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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻11号

1953年11月発行

雑誌目次

グラフ

位相差顯微鏡による腟Monilia症の檢索

著者: 貴家寬而 ,   大川知之

ページ範囲:P.635 - P.636

I.培養
 第1圖 Candida albicans

綜説

不妊手術法の批判

著者: 橋爪一男

ページ範囲:P.637 - P.639

 目下の日本は過剩人口に悩んでいる。それは殆んど追つめられた情況で,此所に根本的にして而も思い切つた處置が講ぜられない時は,近い將來に於てニッチもサツチも行かなくなるのは火を見るよりも明かな事なのである。此所に於て以前は稀にしか行われなかつた永久不妊法たる人工不妊手術が,近來頓に一般化し,その實施は急速に増加しつつある状況である。此の際是等各種の不妊手術に對し種々の角度から批判を試みる事も敢て無駄ではあるまい。

原著

腦下垂體後葉血壓亢進ホルモン(Vasopresin)拮抗物質に就いて

著者: 並木勉 ,   岡田和親

ページ範囲:P.640 - P.644

緒言
 妊娠時腦下垂體前葉が著明な變化を來す事は周知の事實である。從つて同時に後葉の機能も當然亢進するであろうと思われる。然るに從來幾多學者の研究によりその機能亢進の像を窺い得なかつたのは拮抗物質の存在により一樣に平均化される爲であろうとのL.Seitz (1929)1)の見解以來腦下垂體後葉ホルモンに對する拮抗物質の研究が進められた。
 Oxytocinに對する拮抗物質に就てはFekete(1930)2)に始り,Jones a. Shlapp (1936)3)は肝腎及脾のグリセリンエキース中に,河村(昭16)4)は小腸内に該拮抗物質を認めた。最近Page (1946)5)は妊,産,褥婦に就き該物質の消長を,又森(1946)6)は更にその性状についても實驗的検索を加えている。並木(1950)7)は廣汎にわたり研究を進め,該拮抗物質は血清中のグロブリン屑に含有され,ヒスタミナーゼや抗ホルモンと異り種屬特異性無く,一種の防禦酵素と見る可きものであり,加水分解酵素で且蛋白分解酵素の一であり,後葉Oxytocinを基質とするApofermentにして,非妊時には主として網内皮系統にて産生され,妊娠時には更に胎盤に於ても産生されるものであろうとし,本酵素をOxytocinaseと命名したのである。又Werle, Semm u Enzenl ch (1950)8)は同様な破壊酵素を血漿及赤血球中に認めている。

位相差顯微鏡による腟Monilia症の檢索

著者: 貴家寬而 ,   大川知之

ページ範囲:P.647 - P.648

 Monilia症とは古くからの呼稱でCandida屬による疾患であり,現在Candidiasisと呼ばれるものである。Candidaは抗生物質療法に抵抗し菌交代現象として發育が促進ざれ,感染症として毒性が強められる事から各科に於て重要視されるに至つた。腟Monilia症は既に1840年Wilkinsonに依つて初めて腟内に芽生菌を發見して以來,外國では比較的多數の報告に接するが我國に於ては水野(1936)松浦(1939)兩氏の研究がなされたに過ぎず久しく忘れられていた疾病であつた。しかるに最近抗生物質療法の重大な副作用としてMoni-lia症の發現される事,それと並行してこれに對する抗黴物質の研究が漸く盛んになつて來た1952年以降再び注目されるに至つたものである。腟Monilia症は帶下及び外陰部療痒を訴るもので,腟Trichomonas症と共に帶下疾患の重要な原因として又これ迄外陰部療痒症として治療されて來たものの大半がMonilia症である事も判明した。
 臨床的に腟Monilia症を診斷するには主訴(帶下及び外陰部療痒)並に症状(外陰腟炎及び僞膜形成)を參老にするも決定的にはその原因菌たるCandidaを證明しなければならない。

Rh式血液型の産科學的意義(第1報)—母兒間不適合が児に障害を及ぼさぬ場合について

著者: 鹽津英晤

ページ範囲:P.648 - P.651

緒言
 Rh式血液型の發見に伴い,その産科學的意義が確認され,從來原因不明であつた一部の新生兒溶血性疾患及び流早死産は,Rh因子母児不適合に依り,兒のPh抗原が母體を同種免疫する結果招來されることが明らかとなり,本邦でも既に小川,神谷,猪野,林,膳所等により,數例が報告されており,長谷川教授は所謂原因不明の流早死産の一部は又Rh式血液型の不適合に起因せるものであることを述べている。而るに兒に何等の障害をも及ぼさぬ場合に就いては未だその報告を見ない樣である。
 余は最近斯の如き例を觀察したので,以下其の概要を報告する。(産婦319例中3例)

妊娠月齡に對する血液諸性状の動揺とその幅に關する觀察(第5報)—直行十字軸坐標並びにPolycytemische-Oligocytemische Indexより見たる妊娠及び産褥に於けるGB,GSの檢討について

著者: 織田利彦

ページ範囲:P.653 - P.658

I.緒論
 著者は既に報を重ねて報告した如く,妊娠産褥に於ける血液諸性状の動揺とその幅の研究のうち先に第1報に於いて赤沈値の變動に就いて述べ第2報に於てそれを推計學的に扱つて検討してそれらの結果を確認したが,更に第3報に於て全血比重(GB)及び血清比重(GS)に就いて測定の結果を報告し,第4報に於いて再びそれらの結果を推計學的に検討した。本報に於いては第3報及び第4報の結果より見たるところの妊娠に於ける所謂生理的貧血症について検討したのでそれについて報告したいと思う。

診療室

大出血に際して輸液,輸血を容易に行う考案並びにその方針

著者: 田中武

ページ範囲:P.659 - P.661

まえがき
 産婦人科疾患とは出血に對する戰である,と言われる程その出血が致命的となる疾患が多い。此の樣な場合には時を移さず輸液,輸血を行うことは患者救出の重要なる手段である。然るに大出血時には必然的に起るショツクの爲に,血壓は下降し,一方血管壁の緊張低下も起り靜脈を殆ど認め得なくなることが多い。斯る患者に際して,吾々は額に汗して幾度か靜脈穿刺を試みるが,終に斷念して他の方法に移らざるを得ない樣なことが往往にしてある。又之が爲に患者をして死に至らしめたと思われる樣な症例を聞くこともある。然らば皮膚切開に依つて輸液血を行うべし,と説く者もあるが,焦りと不馴れの爲に容易に成功せず,又化膿,エンボリー等の不祥事を惹起することが間々ある。飜つて考えて見るのに前述の樣な場合にこそ,輸液血を直ちに行つてショツクの可逆性より不可逆性への移行を防止しなければならない。余は數年前より補液壓を靜脈壓より低下させることにヒントを得て,殆ど總てのシヨツクにある患者の靜脈内注人に成功した。此の考案は簡單であり特別の器具を必要としないので,その輸液血の方針と共に茲に發表して諸賢の御批判を仰ぎ度いと思う。

Mc, Indoe氏植皮法に據る腟術の經驗と膣型に就て

著者: 大庭九一郞

ページ範囲:P.663 - P.665

 KirscherとWagner氏等はゴム,スポンヂ型を表皮で覆つて腟腔を作つた。
 Mc IndoeとB nister氏等はエボナイトで作製した腟型にThirsch氏植皮即ち上皮で覆つて腟腔を作ることに成功しているがその原型を詳細に知ることが出來ない。私は獨自の腟型を作製して植皮造腟術を施い完全に成功したので寔に經驗例を報告すると同時に自家考按の腟型に就て詳細報告したい。

妊娠中期の人工妊娠中絶に就て—特にリバノール・ブジー法に就て

著者: 宮川治夫

ページ範囲:P.665 - P.667

 妊娠中期に於ける人工妊娠中絶の方法は古くより種々の方法が試みられているが未だ理想的な方法と思われるものはない樣に思う。當院に於ても種々の方法を試みた後,最近約半年に亙つて25例に就き所謂リバノール・ブジー法を試み,やゝ滿足すべき結果を得たので御報告し,之を其以前に行つた他の方法と比較し諸賢の御批判をあおぎたいと思う。

症例研究

腟壁に原發せる惡性黒色腫の1例

著者: 山中弘一 ,   河合義郎

ページ範囲:P.669 - P.672

緒言
 腟壁に原發せる惡性腫瘍は一般に比較的稀なものとされており,特に惡性度の強い黒色腫に至つては更に稀有に屬する。私達は最近63歳2回經産婦の腟に原發し,右鼠蹊淋巴節に轉移を來した惡性黒色腫の1例に遭遇し,之に根治手術を實施すると共に組織學的に本症であることを確認し得たので,茲に追加報告する。

放射線照射後無尿症を來たした子宮頸癌の1例

著者: 中川和光

ページ範囲:P.673 - P.674

 子宮頸癌手術後3ヵ年で再發し,放射線治療に依り突然無尿症を來たし,尿管直賜移殖術を行いしも,死の轉機を取り,これが解剖所見を見得た1症例に遭遇したので報告する。

卵管妊娠の破裂と誤診した破壞性胞状奇胎の1例

著者: 松本益太郞 ,   木材將典

ページ範囲:P.675 - P.676

 破壞性胞状奇胎はかなり稀なもの(全胞状奇胎の12%〜9.1%)でもあつて,この重篤な疾患を術前に正確に診斷なることは非常に困難である。余等が最近經驗した症例は,外妊の中絶症状を呈して子宮後血腫をも形成していた他,術前に行つた子宮卵管レ線検査では掲示するような卵管妊娠の破裂と斷ぜざるを得ない像を示したものである。

特發腟血腫の1例

著者: 渡邉輝彦 ,   印牧義孝

ページ範囲:P.676 - P.677

 妊娠時に發生した特發腟血腫の興味ある1例を診療したので報告する。
 患婦:38歳,6回經産,農婦。既往に著患なし。昭和27年6月10日終經,同年12月17日初診。當時妊娠7ヵ月で異常を認めず。ワツセルマン反應陰性。その後順調に經過したが,昭和28年1月31日午前10時頃農耕作業中突然腰部,外陰に疼痛を感じ,直に就末したが,疼痛は持續性且つ漸次増強し,間もなく陣痛樣腹痛が發來した。早産開始と思い助産婦を依頼した所,腸が腟の中にでていると言われ受診をすゝめられた。

化學療法の偉効を奏した1例(卵巣癌轉移患者)

著者: 和田一男 ,   北井德藏 ,   五十嵐宏

ページ範囲:P.679 - P.681

緒言
 婦人科領域に於ける癌に對する治療法は,現在迄,根治手術及び放射線療法のみで,その時期を失せるものには單に對症療法を行うに過ぎす,之に依り何等の効果を期待出來ず,唯傍觀するのみであり,その末期は實に悲惨で,癌に對する治療効果は單に早期發見を待つのみである。
 最近各方面に於て惡性腫瘍の化學療法に關する研究が盛んに行われているが,吾々は卵巣癌で手術後再發せる末期癌患者に對し,ナイトロミン,テストステロンプ・ピオネートの投與,及び深部治療を行ない,著効を奏した例を經驗したので報告する。

後腹膜脂肪淋巴管腫

著者: 横山輝彌

ページ範囲:P.681 - P.685

緒言
 後腹膜腫瘍についてはLobsteinの記載以來多數の報告をみるが,この場所に發生せる脂肪腫については未だその記載が少い。而もここに發生せる脂肪腫は一見單純脂肪腫の如き所見を呈する場合にも組織學的には屡々惡性の態度をとるばかりでなく,臨床的には屡々産婦人科領域に屬する腫瘍との鑑別上吾々に興味を提供するものである。偶々その一例を實驗したのでその概要を報告すると共に文献的考察を加えて參考に供したい。

卵巣嚢腫莖捻轉と誤診された小腸筋腫の1例

著者: 篠原弘藏 ,   高橋朝子

ページ範囲:P.687 - P.689

はしがき
 外科又は泌尿器科領域に屬するいろいろの腫瘍又は炎性腫瘤が下腹部ことに骨盤腔内に位置すると,往々婦人科的の疾患と誤診されることがある。最近私は小腸の軟化筋腫が卵巣の茎捻轉と誤診された1例に遭遇したので茲に報告する。

子宮肉腫の2例

著者: 古橋健司 ,   能勢英章 ,   和田一男 ,   莊進

ページ範囲:P.689 - P.692

I.緒言
 子宮肉腫は稀であるが,余等は最近組織學的に細網肉腫及び紡垂形細胞肉腫と思われる2例を,慶應義塾大學病院に於て經驗したので報告する。

速報

腦下垂體前葉の機能とその細胞配分に關する研究(その1)

著者: 伊藤美彌子

ページ範囲:P.693 - P.697

I.緒論
 腦下垂體前葉は末梢内分泌臓器の上位中枢機關であるが,近來の學説によれば下垂體自身も又これ等末梢臓器によつて影響を受けて居るとされている。前葉の細胞學的研究は,1884 Flesch u.Lothringer1)が前葉細胞を色素好性と色素嫌性に分類したに始まり,Schönemann (1892)2)は更に色素好性を酸好性と鹽基好性に細分した。Tr-autmann3)(1909)によれば酸女子性細胞(α細胞)は核強染原形質少量のものと,核弱染原形質内顆粒粗大なるのとの二つがあり,鹽基好性細胞(β細胞)はHämatoxyrin好染粗大顆粒の充滿したものとしないものとがあり色素嫌性細胞(γ細胞)は色素好性細胞より小さく原形質はHämatoxy-rin又はEosinに淡染輪廓不明瞭であり核は稍小であるという。Romeis4)(1940)は上記三種細胞の他にδ細胞,ε細胞の存在を指摘して居るが非常に少數であるという。三種細胞間の關係には種々の説があるが,Severringhaus (1933)5)によれば色素好性細胞の母細胞たるγ細胞には,α細胞型とβ細胞型のGolgi氏装置があり顆粒を生じて,各々α細胞,β細胞に變り得るが兩者間には直接易變を認めずと唱え現在最有力視されて居る。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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