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今月の臨床 静脈血栓塞栓症─予防・診断・治療
深部静脈血栓症合併妊婦の管理
著者: 松岡隆1 長谷川潤一1 市塚清健1 関沢明彦1 岡井崇1
所属機関: 1昭和大学医学部産婦人科学教室
ページ範囲:P.142 - P.147
文献購入ページに移動周産期領域における症候性の下肢深部静脈血栓症(deep venous thrombosis : DVT)の頻度は,欧米で分娩1,000に対して0.5~7例と報告されているが,近年は予防法の進歩により減少傾向にある1).しかし,妊娠は生理的に凝固系が亢進している状態であり,妊娠そのものが深部静脈血栓症(DVT)のリスクとなる(表1).日本産婦人科・新生児学会が行った全国調査によると静脈血栓塞栓症の妊娠中発症は初期・後半期・分娩後の3相性のピークがみられたが2, 3),DVTの発症のピークは妊娠初期にあることが分かった.この理由はエストロゲンによる凝固因子の増加,重症妊娠悪阻による脱水と安静臥床,妊娠前には症状を呈さなかった先天性凝固異常の顕在化などが原因とされている(表2).当院でのDVTの発症も妊娠初期が多く,産褥・帝切後など周術期の発症に注意を払うのは当然であるが,妊娠初期にも注意が必要なことを忘れてはならない.また,先天性の血栓症素因の家族歴や鑑別診断も重要である.
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