文献詳細
文献概要
今月の臨床 静脈血栓塞栓症─予防・診断・治療
抗リン脂質抗体症候群と静脈血栓塞栓症
著者: 杉俊隆1
所属機関: 1杉ウイメンズクリニック不育症研究所
ページ範囲:P.161 - P.165
文献購入ページに移動Thrombophilia(血栓症素因)と妊娠
正常妊娠中は,血液凝固系が亢進することが知られている.その理由としては,フィブリノーゲン,第VII,VIII,IX,X因子,von-Willebrand factorの血漿レベルの増加,機能的に活性化プロテインCに対する抵抗性が増すこと,プロテインSが減少すること,PAI─1やPAI─2の増加,tPAの減少,血小板活性化などが挙げられる.よって,妊娠中の静脈血栓症のリスクは,非妊時より6倍高いといわれている.したがって,血栓症素因を背景にもつ患者の場合,非妊時に無症状であっても,妊娠するとさまざまな血液凝固系異常に起因するトラブルを発症し得る.これらの血栓傾向は,分娩時がピークであり,一般的に分娩後3週間で凝固,線溶系は正常化する.
抗リン脂質抗体症候群に関連する合併症には,静脈血栓,動脈血栓,反復流産,妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剥離,子宮内胎児発育遅延(intrauterine growth restriction : IUGR),子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death : IUFD)が代表的である.静脈血栓は,下肢の深部静脈血栓が最も多く,その他網膜,腎,肝静脈などがある.動脈血栓は静脈血栓より頻度が低い.脳血栓,末梢動脈血栓,狭心症および心筋梗塞が報告されている.
正常妊娠中は,血液凝固系が亢進することが知られている.その理由としては,フィブリノーゲン,第VII,VIII,IX,X因子,von-Willebrand factorの血漿レベルの増加,機能的に活性化プロテインCに対する抵抗性が増すこと,プロテインSが減少すること,PAI─1やPAI─2の増加,tPAの減少,血小板活性化などが挙げられる.よって,妊娠中の静脈血栓症のリスクは,非妊時より6倍高いといわれている.したがって,血栓症素因を背景にもつ患者の場合,非妊時に無症状であっても,妊娠するとさまざまな血液凝固系異常に起因するトラブルを発症し得る.これらの血栓傾向は,分娩時がピークであり,一般的に分娩後3週間で凝固,線溶系は正常化する.
抗リン脂質抗体症候群に関連する合併症には,静脈血栓,動脈血栓,反復流産,妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剥離,子宮内胎児発育遅延(intrauterine growth restriction : IUGR),子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death : IUFD)が代表的である.静脈血栓は,下肢の深部静脈血栓が最も多く,その他網膜,腎,肝静脈などがある.動脈血栓は静脈血栓より頻度が低い.脳血栓,末梢動脈血栓,狭心症および心筋梗塞が報告されている.
参考文献
1) Miyakis S, Lockshin MD, Atsumi T, et al : International consensus statement on an update of the classification criteria for definite antiphospholipid syndrome (APS). J Thromb Haemost 4 : 295─306, 2006
2) Sugi T, McIntyre JA : Autoantibodies to phosphatidylethanolamine(PE)recognize a kininogen-PE complex. Blood 86 : 3083─3089, 1995
3) Katsunuma J, Sugi T, Inomo A, et al : Kininogen domain 3 contains regions recognized by antiphoshpatidylethanolamine antibodies. J Thromb Haemost 1 : 132─138, 2003
4) Inomo A, Sugi T, Fujita Y, et al : The antigenic binding sites of autoantibodies to factor XII in patients with recurrent pregnancy losses. Thromb Haemost 99 : 316─323, 2008
5) 杉 俊隆 : EBMに基づく不育症診療の実際.pp54─59,金原出版,2007
6) Coomarasamy A, Honest H, Papaioannou S, et al : Aspirin for prevention of preeclampsia in women with historical risk factors : A systematic review. Obstet Gynecol 101 : 1319─1332, 2003
7) Rey E, Garneau P, David M, et al : Dalteparin for the prevention of recurrence of placental-mediated complications of pregnancy in women without thrombophilia : a pilot randomized controlled trial. J Thromb Haemost 7 : 58─64, 2009
8) 杉 俊隆 : 不育症学級.p47,金原出版,2009
掲載誌情報