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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科66巻5号

2012年04月発行

文献概要

オフィス ギネコロジー 女性のプライマリ・ケア III 感染症

外陰・腟カンジダ症,トリコモナス腟炎

著者: 林瑞成1

所属機関: 1東京都立墨東病院産婦人科

ページ範囲:P.120 - P.125

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【外陰・腟カンジダ症】

◆外陰腟炎を主訴とする患者の来院時は,まず腟分泌物の検鏡を行う.

Candidaは腟の常在菌の一種であり,症状がなければ治療の対象とはならない.

◆急性期外陰・腟カンジダ症の治療は,イミダゾール系抗真菌薬腟錠(連日通院が原則で腟洗浄後に腟錠を挿入,100 mg錠を連日6日間,または600 mg 1回投与)および局所塗布(1日2~3回,外陰部に薄く広範囲に塗布を連日7日間行い,継続治療が必要かどうか検討.同一薬剤での治療期間は原則14日間まで)を行う.

◆生活指導として,刺激性石けんの使用禁止,通気性のよい下着,患者の下着は最後に洗濯し漂白剤にて殺菌,急性期には性交渉の禁止を指導する.難治性の場合はパートナーも治療する.

◆腟炎としては,トリコモナス腟炎,淋菌性腟炎,非特異性腟炎,老人性腟炎が鑑別診断に挙げられる.

◆外陰部の皮疹,搔痒感を示す疾患で鑑別に挙げられる疾患は,尋常性湿疹,皮膚搔痒症,Fox-Fordyce病,接触性皮膚炎,外陰ヘルペス,外陰Paget病,外陰癌,Behçet病,頑癬が挙げられる.

【トリコモナス腟炎】

◆無症状のキャリアから,しばしば月経直後に激しい急性炎症症状を訴える場合までさまざまである.感染を繰り返す場合が多い.半数以上が帯下増量を訴えるが,常にトリコモナス腟炎に特有な帯下とは限らない.

◆トリコモナス腟炎患者の半数近くが搔痒を訴え,程度が激しい場合がしばしばある.性交痛,排尿痛,卵管炎を併発すると下腹部痛を訴える場合もある.妊婦では,放置すると混合感染から前期破水や早産に至る場合がある.

◆帯下や尿道分泌物をスライドグラス上で37℃に暖めた生理食塩水に浮遊させ,カバーグラスをのせて検鏡する.ミジンコのように動くTorichomonas原虫を確認する.

◆腟トリコモナス症では腟内だけではなく,Bartholin腺,Skene腺や尿路などにも感染を起こしやすく,腟錠のみの治療より経口投与のほうが有効である.

◆治療は,メトロニダゾール500 mg/日,分2,10日間投与または,メトロニダゾール2,000 mgの単独投与,あるいは,500 mg/日,分2,7日間投与となっている.

◆メトロニダゾールの副作用として,アルコールによる腹部の疝痛,心悸亢進,悪心,嘔吐,めまい,紅潮などが出現することがあり,飲酒を控えるように注意する.

◆妊婦では胎盤通過性があり,動物実験にて催奇性が認められているため,局所投与にする.特に妊娠12週以前の経口投与は禁忌である.治療前に妊娠の可能性の確認を怠ってはいけない.

◆妊婦にはメトロニダゾール腟錠を,1日1回250 mg,7~14日間,腟内挿入する.または,チニダゾール400 mg/日,分2,7日間,または,2,000 mg単回投与の経口投与法もある.チニダゾール腟錠なら,1日1回200 mg,7日間,腟内挿入する.

参考文献

1) 占部治邦,松本忠彦,本房昭三 : 医真菌学.pp187─206,金原出版,1993
2) 高田道夫 : candida症.性感染症学(熊本悦明,島田 馨,川名 尚編).医薬ジャーナル社,1990
3) 占部治邦,松本忠彦,本房昭三 : 医真菌学.pp39─47,金原出版,1993
4) 久保田武美,菅生元康 : 性器カンジダ症.性感染症診断・治療ガイドライン2008年版(日本性感染症学会編).pp84─88,性の健康科学財団,2008
5) 吉田幸雄・他 : 臨床寄生虫学(大鶴正満編).南江堂,1994
6) 保田仁介・河村信夫 : 腟トリコモナス症.性感染症診断・治療ガイドライン2008年版(日本性感染症学会編).pp74─76,性の健康科学財団,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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