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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科69巻2号

2015年03月発行

雑誌目次

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

著者:

ページ範囲:P.173 - P.173

若年女性の健康管理

1.原発性無月経の健康管理

著者: 榊原秀也

ページ範囲:P.175 - P.180

●性分化疾患(disorder of sex development : DSD): 「染色体,性腺,または解剖学的性が非定型である先天的状態」と定義され,染色体核型によって分類される.

●原発性無月経ホルモン補充療法の目的 : 月経周期の確立のほか,第2次性徴と骨量の獲得も重要である.そのためのエストロゲン漸増投与が推奨されている.

●Turner症候群に対するエストロゲン少量投与 : 思春期の原発性無月経にホルモン補充療法を開始する際の投与法.少量から段階的に成人量まで漸増させる.

2.ヤングアスリートの健康管理

著者: 久保田俊郎

ページ範囲:P.182 - P.186

●女性トップアスリートには月経周期異常が多く,特に無月経では疲労骨折の頻度が高い.

●日本産科婦人科学会では,女性アスリートを対象に大規模なアンケート調査を行っている.

●女性アスリートの健康管理は,今後学会と行政,関連協会との連携が必要である.

産婦人科疾患患者の生涯にわたる健康管理

1.早発閉経症の生涯管理

著者: 五十嵐豪 ,   鈴木直 ,   石塚文平

ページ範囲:P.188 - P.192

●POIの国内での患者数は7,200人以上と推定される.

●POIにおけるHRTは若年者であっても閉経後早期から必要最少量とし,年齢にして50歳前後までの使用が望ましい.

●卵胞活性化療法(IVA)はPOI患者の不妊治療の選択肢として大いに期待されている.

2.PCOSの生涯管理

著者: 大場隆

ページ範囲:P.193 - P.198

●思春期・青年期女性では,肥満,思春期早発,初経以来2年以上持続する月経不順がPCOSを疑う契機となる.

●挙児希望がある場合は,多胎や卵巣過剰刺激症候群に注意しつつ排卵刺激を行う.

●PCOSは女性の一生に影響を及ぼす病態であり,専門領域を超えた継続的,全人的管理が求められる.

3.子宮内膜症の生涯管理

著者: 原田美由紀 ,   大須賀穣

ページ範囲:P.199 - P.204

●子宮内膜症は長期管理を必要とする慢性疾患である.

●同一女性においても最適な管理法は経時的に変化するため,現時点での患者背景に応じた治療法の選択が必要である.

4.婦人科がん術後の生涯管理

著者: 田辺晃子 ,   大道正英

ページ範囲:P.205 - P.208

●有経女性の婦人科がんに対する集学的治療は骨密度低下のリスクとなる.

●白金製剤を中心とする抗がん剤治療は血管内皮機能障害を引き起こし,動脈硬化のリスク因子となる可能性がある.

5.PIH後の生涯管理

著者: 倉林工

ページ範囲:P.209 - P.214

●日本ナースヘルス研究の解析から,母親にPIH既往があるとその娘のPIH発症の危険率は約2.7倍であり,PIH既往があると本人の将来の高血圧,高コレステロール血症のハイリスク群であることが判明した.

●母体にとって周産期は自らの生涯の健康を予測するチャレンジテストの時期である.

●PIH既往女性の長期的なフォロー体制の確立が急務である.

6.妊娠糖尿病の生涯管理

著者: 平松祐司

ページ範囲:P.215 - P.221

●妊娠糖尿病(GDM)患者では将来,糖尿病,メタボリックシンドローム,心血管障害の発症が増すことを十分説明する.

●GDM患者には,分娩後6〜12週に耐糖能異常の再評価を行い,結果が正常型でも厳重フォローアップが必要なことを説明する.

●GDM患者には医師,助産師,看護師,栄養士が繰り返し正しい知識を提供し,一家のライフスタイルを変えるよう指導する.

中高年女性の健康管理

1.骨の健康へのかかわり方

著者: 牧田和也

ページ範囲:P.223 - P.227

●骨粗鬆症は,骨密度と骨質を反映した「骨強度」の低下により,骨折のリスクが高まる骨系統疾患である.

●女性の骨粗鬆症は,エストロゲンの分泌動態とかかわりが深く,どの年代でも男性より罹患しやすい運命にある.

●婦人科を受診する中高年女性では,骨粗鬆症の自覚症状に乏しいため,二次予防としての骨量測定が望まれる.

2.メタボリック症候群へのかかわり方

著者: 岩元一朗 ,   堂地勉

ページ範囲:P.229 - P.234

●メタボリック症候群は減量により高血圧,脂質代謝,糖代謝の改善が期待できるため,まずは体重の5%減を目指す.

●治療のポイントは肥満の是正(最終的には標準体重)と適切な食事療法と効果的な運動療法の維持である.ただし,運動療法の前には心血管疾患の有無を確認すること.

●明らかな高血圧,糖尿病,脂質異常症を有している場合は,禁煙,体重管理,食事療法や運動療法などの生活習慣の是正を行いつつ,それぞれの薬物療法も考慮すること.

連載 FOCUS

羊水塞栓症

著者: 金山尚裕

ページ範囲:P.236 - P.244

はじめに

 羊水塞栓症は日本における妊産婦死亡の最大の原因であることが種々の調査で明らかになっている1).妊産婦死亡は当事者にとっては大変ショッキングなことであり,係争にも発展しやすく,社会的にも大きな問題である.羊水塞栓症は,羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる「肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と,それによる呼吸循環障害」を病態とする疾患である.本症の発症頻度は以前,約2〜8万分娩に対し1例程度と考えられていたが,最近ではニアミス例が多いこと,後述する分娩後のDIC・弛緩出血に羊水塞栓症が含まれる例があることから,実際の頻度はもっと高いことが指摘されている1)

 羊水塞栓症発症のリスクとして羊水成分が母体血中に流入しやすい状況が考えられる.具体的な因子としては羊水穿刺・人工羊水注入・多胎・分娩時裂傷・瘢痕子宮・分娩誘発・帝王切開・前置胎盤などが挙げられる.2010年の英国の報告では,分娩誘発がオッズ比3.86,多胎妊娠10.9,帝王切開8.84と高くなっている.浜松医科大学は日本産婦人科医会の委託を受けて羊水塞栓症の血清診断事業を行っているが,2010年に臨床的羊水塞栓症と診断された中で誘発分娩または帝王切開が羊水塞栓症全例の6割強であった.

Estrogen Series

静脈性血栓症,遺伝子型およびピル使用との関連,黄体ホルモン製剤の相違によるピル使用に伴うVTE発生率の違い

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.246 - P.247

 エストロゲンと黄体ホルモンを含有する混合型の経口避妊薬(combined hormonal contraception)および黄体ホルモン単剤(progesterone-onlycontraception)の経口避妊薬の使用,血液凝固系に関する遺伝子型などは静脈性血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)の発生とどのように関連しているのであろうか?

 スウェーデンの研究者らはThe Thrombo Embolism Hormone Studyと呼ばれる調査を行い,その結果がObstetrics and Gynecology誌に掲載された1).これは948例の患者群とそのコントロール902名を対象としたcase-control studyである.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

大量腹水をきたし,癌性腹膜炎と鑑別を要したクラミジア感染症の1例

著者: 吉田光紗 ,   矢野有貴 ,   河井通泰

ページ範囲:P.248 - P.251

症例

患者 : 21歳,未経妊.

主訴 : 腹部膨満感.

既往歴 : 特記すべきことなし.

現病歴

 右下腹部痛で近医を受診し,腸炎と診断された.抗菌薬を内服したが,半月後に腹部膨満感が出現し,腹膜炎の疑いで当院に紹介となった.

Obstetric News

妊娠中のアセトアミノフェン使用

著者: 武久徹

ページ範囲:P.252 - P.254

 アセトアミノフェン(国際一般名 : パラセタモール)は,多くの国で妊娠中に安心して使用できる鎮痛・解熱剤として多用されている.わが国でも,「ママのためのお薬情報センター」(国立成育医療研究センター,厚生労働省事業妊娠と薬情報センター)の中で,「安全に使用出来ると思われる薬」と紹介されている(アクセス2014年12月16日).

 最近,妊娠中のアセトアミノフェン使用の安全性に関する研究が報告され,それらに対し,米国食品医薬品局(FDA)が安全性に対する声明を出した.この問題を紹介する.

症例

子宮粘膜下筋腫に対する子宮鏡下手術後の緊急止血にメトロイリンテルによる子宮内バルーンタンポナーデ法が有効であった1例

著者: 伊藤宏一 ,   野坂舞子 ,   久保田陽子 ,   加藤浩志 ,   伊田昌功 ,   辻芳之

ページ範囲:P.255 - P.258

要約

 症例は47歳,3回経妊3回経産.子宮粘膜下筋腫に対する手術目的で紹介受診された.子宮鏡下子宮粘膜下筋腫摘出術を施行した.完全摘出に成功し,術中出血は少量で手術は終了した.術後3時間時に突然の大量性器出血を認め,緊急止血法として選択したメトロイリンテルを用いたバルーンタンポナーデ法により止血が図れた.産褥出血に対して行われている子宮内バルーンタンポナーデ法は,子宮鏡下手術の術後出血に対しても有効であった.施行の際には摘出筋腫重量に合わせた挿入バルーンの選択が重要である.子宮鏡下手術の術後出血に対するメトロイリンテル使用の報告はなく,本症例によって子宮粘膜下筋腫摘出後の術後出血におけるメトロイリンテル使用の有効性が示された.

卵巣原発悪性リンパ腫の1症例

著者: 八木一暢 ,   田村一富 ,   山本啓司 ,   山本彰 ,   山本久美夫 ,   山片重房

ページ範囲:P.259 - P.263

要約

 症例は69歳で,腹痛で当院消化器内科を受診された.腹部超音波検査で骨盤内腫瘤を認め,当科紹介となった.MRI・PET-CTで,右卵巣に充実性腫瘍を認め,卵巣癌疑いで試験開腹術を施行した.右卵巣腫瘍は5 cm大で,播種性病変はなく,腹水を認めなかった.術後の病理組織診断において腫瘍はN/C比の高い異型性の大型リンパ球がびまん性に増殖し,starry-sky像を認めた.免疫組織染色では,CD3・CD5は陰性,CD20・CD79aは陽性で,びまん性大細胞型B細胞性悪性リンパ腫と診断された.可溶性IL-2受容体は正常値であり,骨髄穿刺で異常細胞を認めなかった.病期分類としては,悪性リンパ腫の病期分類Ann-ArborではIAE,卵巣癌の国際臨床進行期分類ではIa期の早期症例であった.リツキシマブを含む化学療法を行うもアレルギー症状のため早期中止となり,結果的に追加の治療を行わず,経過観察となった.術後18か月経過した現在まで再発所見を認めていない.

お知らせ

第14回日本不妊カウンセリング学会学術集会のお知らせ

著者:

ページ範囲:P.244 - P.244

日 時:平成27年5月29日(金) 10:00〜18:30

場 所:ニッショーホール(日本消防会館)

     東京都港区虎ノ門2─9─16 TEL:03─3503─1486

    発明会館

     東京都港区虎ノ門2─9─14 TEL:03─3502─5499

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投稿規定

ページ範囲:P.264 - P.264

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.265 - P.265

バックナンバー

ページ範囲:P.266 - P.266

次号予告

ページ範囲:P.267 - P.267

編集後記

著者: 神崎秀陽

ページ範囲:P.268 - P.268

 平成10年4月から17年という長期間努めてきた本誌編集委員を,大学の定年退職を機に,この3月で退任致します.この間には,月1回の編集会議に参加してきた医学書院本社ビルの移転があり,事務担当の方も3代目となりました.私の後任としては,藤原 浩金沢大学教授が4月から編集委員に就任されることとなっています.

 現在の心境は,講座主任に課せられている多種多様で煩雑な業務から解放され,時間的・精神的に余裕ができることが待ち遠しいというところです.定年退職後は,理事として関西医大に再雇用されて,経営・管理業務の一端を担うこととなってはいますが,頭と体が元気な間は,後進に迷惑をかけないようにしながら,臨床医として診療も可能な限りは継続したいと思っています.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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