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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科65巻4号

2011年04月発行

今月の臨床 婦人科内分泌療法─病態の理解と正しい診断に基づく対処・治療のポイント

更年期・老年期

2.更年期のうつ

著者: 後山尚久1

所属機関: 1大阪医科大学健康科学クリニック未病科学・健康生成医学寄付講座

ページ範囲:P.531 - P.535

文献概要

 女性をライフサイクルから眺めると,閉経周辺期はさまざまな身体内外環境の変動,老年期の入り口であるという心理的行動(基本的には退行的,守備的)を基本として,現実的な多様なストレスへの認知や処理の方向性に歪みが生じ,心身への大きな影響が不定愁訴の形で表在化する.症例によっては各種の精神障害の発生もみられる1).閉経についてnegativeな姿勢の更年期女性はpositiveな姿勢の女性の約1.4倍存在し,そのような女性は抑うつ気分や不安定な情緒,焦燥感などの精神症状を起こしやすいことが報告されている2).更年期女性の不定愁訴は,一般には更年期障害として扱われることが多いが,ホルモン変動の度合や社会的立場の違い,個人的な気晴し手段(Coping style)の有無によって重症度はさまざまであるといわれる3).重症例には,抑うつ気分がきわめて強いものもあり,うつ病との鑑別診断が必要となる.

 本稿では,更年期女性のうつ病,うつ状態の診療に際し,その対処,治療の実際面に関して解説する.

参考文献

1) 後山尚久 : 更年期・閉経期外来で遭遇する精神疾患─その診断,治療と臨床的対応.産婦進歩47 : 346─355,1995
2) Jimenez L, Perez SG : The attitude of the woman in menopause and its influence on the climacteric. Ginecol Obstet Mex 67 : 319─322, 1999
3) Neri I, Demyttenaere K, Facchinetti F : Coping style and climacteric symptoms in a clinical sample of postmenopausal women. J Psychosom Obstet Gynaecol 18 : 229─233, 1997
4) 後山尚久 : 不定愁訴─内分泌連関の解明およびジェンダー・スペシフィック・メディシンとしての心身医療の必要性.日心療内科誌7 : 125─131,2003
5) 後山尚久 : 性中樞老化機構と不定愁訴の発症機序に対する基礎的・臨床的アプローチおよび中高年女性の健康管理における全人的医療としての研究とその対策.日更年医誌11 : 42─55,2003
6) 後山尚久 : 更年期女性のうつ病の特徴と臨床的対応.産婦治療101 : 385─392,2010
7) 後山尚久 : 更年期女性とメンタルヘルス─更年期障害の治療に必要な知識と心構え.心身医学48 : 1049─1056,2008
8) 後山尚久 : 更年期医学で臨床応用される心理テスト.暖かい医療への道を拓く更年期の臨床.pp35─54,診断と治療社,東京,2006
9) 後山尚久 : これからのプライマリ・ケアと心身医学─産婦人科におけるプライマリ・ケア.心療内科2 : 12─21, 1998
10) 中井吉英 : 治療的自我について.心療内科初診の心得.pp91─97,三輪書店,東京,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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