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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科66巻8号

2012年07月発行

雑誌目次

今月の臨床 絨毛性疾患アップデート─「取扱い規約」改訂をふまえて

ページ範囲:P.603 - P.603

絨毛性疾患取扱い規約第3版─改訂のポイント

著者: 田中忠夫 ,   矢内原臨 ,   柳田聡

ページ範囲:P.604 - P.609

●新しい規約は国際的な基準とも合致しており,「同じ傘の下」での比較・検討ができる.

●奇胎の診断は肉眼的所見ではなく,組織学的所見に基づいてなされる.

●可能ならば,imprinting gene productの免疫組織化学的検査や遺伝子検査によって確認する.

●奇胎後の続発性疾患の診断は,20週ではなく,24週時点でのhCG値を目安にする.

●絨毛性疾患に遭遇する機会は多くない.それゆえ,むしろその診断・管理法に習熟することが求められる.

絨毛性疾患の分類―臨床分類,病理学的分類

著者: 平田英司 ,   工藤美樹

ページ範囲:P.610 - P.617

●「類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)」が独立項目となった.

●病理学的分類から「存続絨毛症」が除外された.

●病理学的分類において「非腫瘍性トロホブラスト病変」は項目外となった.

胞状奇胎の発生機構

著者: 兼城英輔 ,   和氣徳夫

ページ範囲:P.618 - P.623

●全奇胎,部分奇胎はともに受精の異常を原因として発生する.

●遺伝学的には全奇胎は雄核発生,部分奇胎は三倍体である.

●妊娠診断の早期化により,旧取扱い規約では早期の奇胎症例の診断が困難となっていた.

●新取扱い規約の普及により,今後は早期の奇胎症例が正確に診断されることが期待される.

絨毛性疾患の取扱い

1.胞状奇胎の取扱い

著者: 山本英子 ,   藤原多子 ,   吉川史隆

ページ範囲:P.624 - P.629

●胞状奇胎の診断は組織学的所見に基づき,部分奇胎や水腫様流産との鑑別が重要である.

●胞状奇胎を疑った場合には胞状奇胎除去術を行い,胞状奇胎と病理診断された場合には1週間後に2回目の除去術を施行する.

●奇胎娩出後は血中hCGを測定し,5週1,000 mIU/L,8週100 mIU/L,24週カットオフ値を結ぶ判別線を上回る場合に精査を行う.

2.胎児共存奇胎の取扱い

著者: 金西賢治 ,   塩田敦子 ,   秦利之

ページ範囲:P.630 - P.634

●臨床的に問題となる胎児共存奇胎は正常妊娠と全胞状奇胎との二卵性双胎であり,全胞状奇胎として管理する.

●胎児共存奇胎例の妊娠継続には注意深い周産期管理と続発性疾患に対する厳重な管理が必要である.

3.侵入奇胎と絨毛癌の取扱い

著者: 井箟一彦 ,   谷﨑優子 ,   馬淵泰士 ,   南佐和子

ページ範囲:P.635 - P.640

●侵入奇胎は胞状奇胎後6か月以内に,絨毛癌は胞状奇胎を含むあらゆる妊娠の後に発生し得る.

●診断には血中hCG値の測定と画像による子宮筋層内病変および肺などの転移病巣の検出が重要である.

●治療開始前に絨毛癌診断スコアを用いて,侵入奇胎と絨毛癌を臨床的に判別し,治療方針を決定する.

●侵入奇胎(非絨毛癌)に対しては単剤による化学療法を,絨毛癌に対しては多剤併用化学療法を選択する.

●化学療法が著効するため,生存率は侵入奇胎ではほぼ100%,絨毛癌でも85~90%と高い.

4.PSTTとETTの取扱い

著者: 田代浩徳 ,   福永眞治 ,   片渕秀隆

ページ範囲:P.641 - P.646

●PSTTとETTは稀な疾患で,いまだ十分には認知されていない.

●PSTTは胎盤着床部の中間型栄養膜細胞に類似する腫瘍細胞よりなる.

●ETTは絨毛膜無毛(平滑)部の中間型栄養膜細胞に類似する腫瘍細胞よりなる.

●PSTTとETTでは,絨毛癌に比較して血清hCG値が低い.

●PSTTとETTは,絨毛癌に比較して抗がん化学療法に抵抗性を示す.

5.存続絨毛症の取扱い

著者: 磯崎太一 ,   竹下俊行

ページ範囲:P.647 - P.653

●胞状奇胎娩出後の一次管理中におけるhCG値の減衰パターンの判別線(discrimination line)のチェックポイントが5週(1,000 mIU/mL以下),8週(100 mIU/mL以下),24週〔カットオフ値(0.5 mIU/mL以下),従来は20週であった〕となった(「胞状奇胎の取扱い」p624図1参照).

●上記の判別線よりhCG値が上回る場合には,チェックポイントの5週あるいは8週を待たずに存続絨毛症の発症を疑う.

●胞状奇胎娩出後,16週を超えてもカットオフ値以上の場合にも24週まで待たずに存続絨毛症の発症を疑う.

●組織学的診断を欠き,臨床所見だけから存続絨毛症と診断される症例が続発症の大部分を占める.

●存続絨毛症は,臨床的に決められた疾患であるため,今回の改訂により病理学的分類から削除された.

●胞状奇胎娩出後,hCGがカットオフ値以下になった後に,新たな妊娠ではなくhCG値の再上昇を示す場合は臨床的絨毛癌である.

●測定は尿中hCGではなく,血中hCG(特に,1,000 mIU/mL以下の場合)を測定する.

●hCG値が低単位の場合には,phantom(false-positive)hCGや下垂体性hCGなどではないことを確認する必要がある.

絨毛性疾患の診断のポイント

1.hCGの種類と測定法の問題点

著者: 三浦清徳 ,   増﨑英明

ページ範囲:P.654 - P.662

●hCGにはregular hCGとその変異体が存在し,その総称をtotal hCGという.

●絨毛性疾患の管理においては,total hCGの測定が有用とされている.

●hCG測定には,偽陽性あるいは偽陰性が生じることも知られている.

●hCG検査の結果と臨床所見とが合致しないときは,腫瘍細胞が存在するかしないかの鑑別が重要である.

2.絨毛性疾患の画像診断

著者: 香川秀之

ページ範囲:P.664 - P.669

●全胞状奇胎超音波像のピットフォール : 全胞状奇胎=小囊胞像(vesicle pattern)という概念に囚われていると診断できない.

●早期全胞状奇胎の超音波像の特徴1 : 卵黄囊や羊膜を認めない,変形した不正な胎囊様エコー像.

●早期全胞状奇胎の超音波像の特徴2 : 不正な無エコー像と子宮筋層より高輝度な充実部分の混在.

●存続絨毛症の子宮病巣検索には,カラードプラ,パワードプラ法を併用した超音波検査やMRI検査(特にダイナミックスタディ)が有用である.

3.絨毛性疾患の病理

著者: 本山悌一 ,   刑部光正

ページ範囲:P.671 - P.675

●トロホブラスト腫瘍は絨毛癌と中間型トロホブラスト腫瘍の2つに大別され,後者はさらに胎盤部トロホブラスト腫瘍と類上皮性トロホブラスト腫瘍に分けられる.

●取扱い規約に新たに採用された類上皮性トロホブラスト腫瘍の特徴的所見は地図状壊死と石灰沈着である.

連載 FOCUS

出生前診断―何が問題なのか

著者: 増﨑英明

ページ範囲:P.676 - P.683

はじめに

 最近,胎児治療や出生前診断の話題が,テレビや新聞などのマスコミで頻繁に取り上げられる.それらが社会において認識されるようになったことは,一方で喜ばしいことではあるが,倫理や法的な問題の絡んだ複雑で理解しがたい点のある領域だけに誤解されることを恐れる気持ちもまた少なくない.胎児治療については,胎児に生存権が存在するとみて,生存が危ぶまれると判断されるときに,その生存権を本人(胎児)に代わって両親や医療者が行使するものと考えれば,比較的理解しやすい概念である.一方,出生前診断については,胎児治療の前提として,その生存を脅かす事態が存在するか否かを評価する場合もあれば,出生後には生存不可能な胎児が見つかった際は人工妊娠中絶に誘導されることもありうる.さらに,単に胎児の性別を判定することも,出生前診断に含まれる場合が現実には存在する.このように出生前診断は胎児治療に比べて幅広い倫理問題を抱えている.

 出生前診断が内包する問題は,大きく医療側の問題と患者側の問題,さらに社会的問題に分類することができる(表1)1).出生前診断の歴史はいまだ浅く,ここに列挙した問題のひとつとして完全に解決されたものはない.それぞれの問題について,国ごとに異なった対応がなされているが,本来正しい解答が存在するという性質の問題でもない.法的問題ひとつにしても,英仏のように胎児条項を有する国もあれば,日本やドイツのように有さない国もある.わが国は母体保護法と堕胎罪が,出生前診断に連なる医療行為を事実上規制している.しかしながら,法律による規制とは別に,医療者や国民から一定のコンセンサスを得ることはより重要であろうと考えられる.出生前診断の有する問題を理解するためには,歴史的概観から説き起こし,まずはわが国の出生前診断の起源と問題発生の所以を明らかにする必要がある.

Obstetric News

ガイドラインとは?

著者: 武久徹

ページ範囲:P.684 - P.685

 米国で長年産婦人科医療を行い,教育にも携わって来た医師は,「ガイドラインとは何か?」について次のように述べている.

 『ガイドラインというのは原理原則,方向性を示すものと理解しています.プロトコールなどそれ以上の細かな細目はガイドラインを超えたものではないかと思います.

Estrogen Series

子宮摘出に伴う予防的両側卵巣摘出術(4)―子宮摘出およびそれに伴う卵巣摘出の有無は更年期における気分・不安状態には影響しない

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.686 - P.687

 女性の気分・不安状態と子宮摘出術(hysterectomy)は関連があるのだろうか? さらにその場合,両側卵巣摘出術を伴う場合と伴わない場合では,差があるのだろうか.また,自然に起きた更年期に伴う気分の変化というものもあるのではないだろうか.Gibsonら1)はこれら3者の場合を調べてみた.

 対象は42~52歳の女性で,毎年インタビューを繰り返して追跡し,10年間の経過を観察した.総数1,970名で,この10年間に90.9%(1,793名)に更年期が自然に発生し,3.9%(76名)は卵巣保存をした子宮摘出術を経験し,5.2%(101名)は両側卵巣摘出を伴う子宮摘出術を経験した.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

子宮留膿腫を認めるが頸部腫大はなく,診断困難であった子宮頸部最小偏倚腺癌の1例

著者: 吉川博子 ,   永野忠義

ページ範囲:P.689 - P.694

症例

患者 65歳,既婚,未経妊.

主訴 膿性帯下.

既往歴 なし,52歳閉経.

家族歴 父 : 脳梗塞,母 : 肺気腫,癌 : なし.

現病歴 膿性帯下が増加したために前医を受診し,定期診察が施行されていたが,転居を機に当院へ紹介受診となった.

症例

診断的腹腔鏡下に偶然発見された消化管外アニサキスの1例

著者: 林博章 ,   石破光咲子 ,   北香 ,   中田俊之

ページ範囲:P.695 - P.699

要旨

 受診まで約2週間継続する嘔気と婦人科検診を目的に58歳既婚,2経妊・2経産の女性が初診した.視診では明らかな外性器・腟・子宮腟部の異常を認めず経腟超音波検査で病的腹水を認めたため原因検索を勧めた.内診上,子宮・両側付属器は正常大,可動良好で内性器の可動痛等の骨盤内炎症所見を示唆する異常は認められなかった.初診時の検査データは明らかな炎症所見もなく特記すべき異常値を認めなかった.後日当院内科でGF・CFを含めた諸検査から異常腹水の原因疾患を検索できなかった.腫瘍マーカーは陰性であった.腹腔鏡下に腹壁肉芽腫を生検し病理診断で消化管外寄生虫性肉芽腫的と診断された消化管外アニサキスの1例を経験したので報告する.

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投稿規定

ページ範囲:P.700 - P.700

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.701 - P.701

バックナンバー

ページ範囲:P.702 - P.702

アンケート用紙

ページ範囲:P.703 - P.703

次号予告

ページ範囲:P.705 - P.705

編集後記

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.706 - P.706

 最近,痛ましい交通事故が絶えません.京都では暴走車によって多数の歩行者が死傷し,亀岡では無免許運転の車が通学中の小学生の列に突っ込んで,多くの子供が死傷するという大事故が起こりました.前者は,てんかん患者で医師から免許取得時には申告するように言われていたとかで,さっそく,患者団体からは,てんかん患者に無用な不利益が及ばないようにとの宣言も出ました.ともに,狭い道路で,車と歩行者が接触せんばかりに通行していたという共通点があります.ガードレールのない狭い道路を運転していると,とくに子供は危険で,このような道路を通学路にしておくことには大きな問題があると感じざるを得ません.この後も,群馬県内の関越自動車道では長距離バスのあまりにも痛ましい事故も起こりました.これら一連の大事故は,さまざまに原因分析がなされていますが,どんな原因にせよ,亡くなった方はもちろん,大きなけがをし,後遺症に悩む人は救われません.

 文明の利器は,大なり小なり危険と裏腹であることは避けようのないことです.自動車はその一つですが,その最たるものは,今,巷で喧しい原子力発電でしょう.それぞれの利器に,どの程度の危険を許容範囲とするかを決めることは難しいことです.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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