icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科68巻4号

2014年04月発行

増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド

婦人科編 IV 腫瘍

子宮内膜増殖症・子宮体がんの黄体ホルモン療法

著者: 飯田美穂1 阪埜浩司1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.181 - P.182

文献概要

適応と治療方針

 子宮体がんおよび複雑型子宮内膜増殖症に対する標準治療は子宮全摘出であるという認識を前提としたうえで,当科における黄体ホルモン療法(妊孕性温存療法)の適応や治療方針について解説する.

 子宮体がんおよび子宮内膜増殖症における黄体ホルモン療法の適応条件は,(1)子宮内膜全面掻爬で高分化型(G1)の類内膜腺癌または複雑型子宮内膜異型増殖症(atypical endometrial hyperplasia, complex : AEHC)と組織学的に診断されること,(2)腫瘍が子宮内膜に限局しており,画像診断上,筋層浸潤や子宮外進展がないこと,(3)肝機能障害や血栓症の既往または治療中でないこと,(4)患者・家族が治療内容および合併症を理解したうえで,なおかつ強い妊孕性温存の希望があること,(5)42歳以下であること,が挙げられる.当科における病変消失率は,AEHCで96%,類内膜腺癌G1で89%であるが,治療後5年の時点でそれぞれ約60%,80%が再発し,また治療中に進行・転移することもある.治療中および治療後は,数か月に一度の子宮内膜全面掻爬で病変の消失を確認する.再発例に対しては,原則として子宮全摘出術を検討する.

 なお,当科における174例(治療開始年齢中央値35歳)の治療後の妊娠率は,AEHCで37%,類内膜腺癌G1で34%である.本治療が適応となる症例には背景に排卵障害が存在することが多く,また最短での妊娠成立を実現するため,排卵誘発や体外受精・胚移植を受けている患者も多い.また,分娩時には癒着胎盤のリスクが軽度上昇するとされており,これらについて患者・家族に十分に説明し,インフォームド・コンセントを得る必要がある.

 本治療は,あくまでもオプションであることを患者および医療者側双方が認識し,個々の症例や患者の意向を考慮したうえで,治療経験が十分にある施設での医師の裁量で行われるべきである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら