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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科66巻9号

2012年08月発行

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

子宮内膜症の治療におけるピットフォール―卵巣囊胞のがん化を見逃さないために

著者: 金嶋光夫1 細川久美子1

所属機関: 1福井県済生会病院女性診療センター産婦人科

ページ範囲:P.791 - P.797

文献概要

はじめに

 近年,女性の社会進出,晩婚少子化を背景として,月経困難症,性交時痛,不妊症,卵巣腫瘍などを主訴に産婦人科外来を受診する患者が増えている.そのなかで子宮内膜症を認めるケースは多い1)

 子宮内膜症は,症状や挙児希望の有無によって治療方針が分かれる疾患である.月経困難症のみでは薬物療法が第一選択であり,不妊症では,原則として薬物療法中の妊娠が不可能なので,手術療法か一般不妊治療および生殖補助医療技術(ART)が選択される.子宮内膜症性卵巣囊胞を有する場合には,囊胞の大きさや年齢に応じて手術や薬物療法が組み合わせられる.そして通常,これらすべての治療方針は,「子宮内膜症」であって「悪性腫瘍でない」ことを前提としている.しかし,子宮内膜症では卵巣がんの発生率が一般に比べて高いのが事実2)であり,これを見逃すと予想外の重大な転帰をもたらすことがある.

 そこで今回は,「がんを見逃す」というピットフォールに陥らないために,われわれが症例を通して考えに至った子宮内膜症性卵巣囊胞の治療・管理について述べてみたい.

 当科では直接来院するほか,他科(内科,外科,泌尿器科など)から下腹部腫瘍の鑑別診断目的で,あるいは他院連携婦人科医から治療目的で,卵巣腫瘍の患者を紹介される場合が多い.このような腫瘍を持つ患者が受診した場合の診察手順は,(1)内診,(2)経腟超音波検査,(3)腫瘍マーカー(コア蛋白関連抗原であるCA 125,母核糖鎖関連抗原であるSTN,基幹糖鎖関連抗原であるCA 19-9,など)の測定,であり3),必要に応じて(4)骨盤MRI検査やCT検査,PET検査が行われる.以上の診察の結果で子宮内膜症性卵巣囊胞と診断された場合,どのような治療を選んだとしても,再発,がん化,治療の副作用への対応などで治療経過が長くなることを覚悟しなければならない.したがって治療中も定期的にその効果を判断して治療方針を見直さなければならず,その判断の目安となるのが「超音波検査による囊胞の大きさおよび内部エコー像の変化」,そして「腫瘍マーカーの推移」である.

 そこで次に,当院で治療中,子宮内膜症性卵巣囊胞のがん化が疑われた3症例を取り上げ,超音波検査所見と腫瘍マーカーの観点から具体的に治療経過を報告する.

参考文献

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2) 小林 浩 : 卵巣チョコレート嚢胞と癌化.日産婦会誌57 : N351─N355,2005
3) 小畑孝四郎 : 卵巣チョコレート嚢胞のがん化─その発生メカニズムと鑑別診断.日エンドメトリオーシス会誌30 : 63─73,2009
4) 北脇 城,石原広章,北岡由衣,他 : (子宮内膜症克服のための新たな戦略)子宮内膜症に対するGnRHアゴニストに引き続く低用量ダナゾールまたはEP合剤投与による長期内分泌維持療法.エンドメトリオージス研会誌25 : 40─44,2004
5) 篠﨑百合子 : 卵巣チョコレート嚢胞に対する低用量ピル(OC)の治療効果の検討.産婦の実際56 : 1557─1562,2007
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16) 小林 浩 : 子宮内膜症の癌化とその取扱い方.産婦治療101 : 257─263, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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