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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科65巻8号

2011年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 母子感染─新しい制御戦略

妊婦健診における感染検査

著者: 小畠真奈 ,   濱田洋実

ページ範囲:P.980 - P.985

 妊婦健診における感染症検査の目的は,母子感染予防である.

 わが国における妊婦健診は,地方自治体により制度や補助金の額は異なるものの,諸外国と比較して回数も多く,受診率も高い.元来,妊婦健診は,母体の健康管理のために行われてきたものであるが,胎児超音波や血液検査の診断の進歩に伴い,出生前から児の管理を行う機会が増えてきている.妊婦健診の最重要項目の1つである感染症のスクリーニングは,母子感染予防対策の基本となる一方で,妊婦が望むと望まざるとにかかわらず出生前診断の端緒となる可能性を有している.2011年3月に発行された「産婦人科診療ガイドライン産科編2011」1)では,妊婦健診における感染症スクリーニングの推奨度を示しているが(表1),妊婦健診を担当する産婦人科医は,各スクリーニング項目について熟知し,妊婦にその結果を説明し,適切な指導を行う義務がある.

胎内感染のリスクと対策

1.トキソプラズマ

著者: 牧野康男 ,   松田義雄

ページ範囲:P.986 - P.988

 トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)は胞子虫網,真コクシジウム目,サルコシスティス科に属する原虫であり,ネコ科動物を終宿主とし,ヒトを含む哺乳動物や鳥類などの恒温動物を中間宿主とする人畜共通寄生虫の1つである1, 2)

 トキソプラズマ感染時の臨床症状は,頸部リンパ節腫脹,易疲労感,発熱や咽頭痛など非特異的なもので,しばしば無症状の場合もある3).妊娠中にトキソプラズマが初感染した場合,15~45%に先天性感染が生じ,そのうち,約90%が顕性となり,新生児に水頭症,脈絡網膜炎,精神運動障害などの症状が生じる2, 3).本稿では,トキソプラズマの疫学,感染経路,診断ならびに治療などについて述べる.

2.梅毒,結核

著者: 今中基晴 ,   橘大介

ページ範囲:P.989 - P.994

梅毒と母子感染

■梅毒とは

 梅毒はTreponema pallidumによる感染症で,性感染症の代表的疾患である.通常,Treponema pallidumが皮膚や粘膜の小さな傷から侵入して感染し,ついで血行性に全身に散布されて,全身のさまざまな症状を呈する慢性感染症である.臨床像が妊娠によって変化することはない.

 梅毒は先天梅毒と後天梅毒に分類される.また,症状を認める顕症梅毒と,梅毒血清反応は陽性であるが症状が認められない無症候梅毒(潜伏梅毒)に分けられる.顕症梅毒は第1期梅毒,第2期梅毒,第3期梅毒,第4期梅毒に分類され,それぞれ特徴的な臨床像を示す.現在では,第3期梅毒,第4期梅毒はまれである.無症候梅毒は,(1)初感染後全く臨床症状を呈さない場合,(2)第1期から第2期への移行期,(3)第2期の発疹消退期,(4)陳旧性梅毒などの場合がある1).陳旧性梅毒は感染後長時間経過し,すでに治癒し感染性のないもので,治療を要しない状態をいう.陳旧性梅毒以外は無症候でも治療が必要である.

3.風疹ウイルス

著者: 関博之

ページ範囲:P.996 - P.999

 風疹患者数は年々減少してきている.1982~2002年までの定点あたりの風疹患者数の推移を見ると,1982年と1987年に流行がみられ,1988年,1992年,1993年にも軽度の流行がみられたが,その後2000年以降はほとんどみられなくなった(図1)1).これは,1994年の予防接種法改正により,1995年4月から中学生のみならず生後12~90か月までの小児にも風疹ワクチンが定期接種として実施されるようになったことが要因と考えられる.ワクチン接種により,現在は風疹の全国的な流行は抑制されているが,ワクチン接種率が不十分であると,近い将来わが国でもギリシアでみられたような全国規模の風疹流行2)が危惧される.特に,2001年度感染症流行予測調査で抗体保有率の低かった15歳女性は2011年には25歳となる.小規模な地域流行でも先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome : CRS)患児が出生していることを考えると,より多くの対象者が風疹ワクチンの接種を受けられるような積極的な取り組みが必要となる.

 CRSに対するウイルス特異的な治療はなく,社会的な防衛手段として風疹ワクチンの接種率を上げること,個人的な防衛手段として女性は妊娠前にワクチンを接種することにより風疹に対する免疫を獲得しておくことが重要である1).特に,風疹未罹患または風疹ワクチン未接種の妊娠希望の女性は妊娠の2か月以上前に任意接種としてワクチン接種を受けておくことが望まれる.

4.サイトメガロウイルス

著者: 川口晴菜 ,   光田信明

ページ範囲:P.1000 - P.1003

 サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus : CMV)の胎内感染は,胎児に重大な神経学的後遺症や聴力障害を引き起こすことが知られている.妊娠中の初感染では,30~40%に胎内感染を起こし,再活性化にても0.1~1%の胎内感染が報告されている.日本では,欧米諸国と比して妊娠可能年齢の女性におけるサイトメガロウイルスの抗体保有率は90~95%と高かったが,近年70%程度に低下していることが報告されており,今後,妊娠中の初感染ならびに先天性サイトメガロウイルス感染症の増加が危惧される.

5.水痘

著者: 永井立平 ,   林和俊

ページ範囲:P.1004 - P.1008

 水痘は水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus : VZV)感染により発症する.初感染によって水痘を発症し,治癒とともに知覚神経に沿って三叉神経節や脊髄後根の知覚神経節に潜伏感染する.その後,宿主の細胞性免疫低下に伴い再活性化し,皮膚の神経分布領域に帯状疱疹を発症する.わが国では9歳以上の90%がVZV抗体を保有しており1),21~38歳女性のVZV抗体保有率は98.0~99.1%といわれている.臨床でわれわれが水痘罹患妊婦に遭遇する頻度は非常に少ないが,ひとたび発症し重症化すると母体水痘肺炎を合併し命にかかわる.また,罹患時期によっては児の予後へも大きく影響し,管理方針も罹患と分娩までの期間により異なるといった特殊性を有するため,産科医としては本疾患に対しての慎重な配慮と適切な対応を行う必要がある.

6.麻疹

著者: 永井立平 ,   林和俊

ページ範囲:P.1009 - P.1012

 麻疹はパラミクソウイルス科に属する麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症である.麻疹ウイルスの感染様式は空気感染(飛沫核感染),飛沫感染,接触感染とさまざまであり,その感染力はきわめて強い.不顕性感染はほとんどなく,感染した場合90%以上が発病する.麻疹に対する特異的な治療方法は存在せず,麻疹ウイルスの感染・発病に対する予防手段は麻疹ワクチンしか存在しない.一度罹患すると終生免疫が獲得されること,基本的にはヒトを唯一の宿主とすることから根絶可能疾患と考えられているが,わが国はワクチン接種を行っているにもかかわらず麻疹廃絶できていない数少ない先進国である.WHO分類でも麻疹制圧期(常に麻疹の流行が起こりうる状態)とされており,妊孕性のある年齢での麻疹発症のリスクは決して低いとは言えない状況下にある1~3)

7.パルボウイルスB19

著者: 松田秀雄 ,   吉田昌史 ,   川上裕一

ページ範囲:P.1013 - P.1019

パルボウイルスとは

 ヒトパルボウイルスB19(以下PB19)はParvoviridae familyのErythrovirus genusに属するウイルスである.PB19は1975年にB型肝炎のスクリーニングの途中で発見され,その際,パネルBの19番目のサンプル血液中に存在したことから,B19と名付けられた1).人間に感染しうるErythrovirusはPB19のほかにgenotype 2(A6)とgenotype 3(V9)がきわめてまれな存在として免疫不全個体から発見され近年報告されているが,通常パルボウイルス感染症(リンゴ病)ではPB19を原因ウイルスとしてよい.ヒトのみがPB19の宿主となるので,家畜,ペットなどを通じて感染するものではない.

 疾患としてPB19感染症が同定されたのは1981年であり,現在では,正常人においてリンゴ病・関節炎,妊婦において胎児水腫・子宮内胎児死亡,溶血素因のある免疫力の低下した個体において一過性骨髄無形成発作(TAC : transient aplastic crisis)などを引き起こすことが知られている.妊婦で感染が疑われる場合,胎児に意識が向きがちであるが,母体の症状にも注意が必要である.

8.リステリア症

著者: 竹田善治 ,   安達知子 ,   中林正雄

ページ範囲:P.1020 - P.1023

 2010年12月,母子健康手帳の任意記載事項様式の改正で妊娠中の食中毒予防(リステリア菌食中毒)に関する記載が追記された.あわせてリステリア菌による食中毒の予防のため,妊婦向けの「これからママになるあなたへ」と題したパンフレットも作成され厚生労働省ホームページに掲載されている(図1)1)

 リステリア症はあまり聞き慣れない感染症である.というのもわが国での平均年間発症件数は83件で,通常は悪性腫瘍,AIDSなど免疫不全状態でない限り罹患することはまれな疾患のためである.しかし,妊婦は本菌に対する感受性がきわめて高く,欧米ではリステリア症1,510例のうち12%を妊婦が占めていたとする調査がある2).一方でリステリア菌が妊婦に感受性が高いと認識している医師・助産師はわずか18%にとどまっていた3).リステリア症の頻度は決して高くはないが,今後は妊婦にとって危険な感染症として周産期に携わる医療者に周知され,妊婦にも肉や魚のパテの摂取に気をつけるなどの予防意識が広まることが望まれる.

産道感染・母乳感染への対策

1.肝炎ウイルス(B型,C型)

著者: 米田哲 ,   中島彰俊 ,   斎藤滋

ページ範囲:P.1024 - P.1028

 B型肝炎ウイルス,および,C型肝炎ウイルスは,肝細胞を標的として感染し,肝細胞にて増殖し,肝炎を惹起するウイルスであり,現在もなお,母子感染による児のキャリア化を生ずる問題を残している.これらのウイルスは,いわゆる遅発性感染ウイルス(slow infection virus)であるが,将来,慢性活動性肝炎,肝硬変,肝細胞癌へと深刻な病状へと進展するため,母子感染を可能な限り減少させる対策が求められる.

 また,SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクが低下するなどの母乳が新生児へ与える影響1),あるいは母乳育児が母親に与える利点(乳癌,子宮体癌発生率の低下など)を考えると,可能であれば母乳育児を推奨したいところであり2),これら肝炎ウイルスの母乳育児による新生児への感染率,影響力を正しく理解し,正確な情報を提示する必要がある.

2.HTLV─1

著者: 三浦清徳 ,   増﨑英明

ページ範囲:P.1029 - P.1037

 成人T細胞白血病(ATL)やHTLV─I型関連脊髄症(HAM)の原因であるHTLV─1の主な感染経路は,母乳を介した母子感染である.HTLV─1キャリアは九州・沖縄など一部の地域で高頻度に認められ,長崎県では1987年からHTLV─1母子感染予防事業に取り組み,妊婦のHTLV─1抗体スクリーニングシステム,検査結果の説明とカウンセリング,フォローアップに至るHTLV─1母子感染予防に関するプロトコールが整備されている1, 2).一方,平成20年度・平成21年度厚生労働科学研究事業報告により,HTLV─1キャリアが大都市圏に拡散し全国的な妊婦のHTLV─1抗体スクリーニングの必要性が判明した3, 4).『産婦人科診療ガイドライン産科編2011』では,妊婦のHTLV─1抗体スクリーニングはCからAに引き上げられ5),これまでHTLV─1キャリアが低頻度であった地域においても,妊婦のHTLV─1抗体スクリーニングシステムの確立が必要とされている.

 本稿では,HTLV─1母子感染予防対策について,長崎県における取り組みとその成果をもとに解説する.

3.B群溶連菌

著者: 大浦訓章

ページ範囲:P.1039 - P.1045

 B群溶血性レンサ球菌(group B streptococcus : GBS)感染症は,新生児が産道感染を起こした場合,早期に発症する早発型では致死率が5.7%,後遺症発症が4.9%といわれている危険な感染症である1)

 まずは以下に日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン産科編2011』におけるGBS保菌診断と取り扱いに関する事項を紹介する.

4.単純ヘルペスウイルス

著者: 堤誠司 ,   前川絢子 ,   倉智博久

ページ範囲:P.1046 - P.1050

 単純ヘルペスウイルス感染症は,単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus : HSV)の感染によって発症する性感染症の1つである.妊娠中のHSV感染による流産・早産の増加や先天奇形・異常の発症はまれであるが,経腟分娩時の新生児への感染が周産期管理上の問題点となる.本稿では,HSV感染症の疫学,診断,治療および新生児ヘルペス症の予防対策について重要な点を述べる.

5.クラミジア,パピローマウイルス,カンジダ

著者: 前濱俊之

ページ範囲:P.1053 - P.1057

クラミジア感染と母子感染

 性器クラミジア(Chlamydia trachomatis)感染症は10~20代に多く,わが国の性感染症の中で最も多い.クラミジアは性行為により感染し,女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を引き起こす.妊娠初期において,流産の原因となるかどうかは結論がでていない.母子感染は主に産道感染であるが,新生児結膜炎,新生児肺炎を引き起こすことが報告されており,分娩前の検査および治療が望ましい.クラミジアは淋菌などのほかの性感染症と合併していることも多いため,ほかの性感染症検査も同時に実施することが重要である.クラミジアはすべての性感染症のなかで最も多く,男女とも無症状または無症候の保菌者が多数存在する.女性のクラミジア検査は原則として,子宮頸管の分泌液か,擦過検体からクラミジア検出を行う.しかし,子宮頸管のみの検索はきわめて限られたものであるため,加えて血清抗体検査を行うことがある.血清抗体価では治癒判定はできない.

6.HIV

著者: 渡辺博

ページ範囲:P.1058 - P.1061

 HIVの母子感染経路には,妊娠中の経胎盤感染,分娩時の産道感染,出産後の経母乳感染の3経路がある.HIV感染妊婦を介入せずに自然経過を見た場合の母子感染率は20~30%であるが,妊娠中のZidovudine(AZT)服用によってHIVの母子感染率が有意に低下することが報告1)されて以来,抗ウイルス薬による母体血中ウイルス量の抑制が母子感染予防の大原則となっている.さらに分娩時の産道感染を防止するための陣痛発来前の選択的帝王切開,経母乳感染を防止するための人工乳哺育が,現在わが国での標準的な母子感染防止策となっている.本稿ではわが国のHIV母子感染予防対策の経緯と,諸外国で試みられている新しい感染予防戦略について述べる.

連載 病院めぐり

社会医療法人愛仁会千船病院

著者: 本山覚

ページ範囲:P.1063 - P.1063

 社会医療法人愛仁会千船(ちぶね)病院は,昭和34年に大阪市西端にある「千船」の地に誕生し,当初から活発な産婦人科診療が行われてきました.現在,千船病院は入・外分離の開放型病院として運営され,診療科数は救急センターを含め18で,病床数は292,附属腎臓透析クリニックの43ベッドからなる中規模急性期病院です.

 母子センターは産科38床,NICU 15床,GCU 15床からなり,大阪府地域周産期母子医療センターに指定されています.他方,リスクの低い分娩に対して院内助産院2床が充当され,2009年4月からは「千船病院バースセンター」として40床が稼動しております.

Estrogen Series・97

エストロゲン低用量腟錠による萎縮性腟炎の治療

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1064 - P.1065

 更年期後女性における血中エストロゲン値の低下は腟粘膜の萎縮性変化をもたらす.更年期後女性の10~40%は萎縮に伴う症状を訴える.その結果,腟の乾燥化,かゆみ,痛み,性交痛,性行為に伴う出血などがよくみられる.

 ここにご紹介するUtianらの論文は超低用量(10 mcg)の17beta-estradiol(E2)を含有する腟錠を使用した場合の観察で,合計307名の更年期後女性を対象とし,プラセボとエストロゲン群とを比較検討した.なお,17beta-estradiol 25 mcgを含む腟錠は米国でVagifemという商品名で市販されている.この論文では,はじめの2週間は毎日,その後は1週間に2回自分で腟内に挿入し,総計52週間にわたり観察された.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

挙児希望にて来院し,子宮頸部小細胞癌と判明した1例

著者: 藤田裕 ,   山崎龍王 ,   梅澤聡

ページ範囲:P.1066 - P.1069

症 例

■患者 35歳,0経妊0経産.

■主訴 挙児希望.

■既往歴 プロラクチノーマにてカベルゴリン(カバサール®)内服中.

■家族歴 特記事項なし.

OBSTETRIC NEWS

子宮頸管短縮妊婦に子宮頸管縫縮術は有効か?

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1070 - P.1073

 早産は世界的に重大な産科合併症である.多数ある原因の中で,頻度は非常に低いが子宮頸管不全症も早産に関連している.

 子宮頸管短縮が早産率増加と強い関連があることは多くの研究で報告されている.

サクラの国のインドネシア・15

合格率4%

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.1074 - P.1075

咲くサクラ

 3月25日,第100回看護師国家試験の合格者が発表された.経済連携協定(Economic Partnership Agreement : EPA)で来日している外国人看護師候補者の受験者398名のうちインドネシア人15名,フィリピン人1名の16名が合格した.これで日本の看護師資格を取得したEPAの外国人看護師は,昨年のインドネシア人2名,フィリピン人1名とあわせて19名になった.合格率4%(インドネシア人5%,フィリピン人1%)は,昨年の1%からみれば4倍であるものの,全体の合格率91.8%から見れば極端に少ない.初の合格者が誕生して注目を浴びた昨年と違い,東日本大震災の陰でほとんど報道されることはなかった.

 今回のインドネシア人合格者は,2008年に来日した第一陣91名のうち13名で合格率は14.3%,2009年に来日した第2陣159名のうち2名で合格率は1.3%,フィリピン人は2009年に来日した第一陣73名のうち1名で合格率は1.4%,2010年に来日したインドネシア人の第三陣およびフィリピンの第二陣に合格者はなかった.

症例

子宮内膜類内膜癌に絨毛癌を伴った1例

著者: 朝野晃 ,   島崇 ,   早坂篤 ,   鈴木博義 ,   小澤信義 ,   和田裕一

ページ範囲:P.1077 - P.1082

 症例は57歳,主訴は不正性器出血であった.子宮は超手拳大で,子宮内膜細胞診は陽性で子宮体癌の診断であったが,血中HCGが1,448,271 mIU/mLと異常高値であり,肺転移を認めた.

 子宮体癌および絨毛癌の診断で腹式子宮全摘術,両側付属器切除術を施行した.病理組織診断では類内膜癌と連続して核の異型の顕著なシンチオトロホブラストおよびサイトトロホブラストからなる絨毛癌を認め,絨毛癌成分を伴う栄養膜細胞への分化を示す類内膜癌G3と診断した.

 術後にMEA療法,EP療法,EMA-CO療法を施行したが化学療法は奏効せず.脳転移,肺転移をきたし,初回治療後20か月で死亡し予後不良であった.

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投稿規定

ページ範囲:P.1084 - P.1084

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1085 - P.1085

バックナンバー

ページ範囲:P.1087 - P.1087

アンケート用紙

ページ範囲:P.1088 - P.1088

次号予告

ページ範囲:P.1089 - P.1089

編集後記

著者: 岡井崇

ページ範囲:P.1090 - P.1090

〈デザイナーベイビー〉

 小生の2作目『デザイナーベイビー』(早川書房)が7月15日から書店に並んでいます.ここに“あとがき”の一部を記して拙著を紹介させて頂きます.

 『前作の執筆で身体のあちこちを痛めたのに,それが完治しない内にまたペンを手にしたのは,物語を創る楽しさと書き終えた後に味わったあの達成感に取りつかれてしまったから,としか言い様がありません.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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