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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科67巻6号

2013年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 産婦人科超音波診断―新しい技法とその臨床応用

ページ範囲:P.539 - P.539

超音波3次元情報の応用

1.3次元画像構築の原理

著者: 馬場一憲

ページ範囲:P.540 - P.545

●3次元超音波診断装置は,3次元走査を停止した状態では通常の超音波(断層)診断装置として使用できる.

●3次元超音波では,たくさんの断層像から作られた3次元データセットを使って画像が作られ表示される.

●3次元超音波では,さまざまな3次元像や任意の断面を表示できるが,診断に最適な画像の選択が重要である.

●3次元超音波では,アーチファクトが出やすいため,診断を下す前に断層像に戻っての確認が必要である.

2.産科診断への応用

著者: 夫律子

ページ範囲:P.547 - P.555

●胎児外表だけでなく内部臓器の診断も正確かつ客観的に行えるため,3D胎児診断はきわめて有用である.

●胎児形態異常評価は,第2三半期から第1三半期に移行してきたといっても過言ではない.

●客観的3D撮像のコツは「とりあえず3Dで撮っておこう」ではなく,「できあがるはずの3D画像」を常に考えることである.

3.婦人科診断への応用

著者: 関谷隆夫 ,   藤井多久磨

ページ範囲:P.556 - P.566

●3次元法を活用して,内性器の直交3断面同時表示・連続多断面表示・厚みをもった任意断面像を体感する.

●造影法やドプラ法を組み合わせ,さらに演算機能も活用して,3次元法の最大限のパフォーマンスを臨床応用する.

●3次元法は,立体画像による診断に加えて,今後は画像情報管理の基本的ツールとなる.

4.血流3次元情報の応用

著者: 田中宏和 ,   野口純子 ,   秦利之

ページ範囲:P.568 - P.571

●超音波アンギオグラフィは,血管の走行異常や腫瘍の臨床診断に有用である.

●vascular sonobiopsyを用いて,組織の血流情報を定量化することが可能となる.

胎児心臓検査の新技術

1.画像表示の新手法

著者: 松岡隆 ,   仲村将光 ,   長谷川潤一 ,   市塚清健 ,   関沢明彦

ページ範囲:P.573 - P.579

●胎児心臓の特徴(小さい・速い・構造が立体的で複雑)を理解し,適切な設定を用いる.

●STIC法はoff line検査を可能にし,遠隔診断・教育に有用である.

●新しい心機能評価手法として方向性パワードプラ,CW(continuous wave)法,Dual Doppler法がある.

2.エコートラッキングの臨床応用

著者: 中田雅彦 ,   笠原英司 ,   村下賢

ページ範囲:P.581 - P.584

●胎児心臓における2D speckle-tracking法の適応で重要な点は,成人の心臓に比べて小さく,心拍数の速い胎児心臓に対してtrackingが可能なB-mode画像を得ることである.

胎盤の血流評価

著者: 内田雄三

ページ範囲:P.586 - P.591

●胎盤内の胎児血流が妊娠,分娩予後に関連している可能性がある.

●胎児側胎盤血流減少領域比は,今まで困難であった胎盤内の胎児側の血流の多寡を推定する方法である.

●胎盤内の胎児側の血流評価は妊娠,分娩予後を見通すうえで重要である.

術中超音波検査と超音波内視鏡検査

著者: 増﨑英明

ページ範囲:P.593 - P.600

●術中超音波検査は,前置癒着胎盤の評価法として有用である.

●特に軽度の癒着胎盤を正確に評価することにより,過剰診断による誤った子宮摘出の頻度を減少させることが期待できる.

●子宮鏡下の粘膜下筋腫核出術に際し,超音波内視鏡を併用することにより子宮穿孔などの合併症を回避できる.

経会陰超音波

著者: 小林浩一 ,   坂巻健

ページ範囲:P.602 - P.607

●経会陰超音波は簡便かつ無侵襲な性器脱・尿失禁の評価法として確立しつつある.

●分娩時の経会陰超音波は分娩の進行や回旋の評価,また安全な急速遂娩の評価など,臨床的有用性が認められつつある.

超音波Elastographyの産科応用

著者: 小松篤史

ページ範囲:P.609 - P.614

●Elastography技術は関心領域内の相対的な組織硬度の分布を描出するもので,絶対的な硬度評価は不可能である.

●同一の関心領域内に基準となる硬度のものと計測したい部位をおき,それらのstrain ratioを計測することで間接的に硬度評価をすることが可能である.

●Elastographyでは微小な圧迫を加えることが不可欠であり,人間の手で圧迫を加える以上ある程度の誤差が出ることは考慮する必要がある.

●子宮頸部Elastographyは子宮頸管長計測と同時に行えるというメリットの反面,子宮頸部の向きや児頭下降などにより正確な評価が困難である症例も少なくない.

連載 FOCUS

骨盤臓器脱のマネジメント―最近の潮流

著者: 中田真木

ページ範囲:P.616 - P.621

はじめに

 ウロギネコロジーは,女性によくある骨盤底関連の不具合を診療する専門領域で,主として産婦人科と泌尿器科が担当している.骨盤底の不具合は,泌尿器科や神経の疾患もさることながら,妊娠・出産を契機として,あるいは子宮筋腫などの内性器疾患により起こる.不具合を抱える女性は多く,生活の質が低下する.生命にはかかわらないものの,妊娠・出産や就労を断念し,暮らす世界が狭まる人も少なくない.

 少子高齢化時代の到来とともに,診療科を問わずウロギネコロジーの重要性は広く認識されている.一方で,アカデミックな立場においては,骨盤底医学はそれぞれの診療科の中核的な仕事とはやや趣を異にしている.おそらく,いま最大の課題は,女性骨盤底障害の抱える社会的ニーズと医学的位置づけの間のギャップを縮め,効率的な診療態勢を実現することであろう.本稿は性器脱(骨盤臓器脱,以下POP)診療のトレンドについて,一般産婦人科診療を踏まえて概説する.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

塩酸リトドリンによる横紋筋融解症の発症時に,心不全・呼吸不全・腰背部痛が併発し,多くの専門診療科へコンサルトするに至った症例

著者: 服部政博

ページ範囲:P.622 - P.626

症例

患者

 32歳,0経妊.

主訴

 頸管長短縮,切迫早産26週.

既往歴

 特になし.

家族歴

 姉が30歳で突然死.

現病歴

 IVFにて妊娠し,妊娠10週で当院を紹介された.以後は当院で妊婦健診を施行していた.妊娠17週,頸管長短縮を認め,頸管無力症の診断のもとマクドナルド頸管縫縮術を施行した.妊娠26週2日,頸管長1.3 cmと短縮を認め,切迫早産の診断で入院となった.

Obstetric News

潜在性甲状腺機能低下症―妊娠中の管理―(米国産婦人科学会2012年)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.627 - P.629

 2012年8月に米国内分泌学会から,妊娠中および産褥期の甲状腺機能異常の取り扱いについて示された2007年のガイドラインが改訂され発表された.内容は,the U.S. Preventive Service Task Force(米国医療予防サービス特別委員会)による,Evidence-basedガイドラインである.

 さらに,米国産婦人科学会は,“妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症”(ACOG Committee Opinion.#381. 2007年10月)を2012年に再発表した.

Estrogen Series

緊急避妊法に関する米国小児科学会のポリシー表明

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.630 - P.631

 米国の十代少年少女の性行動は活発で,15~19歳の少女の出産率は1,000例中34.3に及ぶ.避妊法なしで月経周期中ごろに性行為をすれば,8例の妊娠が起きるが,緊急避妊法を使用すれば妊娠は2例ですむ.若者男女にあらかじめ緊急避妊法の処方箋を渡しておけば,その使用率は増加するが,それに伴って必ずしも性行為自体が増加するわけではない.

 緊急避妊法は下記の3種に分けられる.

原著

ジエノゲスト術前投与における子宮内膜ポリープの病理学的変化について

著者: 中山毅 ,   宮野奈緒美 ,   石橋武蔵 ,   田中一範 ,   原理恵子 ,   岡本明子 ,   俵史子 ,   北山康彦

ページ範囲:P.633 - P.638

要旨

 子宮内膜ポリープは,子宮内膜がエストロゲン依存性に過形成を起こした状態である.積極的治療を開始する基準としては,月経異常などの症状,悪性の可能性,そして不妊症で内膜ポリープが1つの要因であると考えられる場合とされる.手術療法として子宮鏡手術が行われることも多いが,最近ジエノゲストの持つ子宮内膜増殖抑制作用,抗炎症作用から,子宮鏡手術の際にジエノゲストを術前投与することが有効であると報告されている.ジエノゲストにより,子宮内膜ポリープの色調が白色化し,ポリープと正常子宮内膜との境界線が明瞭となること,電極による接触出血が低減されることから,臨床的に有用であるとされる.しかしながら病理学的な観点から,ジエノゲストの術前投与の有効性につき,検討した報告はない.そこでジエノゲスト術前投与による子宮内膜ポリープの病理学的変化を検討してみた.

 病理学的所見として,通常の子宮内膜ポリープには認めることがない,表面上皮の出血性びらんによる脱落,深部腺管の萎縮,間質細胞の減少や浮腫,リンパ球主体の炎症細胞の浸潤といった特徴的な所見をみた.おそらく表面上皮のびらんはジエノゲスト投与による性器出血と関連し,腺管上皮の萎縮や間質細胞の減少や浮腫といった所見が,子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術における白色化や接触出血の低減と関連していると推測された.これらの特徴的な病理組織学的所見が,ジエノゲスト術前投与の有効性と関連があると推測している.

症例

後腹膜に再発を認めた子宮頸部ブドウ状肉腫の1例

著者: 高林あゆみ ,   中嶋達也 ,   椹木晋 ,   神崎秀陽 ,   土屋邦彦

ページ範囲:P.639 - P.644

要旨

 子宮頸部のブドウ状肉腫で,手術と化学療法を施行後,再発した症例を経験した.患者は未経妊.不正性器出血を主訴に近医を受診し子宮頸部ポリープと診断,切除されたが,短期間で腫瘤の再発を認め,当院へ紹介された.腫瘤を一部切除しブドウ状肉腫と病理組織診断された.子宮頸部に腫瘍が限局していたことから,円錐切除術を行った.術後病理組織診断は子宮頸部上皮内癌を伴うブドウ状肉腫で,IRS(Intergroup Rhabdomyosarcoma Study-V)分類に基づきstage 1,groupIIと診断し,ビンクリスチンとアクチノマイシンDの2剤(VA)による術後化学療法を施行した.しかし,化学療法終了後1か月で後腹膜に8 cm大の腫瘤を認め,亜全摘を行った.病理組織診断はSarcoma NOS with anaplasiaで,組織像を変換した転移再発と考えられた.現在ビンクリスチン,アクチノマイシンD,シクロホスファミドとイリノテカンの4剤併用(VAC+CPT-11)の化学療法を施行している.

書評

―青野敏博,苛原 稔(編)―産婦人科外来処方マニュアル(第4版)

著者: 水沼英樹

ページ範囲:P.631 - P.631

 『産婦人科外来処方マニュアル第4版』が発刊された.産婦人科の泰斗である青野敏博徳島大学名誉教授と,その青野先生の薫陶を受け,また評者の友人として親しくお付き合いいただいている徳島大学医学部産科婦人科の苛原稔教授が編者となって,徳島大学産科婦人科の現教室員やOBが総力を挙げて編集している処方マニュアルの改訂版である.

 本書は,産婦人科の外来診療の中で日常的に遭遇する疾患に焦点を当て,その診断がついた段階で,どのように薬剤の選択を行うかを極めて明快かつ簡潔にまとめた一冊である.目前の患者に対し,最も適切な薬剤が容易に選択できるよう,そのための工夫が随所に施された内容となっている.

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投稿規定

ページ範囲:P.646 - P.646

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.647 - P.647

バックナンバー

ページ範囲:P.648 - P.648

次号予告

ページ範囲:P.649 - P.649

編集後記

著者: 藤井知行

ページ範囲:P.650 - P.650

 岡井崇先生の後を引き継ぎ,編集委員になりました東京大学産婦人科の藤井知行です.産婦人科は,思春期から老年期までの女性特有の生理・病理の基本的理解のもとに,女性の健康維持・増進,疾病の予防・治療などの諸問題を統合的・全人的に把握し,臨床への還元を志向する学問です.その魅力を伝え,同時に産婦人科の先生方の役に立つ良い雑誌を作るお手伝いをしたいと考えています.どうぞよろしくお願いいたします.

 さて,4月になって新年度になり,若いドクターが教室に入局してきました.いずれも希望に満ちた晴れ晴れとした表情をしており,いい医師になろうという意気込みが伝わってきます.全国的に産婦人科を希望する医師が減少している中,よくぞ産婦人科を選んでくれたという感謝の気持ちとともに,新人たちの期待を裏切らないよう教育をしていかなければならないという気持ちでいっぱいです.私は,1982年に医学部を卒業し,30年以上にわたって産婦人科医の道を歩んできました.幸い,上司,同僚,後輩医師に恵まれ,よい教育を受け,また研修と研究のすばらしい機会を与えられてきました.産婦人科医をわが道として選んでよかったと思っています.今年,産婦人科医の道を歩み始めた若い医師たちが,30年後,同じように,産婦人科医になってよかったと思えるような環境を整えてあげたいと思っています.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻11号(2015年11月発行)

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69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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