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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科68巻11号

2014年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 妊娠高血圧症候群のベストマネジメント

著者:

ページ範囲:P.1043 - P.1043

診断と評価

1.母体の血圧測定法,高血圧重症度評価

著者: 目時弘仁

ページ範囲:P.1044 - P.1048

●診察室外血圧 : 24時間自由行動下血圧測定(ABPM)や家庭血圧測定など,非医療環境下の血圧測定方法.

●ABPM : 血圧の短期変動や日内変動をとらえるにはABPMが適しており,妊婦においても,仮面高血圧や白衣高血圧の診断に有用.

●白衣高血圧 : 診察室血圧は高血圧であるが,診察室外血圧は正常域血圧である状態.一般に母児の予後は良好.

2.母体の蛋白尿診断および重症度評価,腎機能評価

著者: 森川守 ,   水上尚典

ページ範囲:P.1049 - P.1054

●妊娠蛋白尿妊婦はその後に妊娠高血圧腎症へ進展する場合があるので注意が必要である.

●妊婦健診でdipstick test 1+以上が2回続けて認められたならば,24時間蓄尿あるいは随時尿での蛋白/クレアチニン比testを実施すべきである.

●妊娠高血圧腎症において蛋白尿の重症度と母体合併症発症の関連についての明らかなEBMはまだない.

●腎機能障害の程度は,血清クレアチニン値,糸球体濾過率により分類される.ほかに尿酸値も評価に有用である.

3.母体の肝・代謝系の病態評価

著者: 成瀬勝彦 ,   小林浩

ページ範囲:P.1056 - P.1061

●妊娠高血圧症候群ではHELLP症候群のほか,急性妊娠脂肪肝や急性膵炎の発症も念頭に置く必要がある.

●妊婦の耐糖能異常は妊娠高血圧症候群に併発する率が一般より高い.

●疾患に特異的なマーカーはなく,理学所見や血小板数,血中肝逸脱酵素などから総合的に判断し加療する.

4.母体の血液凝固・線溶の病態評価と治療法

著者: 杉村基

ページ範囲:P.1063 - P.1070

●妊娠高血圧症候群の病態形成には凝固線溶系が関与しており,凝固亢進,線溶抑制状態である.

●トロンビン産生亢進の結果,血小板数の減少,アンチトロンビンの減少,TATの増加が起こる.増加したフィブリン形成の結果,線溶亢進が起こり,FDP-D-Dimerの上昇やPICの増加が認められる.

●播種性血管内凝固症候群では血液検査(血小板数,フィブリノゲン値,FDPあるいはD-Dimer値,アンチトロンビン値など)が重症度評価の参考となる.新鮮凍結血漿,アンチトロンビン製剤による補充療法,血小板減少に対して濃厚血小板の輸血療法を行う.

5.胎児発育状態とwell-beingの評価

著者: 中本收

ページ範囲:P.1072 - P.1081

●妊娠高血圧症候群,とりわけ妊娠高血圧腎症では,胎盤形成不全(子宮らせん動脈remodeling不全)によるFGR発症リスクがある.

●胎児心拍監視,母体子宮動脈血流,臍帯動脈・胎児中大脳動脈・動脈管血流計測やbiophysical profile,胎児発育度の定期的監視が求められるが,early-onset FGRの予後改善の最大要因は妊娠の継続であり,母体の妊娠高血圧症候群病態の重症度と併せて適切な分娩時期の選択が必要となる.

管理と治療

1.安静,食事療法と輸液療法

著者: 三宅秀彦

ページ範囲:P.1083 - P.1087

●妊娠高血圧腎症では入院管理が原則であるが,これは経過観察を目的としており,厳密な床上安静の有効性ははっきりしていない.

●食事療法に関してのエビデンスは確立していないが,過剰な塩分・水分・カロリー制限をしてはならない.

●輸液療法の有効性は否定されており,通常の輸液においても過剰輸液にならないように注意する.

2.高血圧薬物療法

著者: 鈴木佳克 ,   山本珠生

ページ範囲:P.1089 - P.1096

●PIHの根本的治療は妊娠の終結である.

●降圧治療は母体保護のためであって,病態を改善するのではなく,胎児循環を悪化させることもある.

●経口降圧薬が第一選択薬で,経口降圧薬で降圧不良例や高血圧緊急症では静注薬を用いる.

3.高血圧症合併妊娠と加重型妊娠高血圧腎症の管理

著者: 田中幹二 ,   大石舞香 ,   千葉仁美

ページ範囲:P.1097 - P.1103

●高血圧合併妊娠では,臓器障害を伴う軽症高血圧や重症高血圧の場合に降圧薬投与を考慮する.

●母児病態の増悪がみられず降圧目標が維持できていれば,37週以降まで妊娠継続を図ってよい.

●臓器障害を伴う軽症高血圧や重症高血圧では,少なくとも分娩後48時間は厳重な血圧管理を行う.

●産後は,長期予後の観点から内科と連携したうえでの血圧,降圧薬の再評価が勧められる.

4.分娩タイミングと分娩様式決定法

著者: 山崎峰夫

ページ範囲:P.1104 - P.1110

●母体の重大な健康障害や胎児機能不全(あるいはそれらの前兆)の所見が得られれば,速やかな妊娠終結が必要である.

●妊娠高血圧症候群による母体の健康障害を回避するために,重症型では妊娠34週以降,軽症型では妊娠37週以降に原因治療としての妊娠終結を図る.

●分娩様式は通常の産科的適応に従って決めるのが原則であるが,母児の安全確保の観点から症例ごとあるいは施設ごとの個別要因をも考慮したうえで最終方針を選択する.

5.分娩管理法と麻酔法

著者: 大野泰正

ページ範囲:P.1111 - P.1117

●分娩中の異常な高血圧から脳卒中に進展することを阻止することが重要である.

●高血圧緊急症では速やかな降圧治療が必要となる.

●帝王切開時の麻酔法はHELLP症候群,DIC,脳卒中の有無などを考慮して適切に選択される必要がある.

6.分娩後および産褥期の母体管理法

著者: 平井千裕 ,   牧野真太郎

ページ範囲:P.1118 - P.1122

●妊娠高血圧症候群の分類に応じて,異なった母体管理法が必要である.

●特に妊娠高血圧腎症では,血管浸透圧が変化する分娩後2〜3日間に十分に注意する.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

急激に精神・神経症状が進行─こんな症状で,婦人科の疾患を考えますか?

著者: 隅田能雄 ,   春日義生

ページ範囲:P.1124 - P.1127

症例

患者

 30歳,1経産(帝王切開分娩).

主訴

 舌の違和感,右半身のしびれ.

既往歴

特になし.

Obstetric News

過剰体重と肥満女性の緊急避妊─欧州医薬品局

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1128 - P.1130

緊急避妊─過剰体重と肥満女性

 日本で使用されている緊急避妊薬は,レボノルゲストレル含有薬とYuzpe法である.

 欧米などでは,そのほかに酢酸ウリプリスタル含有薬が承認されている.しかし,過剰体重や肥満女性では正常体重女性が使用する場合より,妊娠予防効果が低下する可能性があるのではないかという懸念がある1, 2).そのようなデータから,少なくとも,ある製薬会社のレボノルゲストレル含有緊急避妊薬の添付文書に,75 kg以上の女性では,避妊効果が減少するという警告記載が加えられている(http://www.hra-pharma.com/index.php/en/our_products/womens_health/emergency_contraception/norlevo).なお,日本ではそういった記載はない.そのような問題があるなかで,欧州医薬品庁は,2014年7月に,体重増加女性がレボノルゲストレルまたは酢酸ウリプリスタル含有緊急避妊薬を使用した場合,避妊効果が減少するというデータは限られていて不十分であり,これらの緊急避妊薬使用の利点があらゆるリスクを上回っているという結論を出した3)

Estrogen Series

更年期後のエストロゲン療法における投与経路と静脈血栓塞栓症リスクとの関連

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1131 - P.1132

 更年期のホルモン療法は,エストロゲン単体(estrogen therapy : ET)の場合もあれば,エストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせたhormon therapy(HT)の場合もある.どちらにせよ,エストロゲンの使用は肝臓で血液凝固因子の生成を促し,その結果血液凝固性が亢進して静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)の発生を増加させる.エストロゲン投与の経路には大別して経口と経皮(およびその他)があり,この経路を比較すると,経口投与に比べて,経皮投与の場合に,VTEの発生が低いことが知られている.

 今回はACOG(米国産婦人科学会)のCommitteee Opinion No.556に取り上げられた更年期後のエストロゲン療法とVTEとの関連をご紹介したい1)

症例

卵巣成熟囊胞性奇形腫再発手術後に後腹膜成熟囊胞性奇形腫病変を認めた1例

著者: 矢野倫子 ,   平池修 ,   平田哲也 ,   吉野修 ,   甲賀かをり ,   大須賀穣 ,   藤井知行

ページ範囲:P.1133 - P.1137

要約

 婦人科領域において後腹膜腫瘍は比較的稀な疾患であり,ときに診断・治療に苦慮する.今回われわれは,卵巣成熟囊胞性奇形腫再発手術後に,後腹膜腔に成熟囊胞性奇形腫病変を認めた1例を経験したので報告する.症例は36歳,0経妊0経産,23歳時腹腔鏡下卵巣成熟囊胞性奇形腫切除術,24歳時開腹下での骨盤腹膜炎,右卵巣成熟囊胞性奇形腫切除術の手術歴があり,26歳時前医にて腫瘍再発を指摘されていたが定期的受診はなかった.その後不妊を主訴に当科初診となった.卵管留水症の術前診断で腹腔鏡下手術を行ったところ,直腸右側の後腹膜腔に囊胞性病変を認めた.腹腔内の広範な癒着のため囊胞全摘出は断念し穿刺,吸引のみに留め,病変の一部を病理に提出したところ成熟囊胞性奇形腫との病理結果であった.腹腔内腫瘍の鑑別診断としては後腹膜腫瘍の可能性も考慮し,入念な準備体制が必要であるものと反省させられる1例であった.

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投稿規定

ページ範囲:P.1138 - P.1138

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.1139 - P.1139

バックナンバー

ページ範囲:P.1140 - P.1140

アンケート用紙

ページ範囲:P.1141 - P.1141

次号予告

ページ範囲:P.1142 - P.1142

編集後記

著者: 神崎秀陽

ページ範囲:P.1144 - P.1144

 医学卒前教育はチュートリアル制度の導入やクリニカルクラークシップの充実によって,より実践的な欧米様式を重視する傾向にあるが,同時に看護系の人材育成環境も大きく変化してきている.平成4年に「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が施行され,それ以後4年制の看護大学あるいは学部や学科が急増してきた.これまでは既存の3年制の看護専門学校からの移行が多く見られたが,最近数年では,まるで雨後の筍のように,医学部を持たない理科系のみならず文科系の大学が看護学部や看護学科を新たに設立している.超高齢社会到来により将来の看護師需要見込みがあるとはいえ,このような急増状況をみると,適正な医療・看護ニーズに対応するための看護師養成ができる指導教員や必要な実習病院の確保への懸念はぬぐえない.18歳人口の減少に伴う学生数の減少への学校経営上からの施策からとすれば,高度専門職業人としての人材育成が行えるかどうか,各大学における教育内容の評価と卒業後の看護師としての活動実態調査が必要であろう.医学教育に携わる者としては,数年来で新設された,あるいは今後開設予定の多数の看護系大学,学部・学科が看護教育の質を担保しているかどうか,監督官庁である文部科学省は認可した責任上もしっかりフォローして指導していただきたいと思っている.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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