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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科67巻12号

2013年12月発行

雑誌目次

今月の臨床 多胎妊娠管理の最新スタンダード─ガイドラインを踏まえて

ページ範囲:P.1199 - P.1199

不妊治療と多胎

著者: 藤本晃久

ページ範囲:P.1200 - P.1204

●排卵誘発剤を用いた不妊治療の進歩,生殖補助医療の普及により,多胎妊娠の割合は著しく増加したが,ここ数年は移植胚数の制限により,生殖補助医療での多胎妊娠は減少傾向にある.

●従来は過排卵刺激,複数胚移植による二卵性,三卵性の多胎妊娠が問題となっていたが,近年,生殖補助医療による一卵性双胎の増加が注目されている.

●生殖補助医療における多胎の発生には,自然妊娠とは異なったメカニズムが存在すると考えられ,その早期解明が望まれる.

多胎の診断

1.多胎と出生前診断

著者: 市塚清健 ,   四元淳子 ,   関沢昭彦

ページ範囲:P.1206 - P.1211

●母体血清マーカーなど非確定的検査の診断精度は単胎妊娠に比べ低い.

●羊水検査や絨毛採取を行う際は膜性を考慮する必要がある.

●検査前には,行う検査の方法,合併症,診断精度などにつき,十分説明を行い同意を得た後で施行する.

2.多胎の超音波検査

著者: 宮越敬 ,   福武麻里絵 ,   吉村𣳾典

ページ範囲:P.1212 - P.1218

●双胎の膜性診断は妊娠初期に行うべきである.

●超音波検査にて描出される卵黄囊数と膜性が一致しない可能性もあるため,胎囊・羊膜・卵黄囊・胎盤・性別を参考に膜性判定を心がける必要がある.

●1絨毛膜1羊膜双胎において,両児が互いに接して観察され,臓器の共有も確認できれば結合体と診断される.

●心臓構造および心拍動が欠如しているにもかかわらず増大傾向を示す無定形物質,もしくは骨構造や血流を示唆する腫瘤像は無心体を示唆する超音波所見である.

多胎妊娠の妊娠・分娩管理

1.MD双胎の管理

著者: 村越毅

ページ範囲:P.1219 - P.1227

●膜性診断は双胎妊娠管理の基本であり,妊娠初期に確実に行うことが大切である.膜性不明の場合はよりリスクの高い1絨毛膜双胎として管理する.

●MD双胎の管理は最低2週間ごとの推定体重と羊水量測定を行う.推定体重や羊水量に差を認める場合は,TTTSに代表される特徴的な疾患を念頭におき精査する.

●胎児血流計測(臍帯動脈,臍帯静脈,静脈管,中大脳動脈など)はMD双胎管理,特に精密検査および胎児評価にきわめて有用なツールである.

2.MM双胎の管理

著者: 兵藤博信

ページ範囲:P.1230 - P.1235

●MM双胎は,双胎のなかでもさまざまな点でリスクが大きいが,生児を期待できる見込みは十分にある.

●超音波で臍帯相互巻絡の状態が把握できるが,予後との関連は薄く,また,TTTSはMD双胎より少ない.

●24~26週からの管理入院と厳重監視が現実的な選択であるが,適切な分娩時期は議論の余地がある.

3.双胎の分娩管理

著者: 大口昭英

ページ範囲:P.1236 - P.1240

●経腟分娩時には,両児の心拍数モニタリングを行う.

●経腟分娩の際には,第一子分娩後の第二子心拍数と胎位を確認する.

●産後の過多出血(postpartum hemorrhage : PPH)と周産期血栓塞栓症発症に注意する.

4.三胎の妊娠・分娩管理

著者: 亀井良政

ページ範囲:P.1242 - P.1246

●双胎妊娠と同様,妊娠初期の膜性診断がその後の管理をするうえできわめて重要であることを認識する.

●初期の三胎妊娠では,妊娠12週までに少なくとも1つ以上の胎囊が消失する可能性が半数以上ある.

●母体ならびに胎児にはさまざまな合併症の発症リスクが存在することを,妊婦や家族に十分伝える.

双胎の合併症

1.双胎と早産

著者: 梅原永能 ,   小川浩平 ,   上出泰山 ,   左合治彦

ページ範囲:P.1247 - P.1252

●双胎妊娠では,PIHやGDMなど妊娠合併症や膜性に由来する特有の病態が知られており,それに起因する人工早産の頻度が高い.

●双胎妊娠では前期破水や陣痛発来による自然早産の頻度も高い.

●双胎管理においては,早産のハイリスクとして注意深い管理が重要と考える.

2.双胎と胎児発育不全

著者: 工藤美樹

ページ範囲:P.1254 - P.1258

●discordant twin : 1絨毛膜性,2絨毛膜性双胎にかかわらず両児の推定児体重差〔discordant rate :(大きい児の体重-小さい児の体重)÷大きい児の体重×100〕が一定以上のものがdiscordant twinである.

●selective IUGR : 1絨毛膜性双胎において一児のみがIUGR(推定児体重が-1.5 SDまたは10%タイル以下)になったものがselective IUGRである.

●双胎間輸血症候群(twin-to-twin transfusion syndrome : TTTS) : 1絨毛膜性双胎において胎盤の吻合血管を介する血流不均衡により,羊水過多/羊水過少などの症状の程度が強いものが双胎間輸血症候群である.

3.双胎一児死亡の管理

著者: 永松健 ,   藤井知行

ページ範囲:P.1259 - P.1263

●双胎一児死亡の予後は膜性により大きく異なり,MC双胎の一児死亡の直後に,他児の循環障害が生じて重篤な影響を生じることがあることを理解しておく.

●DC双胎では待機的管理が原則であり早産を回避することが望ましい.

●MC双胎の臨床的管理については未解決の問題点が多いが,現時点では少なくとも児の未熟性が懸念される週数においては待機的管理が支持される.

連載 FOCUS

わが国の母体死亡の現状―母体安全の提言より

著者: 池田智明 ,   大里和広

ページ範囲:P.1264 - P.1269

 日本の妊産婦死亡は近年減少してきている.現在では10万対で約4前後であり,他の先進欧米諸国と比較しても遜色ない数となってきた.妊産婦死亡は非常に稀に起こる出来事であり,また日本の現状が諸外国から立ち後れているわけでもない.しかし未来に希望を持つ若い母親の,人生でも最も幸せな時期を直前にした死はこの世の中で考えられることで最も悲劇的な出来事の1つであり,当人のみならず,残された子供や配偶者,その他の家族,医療従事者,社会に非常に計り知れない大きな衝撃がある.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

子宮頸部最小偏倚型粘液性腺癌の可能性を排除できないため,診断目的で子宮全摘出術を行った症例

著者: 福松之敦

ページ範囲:P.1270 - P.1275

症例

患者

 42歳,未婚,未経妊,性交歴なし.身長161 cm,体重65 kg.

既往歴・家族歴

 特になし.

現病歴

 主訴は1年前より自覚する耳鳴,めまい,立ちくらみであり,近医耳鼻科から処方を受けたが軽快せず,他科疾患の可能性を考えて当院内科と産婦人科を受診した.

Obstetric News

分娩進行停止再考

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1277 - P.1280

 分娩進行に十分な強さの子宮収縮があるにもかかわらず,分娩進行停止が確認された場合は分娩進行異常と診断し,帝王切開する場合がある.

 不適切な適応の初回帝王切開を減少させることが反復帝王切開を減少させることにもつながるため,初回帝王切開回避は重要な問題である.

Estrogen Series

卵巣癌予防としての経口避妊薬の効果

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1281 - P.1281

 卵巣癌は,米国では女性人口10万人につき12.3の割合で発生し,その死亡率は同8.2に及ぶ.卵巣癌は産婦人科の扱う癌では最も死亡率が高い.しかし,現在までのところ,卵巣癌の有効なスクリーニング法はいまだない.

 Havrileskyらは一般人口の女性を対象にsystematic reviewとmeta-analysisを行った.一般女性人口は経口避妊薬(oral contraceptive pills,ここではOCPと略す)を使用した人口と使用しなかった人口とに分けた.

症例

子宮体部明細胞腺癌の6症例

著者: 吉田光紗 ,   北見和久 ,   伴野千尋 ,   山口恭平 ,   廣渡芙紀 ,   寺西佳枝 ,   矢野有貴 ,   小林浩治 ,   高橋典子 ,   岡田真由美 ,   安藤寿夫 ,   河井通泰 ,   前多松喜

ページ範囲:P.1283 - P.1286

要約

 子宮体部明細胞腺癌は比較的稀な腫瘍で,早期でも腹腔外に進展しやすく,予後不良な特殊型とされている.子宮体部明細胞腺癌の6症例を経験したので報告する.

 6症例はすべて閉経後に発症し,主訴は性器出血(1例のみ検診異常)であった.手術は単純または拡大子宮全摘術,両側付属器切除術,5例に骨盤リンパ節郭清術,3例に傍大動脈リンパ節郭清術が施行された.術後4例に化学療法が施行された.6症例はすべてI期であり,5例が無病生存,1例が再発治療後無病生存である.

 予後不良とされる明細胞腺癌であったが,経験した6症例はすべてI期であり,比較的予後良好であった.類内膜腺癌以外の特殊型子宮体癌は術後にupstagingされることが比較的多い.リンパ節郭清術を含めたstaging laparotomyと化学療法が予後改善に有効であると考えられた.

胞状奇胎娩出後約3年経過し,血痰,乳房腫瘤を認め,絨毛癌と診断された1例

著者: 長治誠 ,   安藤まり ,   久保光太郎 ,   早田裕 ,   清水健治 ,   山下裕 ,   池田秀明 ,   小寺正人

ページ範囲:P.1287 - P.1293

要約

 胞状奇胎娩出後1年7か月経過し,その後自然妊娠し,帝王切開が施行された7か月後に血痰,乳房腫瘤を認め,絨毛癌と診断された1例を経験した.症例は38歳,4経妊3経産.胞状奇胎の診断で約3年前他院にて胞状奇胎除去術を施行されていた.術後1年6か月で同院での胞状奇胎の定期検診は終了していた.その後自然妊娠し,胞状奇胎の術後2年4か月目,妊娠39週で帝王切開が施行されていた.産後7か月経過し,血痰,左乳房腫瘤を認め,当院内科,外科に紹介となった.乳腺腫瘤の穿刺組織診結果で絨毛癌と診断され,当科へ紹介となった.諸検査にて絨毛癌stageIVと診断し,EMA/CO療法を7コース行ったが,肺病変,乳腺病変の残存を認めたため外科切除を行った.その後3年以上経過するが再発は認められていない.

書評

―位藤俊一(編)―乳房画像診断最前線─超音波診断を中心に

著者: 遠藤登喜子

ページ範囲:P.1229 - P.1229

 本書は37名の共著による乳房の画像診断を臨床的観点からまとめた書である.超音波診断を中心にマンモグラフィ,CT,PET/CT,MRIと,乳房に関わる画像診断を,あくまで「臨床家」の観点で,画像診断を臨床に用いる場合には画像の基本を理解して欲しいという方針で作成されており,乳腺診療をこれから始める,あるいは現在も乳腺診療に従事しているけれど画像理論は避けてきた方々にも,無理なく手に取ることができる.

 構成は,いきなり,「乳房超音波画像診断における新しい技術と他のモダリティの位置付け」で始まり,続いて乳腺疾患の概念を伝える「総論 : 病理」,続いて各論としての「超音波検査の従来法と新技術」,「超音波以外の主な検査法(各モダリティによる評価の基本)」と技術の解説が続き,続いて「ケースファイル」により頻度の高い疾患の紹介され,「術前画像評価による治療方針の決定」では薬物療法の治療効果判定,ラジオ波焼灼療法や凍結療法実施のための画像診断と治療効果判定,画像ガイド下のインターベンションなど,治療チームを意識した内容が展開されている.

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投稿規定

ページ範囲:P.1294 - P.1294

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.1295 - P.1295

バックナンバー

ページ範囲:P.1297 - P.1297

アンケート用紙

ページ範囲:P.1298 - P.1298

次号予告

ページ範囲:P.1299 - P.1299

編集後記

著者: 藤井知行

ページ範囲:P.1300 - P.1300

 9月,日本中が喜びにわくニュースが飛び込んできました.言うまでもなく,2020年夏季オリンピック東京大会開催決定のニュースです.福島の原子力発電所の汚染水漏れが直前に発覚し,このニュースが世界中に報道されて,もう駄目だろうと考えていましたが,まさかの決定で,日本人の1人として素直に喜んでいます.今から49年前の今日,オリンピック東京大会開会式が行われました.私は小学生でしたが,貧乏で汚かった東京の街並みがみるみる綺麗になっていき,便利になっていったことを覚えています.我が家でもその前年に漸くテレビを買い,まだ白黒でしたが,マラソンのアベベ選手の快走,東洋の魔女,女子バレーボールの金メダル,当然のように団体金メダルをとった男子体操,妖精のようにきれいだった女子体操金メダルのチェコスロバキアのチャスラフスカ選手などを,家族皆でテレビにかじりついて見ていました.開会式の日,東京の東の方にあった我が家から,西の空に自衛隊の飛行機が飛行機雲でくっきりと描いた5つの輪を眺めていたのを覚えています.時代は変わり,東京はきれいな街になって,人々も昔に比べれば裕福になっています.それなのに,幸せと感じている人は,果たして49年前より多いだろうかと考えてしまいます.49年前,人々は,これから日本を良くしていくんだ,自分たちは裕福になっていくんだと,皆,希望をもって暮らしていました.それに比べ,最近では,未来に希望をもてず,今が良ければそれでいいと思っている人が増えているように感じます.東京は間違いなくこれからの7年間で,大きく変貌していくと思います.今度のオリンピックで,長い不景気に終止符が打たれ,人々がまた希望を持って暮らせるような世の中になっていけばいいなと思っています.そして,産婦人科も,オリンピックが開かれる7年後には,医師不足とその地域偏在が解消され,過重労働やお産難民のない医療体制ができあがっていることを願っています.(2013年10月10日 記)

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

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