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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科68巻12号

2014年12月発行

雑誌目次

今月の臨床 子宮内膜症治療の未来図

著者:

ページ範囲:P.1149 - P.1149

発症機序からみた予防・治療戦略

1.子宮内膜症発生機序としての胎児期子宮内膜症発生説

著者: 小林浩

ページ範囲:P.1150 - P.1156

●子宮内膜症の新しい発生機序として,脱落膜化遺伝子がメチル化されることにより胎児子宮の脱落膜化機構に影響を及ぼす胎児期子宮内膜症発生説を提唱する.

●月経血逆流,化生による内膜症から明細胞腺癌,類内膜腺癌が発生する.

●子宮内膜症を発生させないため,月経困難症のうちからホルモン治療を開始する.

2.子宮内膜症発生仮説の考察に基づく治療戦略

著者: 伊藤史子 ,   本田律生 ,   片渕秀隆

ページ範囲:P.1157 - P.1162

●子宮内膜症は,さまざまな臓器や組織に発生する疾患であり,いまだにその病因,発生や病態進展の十分な解明には至っていない.

●子宮内膜症の発生や進展には,発生母体となる細胞の性格に加え,その細胞周囲の微小環境の存在が必須であると考えられる.

●子宮内膜症における腹腔内環境や病巣の組織内環境の考察から,今後の子宮内膜症の治療戦略を概説する.

3.エピジェネティクス異常からみた子宮内膜症の治療戦略

著者: 奈須家栄 ,   甲斐健太郎 ,   楢原久司

ページ範囲:P.1164 - P.1169

●子宮内膜症に特徴的な形質の獲得にはエピジェネティクス異常が関与しており,病因として注目されている.

●マイクロアレイを用いた網羅的解析法により,子宮内膜症におけるエピジェネティクス異常が徐々に解明されている.

●子宮内膜症の治療薬として,エピジェネティクス異常の修正を目的とする薬物の開発が期待されている.

4.幹細胞研究からみた子宮内膜症の治療戦略

著者: 丸山哲夫

ページ範囲:P.1170 - P.1175

●正所性子宮内膜には少数の幹様細胞(stem-like cells)が存在する.

●子宮内膜症病変(異所性子宮内膜)にも幹様細胞の存在が示唆されている.

●自己複製,上皮間葉転換/間葉上皮転換(EMT/MET),血管新生など,幹細胞関連の特性を標的にした子宮内膜症に対する治療戦略が期待される.

治療の現状と問題点

1.子宮内膜症の治療と卵巣予備能

著者: 北脇城

ページ範囲:P.1176 - P.1182

●AMH : AMHは発育段階にある前胞状および小胞状卵胞の顆粒膜細胞より分泌される.卵胞が4 mm以下のとき最も高く,4〜8 mmでは大きくなるにつれて低くなる.原始卵胞あるいは成熟卵胞では検出されない.

●AFC : 月経周期第2〜4日の間に,左右それぞれの卵巣の2〜10 mmの胞状卵胞数を経腟超音波で計測する.

2.手術と薬物療法のコンビネーション

著者: 吉野修 ,   高村将司 ,   甲賀かをり ,   大須賀穣 ,   齋藤滋

ページ範囲:P.1183 - P.1187

●子宮内膜症性卵巣囊胞に対する腹腔鏡下摘出術後において,高い再発率が報告されている.再発・再手術による妊孕性の低下が問題となるため,再発抑制治療が望まれている.

●子宮内膜症性卵巣囊胞摘出術後の患者に低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)製剤を使用することで,囊胞の再発率が著明に減少することが明らかになり,子宮内膜症治療のガイドライン上においても,術後のLEP製剤服用が推奨されている.

●LEP製剤は忍容性が高く,長期服用に向くが,血栓症を引き起こすことが問題である.血栓症の危険性が少ないジエノゲストの再発抑制効果の報告も散見されており,今後LEP製剤との効果の比較が期待される.

●術後薬物療法の継続期間に関しては統一した見解がなく,今後,薬物治療中止後の再発状況の解析により検討する必要がある.

新しい子宮内膜症治療薬を求めて

1.レスベラトロール

著者: 田口歩 ,   甲賀かをり ,   平池修 ,   川名敬

ページ範囲:P.1188 - P.1192

●レスベラトロールはその抗炎症効果・抗腫瘍効果より子宮内膜症に対する新規治療薬として期待される.

2.IAP(inhibitor of apoptosis protein)阻害薬

著者: 谷口文紀

ページ範囲:P.1193 - P.1199

●IAPファミリーは子宮内膜症組織で発現が高く,特にcIAP-2はNFκB経路を介して発現調節される.

●IAP阻害薬は,新しい子宮内膜症治療薬の候補となる可能性がある.

3.子宮内膜症に非ホルモン性直接作用を有する食品添加物3-ethylpyridine(3EP)は理想的な治療薬になり得る

著者: 五十嵐敏雄 ,   梁善光

ページ範囲:P.1201 - P.1208

●子宮内膜症は全身性疾患でなく骨盤内疾患であり,治療は全身投与より局所投与のほうが有効で副作用が少ない.

●3-ethylpyridine(3EP)は子宮内膜症に直接作用を有する非ホルモン性の治療薬である.

●3EPは子宮内膜症でCD44とテネイシン発現を抑制して選択的に治療効果をもたらすと考えられる.

連載 FOCUS

高度肥満を合併する子宮体癌患者に対する腹腔鏡手術の応用─米国の実情

著者: 松尾高司

ページ範囲:P.1209 - P.1213

はじめに

 近年の食生活の欧米化による肥満人口の増加を1つの背景として,日本でも子宮体癌は最も頻度の高い婦人科癌の1つとなっている.子宮体癌の多くは子宮内膜異型を前癌病変とする類内膜癌であり,かつ初期癌であるI期病変である.よって,子宮体癌の多くは手術療法のみで治癒することが多い.この子宮体癌に対する標準的手術治療は単純子宮全摘術・両側付属器摘出術を含み,これに加え,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術ならびに大網切除術が必要に応じて行われる.この手術方法に対しては開腹術が一般的な選択であったが,過去10年に飛躍的に発達した腹腔鏡技術に伴い,また,近年米国で行われた開腹対腹腔鏡による無作為臨床試験の結果により,米国では子宮体癌に対する手術選択の第一は腹腔鏡アプローチに劇的にシフトしつつある.すなわち,これら開腹・腹腔鏡の二術式による予後の差は認めず,また腹腔鏡群は開腹群に比し,有為に合併症が少なくかつ早期退院・回復が可能であったという,腹腔鏡下アプローチを支持する結果によるものである(LAP2トライアル)1)

 日本では2014年に子宮体癌に対する腹腔鏡下手術が保険適用となり,この領域に対する今後の展開が期待される.ただ,日本では肥満人口は2〜3%と稀ではあるものの,子宮体癌の患者の多くは高度肥満を合併することが多く,腹腔鏡手術を計画する際に術者を悩ます問題点の1つとなると考えられる.私は米国婦人科腫瘍医として過去の3年で約60例のBMIが30を超える肥満患者に対する腹腔鏡手術を行った.米国の肥満人口は3分の1を超え引き続き増加傾向にある2).われわれの施設での子宮体癌の平均BMIは35を超え,50を超える症例も数多くある3).自慢できることではないが,おそらく日本人としては最も高度肥満に対する子宮体癌の腹腔鏡手術を行っているのではないか.日本でも今後問題となってくるであろう肥満社会を前提に,肥満患者に対する腹腔鏡手術のコツを経験的に紹介する.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

子宮全摘術後の腟断端離開─骨盤腹膜縫合閉鎖の必要性

著者: 大貫毅 ,   阪西通夫 ,   金杉浩

ページ範囲:P.1214 - P.1216

症例1

 43歳,2経妊1経産.

 10 cmの筋層内筋腫を最大とする多発性子宮筋腫を認め,過多月経と頻尿のため手術を希望された.GnRHアゴニスト(リュープリン®1.88 mg)を4回投与したのち,腹式単純子宮全摘術を施行し,術後経過良好で退院した.術後1か月目の外来診察で異常所見なく終診とした.

Obstetric News

妊娠とインフルエンザ

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1217 - P.1220

 妊娠中にインフルエンザに罹患した場合の死亡を含めた重篤な続発症が知られている.

 例えば,WHOによる情報「2009年インフルエンザパンデミック(H1N1)その広がりと健康被害」のなかで,妊娠に関しては,以下のようにコメントしている.

Estrogen Series

Nurses’Health Studyにみる卵巣摘出および卵巣保存の影響

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1221 - P.1221

 米国で医学的に追跡されている患者群の1つにナースを主体としたNurses’ Health Studyがある.ここにご紹介する追跡調査は良性疾患により子宮摘出術を経験した30,117人の女性を追跡したもので,追跡期間は28年.あらゆる死因を含めたall causesの場合では,両側卵巣摘出術を受けた女性(摘出群)の16.8%(16,916人)はすでに死亡.他方,卵巣保存(保存群)の女性の13.3%が死亡した.この調査は観察的研究である.

症例

両側肺転移に対し肺部分切除が有効であった子宮頸部明細胞腺癌の1例

著者: 秋本由美子 ,   谷本博利 ,   本田裕 ,   寺本三枝 ,   寺本秀樹 ,   金子真弓

ページ範囲:P.1223 - P.1227

要約

 患者は53歳,2経妊2経産,不正性器出血を主訴に受診され,子宮頸部に易出血性の不整形腫瘍を認め,子宮頸部腺癌IIA1期の診断にて広汎子宮全摘出術を施行した.術後病理検査で,子宮頸部明細胞腺癌pT2a1N0M0,断端陰性と診断した.術後10か月時に両側肺転移を認めたため胸腔鏡下肺部分切除を施行した.現在,肺手術後16か月経過しているが再発兆候はない.本症例では,転移の診断後すみやかに転移病巣を完全摘出したことにより,無病生存に至ったものと考える.子宮頸部明細胞腺癌は,放射線療法や化学療法が有効ではない場合が多く,再発・転移に対してはすみやかに摘出することで予後は改善される可能性があることが示唆された.

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投稿規定

ページ範囲:P.1228 - P.1228

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.1229 - P.1229

バックナンバー

ページ範囲:P.1230 - P.1230

アンケート用紙

ページ範囲:P.1231 - P.1231

次号予告

ページ範囲:P.1232 - P.1232

編集後記

著者: 大道正英

ページ範囲:P.1234 - P.1234

 2017年から新たな専門医制度が発足されます.今まで専門医育成に関しては各学会・各診療科に任されていましたが,専門医の質の担保や認定基準の標準化のために,日本専門医機構では診療科の垣根を無くした統一した専門医制度の作成を求めています.各基幹研修施設が中核となり研修施設群を形成し,到達目標が計画性をもって達成できるカリキュラムのもとで,専門医資格取得までの研修プログラムを構築する“研修プログラム制”が義務付けられました.日本専門医機構における産婦人科の指導施設および研修プログラムの認定・更新に関与する研修委員会の委員長としての私のミッションは,今年度中に基本となるべき産婦人科研修プログラムの整備指針を作成し,日本専門医機構の承認を得ることです.具体的には,指導体制の管理,研修評価の方法,研修プログラムの管理・評価・継続的改良などの構築を,産婦人科の実態を踏まえながら作成する必要があります.例えば,基幹研修施設群は日本専門医機構へ研修プログラムの提出が義務化され,基幹研修施設群の専攻医の数は前年度の実績から決定されるわけであります.より現場の状況に則した正しい方向に向く様に,努力するつもりです.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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