血のために子宮全摘を必要とすることにもなりかねない.分娩が無事終了した後も溢血したCouvelaire子宮は収縮不良により弛緩出血を引き起こす.このように早剥による多量出血は母体救急疾患と考えるべきである.現に東京都では母体救命搬送システムで,平成21年3月25日~平成23年1月31日の間に発生した107件(一般通報31件,転院搬送76件)の母体救命症例のうち最も多かったのは出血性ショックであり,次に多かったのが産科DICであった(図1).この搬送システムの適応症例は表1に示す通りで,重症の早剥は産科救急疾患とすべきである.しかし,後の調査で母体救命搬送システムにのらない重症早剥症例が意外と多かったことが分かっている.これは早剥が産科特有の疾患であるため産科の中で対応されることが多く,またその重症度のリスク分析が十分でないことが原因と考えられる.よって早剥症例においては,その重症度を的確に判定し治療対応することが重要であると思われる.
参考文献
掲載誌情報