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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科69巻5号

2015年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

著者:

ページ範囲:P.373 - P.373

月経異常

1.原発性および続発性無月経

著者: 金崎春彦 ,   折出亜希 ,   京哲

ページ範囲:P.374 - P.380

●無月経には生理的無月経と病的無月経が存在する.

●病的無月経は原発性無月経と続発性無月経に分類される.

●原発性無月経は解剖学的異常や染色体異常に起因するものが多く,続発性無月経は無排卵が原因の場合が多い.

2.希発月経,過多月経

著者: 恒松良祐 ,   加藤聖子

ページ範囲:P.381 - P.386

●詳細な問診により,月経状態や既往歴などの患者背景を把握することが重要である.

●機能性,器質性の両面からの評価によって診断することが必要である.

●ホルモン分泌に影響を与える疾患,出血をきたす疾患の可能性にも留意する.

3.多囊胞性卵巣症候群

著者: 佐藤幸保

ページ範囲:P.387 - P.392

●血中ホルモン検査は,経腟超音波検査で10 mm以上の発育卵胞がないことを確認して行う.

●日本人女性の多囊胞性卵巣症候群の診断は2007年に作成された本邦独自の基準に従って行う.

●肥満を伴う多囊胞性卵巣症候群では,インスリン抵抗性の判定を行う(HOMA指数=空腹時インスリン値×空腹時血糖÷405≧2.5).

4.体重減少性無月経および神経性食欲不振症

著者: 岡垣竜吾

ページ範囲:P.394 - P.398

●体重減少性無月経は視床下部性無月経となる.

●BMIまたは標準体重を用いて体重減少の重症度を評価する.

●神経性食欲不振症は死亡率の高い疾患である.

5.乳汁漏出性無月経

著者: 石橋ますみ ,   宇都宮裕貴 ,   八重樫伸生

ページ範囲:P.399 - P.404

●授乳期以外に乳汁の漏出を認め,無月経を伴うものを乳汁漏出性無月経という.

●高PRL血症により乳汁漏出,月経異常,不妊などの症状が引き起こされる.

●高PRL血症にはさまざまな原因疾患があるため,鑑別診断が重要である.

6.早発卵巣不全・早発閉経

著者: 大森真紀子 ,   平田修司

ページ範囲:P.405 - P.410

●早発卵巣不全(POI)と診断されたあとにも,一時的な卵巣機能の回復や自然妊娠がみられる症例がある.

●無月経の診断には,まず詳細な問診と血清PRL,LH,FSH,エストラジオールの測定が必要である.

●1か月間隔で測定したFSHが2回とも30〜40 mIU/mL以上ならPOIと診断される.

不妊症

1.排卵因子・卵巣因子

著者: 木村文則

ページ範囲:P.412 - P.418

●女性不妊原因として排卵障害の占める割合が最も高い.

●無排卵は,主にゴナドトロピン分泌増加,正常,減少の3パターンに分類することができる.

●診断を行う際にはホルモン検査が重要で,FSH,LH,エストラジオール,テストステロン,PRL,TSH,FT4は必須である.

2.卵管因子の検査・診断

著者: 久野芳佳 ,   遠藤俊明 ,   斎藤豪

ページ範囲:P.419 - P.425

●卵管疎通性検査の前に,クラミジア抗体検査や甲状腺検査を行う.

●HSGなどで近位の卵管閉塞が観察された場合には偽陽性である可能性もあり,選択的卵管造影もしくは通水検査を考慮する.

●卵管留水症に対して,卵管摘出もしくは閉塞術が望ましい.

3.子宮因子

著者: 菊地盤 ,   齊藤寿一郎

ページ範囲:P.426 - P.431

●不妊症の子宮因子としては,子宮内腔の変形や子宮内腔の腫瘍性病変のほか,着床部位の血流障害や液体貯留などがある.

●特にlate reproductive ageの女性の不妊治療においては,上記に加えて,卵巣の機能低下や卵子のagingなど他の不妊要因も複雑に絡み合うため,不妊の原因と考えられる疾患がある場合は積極的に治療を行うことが望ましい.

4.子宮内膜症

著者: 泉谷知明 ,   前田長正

ページ範囲:P.432 - P.437

●腹腔鏡の位置づけ : 画像検査が向上した現在でも,腹腔鏡が子宮内膜症の診断確定における“gold standard”である.

●深部子宮内膜症(DIE) : DIEは経腟超音波断層法やMRIで高率に診断可能であり,腹腔鏡下手術前にはDIEの有無を評価することが重要である.

●腹腔鏡施行時の視診と組織診 : 子宮内膜症に特徴的な病巣を認めただけでは診断の確定とはならないため,組織診による確認が必要である.

5.免疫性不妊

著者: 柴原浩章 ,   児島輝仁 ,   鹿嶋見奈 ,   森本篤 ,   加藤徹 ,   長谷川昭子

ページ範囲:P.438 - P.447

●不妊女性の血中精子不動化抗体,あるいは不妊男性の射出精子上の精子結合抗体は,おのおの約3%程度に検出できる.抗精子抗体による不妊症の発生機序は,精子の運動障害作用と受精阻害作用である.

●血中に精子不動化抗体を保有する女性には,SI50値が10未満の低抗体価の場合はAIHを,10以上の高抗体価の場合はIVF-ETを選択する.

●精子結合抗体を有する男性には,精子の受精障害を認める場合にはICSIを,受精障害を認めない場合,頸管粘液内通過障害を認める場合はAIHを,認めない場合はタイミング療法から,おのおの治療を開始する.

6.男性不妊

著者: 宮本敏伸 ,   水無瀬学 ,   千石一雄

ページ範囲:P.448 - P.453

●今日,不妊カップルの約半数において男性因子が存在する.この点を初診時によく説明し理解していただくことが,今後の診察および治療を円滑に進めていくうえできわめて重要である.

●不妊症患者を診察する際には,早めに必ず精液検査を行うことが大切である.子宮卵管造影検査による卵管の通過性の有無,および精液検査の所見を得ずして,いたずらにクロミフェンなどの排卵誘発を行うことは慎むべきである.

●造精機能の評価のスクリーニングとしては,LH, FSHおよびびテストステロンの測定は必須であり,プロラクチン値も同時に測定する.上記スクリーニング検査において最も頻度が高い内分泌学的異常は血清FSHの上昇である.

●遺伝学的検査では染色体検査のほかに,Y染色体長腕遠位部に存在する無精子症因子(AZF region)が広く知られている.現在は外注検査で精査が可能となっており,MD-TESEの前に行う検査として必須となっている.

●挙児希望の患者が初診で訪れたときは十分な問診を行い,適切な時期における内分泌学的検査,子宮卵管造影検査,精液検査,さらには自然な状態での基礎体温のチェックおよび超音波検査にて自然排卵の有無を確認し,まずなぜ妊娠しないのかという原点からの論理的なスクリーニングが望まれる.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

初診時に確定診断に至らなかった異所性妊娠症例の検討

著者: 武知公博

ページ範囲:P.454 - P.458

はじめに

 異所性妊娠は産婦人科領域の重要な救急疾患であり,早期の的確な診断・治療が必要であることはいうまでもない.異所性妊娠部位の破裂による大量出血やそれに伴う出血性ショックを呈した典型例での診断は困難ではないが,未破裂の初期症例での診断は必ずしも容易ではない.一方,診断の遅れにより重篤な転帰に陥った場合は,深刻な医事紛争に発展することも稀ではなく,産婦人科医療事故において異所性妊娠関連事例の占める割合は少なくない1)

 以下に,初診時に異所性妊娠が見逃された4症例を呈示し,検討を加える.最終的には事なきを得たものの,いわばニアミス症例であることは否定できない.なお,それぞれ症例の冒頭に当初の診断を記載しておく.

Estrogen Series

更年期後のエストロゲン使用はどのように健康状態に影響するのか?

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.460 - P.460

 今回はWHI Estrogen Alone Trialの結果をご紹介したい1)

 この調査はランダムコントロール試験で,調査対象はすでに子宮摘出術を受けた50〜79歳に至る女性.抱合型エストロゲン(CEE)とプラセボとのランダム投与を受けており,黄体ホルモンの併用はない.対象数は全体で10,739人で,平均追跡機関は7.1年である.本論文がその一部をなすWHI調査は予定より1年早く終了となったが,その理由はECC使用者群に脳卒中発生が増大することを懸念したためである2)

Obstetric News

妊娠中と妊娠後のうつ病スクリーニング

著者: 武久徹

ページ範囲:P.462 - P.463

今月の文献

米国産婦人科学会委員会見解.#453.Screening for depression during and after pregnancy. 2010年2月(2012年再確認)

 米国の大規模管理医療組織における最近の後方視的コホート分析で,7人に1人の女性が妊娠前の年から妊娠後の年にうつ病の治療を受けたと報告されている.

 うつ病妊婦から生まれた児は,心理学的,認知・神経学的,および運動技能などの発達に遅れがみられるが,これらの児の精神障害と行動障害は,妊娠うつ病が回復すれば改善する.

原著

慢性骨盤痛を有する子宮内膜症症例に対する腹腔鏡下手術の効果とダグラス窩閉塞の存在による影響

著者: 廣田泰 ,   甲賀かをり ,   田島敏樹 ,   浦田陽子 ,   永井美和子 ,   泉玄太郎 ,   山本直子 ,   高村将司 ,   齊藤亜子 ,   長谷川亜希子 ,   原田美由紀 ,   平田哲也 ,   平池修 ,   大須賀穣 ,   藤井知行

ページ範囲:P.465 - P.470

要約

 腹腔鏡下手術による子宮内膜症病変除去および癒着剝離が疼痛改善に有効であることが知られているが,その効果に影響する因子についての詳細は明らかでない.本研究では,慢性骨盤痛を有する子宮内膜症症例に対して腹腔鏡下手術による子宮内膜症病変除去とダグラス窩開放を含む癒着剝離を行った21症例について,術後の疼痛改善効果を後方視的に検討した.腹腔鏡下手術によって慢性骨盤痛,月経痛,性交痛,排便痛が有意に改善すること,腹腔鏡下手術によってダグラス窩閉塞群ではダグラス窩非閉塞群と比較して慢性骨盤痛の残存が少ないことが明らかとなった.ダグラス窩閉塞のない症例では,腹腔鏡下手術による慢性骨盤痛の改善効果がダグラス窩閉塞症例に比べて高くないことから,腹腔鏡下手術の慢性骨盤痛改善の効果が十分でない可能性を考慮に入れた術後管理を行う必要があると考えられた.

症例

卵巣癌術後5年目に孤立性脾転移をきたした1例

著者: 山田新尚 ,   桑山太郎 ,   尹麗梅 ,   大塚かおり ,   佐藤香月 ,   山本志緒理 ,   田上慶子 ,   桑原和男 ,   佐藤泰昌 ,   横山康宏 ,   岩田仁 ,   長尾成敏

ページ範囲:P.471 - P.476

要約

 脾臓は悪性腫瘍の転移が起こりにくい臓器であるといわれており,脾臓に限局してみられる孤立性脾転移はきわめて稀である.今回,われわれは卵巣癌術後5年目に腫瘍マーカー上昇を契機に孤立性脾転移と診断,脾摘術を施行,経過良好であった1例を経験した.

 症例は55歳,2経妊2経産,閉経53歳.2006年2月に少量の性器出血のため近医を受診.超音波にて多房性卵巣囊腫を指摘され,精査加療目的のため,紹介にて同月に当科を初診した.MRIにてmucinous cystadenoma/adenocarcinomaと診断され,3月,左付属器切除術を施行,腹水細胞診は陽性.病理診断はmucinous cystadenocarcinomaであった.TC(PTL+CBDCA)療法を3コース施行後の8月,準広汎子宮全摘術,骨盤リンパ節郭清,右付属器切除術を施行した.病理診断はno residual tumorで,進行期はpT1cN0M0であった.この後,TC療法3コース(計6コース)を行い,外来フォローとなった.2011年10月,腫瘍マーカーの著明な上昇を認め,画像検査にて卵巣癌孤立脾転移と診断された.12月,腹腔鏡下脾臓摘出術を施行,病理の結果はsplenic metastasis of adenocarcinomaであった.脾摘術後に腫瘍マーカーは低下し,術後化学療法はインフォームド・コンセントのうえ施行しなかった.現在3年が経過したが腫瘍マーカーの上昇はなく,再発を認めていない.

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バックナンバー

ページ範囲:P.481 - P.481

次号予告

ページ範囲:P.483 - P.483

編集後記

著者: 藤井知行

ページ範囲:P.484 - P.484

 最近,仕事で海外に行く機会が増えました.そこで感じるのは,お会いする外国の男性の先生は,大体,奥様を同伴しているということです.それに比べ,日本の先生で奥様を同伴している方は非常に少ないのです.この違いは,家族を重視する外国の方と,家族より仕事を重視する日本の方の考えの違いから来ているのかなと感じています.日本では,「公」である仕事と,「私」である家族を混ぜないのは当然であると考え,仕事で行っている外国出張に家族を同伴するなどよろしくないと考える方が多いのでしょう.あるいは,出張に家族を同伴すると,お金がかかるのでもったいないし,面倒くさいと思っている方が多いのかもしれません.奥様も,夫の仕事にまで付き合いたくないと考えている方が多いのだろうと思います.私も,結婚して約30年,出張に妻を同伴したことは一度もありませんでした.でも,ある時,ふと,自分は,仕事で多くの国々や国内の多くの場所を訪れ,見分を広めているのに,妻はそうした機会がほとんどない,申し訳ないと考えたのです.一昨年,東南アジアの学会に出張する際,お会いする外国の方は皆,奥様連れだから,こちらも一緒でないと具合が悪いと言って,誘ってみました.最初は,英語でお話しするのは疲れるから嫌だと言っていましたが,何とか同意してくれて,結婚して初めて,一緒に学会に参加しました.すると,意外な効果があることがわかりました.それは,夜のパーティーで,外国の先生方と親交を深め,友人になることが,とても簡単にできるようになったのです.こちらが1人では,あちらの奥様との会話も今一つ盛り上がりません.でもお互い,夫婦連れであれば,家族のことにまで話が及び,一人でいるより,ずっと親しくなれるのです.妻も外国の方と友人になれて喜んでいます.仕事上の交流も,よりスムーズに行えるようになりました.他の先生方も,外国に出張する際は,もっとご家族と一緒に行けばいいのにと思っています.

平成27年3月21日

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

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増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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