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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科67巻5号

2013年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 子宮体がん診療アップデート

ページ範囲:P.439 - P.439

診断のトピックス

1.子宮体がん発症のリスク因子

著者: 竹原功 ,   太田剛 ,   倉智博久

ページ範囲:P.440 - P.446

●子宮体がんは臨床病理学的にtype Iとtype IIに分類され,type Iの発症にはunopposed estrogenがかかわっている.

●unopposed estrogenと直接的に関与する因子としては,妊娠歴,ホルモン治療歴,排卵障害などが挙げられる.

●肥満などを背景としたインスリン抵抗性はエストロゲンの上昇をもたらし,子宮体がんの発症リスクとなる.

2.子宮体がんの新しいステージング

著者: 園田豪之介 ,   牛嶋公生 ,   嘉村敏治

ページ範囲:P.448 - P.451

●改訂された子宮体癌進行期分類では旧分類IA期とIB期を統合してIA期とした.旧分類IA期,IB期と新分類のIA期の生存率が同様であったことより,今回の改訂は予後を正確に反映しているものと評価できる.

●子宮頸部浸潤は,頸管腺のみの浸潤よりも腫瘍の分化度や間質浸潤の深さが予後因子として重要である.

●腹水細胞診は進行期決定のための要因とはならないまでも,予後因子としては存在している.今後は術後療法が省略される症例が増加すると思われるが,それらの症例の予後については十分注意して観察する必要がある.

●旧分類において子宮頸管腺のみへの浸潤例(IIA期)や腹水細胞診陽性のみの症例(IIIA期)のなかには,新分類においてI期となった症例がある.分類の改訂により症例数の変化がみられる.

3.子宮体がんのスクリーニング

著者: 前濱俊之

ページ範囲:P.452 - P.457

●体がんの疫学 : 体がんは明らかに増加しており,そのなかで若年体がんも徐々に増加している.

●体がんのスクリーニング : 内膜細胞診は疼痛が少なく,簡便ですぐれた検査手技である.経腟超音波検査も閉経後有症状例で有用である.

●スクリーニングとしての内膜細胞診と付着組織診 : 内膜細胞診と付着組織診の併用はスクリーニングとして有用であり,偽陰性,偽陽性を減少させる.

4.子宮体がんの画像診断―筋層浸潤・頸部浸潤の判定はどこまで可能か

著者: 三村理恵 ,   加藤扶美 ,   白土博樹

ページ範囲:P.458 - P.464

●筋層浸潤の診断能は,T2強調像に造影T1強調像や造影ダイナミックを加えることで,向上が期待される.

●筋層浸潤の深達度評価においては,コントラスト分解能が良好な拡散強調像の活用が期待される.

治療のトピックス

1.子宮摘出の方法とリンパ節郭清の範囲

著者: 小田切哲二 ,   金内優典 ,   櫻木範明

ページ範囲:P.466 - P.473

●拡大(準広汎)子宮全摘出術を施行するうえで最も重要な作業は,膀胱子宮靱帯前層の切断と,尿管の授動である.安全に手術を行うために子宮周囲支持組織を形成する靱帯,神経,血管の層構造の理解が大切である.

●傍大動脈リンパ節郭清術は熟練した術者,スタッフのもとで行われれば決して患者にとって大きな不利益のある術式ではない.

●傍大動脈リンパ節郭清の併術がリスクの高い子宮体がんの予後を改善する可能性が高い.今後は,各症例ごとのリンパ節転移リスクを勘案した後腹膜リンパ節郭清の範囲の設定が必要となる.

2.子宮体がんの術後再発リスク評価と術後療法

著者: 進伸幸 ,   山上亘 ,   野村弘行 ,   阪埜浩司 ,   青木大輔

ページ範囲:P.474 - P.484

●早期体がん症例に対する術後療法としての放射線骨盤照射(EBRT)は全生存を改善せず,有害事象をもたらすことから,推奨されない.

●術後療法としての化学療法の標準基準はAP療法であり,JGOG2043(AP療法,TC療法,DP療法のRCT)の解析結果が待たれる.

●術後に化学療法と放射線療法を併用し,再発や原癌死に関するハザード比が低下したとする報告があり,また複数のRCTが進行中である.

3.子宮体がんの特殊組織型に対する治療戦略

著者: 江本精

ページ範囲:P.485 - P.490

〈漿液性腺癌または明細胞腺癌に対する治療指針〉

●手術術式は子宮全摘出術,両側付属器摘出術に加え,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術/生検,大網切除が推奨される.

●化学療法においてこれらの組織型に対する個別化したレジメンを推奨するだけのエビデンスはない.

〈子宮癌肉腫に対する治療指針〉

●子宮癌肉腫はGrade 3の類内膜腺癌と同様な治療が推奨される.

●TC療法がIFM+PTX併用療法と同等に有効であり,治療の簡便さではTC療法が優る.

〈子宮平滑筋肉腫に対する治療指針〉

●単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術が標準術式である.

●後腹膜リンパ節の腫大が確認された場合には生検または郭清を考慮する.

●ゲムシタビンとドセタキセルの併用療法は高い奏効率を示すが有害事象に注意する.

〈子宮内膜間質肉腫に対する治療指針〉

●単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術が標準術式である.

●未分化子宮内膜肉腫ではリンパ節郭清術/生検を含めた手術を考慮する.

●進行・再発例では,低悪性度肉腫にはホルモン療法,未分化子宮内膜肉腫症例には化学療法/放射線療法を考慮する.

4.子宮体がんに対する腹腔鏡下手術

著者: 寺井義人 ,   田中智人 ,   大道正英

ページ範囲:P.491 - P.496

●腹腔鏡下手術は,開腹手術と比較して,手術時間は長い傾向にあるが,術中出血量,周術期合併症,入院期間においては有意に少ない.

●現在までに6つのRCT(randomized control study)があるが,初期子宮体がんに関しては,開腹手術と比べて予後に差がない.

●RCTでは,その多くが初期子宮体がんの類内膜腺癌を対象とし,進行がん,非類内膜腺癌に対する術式としての有用性は確立していない.

5.子宮体がんの妊孕性温存療法

著者: 三橋暁 ,   生水真紀夫

ページ範囲:P.498 - P.504

●プロゲスチン療法の奏効率は,子宮体がんで76%,子宮内膜異型増殖症で86%ほどで比較的高い.

●プロゲスチン療法で寛解した子宮体がんの30~50%,子宮内膜異型増殖症の23~26%が再発する.

●MPA+メトホルミン併用療法は,温存療法の問題点である高い再発率を改善する可能性がある.

6.進行・再発子宮体がんの治療

著者: 上田豊 ,   榎本隆之 ,   木村正

ページ範囲:P.505 - P.510

●進行症例に対しては,腫瘍減量術と化学療法にて予後を改善できる可能性がある.

●再発症例については,手術療法・放射線療法・化学療法を適切に選択する必要がある.

●二次化学療法の効果は,初回化学療法からの無治療期間(TFI)と相関する.

連載 FOCUS

産科医療補償制度の概要と実績

著者: 岡井崇

ページ範囲:P.511 - P.515

はじめに

 産科医療補償制度は,分娩にかかわり発生した脳性麻痺というきわめて限定された対象のみにではあるが,医療事故への事後対応としてわが国が初めて“無過失補償”の考えを取り入れた画期的な制度で,社会からの期待も大きい.しかし,同様の制度を早くから導入し定着させている先進諸外国の例と比べると,本制度には未熟な部分があって,医療の提供者と受給者の双方に最大限の有益性をもたらす運用には難しい舵取りが要求される状況にある.そのため,現在,2015年の改定に向けて,制度の細部にわたり議論が白熱している.その議論がどこに落ち着くのか気になるところではあるが,本稿では,現行の制度のこれまでの運用実績について記すこととする.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

不正性器出血・子宮頸部の硬さから子宮頸癌を疑ったが,細胞診・腫瘍マーカー・画像所見が陰性であった症例

著者: 米澤優 ,   渋川昇平

ページ範囲:P.516 - P.519

症例

患者 52歳,2妊2産,閉経48歳.

既往歴 特記事項なし.

現病歴

 不正性器出血を主訴に来院した.経腟超音波検査で,子宮はやや大,頸部は大,ほかに小さい子宮筋腫を認めた.両側付属器に異常なし.子宮腟部の外子宮口付近にびらんなし.出血は認めなかった.内診すると子宮頸部は後腟円蓋にかけて非常に硬く,子宮頸癌の頸管癌タイプと考え(思い込み),頸部,腟円蓋から細胞診を提出した.進行癌と考えたので,さらに腫瘍マーカー検査,CT,MRIの予約をした.

Obstetric News

ドロスピレノン含有経口避妊薬と静脈血栓塞栓症のリスク

著者: 武久徹

ページ範囲:P.520 - P.523

 経口避妊薬(oral contraceptives : OCs)使用中の静脈血栓塞栓症(VTE)リスクは,妊娠中や分娩直後のVTEのリスクに比べれば非常に低いものの,OCs非使用者,非妊娠,そして,ホルモン補充療法非使用者に比べて高く,ドロスピレノン(DRSP)含有OCs使用者では,そのリスクがより高率になることを示唆するデータがある.

 主なDRSP含有OCsは米国ではYAZが2006年から,また,ヨーロッパではYasminが2000年から広く使用されており,日本では,YAZが2010年に承認・発売されている.米国におけるYAZ,Yasminの適応は避妊,にきび治療,そして月経前不快気分障害(PMDD)である.DRSPのもつ作用から,使用中の体重増加や浮腫も他のOCsほど多くなく,PMDDに対しては他のOCsに比較して著効があり,多用されている.

Estrogen Series

卵巣摘出後の老年期の性機能

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.524 - P.524

 今回はObstetrics and Gynecology誌から卵巣摘出術と性機能に関する論文をご紹介したい1)

 毎年多くの子宮摘出術が行われているが,その大部分は良性疾患を適応としている.米国では子宮摘出術の25~55%が(任意)卵巣摘出術を伴っている.このような卵巣摘出の目的は将来の卵巣がんの発生や卵巣手術の可能性を除くことである.しかし,卵巣の存続は生存期間を増加させ,冠動脈疾患を減少させることが示されている1)

症例

傍腫瘍性神経症候群の一種である多発筋炎を合併した再発子宮頸癌の1例

著者: 西野理一郎 ,   辻野太郎 ,   杉本誠 ,   森川哲 ,   武内享介 ,   佐藤悠 ,   門口倫子 ,   酒井太門 ,   由宇芳才

ページ範囲:P.525 - P.528

要旨

 症例は58歳,女性.2006年6月,55歳時に子宮頸癌IIb期にて近医より当科へ紹介された.シスプラチンを用いた同時化学放射線療法を施行した.2009年8月,squamous cell carcinoma antigen(以下SCC)が17.7 ng/mLと高値を示し,腹部CTにて傍大動脈リンパ節の腫大を認めたため子宮頸癌の再発と診断したが,発熱および近位筋の筋力低下を訴えるため,当院内科にて精査したところ,筋原性酵素(creatine phosphokinase : 以下CK)が15,079 IU/Lと著明高値で,大腿筋のMRI所見などから多発筋炎と診断された.ステロイドパルス療法を行い,CKが低下した時点でパクリタキセルとネダプラチンを併用した化学療法を施行した.6コース終了後にはCKは86 IU/Lまで低下し,筋力も自立歩行ができるまでに回復した.臨床経過とCKの推移より子宮頸癌の再発に伴う悪性腫瘍関連筋炎と診断した.皮膚筋炎と悪性腫瘍の合併はよく知られているが,多発筋炎を合併した子宮頸癌の報告例は非常に少なく,本症例は貴重な1症例と考える.

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投稿規定

ページ範囲:P.530 - P.530

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.531 - P.531

バックナンバー

ページ範囲:P.532 - P.532

次号予告

ページ範囲:P.533 - P.533

編集後記

著者: 倉智博久

ページ範囲:P.534 - P.534

 今年も,東北・北海道は昨年に引き続いて厳冬でした.山形市を数十キロメートル南北に行きますと,南には米沢市のある置賜地区,北には新庄市のある最上地区という豪雪地域があります.これらの地域では今年は記録的な大雪だったようです.夏は「すいか」の産地として有名な尾花沢市などは一時に積雪1 mを超える降雪で,何度も全国版のニュースとなっていました.このような場合には,ホワイトアウトとなり,まったく視界が効かない状況となりますので外出はかなり危険を伴います.実際,北海道では,3月3日には1日に8人もの方が亡くなるという大変な悲劇が起こってしまいました.

 山形市内は,昨年よりはかなり雪が少なかったのですが,2月末の大雪では山形新幹線が運休となり,私も東京で足止めになりました.北日本の各地では,一冬に数回このような出来事がありますので,特別に重要な用務がある場合には,たとえ時間的に余裕のある場合においても,当日の移動は避けるのが無難です.北日本で重要な用務がおありの折にはご注意ください.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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