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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科69巻6号

2015年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

著者:

ページ範囲:P.489 - P.489

乳がんの疫学と予防

1.日本人のリスク因子─欧米との違い

著者: 岩崎基

ページ範囲:P.490 - P.497

●喫煙,閉経後の肥満,アルコール飲料,身体活動不足は個人の努力でリスクを下げることができるリスク要因として重要である.

●国際的には閉経前の肥満はリスク低下と関連するが,日本人ではBMIが30 kg/m2以上でリスク増加が認められた.

●国際的には評価が定まっていないが,日本人ではイソフラボン摂取によるリスク低下の可能性が示唆された.

2.検診による死亡率低下の重要性

著者: 斎藤博 ,   雑賀公美子 ,   町井涼子 ,   高橋則晃

ページ範囲:P.498 - P.503

●乳がん死亡率低下が可能な方策はマンモグラフィによる乳がん検診であるが,現状のままでは成果はあげられない.

●乳がん検診の成果をあげるには海外の組織型検診(OS)の体制を構築することが最重要課題である.

●OSは検診法の科学的根拠を前提に,全対象者に網羅的にアクセスし,プログラム全体の質を管理する仕組みである.

●検診の成果はプログラムの多くの構成分野の関数であり,個々の分野の質を管理し,成果を最大化するのがOSのメカニズムである.

女性のライフステージに沿った検診の重要性

1.年代別の検診方法と検診間隔

著者: 遠藤登喜子 ,   森田孝子 ,   大岩幹直

ページ範囲:P.504 - P.511

●検診には対策型と任意型があり,両者は検診法の選択や検診間隔の決定において,考え方が異なるものである.

●マンモグラフィ検診は乳腺密度の高い若い年代では検出率が低い.

●マンモグラフィ検診と超音波検診のがん検出率を年齢階級別にみると,60歳以下の若い年代でも超音波検診が優れているわけではない.

●乳がん罹患率はpre-menopausalからpost-menopausalまで,どちらの方法でも単独での検出率は不十分である可能性が高い.

2.妊婦における乳がん検診

著者: 土橋一慶 ,   赤川元

ページ範囲:P.512 - P.518

●妊婦・褥婦に合併した乳がんの予後が悪い理由の1つに,妊娠から産褥期における乳房の劇的な生理学的変化によって,発見が遅れることが挙げられる.

●妊娠中に予後不良な浸潤癌を早期に発見するためには,視・触診法では不十分で,乳房超音波検査法を併用したスクリーニング法が効果的と思われる.

●腫瘤性疾患の鑑別のためには,妊娠による生理学的乳腺・乳房変化,線維腺腫に代表される良性疾患の妊娠性変化などを理解するとともに,鑑別診断には針生検などの手技が必要になることが多い.

3.ピルと乳がん

著者: 佐々木浩 ,   大道正英

ページ範囲:P.520 - P.523

●OCによる乳がんの発症リスクは現時点では一定の見解が得られていないものの,乳がん発症のリスクが増加する可能性は小さいと指導してよいとされている.

●乳がん患者のOCの使用はWHOMECにおいてカテゴリー3,4とされており,原則禁忌である.

●レボノルゲストレル子宮内放出システム(LNG-IUS : ミレーナ®)により乳がん発症増加への影響を低下させる可能性がある.

4.ホルモン補充療法と乳がん

著者: 髙松潔 ,   小川真里子 ,   髙山伸

ページ範囲:P.524 - P.537

●ホルモン補充療法(HRT)は乳がんリスクに影響を与えるが,それは生活習慣に関連したリスクと同程度かそれ以下である.

●HRTはマンモグラフィ上,乳腺濃度を上昇させるため,感度・特異度を低下させ,要精検率を上昇させる.

●現状では,HRTガイドラインに従った乳房検診が奨められる.

超音波検査の意義

1.超音波検査を用いた乳がんの診断

著者: 岡村隆徳 ,   中島康雄

ページ範囲:P.538 - P.546

●乳腺超音波検査の特徴 : 乳腺病変に対する超音波検査の位置づけやマンモグラフィと対比した特徴について.

●超音波の組織特性 : 乳腺病変内部の超音波組織特性と予測可能な組織構築について.

●乳腺疾患の画像所見 : 乳腺病変における組織分類別超音波画像所見について.

2.エラストグラフィ

著者: 梅本剛

ページ範囲:P.547 - P.560

●「組織の加圧・加振あるいは励起のエネルギー」と「検出・測定する物理量」からなる,エラストグラフィの分類と基礎について理解する.

●生体組織の基本的な特性である「組織弾性の非線形性(non-linearity)」,および外力を加える際の「初期圧(pre-load compression)」の概念について理解する.

●臨床からみた,「Strain Elastography」「ARFI Imaging」「Shear Wave Elastography」の特徴と基本手技,評価方法について理解する.

連載 FOCUS

わが国におけるオープン・セミオープンシステムの展望

著者: 中山摂子 ,   安達知子

ページ範囲:P.562 - P.567

はじめに

 オープン・セミオープンシステムはチーム医療の1つの形であり,チームの枠が施設間に拡大したものである.本来,チーム医療は施設の不足や医師の過重労働を軽減するためにあるのではなく,患者により良い医療を提供するために行われるべきである.

 しかし,一方で産婦人科医の減少とそれに伴う産科医1人当たりの分娩数の増加はやはり見過ごせない問題であり,その解決策の1つとしてオープン・セミオープンシステムが注目されたこともまた事実である.各地でその地域の特徴を生かしたオープン・セミオープンシステムが広がっている.当科では平成17年モデル事業(厚生労働省 周産期医療施設オープン病院会モデル事業)に参加して以来約10年,このシステムと向き合ってきた.本稿では,当科におけるオープン・セミオープンシステムの現状を紹介するとともに今後の展望について言及する.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

子宮留膿腫と敗血症を契機に診断された大腸癌の1例

著者: 秦利衣 ,   木村博昭 ,   平敷好一郎 ,   井上泰

ページ範囲:P.568 - P.574

症例

患者

 69歳,女性.3経妊0経産(人工流産3回),閉経50歳.

主訴

 食欲低下,下腹部痛.

既往歴

 高血圧症,変形性膝関節症.

内服薬

 ノルバスク®錠5 mg,1錠/day.ロキソニン®錠60 mg,ムコスタ®錠100 mg,疼痛時頓用.

身体所見

 145 cm,43.1 kg.

現病歴

 X−13日 : 1週間ほど前からの食欲低下を主訴にかかりつけ内科を受診.下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知したため単純CTを施行したところ,内部に液体の貯留した骨盤内腫瘤を認めた.

Obstetric News

糖尿病女性の避妊

著者: 武久徹

ページ範囲:P.576 - P.577

ACOG PROLOG. Reproductive Endocrinology and Infertility.第7版,2015年

 糖尿病のコントロール不良期間に妊娠し,妊娠を継続する場合,高度母児合併症発症のリスクが増加するため,糖尿病女性においては,HbA1cレベルが適切な場合に妊娠を考慮すべきである.しかし糖尿病女性のうち,計画的な妊娠を行っているのは50%以下であることを示す複数の研究があるにもかかわらず,ほとんどの糖尿病専門医は,効果的な避妊方法のカウンセリングは自分では不適当であると感じ,主に産婦人科医に任せている.

 自分の避妊知識と使用した避妊方法に関する研究質問調査に答えた107人の糖尿病女性(平均年齢31歳 : 16〜44歳)の研究で,36%の女性は過去に何も避妊の助言を受けず,8%は糖尿病専門医から情報を得たことを思い出し,残りの女性達は一般開業医または家族計画クリニックから情報を得たと述べている.

Estrogen Series

エストロゲン療法のタイミング説

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.578 - P.578

 エストロゲン療法のタイミング説とは,エストロゲン服用の時期には最善のとき(window of opportunity)がある,というものである1).最近Elite Trial試験の結果がCirculation誌に発表されたので,それをご紹介したい2)

 この試験では子宮摘出術の既往のある643人の更年期後の女性を対象とした.対象女性のほぼ半数は更年期後6年以内の女性群で,また他の半分は更年期後10年以上の女性であった.これらの女性を17 βエストラジオール1 mg毎日服用群とプラセボ群とに分けて,観察した.この試験のアウトカムとして頸動脈のintima-mediaの厚さ(carotid intima-media thickness : IMT)を計測比較した.

症例

塩酸リトドリン投与中に発作性上室頻拍を発症した2例

著者: 秦利衣 ,   木村博昭 ,   秋山文秀 ,   新井未央 ,   神下優 ,   羽生裕二 ,   平敷好一郎 ,   神山正明 ,   山本雅史

ページ範囲:P.579 - P.584

要約

 切迫早産に対し塩酸リトドリンを使用中に,発作性上室頻拍を発症した2例を経験した.症例1は発作時妊娠24週,母体心拍数212/分であり急性心不全をきたした.症例2は発作時妊娠35週,母体心拍数191/分で心不全にまでは至らなかった.2例に対し,息こらえ・頸動脈マッサージを施行するも効果はなく,アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物(アデホス─Lコーワ注,以下ATP製剤)を使用し30〜60秒で発作は消失した.臨床的経過から,塩酸リトドリンのβ1刺激作用による房室結節への何らかの刺激により,房室結節内でのリエントリー回路が刺激されたと考察された.塩酸リトドリン使用時には,潜在的に頻脈性不整脈の素因のある妊娠女性への投与の可能性を念頭に置き,母体心拍数を慎重に観察する必要がある.また,発作性上室頻拍が発症した際には塩酸リトドリンの投与を中止し,第一選択薬であるATP製剤の速やかな投与が勧められる.

非交通性副角子宮と同側卵巣内膜症性囊胞および卵管留血腫に対する腹腔鏡下手術後に妊娠に至った1例

著者: 吉岡信也 ,   池田亜貴子 ,   松尾愛理 ,   河原俊介 ,   安堂有希子 ,   川島直逸 ,   三木通保

ページ範囲:P.585 - P.591

要約

 副角子宮は,子宮留血腫や卵管留血腫の形成に伴って月経困難症や下腹部痛を生じさせ,同部位に妊娠した場合には副角子宮破裂が問題となる稀な子宮奇形である.症例は26歳,1経妊1経産.下腹部痛を主訴に前医を受診し,左卵巣囊腫を認め,当院に紹介受診となった.骨盤MRIで,左卵巣内膜症性囊胞と左卵管血腫および右単角子宮とそれに交通しない左副角子宮と診断し,腹腔鏡下手術を行った.腹腔内所見は術前診断と同様で,左卵巣囊腫摘出術・左副角子宮切除・左卵管切除・子宮内膜症病巣焼灼術を施行した.病理検査では副角子宮内に子宮内膜組織が確認できた.術後下腹部痛は消失し,その後自然妊娠に至った.妊娠38週で予定帝王切開を行ったが,副角子宮切除部位に癒着や筋層の菲薄化は認めなかった.副角子宮に合併した卵管留血腫および卵巣内膜症性囊胞の症例に対して,MRIで術前診断を行うことができ,腹腔鏡下手術がその治療に有用であった.

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バックナンバー

ページ範囲:P.595 - P.595

次号予告

ページ範囲:P.597 - P.597

編集後記

著者: 藤原浩

ページ範囲:P.598 - P.598

 本年4月より「臨床婦人科産科」誌の編集委員に加えていただきました.2年前に京都から金沢の地に着任しましたが,北陸地方も多分に漏れず産婦人科医不足でありまして,その厳しい周産期医療の現状を目の当たりにしながら日々その体制維持と改善に向けて努力しております.日本産科婦人科学会の新入会員も都会の一部を除いて再び減少しはじめており,学会執行部もその対策に全力を尽くしていただいておりますが,崩壊の危機にある周産期医療を一般社会や政府に正当なアピールをしつつ立て直していくという難しい状況が続いています.これらの局面を打破するには日本産科婦人科学会や日本産婦人科医会が協力して強いリーダーシップを発揮するとともに,会員一人一人の努力も必要であることは言うまでもありません.本誌の編集委員の任を拝命した傍らで,大学病院での指導者の一人として地方でできることは何かと模索している毎日です.若い世代に産婦人科の魅力を伝えて仲間を増やすためには,中堅の世代が情熱を維持して自分自身がハッピーである姿を見せなければなりません.この度いただきました編集に携わる機会を有効に活用し,中堅世代間の親交の橋渡し的な役割も果たして微力なりとも貢献できればと考えております.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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