文献詳細
症例
塩酸リトドリン投与中に発作性上室頻拍を発症した2例
著者: 秦利衣1 木村博昭1 秋山文秀1 新井未央1 神下優1 羽生裕二1 平敷好一郎1 神山正明1 山本雅史2
所属機関: 1君津中央病院産婦人科 2君津中央病院循環器内科
ページ範囲:P.579 - P.584
文献概要
切迫早産に対し塩酸リトドリンを使用中に,発作性上室頻拍を発症した2例を経験した.症例1は発作時妊娠24週,母体心拍数212/分であり急性心不全をきたした.症例2は発作時妊娠35週,母体心拍数191/分で心不全にまでは至らなかった.2例に対し,息こらえ・頸動脈マッサージを施行するも効果はなく,アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物(アデホス─Lコーワ注,以下ATP製剤)を使用し30〜60秒で発作は消失した.臨床的経過から,塩酸リトドリンのβ1刺激作用による房室結節への何らかの刺激により,房室結節内でのリエントリー回路が刺激されたと考察された.塩酸リトドリン使用時には,潜在的に頻脈性不整脈の素因のある妊娠女性への投与の可能性を念頭に置き,母体心拍数を慎重に観察する必要がある.また,発作性上室頻拍が発症した際には塩酸リトドリンの投与を中止し,第一選択薬であるATP製剤の速やかな投与が勧められる.
参考文献
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