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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科65巻9号

2011年09月発行

雑誌目次

今月の臨床 不妊診療のABC─ARTの前にできること

インフォームド・コンセントに役立つ不妊統計

著者: 栁田薫 ,   高見澤聡 ,   溝口かをる

ページ範囲:P.1094 - P.1100

 疾患に対して適切な検査・治療を選択するためには,種々の情報収集が重要なことはいうまでもない.情報の入手は患者に説明をして納得していただくためにも必要なことである.本稿では不妊治療の概論として知っておくべきデータについて解説したい.

不妊検査の要点

著者: 菅沼信彦

ページ範囲:P.1102 - P.1106

 1978年,世界初の体外受精児の誕生がEdwrads博士(2010年にノーベル生理学・医学賞を受賞)らによって成功して以降,この技術は全世界に広まった.日本においても,2008年には年間2万人以上が体外受精関連技術により出生している1).少産少子化が進むわが国においては,50人の出生児に対し1人は体外受精児となり,まさに「不妊治療=体外受精」の社会的印象を与えている.

 しかしながら,わが国における潜在的な不妊患者総数は140万人におよぶと言われており,その中で不妊治療を受けているカップルは約1/3の47万人ほどである2).各種不妊治療の最終的な成功率などの詳細は別稿「インフォームド・コンセントに役立つ不妊統計(p1094)」に譲るが,多くの例では体外受精に至る前に妊娠に成功し得ると考えられる.ARTが不妊症患者に与える身体的,精神的負担が多大であることは言うまでもなく,さらにわが国においては健康保険の適応外であり経済的な負担も考慮しなければならない.

不妊原因診断とARTの前の対処法

1.中枢性排卵障害・高PRL血症

著者: 今井文晴 ,   岸裕司 ,   峯岸敬

ページ範囲:P.1108 - P.1112

 排卵障害は不妊症原因の約1/3を占め,臨床上大きな問題となっている.このため排卵障害の原因と重症度を正確に診断し,これに合わせた適切な治療法を診断することが重要となる.排卵が障害される原因は主として,(1)視床下部,(2)下垂体,(3)卵巣の各部位に認められ,これは表11)のように分類される.

 視床下部性排卵障害の主な原因として栄養不良やストレスが挙げられる.これは視床下部におけるGnRH分泌低下により引き起こされるとされる.GnRH分泌は中枢・末梢の種々の因子により促進的または抑制的に制御されているが,近年GnRH分泌促進因子としてレプチンおよびkisspeptinが,またGnRH分泌抑制因子としてneuropeptide Y(NPY)などの摂食促進因子やストレス関連因子の一部およびgonadotropin inhibiting hormone/RFamide-Related-Peptide(GnIH/RFRP)が注目を集めている.栄養不良の状態や強いストレスを受けた状態ではGnRH分泌促進因子の作用の抑制とGnRH分泌抑制因子の作用の活性化が同時に起こり,GnRH分泌が低下するものと推測される2)(図1).

2.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

著者: 柴田健雄 ,   富澤英樹 ,   牧野田知

ページ範囲:P.1114 - P.1120

 多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,1935年のSteinとLeventhalによる無月経,両側卵巣にみられる多嚢胞,黄体の欠如もしくは極端な発育不全,多毛を主徴とする7症例の歴史的な報告1)をはじめとし,多くの研究者によって報告されてきた排卵障害を呈する症候群である.研究者による若干の概念の違い,人種による病態像の違いなどがあるが,世界的にみても性成熟期の15女性に1人は本症候群に罹患している2)といわれ,不妊診療の現場では大きな比重を占める疾患である.昨今普及している生殖補助技術(assisted reproductive technology : ART)の立場からみれば,排卵障害に関しては経腟超音波下での採卵(oocyte pick up)によって容易に解決すると思われがちであるが,PCOSにおけるARTでは卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)の発症が有意に多く,原因に応じた非侵襲的な方法で治療ができるならばそのほうが望ましいことはいうまでもない.PCOSの病因としては,(1)高アンドロゲン血症,(2)卵胞発育の異常,(3)ゴナドトロピン異常,(4)インスリン抵抗性などが指摘されている2).以下,これらの病態について簡潔に述べ,わが国におけるPCOS不妊患者に対する治療を中心に記述する.

3.早発卵巣機能不全―Premature ovarian failure : POF

著者: 千石一雄 ,   宮本敏伸 ,   宮川博栄

ページ範囲:P.1122 - P.1126

 premature ovarian failure(POF)は若年で卵巣機能が停止または極度に減弱する疾患であり,その病因は多岐にわたるいわゆるheterogeneousな症候群である.不妊,エストロゲン欠乏症状,心血管系疾患や骨粗鬆症発症リスク,さらに,卵巣機能が停止することに対する精神的ダメージなど女性のQOLを著しく損なう.

 不妊に関しては,すでに卵巣内に卵胞が存在しない病態では卵子提供による体外受精しか方法はないが,間欠的または一時的に卵巣機能が回復する場合があり,これまでの多くの報告から約5~10%の症例で妊娠が可能であるとされる1)

4.卵管の異常

著者: 末岡浩

ページ範囲:P.1127 - P.1130

 ARTが急速に発展,普及を遂げ,今日の生殖医療の骨格が築かれたことは不妊カップルに対しても,人口推移に対しても著しい貢献を及ぼしている.この発展の背景には従来の方法では妊娠に至らなかった重要な不妊原因と治療の制限があった.特に卵管の病態については有効性の高い治療法が確立されておらず,開腹手術によるマイクロサージャリーなどの技術を用いた卵管開口術や端々吻合などの治療法が行われているにすぎなかった.内視鏡技術が発達し,同時に管状の臓器の病態に対するカテーテル治療法が発展したことは卵管不妊に対して大きな治療選択の拡大を可能にした.これによって,これまで困難とされてきた卵管病変,特に卵管内腔の病変を把握し,治療に導くことが可能となった.対象の多くが,卵管病変本態へのアプローチをあきらめてARTに依存していた不妊治療に新たな卵管不妊治療の活路を導き出した.

5.子宮内膜発育障害

著者: 杉野法広 ,   嶋村勝典 ,   高崎彰久

ページ範囲:P.1131 - P.1136

 子宮内膜の発育は,着床と妊娠の成立には重要な因子である.実際に不妊治療において,子宮内膜の厚さが治療成績に影響することが報告されている.すなわち薄い子宮内膜を呈する子宮内膜発育不全の症例は妊娠しにくいことが指摘されている.子宮内膜発育不全の症例に対しては,エストロゲン製剤を投与したり,ゴナドトロピン製剤を投与して血中エストロゲン濃度を上げる試みをしても,なかなか厚くならない.したがって,このような子宮内膜発育不全の症例は難治性の不妊症として体外受精─胚移植などの生殖補助医療(ART)の対象となる.そのため,通常の不妊治療において子宮内膜の発育を改善できれば,ARTに至るまでに妊娠できる可能性はある.また,たとえARTを行ったとしても,子宮内膜の発育が改善されない限り,着床不全となり妊娠予後は不良である.

 薄い子宮内膜を呈する症例に対しては,まずその原因を考え治療することが大切である.原因が明らかなものとしては,クロミフェンによる抗エストロゲン作用によるものや子宮内容除去術後に起こるものがある.一方,これまでは原因不明とされていたものについて,最近われわれは,その多くが子宮内膜の血流不全によるものであることを見出した.本稿では,薄い子宮内膜を呈する子宮内膜発育不全を原因別に分けて,それぞれの対処法について述べる.

6.子宮奇形

著者: 竹下俊行 ,   峯克也

ページ範囲:P.1138 - P.1142

 子宮奇形が流早産,不育症と関連することは古くから知られており,それを裏付けるエビデンスも数多く提示されているが,不妊と子宮奇形の関係はいまだに明らかになっていない.しかし,もし子宮奇形が不妊の原因になるなら,それは取り除かれなければならない.本稿では,不妊と子宮奇形の関係について主に文献的な考察を行い,ART前にできることがあればそれを明らかにしてみたい.

7.子宮筋腫,子宮腺筋症

著者: 清水良彦 ,   木村文則 ,   村上節

ページ範囲:P.1143 - P.1146

 子宮筋腫,子宮腺筋症の一般的な疫学,診断方法や治療法は成書にゆずり,本稿では対象を不妊症患者と将来妊娠希望のある女性に絞り,生殖医療の視点からその対応を述べることとする.

8.頸管因子

著者: 弓削彰利 ,   楢原久司

ページ範囲:P.1148 - P.1151

 子宮頸管は,精子が腟から子宮を経て受精の場である卵管に至るまでのスタート地点である.そこに存在する頸管粘液は通常,粘性が高く,感染防御の役割を果たすが,排卵期にはエストロゲンの影響を受けその量が増加し,粘性が低下することにより子宮内への精子の侵入を容易にする.よって排卵期に頸管粘液の量的質的異常を認めた場合,妊娠率は低下する.また近年,性生活の変化によってHPVに感染する若年者の増加が認められ,それに伴う子宮頸部病変のために妊孕性を考慮した円錐切除術を施行されるケースも増加しているが,円錐切除術が原因と思われる不妊例も報告されている.さらに頸管因子には免疫学的側面(抗精子抗体による精子─頸管粘液不適合)もあるが,それについては別稿「免疫性不妊」を参照されたい.ここでは,(1)頸管粘液の分泌異常,(2)円錐切除術後の影響について述べる.

9.子宮内膜症

著者: 伊東宏絵 ,   井坂惠一

ページ範囲:P.1152 - P.1155

 不妊症とは妊娠を望んでいるのに妊娠しない状態のことであるが,ひと言で不妊症といっても,その種類や原因はさまざまであり,原因が特定できる場合と原因不明の場合がある.色々な検査も必要で,治療が長期間に及ぶケースも少なくない.現在,第1子出産年齢の平均は29.9歳(2010年)と晩産化しており,出産年齢についても30~34歳が最も多く,出産年齢の高齢化が起きている(厚生労働省平成22年度「出生に関する統計」より).これは晩婚化による影響と考えられるが,いずれにせよ治療が難しくなる高齢婦人の不妊治療が増加しているのが現状である.高齢不妊の場合にただちにARTを選択することも多いが,子宮内膜症や子宮筋腫など受精や着床に悪影響を及ぼすと考えられる疾患が存在する場合,ARTだけでは治療に苦慮することが多い.このような症例では,まずこれら疾患の治療を優先し妊孕の環境を整えることが結局は妊娠の近道になることも少なくない.

10.免疫性不妊症

著者: 柴原浩章 ,   郡山純子 ,   池田伴衣 ,   平野由紀 ,   鈴木達也 ,   鈴木光明

ページ範囲:P.1156 - P.1165

 不妊症に悩むカップルが初めて病院を受診する理由の多くは,なぜ自分達は子供を授かれないのか,その原因を明らかにしたいという希望による.カップルが望む正確な原因診断を行ううえで,頻度が高い不妊症の三大原因である内分泌因子・卵管因子・男性因子の検査を進めるとともに,そのほかの原因検索の1つとして,頻度は少ないが免疫性不妊症の検査もできる限り早期に行う.

 このうち女性側の血中精子不動化抗体の検査法である精子不動化試験(SIT : sperm immobilization test)1)は,検査センターに委託可能なことから一般化している.ところが同じ抗精子抗体の検査法でも,射出精子に結合する男性側の抗精子抗体の検出法である直接イムノビーズテスト(D-IBT : direct immunobead test)2)は,新鮮精子を用いる検査であるため委託が難しく,自施設で行う必要があり,まだ十分には普及していない.しかしながら不妊女性の血中精子不動化抗体,あるいは不妊男性の射出精子上の精子結合抗体は,自験例でもおのおの約3%程度に検出できることから,同等に検査を行う意義はあるものと考える.

11.男性不妊―乏精子症・無精子症,性交障害

著者: 谷口久哲 ,   松田公志

ページ範囲:P.1166 - P.1169

乏精子症・無精子症

■概念

 不妊の原因のうち,明らかな男性因子が約20%,双方の原因が約30%といわれ,約50%が男性側にも原因があるといわれている.乏精子症(oligozoospermia)とは精子濃度が20×106/mL未満の場合,無精子症(azoospermia)とは精液中に精子が存在しない(遠心分離で確認)ものをいう.男性不妊症の原因としては(1)造精機能障害,(2)精路通過障害,(3)性機能障害,(4)副精器機能異常・そのほかに大別されるが,そのほとんど(約90%)は造精機能障害である.造精機能障害は原因が特定されない特発性が約70%と最も多く,ほかの基礎疾患として染色体異常,精索静脈瘤,停留精巣,内分泌障害が挙げられる1, 2)

12.原因不明不妊

著者: 熊澤由紀代 ,   寺田幸弘

ページ範囲:P.1170 - P.1174

原因不明不妊とは

 一般的な不妊症検査を行っても現在の診断技術ではその原因が特定できない不妊症を原因不明不妊(unexplained infertility)または機能性不妊(functional infertility)と定義される.不妊症の頻度は全夫婦の約10%程度であり,その中で原因不明不妊症は15~25%と報告されている.しかし,各施設によって不妊症検査項目や診断基準が異なるため,諸報告でのその頻度は一定していない.さらに今後,生殖生理に諸知見がもたらされるにつれて,原因不明不妊は減ってゆくと考えられる.

連載 Estrogen Series・98

Premature ovarian failure

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1177 - P.1177

 Premature ovarian failureについて,Obstetrics and Gynecology誌のClinical Expert Seriesからご紹介したい1)

 Premature ovarian failure(早発卵巣失調 : POF)は,(典型的には)40歳以前の女性が不規則な月経,無月経,不妊,などの主訴があり,FSHが高値で,血中エストロゲン値が低いときに診断される.この40歳という区切りは全く厳密なものではない.Primary ovarian failureという診断名は,failureという言葉が失敗や落第を意味しているため,患者に与える衝撃は大きい.したがって,それに代わって,似たような言葉で,患者への衝撃の少ないprimary ovarian isufficiency(早発卵巣不全)とすべきだとの意見もある.この意見は当時の著名な内分泌学者Fuller Albrightによって提案されている(1942年).この疾患の呼び方として,さらに,hypergonadotropic amenorrhea,hypergonadotropic hypogonadism,primary hypogonadismなどがある.

OBSTETRIC NEWS

この症例をどのように取り扱うか?─子宮頸管長と早産

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1178 - P.1181

[症例]25歳女性.未産婦.妊娠19週.経腟超音波で子宮頸管長が20 mmだった.症状はなく,早産のハイリスク因子はなし.最も適切な管理はどれか?

(A)子宮頸管縫縮術

(B)子宮収縮モニター

(C)子宮収縮抑制剤

(D)入院

(E)リスクについて説明

上記のような症例をどのように取り扱うか?

[答](E)

サクラの国のインドネシア・16

12・26から3・11

著者: 東梅久子

ページ範囲:P.1182 - P.1184

3・11

 午後2時46分,帝王切開中であった.大きな揺れのなか,腰椎麻酔で起きている女性に短く声をかけ,余震のなか手術を続けた.母となった女性は終始落ち着いていた.

 この時には未曾有の惨事が起きていることなど思いも寄らなかった.

病院めぐり

大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター

著者: 小池奈月

ページ範囲:P.1186 - P.1186

 当センターは,昭和27年に結核診療の充実のために「大阪府立結核療養所羽曳野病院」として設立された.昭和51年に「大阪府立羽曳野病院」,平成15年には呼吸器疾患,肺がん,アレルギー性疾患,結核医療の包括的医療を行う大阪府の中核的な役割を果たす病院として,現在の名称に変更された.現在,結核病床150床,一般病床395床,うち20床は平成23年4月に開設した緩和ケア病床である.

 肺がんについては大阪府がん診療連携拠点病院に指定されており,診断・治療から終末期の対応まで総合的に行っている.感染症分野ではSARSなどの新興感染症やインフルエンザ,AIDS,多剤耐性結核などの難治性結核,併発症を有する結核,妊婦結核に対応する府内唯一の医療機関である.平成22年4月に感染症センターが開設され,これらの診療にいっそう力を入れている.また,急性肺炎から慢性呼吸器疾患の在宅療養に至るまでの治療・指導を一貫して行う呼吸ケアセンターも同時に作られた.循環器内科,消化器外科,産婦人科と基礎的診療部門も有し,地域医療の基幹病院としての役割も果たしている.今後,各科が一体となって,がんの診断・治療・疼痛コントロールまでも可能とする腫瘍センターを構築することが目標となっている.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

診断に苦慮した骨盤内腫瘍の2例

著者: 宮原大輔 ,   江口冬樹

ページ範囲:P.1187 - P.1192

 後腹膜腫瘍の発生頻度は全腫瘍の約0.2%と低く1),稀な疾患である.今回,骨盤内に発生した腫瘍に対して,術前には卵巣腫瘍と診断していたが術中所見より後腹膜腫瘍と診断した2例を経験したので報告する.

臨床経験

尿中hCG検出試薬ゴナスティックW®の使用経験と臨床的有用性

著者: 市塚清健 ,   岩崎信爾 ,   岡井崇

ページ範囲:P.1193 - P.1195

 尿中のhCGのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin : hCG)の検出は,主に妊娠の診断に利用されている.日常の外来診療では定性hCG検出キットが用いられている.今回は,迅速に半定量が可能なhCG検出キットを使用する経験を得たので,その性能を評価し,臨床的な有用性につき検討し報告する.

お知らせ

真菌症フォーラム第13回学術集会―「深在性真菌症,病像の背景を探る」

ページ範囲:P.1107 - P.1107

日 時 : 2012年2月18日(土)13 : 30~18 : 30(予定)

会 場 : 第一ホテル東京

〒105─8621 東京都港区新橋1─2─6 TEL : 03─3501─4411(代表)

第20回日本婦人科がん検診学会総会・学術集会

ページ範囲:P.1136 - P.1136

日 時 : 平成23年11月19日(土)

会 場 : ベルサール飯田橋(JR飯田橋駅より徒歩約2分)

〒102─0072 東京都千代田区飯田橋3─8─5 住友不動産飯田橋駅前ビル1・2F

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投稿規定

ページ範囲:P.1196 - P.1196

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1197 - P.1197

バックナンバー

ページ範囲:P.1199 - P.1199

アンケート用紙

ページ範囲:P.1200 - P.1200

次号予告

ページ範囲:P.1201 - P.1201

編集後記

著者: 神崎秀陽

ページ範囲:P.1202 - P.1202

 今年の夏は,地デジ移行問題と節電対策で過ぎようとしています.地デジ化のほうは数年前から分かっていたはずですが,いざ始まるとさまざまなトラブルが起きています.これまでのようにラジオでテレビ音声が聞けなくなったことは,特にこれを情報源としていた視力障害者の方々には,改めて深刻な問題となっており,監督省庁や放送局宛に,何とか聞けるようにしてほしいという強い要望が出されています.3月11日の震災の際,私は東海道新幹線の車内に閉じ込められましたが,たまたま持っていた携帯ラジオで聞けた生々しいテレビニュースで状況が判断できたことで,迅速に各方面へ事後対応連絡を行った経験がありますので,その有用性は十分に理解できます.

 節電への要請は,当初の関東,東北地方だけでなく,順次関西や九州地方にも広がり,同時に電力業界の体質も問題視されるようになってきました.政府は世論の後押しもあり,原子力発電への依存度を減らすという180度の方針転換を打ち出しました.しかし現実には企業の生産活動制約による経済への大きな影響は避けがたく,個々人もエネルギー需給問題を認識した生活スタイル転換を余儀なくされることとなります.自然エネルギー活用を後押しする制度が必要なことは言うまでもありませんが,どの程度まで実現可能かを慎重に検討する必要があるでしょう.30年以上前ですが,大学から一般病院へ赴任する際,人事担当の助教授から,「これからの収入に応じて生活水準を上げていたら,特に家族ができたなら,将来大学へ戻って学究的な活動をすることはできなくなるだろうから,そのつもりで生活しなさい.」という内容の訓示めいたことを言われました.確かのその通りで,いったん上げた生活水準は容易に下げられませんので,私も同様のアドバイスをしてきました.今回のエネルギー危機を契機とした社会変換について,今の青壮年にどこまでの覚悟と決意があるのか,老年期に入った者としてはとても興味があります.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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