文献詳細
臨床経験
抗リン脂質抗体症候群におけるダナパロイドナトリウムの有用性について
著者: 前田和也1 藤田太輔1 藤田富雄2 加藤壮介1 宮本良子1 鈴木裕介1 神吉一良1 湯口裕子1 伊藤理恵1 荘園ヘキ子1 山下能毅1 亀谷英輝1 大道正英1
所属機関: 1大阪医科大学産婦人科 2ふじたクリニック内科
ページ範囲:P.313 - P.316
文献概要
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome : APS)は,血栓症や習慣性流産,胎児発育不全をきたす自己免疫疾患の1つである.APS合併妊娠の胎盤病理所見では,血栓症を伴う広汎な梗塞所見が認められるため,生児を獲得させる鍵は胎盤梗塞をいかに予防するかである.現在APSの一般的な治療は,低用量アスピリン+未分画ヘパリン皮下注射である.しかしこの治療では生児を獲得できない症例が存在する.その原因として未分画ヘパリンの皮下注射では,抗血栓作用である抗Xa活性が低いために,胎盤梗塞を予防することができないことが考えられる.ダナパロイドナトリウム(danaparoid sodium : Dan)は強力な抗Xa活性があり,かつ出血傾向の少ないヘパリン類似物質である.今回われわれはAPS合併妊娠に低用量アスピリン+未分画ヘパリンにDan皮下注射を併用することにより胎盤梗塞を予防し,生児を得た3例を経験したので文献的考察を含め報告する.
参考文献
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