文献詳細
文献概要
今月の臨床 早産─ワンランク上の予防と管理
早産発生機序
著者: 上妻志郎1
所属機関: 1東京大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.1414 - P.1420
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■進化と体内保育
母親が体内で子供を育てるようになったことは,動物の進化における一大イベントであり,それがヒトの出現を可能にしたと言えるだろう.ヒトの絨毛細胞はより深く母体の子宮に侵入し,母体血に接するようになるため,胎児の発育にとって好条件が整えられる.胎児自らによる生存のための労力はできるだけ削減され,多くの時間とエネルギーが脳の発達のために費やされる.ヒトの場合には,出生後もしばらくはそのような状態が続く.体内での育児と同様な手厚い育児が必要なのである.体内から体外への育児の切り替えが出産であると言えるだろう.
母体にとって胎児は異物であり,本来であれば拒絶の対象となるはずであるが,胎児期には拒絶反応は抑えられている.子宮内に大きな異物があれば,免疫学的な拒絶反応がなくても,子宮筋の収縮が誘発されてもおかしくないが,そのような子宮収縮も抑えられている.そして,適当な時期が来ると,それらの抑制が取れて,胎児は排出される.なぜ,体内から体外に切り替える必要があるのか.胎児の発育や成熟が決め手なのか.胎盤の寿命か.あるいは,脳のさらなる発育のためには外界からの刺激が必要なのかもしれない.妊娠現象そのものが,きわめて複雑なメカニズムから成り立っており,正常であることの意味や機序を正確に理解することはできていない.
■進化と体内保育
母親が体内で子供を育てるようになったことは,動物の進化における一大イベントであり,それがヒトの出現を可能にしたと言えるだろう.ヒトの絨毛細胞はより深く母体の子宮に侵入し,母体血に接するようになるため,胎児の発育にとって好条件が整えられる.胎児自らによる生存のための労力はできるだけ削減され,多くの時間とエネルギーが脳の発達のために費やされる.ヒトの場合には,出生後もしばらくはそのような状態が続く.体内での育児と同様な手厚い育児が必要なのである.体内から体外への育児の切り替えが出産であると言えるだろう.
母体にとって胎児は異物であり,本来であれば拒絶の対象となるはずであるが,胎児期には拒絶反応は抑えられている.子宮内に大きな異物があれば,免疫学的な拒絶反応がなくても,子宮筋の収縮が誘発されてもおかしくないが,そのような子宮収縮も抑えられている.そして,適当な時期が来ると,それらの抑制が取れて,胎児は排出される.なぜ,体内から体外に切り替える必要があるのか.胎児の発育や成熟が決め手なのか.胎盤の寿命か.あるいは,脳のさらなる発育のためには外界からの刺激が必要なのかもしれない.妊娠現象そのものが,きわめて複雑なメカニズムから成り立っており,正常であることの意味や機序を正確に理解することはできていない.
参考文献
1) 佐川典正 : 内分泌から見た早産の病態.早産,pp24─30,メジカルビュー社,2007
2) 金山尚裕 : 分娩発来機序と早産.早産,pp11─23,メジカルビュー社,2007
3) Romero R, Espinoza J, Kusanovic JP, et al : The preterm partrition syndrome. BJOG 113 : 17─42, 2006
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