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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科66巻13号

2012年12月発行

雑誌目次

今月の臨床 これだけは知っておきたい─婦人科がんの緩和ケア

ページ範囲:P.1163 - P.1163

婦人科疾患における緩和医療

著者: 松岡順治

ページ範囲:P.1164 - P.1171

●緩和医療は診断の時から行う.しかし終末期の治療も大切である.

●ACPを病気のポイントで繰り返し行う.患者のゴールと医師のゴールは異なる.

●身体的苦痛は早く適切にとる.

●truth tellingをためらわない.

●多職種,多分野のチームで医療を行う.

がん疼痛の評価と治療法

著者: 木村洋輔 ,   志真泰夫

ページ範囲:P.1172 - P.1179

●痛みの特徴を理解し,体性痛・内臓痛・神経障害性疼痛の分類に応じて,治療方針を決定する.

●各鎮痛薬の特徴を理解し,患者の状態に応じて選択する.

●非オピオイド鎮痛薬では,腎機能障害や消化性潰瘍でNSAIDsが使用しにくい場合,十分量のアセトアミノフェンが有用である.

●オピオイド鎮痛薬は,持続痛には定期投与量を,突出痛にはレスキュードーズを調整する.

緩和ケアの実際

1.輸液・栄養管理

著者: 水野聡己 ,   東口髙志 ,   伊藤彰博

ページ範囲:P.1180 - P.1185

●栄養療法は,苦しみの少ない充実した最期を迎えるための大切な治療である.

●治療可能な低栄養状態を見逃さず,栄養学的な必要量を投与することが重要である.

●体液貯留は,いわゆるギアチェンジの指標であり,栄養と水分量を減らす時期となる.

2.呼吸器症状の緩和ケア

著者: 田中桂子

ページ範囲:P.1186 - P.1191

●呼吸困難は主観的な症状で,呼吸不全(すなわち低酸素血症)とは必ずしも一致しない.

●呼吸困難はtotal dyspneaと呼ばれる多面的で複合的なものであり,多職種によるアプローチが重要である.

●呼吸困難の薬物対症療法として,モルヒネ・コルチコステロイド・抗不安薬が使用される.

3.消化器症状の緩和ケア

著者: 吉田良 ,   溝上友美 ,   神崎秀陽 ,   權雅憲

ページ範囲:P.1192 - P.1199

●終末期の便秘症状は,食欲不振,嘔気・嘔吐,腹痛,不穏などの原因になる.

●終末期MBOの患者に対する胃管やイレウス管留置は,輸液の減量とオクトレオチドで回避可能な場合が多い.

●消化管皮膚瘻や腟瘻に対しては,患者の精神的ケアや多職種による集中ケアが必要.

4.褥瘡の予防と治療

著者: 古江増隆

ページ範囲:P.1201 - P.1207

●褥瘡はいまや治しうる疾患である.創を乾燥させてはならない.よくよく洗浄し,湿潤環境を維持する.

●担がん患者では,疼痛,生存時間,自己安楽,治癒期間を熟慮し,患者の納得を得ながら治療目標設定を行う.

●創のみならず肢位,寝具のずれ,栄養,疼痛の有無などを多職種で話し合うことが治療の第1歩である.

5.精神症状のケア

著者: 谷向仁

ページ範囲:P.1208 - P.1213

●がん患者の多くが悪い知らせやその予期に際して不安や抑うつを経験し,婦人科がん患者も例外ではない.

●婦人科がん患者の心理的苦悩はジェンダーに強く関連しており,罹病体験の時期にも大きく左右される.

●心理・精神的ケアに際しては支持的精神療法を基本とし,必要に応じて抗不安薬・抗うつ薬を併用する.

●終末期患者へのかかわりに際して,「尊厳」に関する話題を取り上げることは有用となる場合がある.

6.医師にとってのスピリチュアルケア

著者: 池永昌之

ページ範囲:P.1215 - P.1220

●スピリチュアルペインの定義に共通するキーワードは存在,意味,価値,目的,支えであり,これらの喪失(消滅)がスピリチュアルペインとされている.

●人間は乗り越えていくことが難しい試練に出会ったときに出現する自己の存在に関する問いかけを持つようになるが,このような苦悩をスピリチュアルペインということができる.

●スピリチュアルケアにおいては,基盤となる全般的なケアを行うとともに,苦難が溢れる人生にも意味と価値があることを信じ,最期までかかわり続ける態度が最も重要となる.

7.漢方療法による緩和ケア

著者: 日高隆雄

ページ範囲:P.1222 - P.1229

●緩和ケアにおいて,西洋医学的標準治療に加えて患者個々の病態に応じた漢方療法は重要な治療選択肢の1つとなる.

●手術,抗がん剤などの西洋医学的がん治療に漢方補剤を併用することで免疫力が高まり,QOLの向上と延命も期待される.

●がん末期状態では悪液質へ移行し,西洋医学的にも対処困難な複雑な症状を呈するが,漢方療法を併用することで緩和される.

がん患者の地域連携と在宅緩和ケア

1.病院の視点から

著者: 梶山徹 ,   垣見亮

ページ範囲:P.1230 - P.1234

●患者・家族の希望に添った在宅緩和ケア体制を構築し,患者と家族の自律を促すことが大切である.

●真実を患者と家族が共有し,在宅での希望を叶えることで,有意義な時間を過ごすことができるように援助する.

●患者の全人的苦痛を緩和し,家族の負担を軽減させるため,在宅と病院のスタッフが緊密に連携することが必要である.

2.診療所の視点から

著者: 川越厚

ページ範囲:P.1236 - P.1241

●患者視点に立って最も必要かつ重要なサービスは24時間ケアである.

●婦人科がんの在宅緩和ケアでは,専門医の支援が不可欠であり,病院との連携も非常に重要である.

●在宅緩和ケアにおいては,医療機関,特に診療所と訪問看護機関との強い連携が保たれている一体型チームが理想的である.

連載 FOCUS

母体血胎児染色体検査

著者: 関沢明彦 ,   四元淳子 ,   小出馨子 ,   松岡隆 ,   市塚清健 ,   岡井崇

ページ範囲:P.1242 - P.1248

はじめに

 母体血漿中にはcell-free DNA(cfDNA)が循環しており,その中には胎児由来成分が含まれている.1997年に最初の報告があって以降,PCR法により母体が持たない遺伝子を母体血中で増幅し,胎児の遺伝子診断が行われていたが,2008年,次世代シークエンサーを用いた胎児染色体異常検査が報告され,2010年10月に米国で臨床応用された.本稿では無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing : NIPT)の現状について報告する.

Obstetric News

妊娠中の尖圭コンジローマの取り扱い方

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1250 - P.1251

[症例]26歳.初めての妊娠.妊娠32週で定期妊婦健診のために受診した.尖圭コンジローマの既往があり,妊娠中に再発している.視診で外陰部,大陰唇,肛門周囲に5 mm未満の大きさの尖圭コンジローマが5~7個ある.胎児への感染と経腟分娩はできるのかを心配している.

 この患者に対する最も適切な医療は,以下のどれか?

 (A)満期(妊娠37週~妊娠42週)で帝王切開

 (B)尖圭コンジローマのレーザー治療

 (C)トリクロロ酢酸療法

 (D)ポドフィリン使用

 (E)治療は不要で自然陣痛発来を待つ

[正解](E)

Estrogen Series

経口避妊薬(OC)の使用と血栓性脳卒中および心筋梗塞について(3)

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1252 - P.1253

 前々回(66巻11号)の本欄では,Lidegaardら1)によるOCと脳卒中および心筋梗塞との関連を示す大規模調査について紹介した.この調査では,エストロゲンを含む経口避妊薬(OC)の使用により,血栓性脳卒中および心筋梗塞の発生増加は確かに見られるものの,その増加はきわめて微弱であることが結論として示された.

 また,前回(66巻12号)は,上記の調査の結論に対するコメントとして本領域を専門とする識者であるPettiti2)のコメントを紹介した.それにおいてもOCは“十分に安心(safe enough)”であると結論された.

症例

尿管子宮内膜症の2例

著者: 田中千晴 ,   近藤香保里 ,   内海史 ,   石川尚武 ,   神谷典男 ,   内藤和彦 ,   葛谷和夫 ,   小畑直子

ページ範囲:P.1255 - P.1258

要旨

 症例1は32歳女性,主訴は血尿・下腹部痛.右水腎症と右卵巣チョコレート囊腫を認めGnRH療法を施行したが改善せず手術目的で当院紹介.6 cm大の右卵巣チョコレート囊腫,右尿管の圧排狭窄,右水腎症を認めた.開腹手術を施行し右付属器切除と右尿管剝離を行った.術後右水腎症は改善した.症例2は46歳女性.子宮腺筋症の診断でジエノゲストを内服していた.左下腹部痛・腰痛あり受診,7 cm大の左卵巣チョコレート囊腫を認め当院紹介.開腹手術を施行し,子宮全摘と左付属器切除を行った.左尿管の著明な拡張を認め左尿管狭窄部切除と端端吻合を行った.術後腹部CTで左腎の高度萎縮あり.

 尿管子宮内膜症は比較的稀であるが尿管閉塞・狭窄を起こし水腎症から腎機能低下をきたすことがある.今回,尿管子宮内膜症の2例を経験したので文献的考察を加え報告する.

お知らせ

2013年国際骨代謝学会・日本骨代謝学会/第2回合同国際会議(IBMS─JSBMR2013)

ページ範囲:P.1185 - P.1185

・会 期:2013年5月28日(火)~6月1日(土)

・会 場:神戸ポートピアホテル・神戸国際会議場・神戸国際展示場

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投稿規定

ページ範囲:P.1260 - P.1260

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.1261 - P.1261

バックナンバー

ページ範囲:P.1262 - P.1262

次号予告

ページ範囲:P.1263 - P.1263

編集後記

著者: 神崎秀陽

ページ範囲:P.1264 - P.1264

 各種報道を見ていると,大震災と津波の影響からの復興は遅々とした歩みではあるものの着実に進んでいるようです.その一方で,福島における原発事故後の放射能汚染問題については,なお解決には程遠い状態です.過日,福島県立医大産婦人科の同門会誌を非常に興味深く読ませていただきましたが,震災後の産婦人科診療の問題点の解析と今後の展望とともに,診療中に遭遇された生々しい経験談も多数掲載されていました.そして今後も継続するであろう,周産期や生殖医療に関する根拠のない放射能汚染風評への強い懸念が感じられました.

 エネルギー政策における原子力発電の位置づけについての政府の対応は,世論と産業界の意見の狭間で右往左往しているように思われます.これから人口減少社会が来るとはいえ,高価な自然エネルギーや火力発電のみで供給することを選択すれば,個人や企業の負担が増加して家計への影響や産業の空洞化が起きるとする産業界の懸念はもっともです.事実,先般すでに原発廃止を国是としたドイツにおいては,今後は家庭の電気料金も大幅に値上げされるということも報道されました.このような国民の理解と覚悟がわが国でも得られるのか,労働環境や社会意識の水準から見るとなお欧州から20年は遅れているわが国では,はなはだ疑問です.さらに同じ欧州でも,フランスやイギリスの政府は今後も原発依存を改めるつもりはなく好対照となっており,また多くの開発途上国では,なお積極的に原発設置が推進されています.脱原発は,世界レベルでは一部の先進国での議論ですが,被災したわが国がそのモデルとなれるのか,海外からも注視されています.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻4号(2015年4月発行)

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