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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻1号

1953年01月発行

雑誌目次

グラフ

道具の要らない顯微鏡寫眞の撮影法

著者: 橋爪一男

ページ範囲:P.3 - P.4

 顕微鏡写真と言えば,非常に六かしい事の樣に思われる方が多いと思われるが,実は全く反対で,こんなに容易しいものは無いのである。何故なら顕微鏡写真と言うのは実は幻燈なのである。映写幕か壁にうつつた幻燈の絵の所に,写真乾板を置けばそれでよいのである。しかし詳しく言うなら,暗室で顕微鏡を横にしてそのコンデンサー(集光レンズ)を通して強い光線を送つた時,接眼レンズから白壁に投射された幻燈像を,写真乾板で受けとめれば良いのである。之でお判りの樣に顕微鏡は幻燈器の役目を果すのである。顕微鏡写真と言つても写真レンズは一切不要,あれば却つて邪魔になる。又写真器もあつてもよし,無くてもよい。それなら市中に顕微鏡写真とか顕微鏡用附属品とか言うものを売つているのは,どうゆう訳かと言うと,それに明るい部屋で,短時間に沢山の写真をとろうと言う時必要になつて来るので,たまに論文の附図に,一枚の写真をとろうと言う樣な場合は,そうゆう高価なものを一々買つてはやりきれない。又上等な器械程操作が複雑で専門的知識が要る。充分に使いこなして居られる方は甚だ稀で,猫に小判の感を深くする事が多い。
 写真レンズが要らない訳は,顕微鏡の対物,接眼両レンズが写真レンズの代りを勤めてくれるからである。

綜説

産婦人科領域に於ける副腎皮質

著者: 赤須文男

ページ範囲:P.5 - P.13

緒論
 生体に種々のStressが加わつて生理状態が攪乱されようとした場合に,生体はこの動揺を可及的少くして生理的平衡状態を維持しようと努力する。この生物学的の動的平衡をCannonはHo—meostasisと呼び,この場合に危険防止のために惹起される反應をEmergency reactionと名付け,その反應を起す中核をなすものをSympath—icoadrenal-systemとなした。然し近年の研究はこのアドレナリンと自律神経のみに限局したCannon説から発展し,下垂体が又極めて重要な位置を占めるものであることが認められ,下垂体副腎系という言葉が現われ,Selye (1936)のいうSterssに対するAlarm reactionを中心とするGeneral adaptation syndromeが極めて重要視されるに到つた。
 Stressの中には,酸素缺乏,冷却,火傷,手術操作,出血,細菌感染,毒素の注入,知覚神経の刺戟等が含まれているが,近年は精神的外傷も加えられ精神身体医学Psycho-somatic medi—cineの問題も取上げられている。私は更に広くStressを解釈し,我領域に於ては大きくは妊娠,分娩,産褥現象も,小さくは排卵現象もこの中に含まるべきものと考えている。以下本誌編集者よりの依頼に應じて我領域に於ける副腎を中心とする問題の一端に就いて愚見を述べて見たいと思う。

子癇並に子癇前症患者に対する水蛭吸着療法(吸蛭療法)の効果

著者: 山田康

ページ範囲:P.13 - P.19

まえがき
 子癇並に子癇前症に対する吸蛭効果はまことに神妙である。その基づくところのものは        (瀉血)+(α)によるものであり,この(α)に吸蛭本来の面目,持ち味,魅力が豊かに秘んでいるようである。
 かくて,従来14%とされていた母の死亡率を,吸蛭を施すようになつてから3.8%に,兒の死亡率24%を12%に引き下げる事に成功した。

妊婦栄養に關する綜説(その1)

著者: 塚本胖

ページ範囲:P.19 - P.23

1.緒言
 栄養学の歴史を通観すると今日未だ究明されない点は多いが,その進歩は実に目覚しい。窒素が動物体の常成分であることはC.L.Berthollet(1786)により発見され,次でA.Fr.de Fc—urcroy (1789)は窒素の含量により動物成分を3種に分け蛋白質化学の基礎を築いた。その後,M.E.Chevreul (1814)は脂肪が脂肪酸とグリセリンとより成ることを見出し,同じ頃糖質化学も一大進歩を遂げ,Claude Bernard (1875)により葡萄糖が血液の常成分であることが発見されるに至つた。斯くて19世紀初期に至る迄広く信じられていたHypocratesの栄養観即ち栄養素は唯1種だけで,これが食物に含まれ消化によつて吸收されるとの考えは覆され,Magendie (1783〜1855) W.lliam Prout (1785-1850)等により3大栄養素,即ち蛋白質,炭水化物,及び脂肪の栄養効果は各々異ることが明らかにされ,又同時にGm—elin (1836)によりStoffwechsel (物質代謝)なる概念が樹立された。

原著

ペントタール靜脉麻酔の経験—(特に妊娠初期の人工中絶について)

著者: 上村素彦 ,   小林三郞

ページ範囲:P.24 - P.26

1.はしがき
 ペントタールソジアムは戰後紹介されたチオバルビタール系化合物の静脉麻醉劑である。本劑は安全域が広く,誘入が円滑迅速であり,用量の調節が可能で,覚醒が速い等の利点を有すると言われる。本邦に於ても,安井,沢崎,渋沢,反田,貫文諸氏の有効報告がある。
 私らはこのペントタールソジアム(邦製品ラボナール)を,妊娠初期の人工中絶(子宮内客除去術及子宮内膜掻爬術)20例について試用したその結果について報告する。

更年期障碍樣症候群を有する婦人の腟内容のグリコーゲン檢査

著者: 中村惠美子

ページ範囲:P.26 - P.28

I.はしがき
 頭痛,肩凝り,熱感等の更年期障碍様症候群が更年期婦人又は去勢婦人に見られることから卵巣機能の低下がその主因であると考えられて来た。然し卵胞ホルモンを投与するも該症状が消失せぬ例も屡々経験する所である。この事は本症の本態が必ずしも卵巣機能の低下によるものではない事を物語るものと思う。之を実証するには血中の卵胞ホルモンを定量すればよいわけであるが,微量卵胞ホルモン量の測定は2,3行われているが,正確な測定は必ずしも簡單ではない。然るにHe—rnberger u.Horstmann1),石川2),眞柄及び鈴木3),長尾)等によつて腟上皮細胞のグリコーゲン量は卵胞ホルモンの存在する状態に於て著明な増加を来たす事が明らかにされた。即ち腟上皮細胞のグリコーゲンを染色することにより体内の卵胞ホルモンの状態を或る程度知る事が可能であるという。私はこの方法に依り,更年期障碍樣症候群を有する婦人の卵胞ホルモンの状態を観察し,いささか興味ある結果を得たのでここに報告する。

症例研究

卵巣出血2例について

著者: 齋藤幹

ページ範囲:P.33 - P.38

 腹腔内出血の原因の多くは子宮外妊娠中絶によるものであるが又卵巣自身よりの出血に起因する事が稀でない。西欧においては之について文献上多数例の報告があるが本邦婦人科関係においては比較的に少ないようである。之は卵巣出血の自験例が公にされないで個人の手もとで終つてしまう為ではなかろうかと思われるので以下之について述べ注意を換起したい。卵集出血は下腹痛を主訴とする関係上,婦人科のみならす外科においても患者は取扱われ,その際は子宮外妊娠破裂又は急性虫垂炎の診断を受け,開腹されて初めて卵巣出血によるものである事を知る場合が多い。以上のように術前の診断が困難であるという点では臨床上稍々興味が薄いが,稀な疾患ではなく又ホルモン分泌の源泉である卵巣よりの出血であり,子宮外妊娠破裂と間違えられ易い事等については興味深い。最近著者は卵巣出血の例を経験したので之を述べると共に先人の業績よりこの考察を試み本邦例について観察を行つた。なお以下2例は急性虫垂炎の診断で外科において開腹術をうけ,その際に卵巣出血に起因するものである事が判明した。

膀胱エンドメトリオーゼの1例

著者: 五十嵐正雄

ページ範囲:P.39 - P.42

 エンドメトリオーゼの中で,膀胱のそれは稀であり,我国でも現在迄主に泌尿器科領域から9例の報告を見るに過ぎない。最近子宮筋腫に合併した本症1例を経験したので報告する。

生活児を得たる腹腔妊娠の1例

著者: 田中益雄

ページ範囲:P.43 - P.45

緒言
 妊娠末期まで持続し,且生活兒を得たる極めて稀なる腹腔妊娠に遭遇したので.これを報告する。

痕跡的両側子宮の1例—Uterus rudimenterius solidus

著者: 山崎銳一 ,   大原勲 ,   長谷部尚

ページ範囲:P.45 - P.47

緒言
 婦人の性器畸形はMuellerの管の発展経過中にその発育抑制又は障碍が生じ多種多樣の奇形が生ずるものである。私達は内診所見により子宮缺捐症とみられる患者を手術して,骨盤壁に附着して両側に腟と全く連絡のない高度の痕跡的子宮と卵管を組織学的に検索確定し得たのでここに報告する次第である。

診療室

子宮外妊娠の腟式手術

著者: 矢内原啓太郞

ページ範囲:P.48 - P.50

緒言
 子宮外妊娠の樣相は千差万別でその手術の難易も初期卵管流産の平易なものから末期腹腔妊娠の極めて困難なものに至るまで一様に論すべくもない。著者の今こゝに記述しようとするのは腹式に極めて平易に手術し得るような卵管妊娠は腟式にも亦容易に手術し得るものであり腟式に手術した場合には患者に与える苦痛が大いに軽減され且つ恢復も速である点を指摘したいためで決して外妊の総てが腟式に手術し得るなどという意味でない。多数臨牀家のなかには之に就て多数経験の方もおられることと考えるがその報告や記載は殆ど見当らないし又成書にも概ね外妊の手術はすべて腹式に行うべきものの如く記述されて腟式手術の可能に言及してない。これも亦著者か本記述を敢て試みる所以でもある。1951年横浜医学会で川島広古氏は外妊腟式手術1例を報告し著者は之に追加発表した。

永久避妊に就て

著者: 衞藤毅

ページ範囲:P.50 - P.52

 敗戰後の国策による人口制限の一方法として産兒制限が唱えられて来た。個人問題としても経済事情の変化より大家族生活に困難を感ずる樣になり,家族数の制限と言うことが痛切に考えられる樣になつた。しかし産兒制限の意味が誤解され,産兒制限の手段として人工妊娠中絶が行われ,産婦人科医は好むと好まざるに拘らず人工妊娠中絶手術を多教に行うこととなり,その結果として中絶届出数64万人中には約1,200人の死亡者が推定される樣な惡い附隨現象が起つて来た。それで人工中絶より受胎調節と言う木来の姿に立帰ろうとする運動が起り,今度の優生保護法改正でも特に受胎調節指導と言うことが強調される樣になつた。
 咋年12月26日閣議了解事項となつた「受胎調節実施要領」の中にも「工場,婦人団体其他の特定集団に対する教育指導は優生保護相談所又は保健所が行う外集団自体もこれを行う」とされている。当病院は従業員約7,000人を擁する製鉄所に附属する病院で,世情を反映して人工中絶数相当数にあり,昭和26年10月に産婦人科内に家族計画相談室を設けて受胎調節の実地指導にあたり,同時に別册の樣なパンフレツトを発行し,一般彼業員の啓蒙運動に努めて来ましたがその効果は未だに挙つていない。

速報

妊娠時の耳下腺腫脹について

著者: 落合時典

ページ範囲:P.57 - P.58

 従来唾液腺は妊娠によつて変化しないものと考えられていた。E.KehrerはHalban-Seitzのソウ書に「唾液腺は妊娠によつて変化しないように思われる」と述べている。
 私は数十例のバセドウ氏病患者において,甲状腺切除後に唾液分泌増加を伴う術後性耳下腺炎(または腫脹)を経験し,内分泌系統から見た耳下腺の立場について興味を持ち,妊婦の耳下腺を臨床的に観察してきたところ,明かに妊娠時に耳下腺は腫脹し,産褥期に入り次第に縮小の傾向にある事を確認した。たまたま高岡は内分泌の見地から唾液腺の系統的臨床研究を行い,耳下腺の内分泌機能を肯定し,妊婦44名中43名に(97.7%)に耳下腺腫脹を認めている。

ホルモン殊にエストロゲンの胎盤通過性に就いて

著者: 宮川糧平

ページ範囲:P.58 - P.61

緒言
 各種ホルモンが胎盤を通じ,胎兒に移行して共の発育並びに物質代謝に寄与し,逆に胎兒側ホルモンが同じく胎盤を経て母体に移行し,その物質代謝に変化を与える事は一般に知られておることであるが,胎盤の微細構造及びその細胞活性Ce—lular acfioityにつき猶幾多の疑議がある今日,胎盤のホルモン通過機序については猶不明な点が多い。以下該機序についての文献を綜説し,併せてエストロゲンに就ての私の実験成績についてのべたい。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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