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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻10号

1953年10月発行

雑誌目次

綜説

産婦人科領域に於けるビタミンB2缺乏の意義

著者: 古賀康八郞 ,   關一彦 ,   高須一治

ページ範囲:P.573 - P.576

緒言
 ビタミンB2(Riboflavin)(以下V-B2と略記)はKuhm, Rudy1)等によりその化學構造が明らかにされ,その生理作用及び缺乏症について各方面から多数の研究がなされている。V-B2は生體内で燐酸エステルを作り,更に蛋白質と結合して黄色酵素となり,細胞の酸化作用に重要な關係を有し2),一方ラクトフラビン燐酸がアミノ酸酵素の一構成分子である事が究明されている3)。先に私達4)5)は青森縣地方の農村に多發するV-B2缺乏症について述べ,又非特異性帶下,腟部糜爛,外陰炎がV-B2投與により輕快する事を報告したが,その後に得た2,3の知見について追加する。

境界領域

果糖代謝から見た妊婦の肝機能に就て

著者: 渡邊健

ページ範囲:P.579 - P.584

I.緒言
 妊婦では肝機能が低下しており,就中,妊娠中毒症例に甚だしいことに就ては枚擧に遑のない程多數の報告があり,その原因に就ては實質の病理解剖學的所見,機能の生理乃至生化學的變化に加うるに細菌學或は植物神經失調等の面から種々な老察が試みられているが,未だ滿足な解答が與えられていない。抑々,妊婦の肝機能に關する研究は,妊娠中毒症例に著明な肝の組織學的變化を認め,兩者間に密接な因果關係の存することを推定したDuncan (1879)の報告を嚆矢とする。次で,Hofbauer (1899)は該例には,グリコゲーンの減少,脂肪化,胆汁鬱滞等が伴うことを詳しく報告したが,他方,肝が物質代謝と重大な關係を有することが着目され,かのClauede Bern-ardがグリコゲーン發生に關する實驗的研究により,肝の糖代謝機能を明かにするに及んで,該例と肝機能,就中,糖代謝機能との關連性に就き,廣く一般の注意が換起ざれるようになつた。肝の糖代謝機能に關してはその後幾多報告があるのでこれを果糖代謝の面から總括し,妊娠時の肝機能に就て從來の文献の一端を紹介したいと思う。
 果糖(第1圖)による肝機能検査法は現在最も信頼に値する方法として賞用されているが,これは次の理由に基くものである。

原著

副腎皮質ホルモンと抗體産生

著者: 河原節

ページ範囲:P.587 - P.590

 副腎皮質ホルモンと抗體との問題については,私は協同研究者と共にその大要を本年5月日本産科婦人科學會總會に發表したが,今回編集部の乞いに應じて以下少しく詳細に記述しよう。
 生體防禦を中心として,近事副腎皮質ホルモンAdrenal Cortex hormones (以下ACHと略)の研究が盛んになつて來たが,微生物による感染症に對しても當然ACHは無關心ではあり得ない。古い文献でも,副腎剔除動物が病原體或は病毒に對して抵抗力の少いこと(Lewis1),Scott2),Ste—inbach3),Herbrand4)等),從つてACHの投與で,これら動物が病原菌或は病毒に對して抵抗力が高められること(Hartman5),Zwemer etal.6),Pottenger at al.7))などが報ぜられて居るが,これらは副腎剔除自體が動物の生命を著しく危険に陥らしめているので,病原體病毒等の侵入に對しては全く無抵抗の意味も含めているとも解せられる。

結核性子宮内膜炎

著者: 木村嘉一

ページ範囲:P.590 - P.593

まえがき
 數年來,婦人の性器出血を主訴とする患者の,子宮内膜の病理組織學的検索を行つて,數次に亘つて,發表しておりますが,於新潟第5回日本産科婦人科學會では,子宮内膜の結核による,性器出血のあることを,頭書の題目で報告致しました。
 この結核性子宮内膜炎と謂う名稱は,今日迄無かつたのであります。私の見出した所見から,このように命名した方が,適當でなかろうかと考えて,斯く命名したのであります。私がどんなものを,謂うているのか,其のあらましを述べて見ます。

妊娠月齢に對する血液諸性状の動揺とその幅に關する観察(第Ⅳ報)—妊娠各月齡に對する全血比重(GB)及び血清比重(GS)の動揺についでの推計學的考察

著者: 織田利彦

ページ範囲:P.595 - P.603

I.緒論
 著者は既に連續報告しているように妊娠及び産褥に於ける血液諸性状の動揺の研究のうち第I報に於て妊娠各月齢及び産褥各週齡に於ける赤沈値の變動に關しそれら各群の算術平均値の推移及び變動の幅に就て検討報告し,更に第II報に於てそれらの數値を推計學的に検討してそれらの觀察の結果を一層確實に理論づけたのであつた。そして又更にこれらに引續いて第III報に於て同様に妊娠各月齡及び産褥各週齡に於ける血液比重就中全血比重(GB)及び血清比重(GS)の變動に就て各實測値群の平均値の月齡に從つての推移に就て検討した後更にこれら各群の分散の幅の變動に就て検討した。

子宮癌に於ける尿路のレ線學的研究

著者: 菊池俊雄 ,   武田利夫 ,   佐藤龍也 ,   陳世論

ページ範囲:P.603 - P.611

緒言
 子宮頸癌に於て尿路に著明な變化を來すことは既に注目されている所であり,從つて子宮癌に於ける尿路の重要性に就いては諸家斉しく強張する所であるが,之が系統的な記載をみること少く,本問題を主題とした論文はChanvin・Taffe, Graves & Kickham等蓼々たるものであり,之等に於ても腫瘍と尿路との些細な検討は猶充分でないかと思われる。吾々は子宮頸癌77例に就いて子宮癌進行度と尿路癌治療前後の尿路とをレ線學的に追及してその治療効果の判定,豫後決定再發發見に如何なる意義あるかを検討した。勿論最後的結論を得るには尚不充分かと思われるが大體に於て一定の傾向を窮うことが出來る。

肉腫の塗抹細胞診

著者: 和田一男

ページ範囲:P.613 - P.614

緒言
 細胞學的診斷法に依り,從來では相當困難な癌の早期診斷も次第に簡易化されて來たが,現在なお肉腫に對しては今迄症例が少なく,吾々は塗抹標本に於ける肉腫細胞の形態的特徴に未熟でその判定に困難を感じて來た。
 然し實際臨床上例えば子宮筋腫の診斷で手術中之が惡性變化しているか否かを知り度い事もしばしばあり,その判定は非常に急を要するのであるが,かかる場合現在でも氷結切片法組織診に依り短時間に判定を下し得るが,尚お塗抹標本法に依り判定し得れば,短時間で,又操作も簡單であり且つ人數も1人で充分であり便利ではないかと思われる。

診療室

大なる壁内子宮筋腫の1例

著者: 藤田眞助

ページ範囲:P.615 - P.616

緒論
 手術に對する一般人の理解が著しく進み且つ大部分の疾病が概ね早期に診斷治療せられる現代に於て,知識階級に屬する中流家庭婦人,しかも醫療設備の充實せる大東京の眞只中に生活しておる者に比較的大なる部に屬する子宮筋腫でありながら筋腫特有の諸症状を大部分缺如している1例に遭遇していさゝか一驚に値するものと思うのでここに報告する次第である。

黄體ホルモン結晶浮游液の臨床的應用について

著者: 正十嵐正雄

ページ範囲:P.619 - P.626

 最近ホルモン學の進歩に伴い,ホルモンの生體内代謝過程が次第に明かにされると共に,ホルモン殊にステロイドホルモンの効果はその投與形式によつて著しく左右されることが明かになつた。從つて投與されるホルモン劑の型式もエステル化,エチニール基添加,サスペンジョン,ペレツト,バツカル等色々工夫されている。女性ホルモンのサスペンジョンとしては既に我國でも數年前からエストロゲンのサスペンジョンが市販され之に關する研究も亦少くない。之に對してプロゲステロンのサスペンジョンに關する研究は欧米でも多くなく,我國では僅かに足高らの簡單な臨床實驗報告があるに過ぎない。最近私は高單位黄體ホルモンのサスペンジョンであるオオホルミンルテウム結晶浮游液を試用する機會を得たので以下その使用成績を報告する。

速報

手術的侵襲の脳下垂體後葉に及ぼす影響に就て(第Ⅱ報)

著者: 並木勉 ,   岡田和親 ,   山本幸次郞 ,   水野三雄 ,   朝日治 ,   竹內真三 ,   高木千鶴子

ページ範囲:P.627 - P.632

緒論
 あらゆるStressに對し,生體がGeneral Ada—ptation Syndromeを示すと云うSelyeの學説が1936年に發表されて以來,腦下垂體副腎系の概念が明瞭となつた。而して我々は後葉も前葉と同様にStregsに對し機能亢進を示すべきだと云う假定の下に,抗利尿ホルモン拮抗物質に就て研究を進め,既に本誌上に發表せる如く,手術的侵襲に際し該拮抗物質の存在を認め且つその消長を報告したが,便に實驗研索して次の如き成績を得ましたので,茲に簡單に御報告致します。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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