文献詳細
症例
MRIにて脂肪抑制を示さないfat balls様所見を認めた成熟嚢胞性奇形腫の1例
著者: 佐藤賢一郎1 森下美幸1 鈴木美紀1 北島義盛2 水内英充3 水内将人4 塚本健一5 藤田美悧5
所属機関: 1新日鐵室蘭総合病院産婦人科 2セントラル女性クリニック 3みずうちウィメンズクリニック 4札幌医科大学医学部産婦人科 5新日鐵室蘭総合病院臨床病理検査室
ページ範囲:P.184 - P.187
文献概要
症例は71歳(閉経56歳),0経妊で,消化器内科で膵炎治療中にCTで骨盤内腫瘤を認め,紹介された.腫瘍マーカーは基準範囲内で,経腟超音波では嚢胞奇形腫と思われる腫瘍を認めた.MRIでは子宮後方に9.4×8.7 cmのT1強調像で中信号,T2強調像で高信号を示す嚢胞性病変を認め,さらに内部には1~1.5 cm程度のT1強調像で中信号,T2強調像で低信号を示す小嚢胞を含んでおり,脂肪抑制像では抑制されなかった.手術を施行したところ,右卵巣腫瘍は重量280 g,内容物は大部分が薄い褐色調の砂状の組織で満たされていた.病理組織検査では成熟嚢胞性奇形腫と診断され,嚢胞内に多量に認められた砂状物質はケラチン物質とそれを含めた変性・壊死物質であった.
稀ではあろうが,卵巣嚢胞性奇形腫の診断の際にはこのようなケースの存在も考慮すべきである.
参考文献
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