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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科68巻4号

2014年04月発行

増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド

婦人科編 IV 腫瘍

卵巣がんの術前化学療法

著者: 庄子忠宏1 三浦雄吉1 杉山徹1

所属機関: 1岩手医科大学産婦人科学教室

ページ範囲:P.188 - P.190

文献概要

適応と治療方針

 初回手術が試験開腹術に終わる可能性が高いと判断された症例,合併症や高齢,腹水・胸水貯留などによりperformance statusが不良で初回手術が安全もしくは十分に行えない症例に対して,術前化学療法(neoadjuvant chemotharepy : NAC)が試みられている.本邦で行われたJCOG0602「III期/IV期卵巣癌,卵管癌,腹膜癌に対する手術先行治療vs化学療法先行治療のランダム化比較試験」では,臨床的に卵巣,卵管,腹膜いずれかの原発の悪性腫瘍と診断され,細胞診所見で上皮性卵巣がんに相当する組織型が推定されること,CA125>200 U/mLかつCEA<20 ng/mLであることがNACを行う規準としている.

 NACは,(1)早期に全身的化学療法を開始できる,(2)腫瘍の縮小,腹水・胸水の減量により,interval debulking surgery(IDS)では他臓器合併切除の頻度を減少させ,周術期合併症の減少が期待できる,(3)IDSを1回ですませることができる,などの利点がある.しかし問題点としては,(1)primary debulking surgery(PDS)を省略しNACを行うため,対象疾患や進行期の診断が不正確となる危険がある,(2)NACが奏効しない場合は,手術の機会を逸する危険がある,(3)手術に際して,術式を縮小しすぎて根治性を損なう危険がある,などが挙げられる.実際のNACは,診断を確認し,NACを行ったのちにIDSを施行し,さらに化学療法を追加するのが一般的な治療法である.NCCNのガイドラインでは明らかな切除不能症例に限り細胞診の結果だけでNACを行うことが認められているが,いまだ実験的治療の側面があり,患者への十分な説明と同意が必要である.

 現時点では,初回optimal surgeryが不可能と予想されるIIIc/IV期症例に対してはNAC後のIDSは妥当な治療戦略であると考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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