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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科69巻8号

2015年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

著者:

ページ範囲:P.719 - P.719

体外受精治療の問題点

1.治療成績の現状

著者: 齊藤和毅 ,   齊藤英和

ページ範囲:P.720 - P.725

●わが国は世界でも稀な高齢妊娠国であり,ART治療周期数に占める40歳以上の患者の割合は40%を超える.

●加齢に伴い生児獲得率は低下し流産率は上昇するが,ARTによる改善効果は限定的である.

●年間治療数が101周期以上の施設群では,おおむね治療周期あたり10%程度の生産率が達成されている.

2.新生児異常の実態

著者: 平原史樹

ページ範囲:P.726 - P.731

●体外受精をはじめとする生殖医療が出生児の健康,先天異常などに及ぼす影響についてその動向を概観すると,ARTはおおむね児の健康には影響はないものの,いくつかの特有な先天異常の発生を起こしうる可能性ほか,若干の先天異常発生率を上昇させるとのコンセンサスとなっている.

●ARTはIVF,ICSIなどの操作そのものがいかに関与するかは明確には明らかではなく,そもそもの不妊病態の背景因子も大いにかかわっているとされている.

●受精後に起こるゲノムインプリンティングの異常も起こりうる可能性が示唆されており,ゲノムがなお一層明らかとなる時代背景のなか,エピジェネティクスと受精,発生も含めた研究の進展,分析が期待されている.

3.PGD,PGSの実態と問題点

著者: 末岡浩

ページ範囲:P.732 - P.736

●PGD/PGSは臨床研究

PGD/PGSは,まだ有効性や有害事象などのエビデンスを得ていないとの解釈から一般診療の位置づけではない.したがって,ヒトの臨床研究指針に従い,倫理審査と報告が求められる.

●胚発生における形態と染色体異常

これまで,胚移植には形態良好胚を選択してきた.しかし,胚の形態分析は染色体異常とは関係なく,良好胚であっても染色体異常は多く見いだされることが明らかになった.

●極体,胚盤胞期からの生検は有効か?

極体は母親側の情報しかもたないが,染色体異数性の診断には有意義である.胚盤胞からの栄養外胚葉は胎盤に発生する細胞であり,胎児の情報を反映していないことがありうる.

4.未受精卵子凍結の課題

著者: 竹内一浩

ページ範囲:P.738 - P.746

●卵子凍結

がん患者における妊孕性維持や,加齢に備えて若年時の卵子保存が可能になった.保険適応がないことや排卵誘発によるOHSSなどのリスクも考慮しなければならない.

●超急速ガラス化凍結法

低温障害を受けやすい細胞を凍結するために考案された方法.細胞内氷晶を防ぐことができるので,細胞膜透過性の低い卵子や胚にも適している.

5.配偶子提供の課題

著者: 宇津宮隆史

ページ範囲:P.747 - P.756

●子どもの出自を知る権利は非配偶者間生殖医療では最も重要な点である.

●日本はクローン規制法以外に生殖医療の法的規制がない特殊な国である.

●非配偶者間のような特殊な医療は本来は公的機関が担うべきである.

6.代理懐胎

著者: 久慈直昭 ,   嶋田秀仁 ,   井坂恵一

ページ範囲:P.758 - P.763

●現在,代理懐胎については日本産科婦人科学会会告により禁止されている.

●代理懐胎を今後認めるとすれば,法整備,公的機関による管理運営が望まれる.

●海外での代理懐胎で生まれた子どもを含め,子どもの福祉を最優先に考慮すべきである.

7.体外受精妊娠の周産期母体管理

著者: 濱田裕貴 ,   菅原準一

ページ範囲:P.764 - P.772

●生殖医療,育児,女性の労働を支える社会的・経済的環境は発展途上である.

●体外受精妊娠には母体・胎児に短期・長期的リスクが少なからず存在する.

●次世代の成育を見据えた周産期管理や基礎的・臨床的研究が求められる.

体外受精治療の将来展望

1.卵子老化への対応

著者: 髙井泰

ページ範囲:P.774 - P.779

●卵巣中の卵子は加齢とともに量と質が低下していくと考えられており,質の低下が「卵子老化」といわれている.

●卵子老化の原因としてミトコンドリアの機能低下が推測されているが,現状では治療法や予防法は確立していない.

●卵巣組織中から「卵子幹細胞」ともいえる細胞が分離され,これを用いた生殖補助医療も検討されている.

2.POIでの卵子再生

著者: 洞下由記 ,   河村和弘

ページ範囲:P.780 - P.785

●POIでの卵子再生には,卵胞活性化療法(IVA)による残存卵胞の活性化が有用である.

●IVAは原始卵胞の活性化を制御しているPTENを抑制し,PI3Kを活性化することで,原始卵胞を活性化させる.

●IVAは加齢を含むpoor responderにも有効である.

3.精子幹細胞研究の展望

著者: 佐藤卓也 ,   小川毅彦

ページ範囲:P.786 - P.790

●精子幹細胞は精細管内基底膜上に存在するごく少数の細胞で,生涯にわたる精子産生を維持している.

●マウス精子幹細胞は培養下での増殖が可能で,精細管への移植により精子に分化する.

●マウス培養精子幹細胞株は遺伝子改変が非常に難しい細胞であるが,近年開発されたゲノム編集技術により高効率な遺伝子改変が可能となった.

4.体外受精治療への再生医療技術の応用

著者: 野瀬俊明

ページ範囲:P.791 - P.795

●ヒトPSDG研究は,生殖疾患をはじめ生殖医学上の多くの未解明課題へのアプローチを可能にする.

●現行ヒトPSDG研究はマウス研究に追随する形を取ると同時に,マウス生殖系との相違も明らかにしている.

●人工配偶子によるヒト胚形成への法的対応は各国で異なるが,その是非を問う以前に克服すべき課題は多い.

連載 Obstetric News

子宮頸管長全例スクリーニングは有用か?—米国産婦人科学会年次総会2015年からの報告②

著者: 武久徹

ページ範囲:P.796 - P.799

Universal cervical screening to identify wome with a short cervix for progesterone treatment to reduce preterm labor, The Edith Louise Potter Memorial Lecture”Universal Cervical Screening”-Debate., ACOG ACM 2015

(前回のつづき)

(4)対費用効果

 早産は,世界的に新生児疾患罹患と死亡の主因であり,米国では年間に262億ドルが早産に関連する医療費として支払われている.

Estrogen Series

卵巣予備機能検査②

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.800 - P.801

(前回のつづき)

クロミフェンチャレンジテスト(Chlomifen Citrate Challenge Test)

 この方法では,月経周期3日目(day3)に血清FSH値を測り,day5〜9にクロミフェン100 mgを毎日5日間服用し,day10に再びFSHを測定する.

 卵胞数の低下している女性ではエストラジオールおよびinhibin Bの低下により,FSHの中枢性negative feedbackは低下するが,クロミフェン刺激によりFSHは上昇する.

症例

変性子宮筋腫が疑われたsmooth muscle tumour of uncertain malignant potential(STUMP)の1例

著者: 白石真理子 ,   峯川亮子 ,   吉村道子 ,   細見麻衣 ,   南李沙 ,   脇本剛 ,   土田充 ,   濱田真一 ,   村田雄二

ページ範囲:P.803 - P.807

要約

 術前に子宮筋腫と診断された平滑筋腫瘍のなかで,子宮筋腫でない頻度は5%とされている.そのうち,通常用いられている基準では良性・悪性を確実には診断できない平滑筋腫瘍は「悪性度の不明な平滑筋腫瘍(smooth muscle tumor of uncertain malignant potential : STUMP)」と定義され1),約1.0%存在すると考えられている.今回MRI検査にて変性子宮筋腫が疑われ,術後病理組織診断にてSTUMPと診断された1例を経験したので報告する.症例は37歳2回経産婦.過多月経による重症貧血および下腹部痛があり,約10 cm大の変性子宮筋腫を指摘され紹介となった.妊孕能温存希望がないことから単純子宮摘出術を施行した結果,病理組織検査にてSTUMPと診断された.STUMPは報告例も少なく,治療方針に一定の基準が設けられていないのが現状である.しかし再発の報告例も散見されるため,長期間にわたるフォローアップが求められる.本症例においても現在術後約2年が経過し,再発所見を認めないが,今後も経過観察を継続する必要がある.

お知らせ

第29回 女性スポーツ医学研究会学術集会

ページ範囲:P.790 - P.790

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バックナンバー

ページ範囲:P.811 - P.811

次号予告

ページ範囲:P.813 - P.813

編集後記

著者: 亀井良政

ページ範囲:P.814 - P.814

 藤井知行先生の後任としてこの度編集委員になりました埼玉医科大学病院産婦人科の亀井良政です.今後は特に周産期領域について担当させていただくことになります.

 今回編集委員をお引き受けするにあたり,これまで自分が歩んできた道を考えてみました.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

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今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

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69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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