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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科65巻6号

2011年06月発行

文献概要

今月の臨床 ART─いま何が問題か

統計から見たわが国のART

著者: 桑原章1

所属機関: 1徳島大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.750 - P.756

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はじめに

 1978年,英国で世界初のART児が誕生した5年後,1983年にわが国でも初のART児が出生した.筆者が籍を置く徳島大学病院でも1982年に全国に先駆けて医学部倫理委員会が発足し,体外受精が許可され,1984年に無事第1例目の出産となった.当初より全国のART治療をまとめている日本産科婦人科学会の報告1)によると2008年現在,ART実施施設数(登録施設数)は609施設に及ぶ.近年の登録施設数および周期数の推移(図1)をみると,登録施設数は2002年以降ほぼ横ばいとなり(2006年に減少したのは,全登録施設を対象に再審査を行い,抹消となった施設が多かったため),わが国におけるARTは普及期に達していると推測される.一方,ART実施周期数(登録総数)は年々増加の一途をたどり,2008年では190,613周期が登録されている.特に2004年以降,登録件数が一段と増加しているのは,2004年に始まった「特定不妊治療助成制度」の影響も少なからずあると推測される.1989年には449名,全出生の0.04%と全人口に対して非常に稀であったART出生児数も年々増加し,2008年には21,704人が出生している.実に全出生児の2.0%がART児となっている.

 これまで30年間のARTの発展,普及には目を見張るものがあるが,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠などの副作用,患者から見て高いとはいえない成功率,非配偶者間ARTなどの社会的問題,さらに助成制度の効果と生まれてくる児の安全性など,解決の道筋が示されている点,今も未解決な点,さまざまである.

参考文献

1)平成21年度倫理委員会登録:調査小委員会報告.日産婦誌62:1821-1849, 2010
2)Wang YA, Dean J, Sullivan EA:Assisted reproductive technology in Australia and New Zealand 2006(http://www.aihw.gov.au/)
3)Wang YA, Chambers GM, Sullivan EA:Assisted reproductive technology in Australia and New Zealand 2008(http://www.aihw.gov.au/)
4)2006 ART success rates national summary(http://www.cdc.gov/art/ARTReports.htm)
5)2008 ART success rates national summary(http://www.cdc.gov/art/ARTReports.htm)
6)de Mouzon J, et al:Assisted reproductive technology in Europe, 2006:results generated from European registers by ESHRE. Hum Reprod 25:1851-1862, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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