文献詳細
連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール
文献概要
はじめに
「妊娠の可能性はありますか」
「ありません」
産婦人科医,いや産婦人科に限らず生殖可能年齢の女性を診察する医師の誰もが経験する問答である.「ありません」という返事は往々にして故意に虚偽である.あるときはためらうように,また,あるときは堂々と.私が経験したなかでとりわけ印象に残っているのは,妊婦健診未受診の20代女性(未経妊)で,下腹部痛のため他院を受診,腹部単純X線撮影で胎児が写ったため当院へ搬送され,陣痛と判明し1時間もたたないうちに3,000g近くの児を出産した,という症例である.妊娠していたことを余程後ろめたく思っていたのか,彼女は受診当初から分娩台に移ってもかたくなに妊娠していることを否定しつづけ,病院から呼び出され驚いて来院した母親にも出産するまで妊娠していないと言い張っていた.
他方,少なくとも数年以上にわたって性交渉が全くないのにもかかわらず妊娠反応が出てしまうことがある.
「妊娠の可能性はありますか」
「ありません」
産婦人科医,いや産婦人科に限らず生殖可能年齢の女性を診察する医師の誰もが経験する問答である.「ありません」という返事は往々にして故意に虚偽である.あるときはためらうように,また,あるときは堂々と.私が経験したなかでとりわけ印象に残っているのは,妊婦健診未受診の20代女性(未経妊)で,下腹部痛のため他院を受診,腹部単純X線撮影で胎児が写ったため当院へ搬送され,陣痛と判明し1時間もたたないうちに3,000g近くの児を出産した,という症例である.妊娠していたことを余程後ろめたく思っていたのか,彼女は受診当初から分娩台に移ってもかたくなに妊娠していることを否定しつづけ,病院から呼び出され驚いて来院した母親にも出産するまで妊娠していないと言い張っていた.
他方,少なくとも数年以上にわたって性交渉が全くないのにもかかわらず妊娠反応が出てしまうことがある.
参考文献
1) 石塚直隆,他 : 絨毛性腫瘍の化学療法における問題点.産婦の世界20 : 469, 1968
2) Okamoto T, et al : Choriocarcinoma diagnostic score : a scoring system to differentiate choriocarcinoma from invasive mole. Int J Gynecol Cancer 8 : 128─132, 1998
3) 絨毛性疾患登録委員会報告.日産婦誌39 : 871─880, 1987
4) 絨毛性疾患取扱い規約,第3版.金原出版,2011
5) Tsukamoto N, et al : Gestational trophoblastic disease in women aged 50 or more. Gynecol Oncol 20 : 53─61, 1985
6) Massenkeil G, et al : Metastatic choriocarcinoma in a postmenopausal woman. Gynecol Oncol 61 : 432─437, 1996
7) O’Neill CJ, et al : Uterine gestational choriocarcinoma developing after a long latent period in a postmenopausal woman : the value of DNA polymorphism studies. Int J Surg Pathol 16 : 226─229, 2008
8) Desai NR, et al : Choriocarcinoma in a 73-year-old woman : a case report and review of the literature. J Med Case Reports 4 : 379─383, 2010
9) Okamoto, et al : A case of uterine choriocarcinoma with spontaneous rupture twenty-three years following the antecedent pregnancy. J Obstet Gynaecol Res 23 : 189─195, 1997
10) 武知公博 : 初診時に確定診断に至らなかった異所性妊娠症例の検討.臨婦産69 : 454─458, 2015
掲載誌情報