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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科68巻3号

2014年04月発行

文献概要

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編集後記

著者: 藤井知行

所属機関:

ページ範囲:P.402 - P.402

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 日本産科婦人科学会の新入会者が,昨年また50名ほど減少したということです.医師の平均年齢も上昇しており,将来の産婦人科医療はこのままでは間違いなく崩壊への道を歩んでいくのではないかと危惧しています.学会,医会総力を挙げてこの問題に取り組んでいますが,なかなか先が見えてきません.そんな中,状況をさらに悪化させかねないことが起こりました.多くの産婦人科医師が驚きを持って知らされたことと思いますが,帝王切開の保険点数が2,000点削減されました.1件2万円の減収ですから,年間100件帝王切開をやっている病院では200万円の減収です.産科医療は,医療材料費は他の外科に比べてかかりませんが,助産師を確保し,24時間体制を維持するための当直医を確保しなければならないため,人件費が多くかかります.産科をやめて婦人科だけにすると,分娩収入はなくなりますが,全体の収益は改善するという試算もあります.今回の改訂で産科をやめる病院が増えるのではないかと心配しています.また,女性医師の増加に対する施策が十分にとられていないということも心配の種です.女性医師は男性医師と異なり,出産,育児という大きな負担を背負わされています.医師として働く意欲がある女性医師はたくさんいるのに,保育園がみつからない,学童保育をしてもらえないなどの理由で,勤務を離れる女性医師が増えています.また,働くことはできても,部長などの病院の責任医になるのは難しいという人もいます.将来,部長がみつからないので病院の産婦人科が閉鎖されるという事態も増えてくると思います.こうした問題は,都会より地方でまず顕在化してくるでしょう.望む,望まないに拘らず,不可避的に産婦人科の集約化が進み,お産をするために泊りがけで遠くの病院に行かなければならなくなる日もそう遠いことではないかもしれません.産婦人科医の努力だけでは限界があります.財政出動を含めた行政の積極的な関与をさらに求めていくと同時に,世論にも訴えていく必要があると思っています.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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