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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科69巻11号

2015年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

著者:

ページ範囲:P.1017 - P.1017

腹腔鏡手術機器の進化─特に最近のシーリングデバイスについて

著者: 佛原悠介 ,   北正人 ,   岡田英孝

ページ範囲:P.1018 - P.1022

●腹腔鏡手術ではさまざまなシーリングデバイスを使用することが可能となっている.シーリング性能が向上しているだけでなく,操作性の改良,熱損傷・過凝固・誤作動などの低減などの面でも進歩しており,安全性向上や時間短縮に大変有用である.

●出血・臓器損傷などの合併症を最小限にするためには,各機種の原理・特徴を理解し,操作・保守点検に精通し,実施する手術にあわせた器具を選ぶべきである.

●現在のシーリングデバイスは5 mm径のトロッカーから挿入でき7 mm径までの脈管をシーリングできるため,一般的な婦人科手術における脈管は基本的にすべて結紮なしで切断可能であるが,圧着組織の離解・熱損傷などには注意が必要である.また,従来の縫合結紮・クリッピングなどの手技もトラブルシューティングには必要である.

腹腔鏡手術の教育・トレーニング法

著者: 中林稔

ページ範囲:P.1023 - P.1028

●腹腔鏡手術に関する正しい知識を習得したうえで,手術見学をしながらドライボックスやアニマルラボでのトレーニングを行う.ある程度トレーニングを積んだら,実践において経験を重ねていく.

●実際の手術では助手から始めて,慣れてきたらやさしい症例より執刀を開始し,徐々に難易度の高い症例へステップアップしていく.

●慣れてきた頃に起こしやすい合併症には特に注意を要し,それらを回避するためには日頃より常に安全な操作を心がける.

腹腔鏡手術のピットフォール 良性疾患

1.異所性妊娠

著者: 塩田充 ,   佐野力哉

ページ範囲:P.1030 - P.1035

●近年では高感度妊娠検査薬と高解像度の経腟超音波検査により,破裂前での診断が可能となり,腹腔鏡手術が中心的な術式となっている.

●卵管妊娠に対して腹腔鏡手術は有用であり,開腹手術と比較して低侵襲であるといえる.また,適切な症例選択のもとで,腹腔鏡下卵管保存手術が行われている.

●腹腔鏡手術における合併症は手術難易度が上昇するに従って増加するが,どのような手術でも発症する可能性がある.

2.卵巣腫瘍,子宮内膜症

著者: 工藤正尊 ,   櫻木範明

ページ範囲:P.1036 - P.1044

●子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術,特に高度癒着症例に対する手術では,骨盤内の解剖を十分に理解する必要がある.

●尿管や直腸の損傷に注意する.ダグラス窩閉塞を伴う症例では,直腸の剝離の際には,直腸の左右から癒着剝離を行い,中央部の強固な癒着の剝離は最後に行う.

●仙骨子宮靱帯を深く切除する際に下腹神経,骨盤神経叢の損傷が起きやすいので,神経の走行に十分注意する.

●卵巣チョコレート囊胞に対しては,画像診断上悪性の可能性が低い場合,不妊症を含む妊孕性温存症例では,すべて囊胞摘除を行うのではなく,卵巣機能を低下させないような術式を選択するよう心がける.

3.子宮筋腫,子宮腺筋症

著者: 西澤春紀 ,   廣田穰 ,   藤井多久磨

ページ範囲:P.1046 - P.1056

●腹腔鏡下子宮筋腫核出術の術前評価項目として,筋腫核最大径,核出数,筋腫核径総和が有用であるが,筋腫核が軟らかく境界が不明瞭な例は出血が増加する.

●婦人科良性疾患に対する腹腔鏡下子宮全摘術の適応拡大には,閉鎖腔手術における腫瘍サイズの克服と術式の標準化を考慮する.

●子宮腺筋症摘出術は難度が高く,標準術式が確立されていないため,各施設のスキルに応じたアプローチを選択すべきである.

4.骨盤臓器脱

著者: 谷村悟 ,   飴谷由佳 ,   舟本寛

ページ範囲:P.1058 - P.1065

●腟壁を包括的にメッシュで覆う腹腔鏡仙骨腟固定術(LSC)は,ゴールドスタンダードになりうる.

腹腔鏡下で可能な骨盤臓器脱手術は進歩により多彩になった.従来腟式や腹式で行われていた多くの手技が腹腔鏡で可能になり,なかでもLSCは標準手技になりうる.

●LSCにはメッシュ特有の注意点がある.

人工物を用いるため易感染性のある患者には使わない.術中は慎重な清潔操作と十分な止血・洗浄を行い,術後はメッシュ感染と露出に注意する.

●LSCの安全な手技には術野確保と椎体周囲解剖の知識が必要.

椎体前面や後腟壁深部操作を要するため,腸管の移動による術野確保が重要である.また不慣れな椎体前面の剝離を安全に行うには解剖学的知識が必要である.

悪性疾患

1.卵巣癌

著者: 寺井義人 ,   大道正英

ページ範囲:P.1066 - P.1072

●卵巣境界悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術は開腹手術に代わる選択肢となりうるが,進行例での腹腔鏡下手術の適否は明確ではない.

●早期卵巣がんに対する腹腔鏡下手術は技術的,根治性においても十分可能な術式である可能性があるが,現時点ではevidenceに乏しく,標準的な手術になりうるまでには至っていない.

●進行卵巣がんや腹膜がんに対する腹腔鏡下生検手術は,低侵襲で早期治療開始のメリットから有用であると思われる.

2.子宮体癌

著者: 太田啓明 ,   羽田智則 ,   安藤正明

ページ範囲:P.1073 - P.1086

●腹腔鏡手術では腫瘍を飛散させない工夫を施す.

●奥行き感の喪失による誤認を避けるためにメルクマールを作る.

●骨盤リンパ郭清では特にlumbosacral trunkに留意する.

3.早期子宮頸癌における腹腔鏡下手術と注意点

著者: 山下剛 ,   宇津裕章 ,   金美善

ページ範囲:P.1087 - P.1093

●腹腔鏡下手術の利点を活かせるような症例選択

●合併症を起こさないパワーソースの使用法

●層(膜)構造を理解した手術進行(出血の少ない手術)

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

円錐切除術後に子宮留血腫を発症した1例

著者: 瀧川恵子 ,   塩津英美

ページ範囲:P.1094 - P.1097

症例

患者 30歳,2経妊2経産(経腟分娩2回).

主訴 下腹痛.

既往歴

産褥3か月 : CIN3のため,円錐切除術を施行した.

産褥1年8か月 : 右卵巣腫瘍のため,腹腔鏡下右付属器切除術を施行した.

 上記2つの手術は,授乳による産後無月経の時期に行った.

FOCUS

卵巣がん治療におけるベバシズマブのメリット・デメリット─現状・限界と,将来の展望

著者: 竹内聡 ,   杉山徹

ページ範囲:P.1098 - P.1103

はじめに

 VEGF(vascular endotherial growth factor)は,VEGF-A,B,C,D,Eの5つのisoformが存在するが,血管内皮細胞のVEGF受容体1(VEGFR1),受容体2(R2),受容体3(R3)を介し,血管内皮細胞の増殖・遊走に関与する.これらのうち,最も作用の大きいVEGF-Aは,VEGFR1,R2に作用し,卵巣がんにおいても血管新生の主たる機能を担う(表1).この,VEGF-Aのヒト化モノクローナル抗体がベバシズマブ(B-mab)であり,VEGF-Aと免疫複合体を形成し,VEGFを中和し血管新生を抑制する(図1).

Obstetric News

早産の予知と予防(1)─切迫早産の診断(早発陣痛)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1104 - P.1105

早発陣痛患者で適切な介入の候補者は?

 早発陣痛の妊婦のうち,最終的に早産となるか否かを診断することは難しい.早発陣痛の約30%は自然に解消し,早発陣痛で入院した患者の50%は実際には満期分娩となる.

 分娩の可能性を減少させる介入は,分娩時期遅延が新生児に便益性を与える妊娠週数での早発陣痛妊婦に行うべきである.一般的には子宮収縮抑制薬は48時間までは有効である(Cochrane Database of Systematic Reviews 2004, Issue 4. Art. No. : CD004352)から,48時間の分娩遅延で便益性がある胎児の妊婦のみが子宮収縮抑制薬療法を受けるべきである.一般的には,新生児生存可能前の使用の適応はない.介入にかかわらず,その時期での周産期罹患および死亡率は非常に高いので,子宮収縮抑制薬療法に関連するリスクを正当化できない.しかし,胎児生存可能妊娠週数前の子宮収縮抑制薬投与が適切な時期もある可能性がある.例えば,腹腔内手術のような早発陣痛の原因となることが知られている事象後の患者で,子宮収縮を抑制することの有効性は依然として不明であるが,仮に有効であるとすれば,このような場合では胎児生存可能妊娠週数以前でも理にかなっているかも知れない.

Estrogen Series・145

ピルの使用は脳内腫瘍を増加させる─デンマークからの調査結果

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1106 - P.1106

 経口避妊薬(ピル)の使用はある種の腫瘍を増加させる.今までにピルの使用と中枢神経腫瘍との関連を調べた文献は少ない.長期的なピル使用者では,グリオーマの発生頻度が非使用者のほぼ2倍であることが報告されている.デンマークの研究者たちは全国的な規模のpopulation based settingで,更年期以前の女性たちにおいて,ピルとglioma(神経膠腫)との関連を調べた.

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バックナンバー

ページ範囲:P.1110 - P.1110

次号予告

ページ範囲:P.1111 - P.1111

編集後記

著者: 亀井良政

ページ範囲:P.1112 - P.1112

 今年はオリンピック前年ということもあり,さまざまなスポーツの国際試合が行われているようです.女子バスケットは完全アウェーの試合環境の中,大本命の中国を大差で破り,オリンピック出場権を獲得しました.バレーボールも今回は出場権の獲得はできませんでしたが,予想以上の活躍だったそうで来年の出場に明るい兆しが見えたそうです.

 4年ごとに開催されるラグビーワールドカップでは,日本が南アフリカから大金星を挙げたことが国内ばかりでなく海外でも大きな驚きをもって報道されていました.この試合では,ヘッドコーチは最後のロスタイムの場面で同点狙いのペナルティーキックを指示しましたが,選手たちはあえてスクラムを選択し,見事トライを奪って逆転勝利しました.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

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今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

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今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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