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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科69巻2号

2015年03月発行

文献概要

連載 FOCUS

羊水塞栓症

著者: 金山尚裕1

所属機関: 1浜松医科大学産婦人科

ページ範囲:P.236 - P.244

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はじめに

 羊水塞栓症は日本における妊産婦死亡の最大の原因であることが種々の調査で明らかになっている1).妊産婦死亡は当事者にとっては大変ショッキングなことであり,係争にも発展しやすく,社会的にも大きな問題である.羊水塞栓症は,羊水が母体血中へ流入することによって引き起こされる「肺毛細管の閉塞を原因とする肺高血圧症と,それによる呼吸循環障害」を病態とする疾患である.本症の発症頻度は以前,約2〜8万分娩に対し1例程度と考えられていたが,最近ではニアミス例が多いこと,後述する分娩後のDIC・弛緩出血に羊水塞栓症が含まれる例があることから,実際の頻度はもっと高いことが指摘されている1)

 羊水塞栓症発症のリスクとして羊水成分が母体血中に流入しやすい状況が考えられる.具体的な因子としては羊水穿刺・人工羊水注入・多胎・分娩時裂傷・瘢痕子宮・分娩誘発・帝王切開・前置胎盤などが挙げられる.2010年の英国の報告では,分娩誘発がオッズ比3.86,多胎妊娠10.9,帝王切開8.84と高くなっている.浜松医科大学は日本産婦人科医会の委託を受けて羊水塞栓症の血清診断事業を行っているが,2010年に臨床的羊水塞栓症と診断された中で誘発分娩または帝王切開が羊水塞栓症全例の6割強であった.

参考文献

1) Kanayama N, et al : Maternal death analysis from the Japanese autopsy registry for recent 16 years : significance of amniotic fluid embolism. J Obstet Gynaecol Res 37 : 58─63, 2011
2) Benson MD, et al : Immunologic studies in presumed amniotic fluid embolism. Obstet Gynecol 97 : 510─514, 2001
3) Kanayama N, et al : Amniotic fluid embolism : pathophysiology and new strategies for management. J Obstet Gynaecol Res 40 : 1507─1517, 2014
4) Tamura N, et al : C1 esterase inhibitor activity in amniotic fluid embolism. Crit Care Med 42 : 1392─1396, 2014
5) 田村直顕,他 : 周産期胎盤の診断病理 羊水塞栓症.病理と臨床32 : 530─534, 2014
6) 妊産婦死亡症例検討評価委員会,日本産婦人科医会.母体安全への提言2 : 27─31, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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