文献詳細
症例
卵巣癌術後5年目に孤立性脾転移をきたした1例
著者: 山田新尚1 桑山太郎1 尹麗梅1 大塚かおり1 佐藤香月1 山本志緒理1 田上慶子1 桑原和男1 佐藤泰昌1 横山康宏1 岩田仁2 長尾成敏3
所属機関: 1岐阜県総合医療センター産婦人科 2岐阜県総合医療センター病理センター 3岐阜県総合医療センター消化器外科
ページ範囲:P.471 - P.476
文献概要
脾臓は悪性腫瘍の転移が起こりにくい臓器であるといわれており,脾臓に限局してみられる孤立性脾転移はきわめて稀である.今回,われわれは卵巣癌術後5年目に腫瘍マーカー上昇を契機に孤立性脾転移と診断,脾摘術を施行,経過良好であった1例を経験した.
症例は55歳,2経妊2経産,閉経53歳.2006年2月に少量の性器出血のため近医を受診.超音波にて多房性卵巣囊腫を指摘され,精査加療目的のため,紹介にて同月に当科を初診した.MRIにてmucinous cystadenoma/adenocarcinomaと診断され,3月,左付属器切除術を施行,腹水細胞診は陽性.病理診断はmucinous cystadenocarcinomaであった.TC(PTL+CBDCA)療法を3コース施行後の8月,準広汎子宮全摘術,骨盤リンパ節郭清,右付属器切除術を施行した.病理診断はno residual tumorで,進行期はpT1cN0M0であった.この後,TC療法3コース(計6コース)を行い,外来フォローとなった.2011年10月,腫瘍マーカーの著明な上昇を認め,画像検査にて卵巣癌孤立脾転移と診断された.12月,腹腔鏡下脾臓摘出術を施行,病理の結果はsplenic metastasis of adenocarcinomaであった.脾摘術後に腫瘍マーカーは低下し,術後化学療法はインフォームド・コンセントのうえ施行しなかった.現在3年が経過したが腫瘍マーカーの上昇はなく,再発を認めていない.
参考文献
掲載誌情報