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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科67巻1号

2013年01月発行

雑誌目次

今月の臨床 性感染症と母子感染─最新の診断と管理

ページ範囲:P.5 - P.5

性感染症

1.性感染症の最近の動向

著者: 小野寺昭一

ページ範囲:P.6 - P.12

●性感染症定点調査 : 1987年から厚生省(現厚生労働省)結核・感染症サーベイランス事業として行われている.診療科の内訳はおおよそ産婦人科系(産科,婦人科,産婦人科の合計)49%,泌尿器科41%,皮膚科9%,性病科1%の比率である.

●性感染症診断・治療ガイドライン : 日本性感染症学会では,2002年から性感染症の診断・治療のためのガイドラインを発行している.原則として2年ごとに改訂し,2004年版,2006年版,2008年版,2011年版まで発行されている.

●セフトリアキソン高度耐性淋菌 : 2009年2月にわが国の風俗関係の女性の咽頭からセフトリアキソンのMICが2 μg/mLと高度耐性の淋菌が分離され,世界に衝撃を与えた.幸いに現時点で,その後にこのような高度耐性淋菌が分離されたとの報告はない.

2.性感染症の予防

著者: 岩室紳也

ページ範囲:P.13 - P.18

●性感染症(STD)ではなく,性感染(STI)という考え方を徹底する.

●学校現場と連携した啓発を推進するためにも最新の教科書を複数熟読する.

●教科書的な病原体や感染経路の説明ではなく,身近な事例を紹介した啓発が効果的.

●ペニスの清潔,STIとしてのHPV,コンドームの正しい使い方を一体的に教える.

3.思春期と性感染症

著者: 中尾裕之 ,   山岸拓也 ,   今井博久

ページ範囲:P.20 - P.25

●思春期の高校生を対象にクラミジアの大規模調査が実施され,感染率が10%程度であることが明らかになった.

●危険因子では喫煙,飲酒,性的パートナー数などが同定され,荒廃した生活との関連性が示唆された.

●思春期の子どもを診察する場合は常に性感染症を鑑別診断に入れ,心理面や生活面を考慮しながら慎重な診療をする.

4.性教育の現状

著者: 島崎継雄

ページ範囲:P.26 - P.30

●性教育とは何か?

●性教育における事実と価値観の伝達

●現行「保健・体育」の教科書は……

●学習指導要領の枠のはざまで

●セクシュアリティ教育(性教育)の開花を待つ

最新の診断と治療

1)ヒトパピローマウイルス

著者: 笹川寿之

ページ範囲:P.32 - P.40

●外陰部の疣は尖圭コンジローマのみではなく,前癌病変としての上皮内腫瘍(VIN)も含まれる.これらを総称して外陰部疣贅と呼ぶ.

●疣や乳頭腫の診断,CINの予後推定や管理にはHPV genotypingが必要である.

●子宮頸癌スクリーニングには,高リスク型を一括して調べるHC-2法,アンプリコアHPV法があり,最近Cervista®法,Cobas®4800法,BD HPV法,APTIMA®法などがでてきた.

●HPV関連病変の予防は,4価HPVワクチンの接種である程度可能である.

●治療に関しては,外科的切除法,冷凍療法,薬物療法がある.薬物療法ではイミキモド(べセルナ®クリーム)法は再発率が低い.

2)クラミジア

著者: 野口昌良

ページ範囲:P.42 - P.46

●クラミジア感染症はティーンエイジャーから20歳台を中心にして感染者が多い.しかも女性の感染者については,感染時にまったく自覚症状がないことで検出が遅れ,慢性化による腹腔内感染がのちに不妊症につながることがあるので,早期の診断と的確な診断が求められる.

●クラミジアと淋菌の混合感染が決して少なくないので,検査をする際には同時検出を心がけるべきである.

●性感染症の起炎菌は耐性菌を速やかに作るものもあり,感受性のある抗菌薬の選択が遅れないように治療のガイドラインなどを常に参考にして,新しい情報に沿った対応を心がけることが重要である.

3)淋菌感染症

著者: 菅沼牧知子 ,   三橋直樹

ページ範囲:P.47 - P.51

●淋菌感染症は,性感染症で,特に10~20歳台の男女に蔓延しているが,無症状のこともあり放置されていることも多い.

●妊婦が淋菌性子宮頸管炎を合併すると,新生児に淋菌性結膜炎を起こすことがある.昔は,これが失明の大きな原因となっていた.現在は,新生児全例に予防として抗菌薬の点眼が行われている.

●女性では,淋菌による子宮頸管炎を放置すると,卵管から骨盤内に感染が波及し,子宮外妊娠や不妊症の原因となることがある.そのため,早期発見,治療が重要である.

●抗菌薬に対する多剤耐性化が進み,治療はセフェム系抗菌薬の注射薬が第一選択となっている.

●近年の性行動の多様化を反映し,性器外の感染例が増加している.

4)トリコモナス症・性器カンジダ症

著者: 三鴨廣繁 ,   山岸由佳

ページ範囲:P.52 - P.57

●腟トリコモナス症は,Trichomonas vaginalis原虫による感染症であり,減少傾向にあるが,感染者の年齢層が幅広い.

●治療はメトロニダゾールが一般的であるが,原虫が腟内だけではなく,尿路系・直腸内などにも生息する可能性が高いため,妊婦以外では経口薬による治療が必須である.

●性器カンジダ症は,臨床症状がなく,鏡検法,培養法でカンジダが検出されただけの症例では治療の対象とはならない.

●欧米ではフルコナゾール150 mg,単回投与が推奨されているが,日本ではフルコナゾール単回投与が認められていないため,治療には,抗真菌腟錠・腟坐薬,抗真菌薬塗布などによる局所療法が主体である.

●難治性・再発性の症例では,性器カンジダ症の誘因の改善・除去,治療薬剤の変更などで対処する.

母子感染

1.母子感染の最近の動向―妊婦感染症スクリーニングと先天性感染の一次アンケート全国調査の結果

著者: 山田秀人 ,   平久進也 ,   森岡一朗 ,   蝦名康彦

ページ範囲:P.59 - P.62

●妊婦健診での風疹,梅毒,HIV,HTLV-1,HBV,HCVの感染スクリーニング実施率は,99%以上であった.

●一方,サイトメガロウイルス(4.5%)とトキソプラズマ(48.5%)の感染スクリーニングの実施率は低かった.

●サイトメガロウイルスとトキソプラズマの先天性感染について,妊婦スクリーニングを実施している施設からの報告症例数が有意に多かった.

●予想される先天性感染の発生数に比べて,サイトメガロウイルスやトキソプラズマ感染症例が少ない理由として,スクリーニング実施率が低いことによる非診断例が多いためと推察される.

●パルボウイルスB19感染数は予想以上に多く,流産や死産の原因となっている可能性がある.

2.妊婦健診で感染症検査を行う意義と根拠

著者: 小畠真奈 ,   濱田洋実

ページ範囲:P.64 - P.70

●妊婦健診で感染症検査を行う目的は,妊婦の健康管理と母子感染予防である.

●母子感染予防には,妊婦への感染予防と妊娠中・分娩時・出生後の母子感染予防がある.

●妊婦健診担当医は,各スクリーニング項目について熟知し,妊婦にその結果を説明し,適切な指導を行う義務がある.

3.妊婦の感染症と早産

著者: 米田哲 ,   米澤理可 ,   斎藤滋

ページ範囲:P.71 - P.75

●妊娠20週までに細菌性腟症を評価・治療すること,および妊娠中の無症候性細菌尿に対する抗菌薬投与は,早産予防効果があるとされる.

●過去に早産の既往がある妊婦や単胎妊娠の子宮頸管長短縮症例に対する黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤の筋注,あるいは腟錠投与は,早産予防に寄与すると考えられている.

●いったん切迫早産,頸管無力症などの診断で入院した自然早産ハイリスク症例に対して,入院当日に子宮内の感染の有無,感染菌の同定,および子宮内炎症の程度を評価することが可能となった.羊水穿刺が必要であるが,この迅速システムにより最適な抗菌薬選択が当日に可能となるため,今後の治療成績に期待がもてる.

最新の管理法

1)梅毒

著者: 谷口晴記 ,   田中浩彦 ,   鳥谷部邦明 ,   千田時弘 ,   井澤美穂 ,   伊藤譲子 ,   朝倉徹夫

ページ範囲:P.76 - P.82

●梅毒の母子感染予防のために,妊娠初期にカルジオリピンを抗原とする非特異的検査であるSTS法と梅毒トレポネーマを抗原とする特異検査(TPHA法もしくはFTA-ABS法)を必ず行う.

●感染が判明した場合,妊娠週数にかかわらず経口合成ペニシリン剤(アモキシシリン,アンピシリンを1日500 mg×3など)を投与する.

●無症候性梅毒の場合,STS法の数値が低くても母子感染例があるので,感染が確認された場合は治療を開始する.

●治療を行った妊婦では妊娠28~32週頃と分娩時にSTS法を行い,治療効果を判定する.治療が行われた場合,妊娠中期に超音波検査(肝腫大,胎児腹水,胎児水腫や胎盤肥厚の検査)を行う.

2)風疹

著者: 楠元和美 ,   金子政時 ,   鮫島浩

ページ範囲:P.84 - P.92

●風疹は,ワクチン接種にて防ぐことが可能なウイルス感染症である.

●妊婦に風疹が疑われる際には,風疹罹患歴,ワクチン接種歴,近親者の風疹患者の存在,地域での流行などの問診が重要である.

●風疹HI抗体価が16倍以下の場合は,産褥早期の風疹ワクチン接種を勧める.

3)トキソプラズマ

著者: 佐藤孝洋 ,   菅原準一 ,   八重樫伸生

ページ範囲:P.93 - P.98

●トキソプラズマIgM抗体陽性の場合,抗体陽性が長期間持続するpersistent IgMの存在もあり,必ずしも急性感染とは診断できない.IgG avidityなどの追加検査を行い,慎重な感染時期の推定が必要となる.

●妊娠中の初感染妊婦に治療を行うと,顕性の先天感染を減少できる.

●感染経路として,加熱処理の不十分な肉の摂取や土いじり,海外旅行などがあり,感染予防として妊婦にこれらを回避するよう啓発することが重要である.

4)サイトメガロウイルス

著者: 山本亮 ,   光田信明

ページ範囲:P.99 - P.103

●血清学的検査で判明しない母体CMV感染があることを認識し,胎児超音波所見にも留意する必要がある.

●CMV感染と診断された母体に抗CMV免疫グロブリンを投与することで,新生児予後や罹患率が改善される可能性がある.

●現在ヒトに対して使用可能なCMVワクチンはなく,予防を中心とした妊婦への情報提供が重要である.

5)麻疹

著者: 永井立平 ,   林和俊

ページ範囲:P.104 - P.110

●妊娠中麻疹への対応

●周産期麻疹

●麻疹排除計画

6)水痘

著者: 永井立平 ,   林和俊

ページ範囲:P.111 - P.117

●水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus : VZV)

●妊婦の水痘発症予防

●妊婦の水痘発症時対応

●周産期水痘への対応

7)ヒトパルボウイルスB19

著者: 松田秀雄

ページ範囲:P.118 - P.122

●妊娠20週未満感染例では,妊娠20週以降感染例に比し胎児死亡率が高い.

●感染胎児の1/3が自然寛解する.

●胎児輸血が予後改善に有効である可能性がある.

●寛解した胎児は,非感染児と同等の予後を示すことが多い.

●ヒトのみが宿主となり,動物からは感染しない.

8)リステリア

著者: 竹内沢子 ,   安達知子 ,   中林正雄

ページ範囲:P.123 - P.127

●リステリア菌は食物を介して感染し,妊娠中は易感染性である.

●妊婦自身の症状は軽度であるが,経胎盤感染し,新生児は重症となる.

●アンピシリン大量投与(場合によりゲンタマイシンを追加)を少なくとも14日間行う.

9)肝炎ウイルス

著者: 永石匡司 ,   山本樹生

ページ範囲:P.128 - P.134

●母子感染でキャリア化する肝炎関連ウイルスにはHBV,HCV,HGV,TTVがあり,特に遅発性感染ウイルスとしてHBV,HCVが重要である.

●HBVの母子感染は分娩時に起こることが多く,予防策をとらなければ約20%の児はHBVキャリアとなるが,感染防止対策を講じれば90%以上はキャリアとならない.

●HCV抗体陽性例でもHCVキャリアと既往感染がいて,HCV-RNAが陽性の場合はHCVの母子感染は約10%である.まだ感染防止対策は確立されていない.

10)単純ヘルペス

著者: 土屋裕子 ,   川名尚

ページ範囲:P.135 - P.143

●HSV母子感染のリスク因子として,分娩時の発症(特に初発),子宮頸管のHSV陽性,母体の中和抗体産生能の低下,経腟分娩が知られている.

●分娩時に病変が認められる場合の帝王切開は,HSV母子感染の予防になりうる.

●迅速病原診断を行えない現状では,分娩時に性器ヘルペスを疑う所見を認めた場合に帝王切開を行うことが勧められる.

●抗ウイルス療法はHSVの排泄を完全に抑制できないため,妊娠後期の再発抑制療法を行う場合も母子の慎重な管理が必要である.

11)B群溶連菌

著者: 三谷穣 ,   松田義雄

ページ範囲:P.144 - P.150

●日本の報告では,早発型GBS感染症は死亡率16%,後遺症6.6%,遅発型GBS感染症は死亡率17%,後遺症22%とされており,重篤な疾患である.

●GBS保菌者に対して,妊娠中,分娩前に抗菌薬を投与し,除菌を行うことは困難である.

●現在は分娩時の抗菌薬投与が推奨されており,ガイドラインに沿った予防法を行う必要がある.

●遅発型GBS感染症の予防は困難であり,ワクチンなど新しい予防戦略が必要である.

12)HTLV-1

著者: 三浦清徳 ,   築山尚史 ,   増﨑英明

ページ範囲:P.152 - P.162

●ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)は,成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)の原因ウイルスである.

●HTLV-1は,主に母乳を介して母子感染を起こす.

●ATLやHAMの発症を完全に阻止する治療手段はなく,HTLV-1母子感染症の現時点における制御戦略は母乳感染を予防することが最も有効かつ重要である.

●HTLV-1キャリア妊婦の1次スクリーニング検査(PA法もしくはCLEIA法)で陽性例もしくは疑陽性例には,ウエスタンブロット法を用いた確認検査の実施が必要である.

●ウエスタンブロット法を用いたHTLV-1抗体検査には10~15%の判定保留例が存在するため,最終判定にはPCR法を用いたDNA検査が有用である.

13)HIV/AIDS

著者: 稲葉憲之 ,   大島教子 ,   稲葉未知世 ,   伊藤志峯 ,   岡崎隆行 ,   西川正能 ,   渡辺博 ,   深澤一雄 ,   吉野直人 ,   喜多恒和 ,   外川正生 ,   明城光三 ,   和田裕一 ,   塚原優己

ページ範囲:P.163 - P.170

●HIV母子感染対策は妊婦のHIV検査から始まる.正に,「検査なくして対策なし」である.

●次いで,検査結果および感染妊婦に「わが国におけるHIV母子感染予防対策」について十二分に説明する.手に余るようであればACCや各ブロック拠点病院への紹介も考慮する.

●実地臨床の要点は,感染妊婦へのHAART,選択的帝王切開,断乳(人工栄養)である.出生児にもARTを行う.

●出生児に対してHIV検査(RT-PCR,抗体検査)をマニュアルに従って行う.

連載 FOCUS

卵子幹細胞研究の最近のトピック

著者: 高井泰

ページ範囲:P.172 - P.176

はじめに

 最近,卵巣組織中,あるいは胚性幹細胞(ES細胞)・人工多能性幹細胞(iPS細胞)から卵子幹細胞と考えられる細胞が分離,あるいは作成され,マウスでは産仔が得られたとの報告がなされた.特に卵巣組織中から増殖可能な生殖系列細胞が得られたという報告が複数の研究機関からなされたことは,成体卵巣中の始原生殖細胞は補充・再生されないという従来の学説の見直しを迫るものである.卵子幹細胞の発見は,ART(生殖補助医療)などの不妊治療や悪性腫瘍患者の妊孕性温存のみならず,卵子生成のメカニズムの研究にも応用可能と思われる.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

水腎症を伴いFDG-PETで子宮体癌と結腸癌の重複癌の再発が疑われた1例

著者: 小寺宏平 ,   森﨑慎太郎 ,   入江準二

ページ範囲:P.177 - P.182

症例

患者 56歳,未婚未経妊,閉経52歳.

主訴 不正性器出血.

既往歴 特記事項なし.

現病歴

 閉経から4年後に不正性器出血を自覚した.その後,出血量が増加したため,近医産婦人科を受診した.エコー上,子宮腔内に腫瘤陰影があり,子宮体癌疑いで当科紹介となった.子宮頸部細胞診はAGC-NOS,子宮内膜細胞診は陽性であった.また,健康診断で便潜血陽性であったため,下部消化管内視鏡検査が予定されていた.

Estrogen Series

北米更年期学会のホルモン療法に関する立場の説明(position statement)

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.184 - P.185

 2012年3月に北米更年期学会(North American Menopause Society : NAMS)はホルモン療法(HT)に関するposition statementを機関誌“MENIPAUSE on-line”に発表した1).同学会は2010年に同様のposition statementを発表しているが2),今回のものはそのアップデートである.3月のアップデートは27ページにわたり,この両論文を本欄に要約することは簡単ではないが,幸い“Medscape Women's Health”というon-line誌にその要約が発表されたので,ここにさらにその要約を,なるべく原文に忠実に記してしてみた3)

原著

20歳台女子学生の子宮頸がん検診に影響する要因の検討

著者: 佐藤公子 ,   末宗伸枝

ページ範囲:P.187 - P.192

要旨

 本研究では,A看護系大学に在学中の20歳台女子学生を対象に子宮がん検診受診行動に影響する要因の明確化および支援方法を検討した(回収率 : 84.2%).

 共分散構造分析の結果,受診行動には,「社会環境」や「情報」から影響を受けた「検査や結果に対する受け止め方」と「知識」が関与していることが示された.このことから,受診率の向上には「子宮頸がんの知識の普及」「多様な価値観に合わせた情報提供」「体験学習」の必要性が示唆された.

子宮頸部円錐切除術後の妊娠・分娩の検討

著者: 谷本博利 ,   岡本啓 ,   高尾佑子 ,   本田裕 ,   寺本三枝 ,   寺本秀樹

ページ範囲:P.193 - P.196

要旨

 子宮頸部円錐切除術が妊娠・分娩に及ぼす影響について,2001年1月~2011年12月の間に子宮頸部円錐切除術を施行した症例のうち手術時に妊娠中であった症例および術後に妊娠を確認できた症例50例,63妊娠を対象に検討した.自然流産は14.3%(9/64)であり一般の自然流産頻度8~15%とほぼ同等であった.分娩に至った症例のうち37週未満の早産は18.4%(9/49),36週未満の早産は8.2%(4/49)であり一般妊娠での早産率と比較して高率であった.妊娠継続中,人工流産,不明を除いた58例の検討で,頸管縫縮術を施行した症例は11例,そのうち36.4%(4/11)が流早産となった.頸管縫縮術を施行していない47例での流早産は29.8%(14/47)であった.頸管縫縮術の有無と流早産の頻度には有意差を認めなかった(p=0.6746).子宮頸部円錐切除後妊娠では早産の頻度が高く慎重な管理が必要と考えられた.また,円錐切除後妊娠での頸管縫縮術の早産防止に関する有用性は明らかではなかった.

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投稿規定

ページ範囲:P.198 - P.198

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.199 - P.199

バックナンバー

ページ範囲:P.200 - P.200

次号予告

ページ範囲:P.201 - P.201

編集後記

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.202 - P.202

 日本産科婦人科学会や内科学会,外科学会などの18の基盤学会に加えて,産科婦人科であれば,婦人科腫瘍,周産期,生殖,女性医学などのサブスペシャリティー学会も重要な役割を果たしつつあります.近いうちには,各分野で一定以上のレベルが要求される診療には,その学会の専門医の資格が求められるかもしれません.診療の質を保つためには,このような考え方,規制も必要かもしれませんが,これには以下の2つの大きな問題点を感じています.(1)専門医の資格を要求するならば,専門医に対するインセンティブが必要であること,(2)地方の実情を考えていただきたいこと,です.後者の問題点について,ある地方の現状を書きます.わが県では,全体で婦人科腫瘍専門医は2人,生殖医療指導医は3人,産婦人科内分泌専門医は1人と専門医が少なく,そのためこれらの3分野とも指導施設認定を受けているのは大学医学部附属病院のみです.したがって,若手医師がこれらの分野で専門医を目指す場合,大学病院で経験した症例しか登録できません.日産婦の場合は,連携施設という制度がありますから,関連病院が指導施設に適合していなくても,大学病院との連携で経験症例が専門医試験の申請時に認められますが,サブスペシャリティー学会の施設認定はわが県では厳しい条件です.一般病院の先生方がサブスペシャリティー学会の専門医資格を取得することは,施設指定を受けていない自施設での経験症例が認められないという問題や,一般病院のスタッフが少なく,学会出張が困難であることを考えると,容易なことではありません.おそらく多くの地方では,大学病院に症例を集め,専門医を育成するしかないというのが現状ではないでしょうか.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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