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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻12号

1953年12月発行

雑誌目次

特集 産婦人科診療の進歩

晩期妊娠中毒症の藥物療法

著者: 九嶋勝司

ページ範囲:P.701 - P.704

1.はじめに
 中毒症に限らず,疾病の治療は原因療法を以て第一とするが,中毒症の原因は妊娠そのものであり,その中絶こそ原因療法ということになる。しかし,妊娠の中絶には種々な要約があり,之が滿足されない時は當然他の療法をとらねばならず,茲に藥物療法の必要が生ずる。
 中毒症の原因が妊娠そのものであることには異論はないが,妊娠の如何なる部分であるかと言う點になると議論が岐れる。胎兒のない胞状奇胎にも中毒症が多發することから,胎盤成分が注目され,胎盤のポリペプチード,或はポリサツカリード,或はトロンボプラスチン等が原因であると主張されている。筆者は前記のものも原因となり得ようが更に有力な原因として,神經葉(=後葉)ホルモン及び神經葉ホルモン類似物質があることを強調して來た。前者は勿論下垂體神經葉から分泌されるものであるが,後者に屬するものとして,胎盤からの分泌を想定している。神経葉ホの輸送徑路として,最近の内分泌學は大部分は下垂體茎の組織間隙を傳わつて視床下部へ,一部は同樣徑路を經て第3腦室へ行くと教えて居る。視床下部は自律神經中枢の存在する處であり,神經葉ホによるこの中枢の刺哉は中毒症状を發生し得ると言うのが筆者の中毒症成因説である。

晩期妊娠中毒症の高蛋白療法

著者: 澤崎千秋

ページ範囲:P.705 - P.712

I.本症への蛋白食に關する從來の考え方と我々の見解
 我々は今まで,妊娠中毒症を豫防するために,蛋白をあまりとつてはいけないと,妊婦に注意してきた,とりわけ,その妊婦に浮腫や尿蛋白や高血壓がある時,即ち既に中毒症状を呈している時には,特に蛋白の制限を必要とすると信じてきた。
 この根據はどこにあるかというと,妊娠中毒症時には,肝や腎がおかされているから,その部位で分解,合成が行われる蛋白質は,特別に制限する必要があるというのである。

流産診療の進歩

著者: 藤井久四郞

ページ範囲:P.713 - P.717

 流産切迫症及び習慣流産の診療については理論的にも實際的にも多かれ少かれ進歩とみられるものがあるが,それは主として内分泌學的見地からのものである。今日では理論的にもまだ問題があるが,實際的には更に多くの問題がある。研究の中途であるからこの稿に於ても決定的なことを述べえないのは遺憾であるが,これもまた止むをえないことである。以下それらの點についての現状を少し述べて見たいと思う。

無痛分娩に就て

著者: 宮信一

ページ範囲:P.718 - P.728

はしがき
 所謂無痛分娩法に依る不快な産痛の除去は誰しも望むところであるが,其の本體をたす麻醉法の應用に對し,側切開並に鉗子手術を加味するといつた或る種の行き方に封しては,附帶操作自體が母兒に對し完全に無害であると云うわけにはゆかず,かゝる操作を併用せずとも時を待てば多くは大過なきを得ると云う見地から,反對論の起るのは極めて當然で,Readの所謂自然分娩NaturalChildbirthを例證するまでもなく,獨逸同樣専ら待期分娩を鐵則としてきた我國では,今後もかゝる方法が主流をなすことはあり得ないと思われる。
 やゝ古い調査成績ではあるがDetroitのWo-man’s Hospital1)の集計は,児に對する麻醉と鉗子との行き過ぎを雄辯に物語つている。これの要點を表示すれば第1表の如くである。

産褥熱の診療

著者: 眞柄正直

ページ範囲:P.729 - P.734

はしがき
 診療に就いて詳しく述べるには紙數が許されないから,治療,それも,そのうちの主として化學療法のみに止める。

妊婦梅毒・先天梅毒

著者: 中島精

ページ範囲:P.735 - P.740

A.妊婦梅毒診斷について カーン氏法
 從來梅毒の血清學的診斷法には種々あつて,補體結合反應によるワツセルマン氏反應を中心とするものと,各種の沈降反應を使用するものとが主として使用せられた,然し何れも非特異性反應もあるので,1つの診斷法のみを以つて決定することは甚だ危険であるとせられ,潜伏梅毒の診斷には2つ以上の診斷法によつて決定すべきであるとせられ,ワ氏反應及び沈降反應が代表せられた。然し乍ら妊婦においては古くより,非特異性に反應するものが多く,その割合も或は1%といい或は3%という。多い人では10%にも及んでいる。その本態については未だ明確にせられていない。そこて戰後においては,國際聯盟において優秀なものとせられたカーン氏反應が再び採用せられるに至つたのである。
 カーン氏反應は我國においては昭和2年に北研田島氏により追試せられたのであるが,成績が芳しくなかつたので,一般には採用せられなかつた。戰後東大緖方教授により追試優秀なるものとせられ,昭和23年度の厚生省衞生検査審議會第3回試驗においては,特異度が最も優れておるとせられた。その後カルジオライピン抗原が使用せられるに至り,その優秀性が高まり,今日では必要な検査方法となるに至つたのである。

早産兒の哺育法

著者: 松本淸一

ページ範囲:P.741 - P.750

I.緒言
 近年我國の全乳兒死亡の中で占める早産並に先天性弱質兒死亡の割合は年々増加し,1925年24%であつたものが,1940年には32.6%,1949年30.1%,1950年32.8%,1951年34.3%となつている。又生後1ヵ月以内に死亡したものでは,たとえ他の原因,例えば肺炎或は榮養失調症等を死因としているものでも,多くは早産兒或は先天性弱質兒であり,瀬木1)は死亡統計で末熟兒以外の病因で死亡した乳兒死亡中末熟兒と附記されたものが,29〜32%に上つていることを報告している。此のようなわけで最近母子衞生の面からも早産並に先天性弱質兒の問題は,一重要課題として採り上げられている。此の對策としては2つのことが考えられる。第1は妊婦の保健指導を徹底させて,此のような兒が生れないようにすることで,そのためにはその原因を未然に防ぎ,もし原因となるような異常が起ればそれを早期に治療する。殊に晩期妊娠中毒症,多胎妊娠,羊水過多症,前置胎盤,梅毒,結核等に對する適切な豫防並に處置が行われると共に,妊婦の榮養及び過勞に對する充分な考慮が拂われなければならない。第2は早産兒或は先天性弱質免か生まれた場合に充分な手段を盡して之を健全な兒に發育させることである。

胎兒赤芽細胞症に就て

著者: 飯山一郞

ページ範囲:P.751 - P.755

I.成因
 胎兒赤芽細胞症とは胎兒體内に於ける異常な溶血が原因となつて起る汎發水腫,重症黄疸,重症貧血等一聯の疾患に對する總稱である。
 この溶血の原因として血液型,特に1940年La-ndsteier&Wienerにより發見されたRh式血液型の關係が重要視されている。即ちRh式血液型に關し夫妻が不適合であるとき,いいかえれば夫がRh (+),妻がRh (−)のときは胎兒も多くはRh (+)となり,そのRh凝集原が胎盤循環を通じ母體に移行して抗原として作用し,所謂同種免疫が行われる結果,母血清中に比Rh抗體が産生され,これが再び胎盤を通じて兒に移行することにより,胎兒循環内で溶血或は血球凝集反應が起り,その結果上記疾病が惹起されるものと解せられている。この三種の疾病は上記抗原抗體反應による溶血という點では同一疾患であるので,近頃ては赤芽細胞症と云う代りに新生兒溶血性疾患hemolitic diseases of newbornsと呼ばれるよらになつて來た。

新生兒假死

著者: 外川淸彦

ページ範囲:P.756 - P.759

まえがき
 社會に産兒制限が叫ばれ家庭に計晝出産の普及實施を見つつある現在,分娩に當り健兒を欲求する要請は過去の如何なる時代よりも強い。眞劍味に溢れた家人に伴われ來院する産婦を目にしては醫師の立場からも安産・無事たれと祈念せずには居られない。「産むからには健全な兒を」は勿論であるが,今專門醫として母兒を胃す數々の疾患を想起する時,その危険を如何にして豫防し,又救急にどう處置すべきかと安泰には濟されぬ。新生兒假死は實にかかる危険症中,兒の娩出後第一番目に遭遇し,頻度亦高い重要疾患であつて,股間に發啼なきを産婦に知られる場合が多いから之を考究し,豫防し又發現に對しては救急に處置する事こそ産科醫の本務であろう。幸,處置適切で兒の蘇生に成功しても將來に於て,兒の智能に果して異常なきやを保證し難い事もあるから,益々以て難症と言うべく由來教科書の記載が,妊・娩・褥と進んて新生兒編に至るや,本症を冒頭に述べる所以てもある。
 以下私はこの一大臨牀テーマに對して非才乍ら略述し,過去の治驗より氣付いた5,6の事項に就て私見を誌し,諸賢の御教示を仰ぐ事としたい。系統的記載は教科書や同題の諸家の論文(八木,安井,澤崎等)に譲る事とし先ず一般論として

産婦人科的炎症性疾患の化學療法

著者: 赤須文男

ページ範囲:P.760 - P.770

 抗生物質療法の進歩はめざましいものがあるが而も尚我々を充分滿足させるという所までは到つていない。Virusに對する藥物の未完成である事,非常に重態な場合には無力に等しい事,耐性菌の發生を見る事がある事,梅毒反應を陰性化せしめ得たい場合が少くない事などはその例である。
 膀胱炎や輕度の産褥熱を治し得る事は,今日の抗菌物質の登場以前にだつてあつた事であるが,淋疾に對する療法が簡單になり確實になつた事,手術にとりかゝる場合に我々の安心感の高まつた事,破水後に於ても又は多少の發熱を來していてさえも帝王切開術を比較的安易た氣持で行いうる樣になつた事などは,兎に角隔世の感がある。以下,乞われるまゝに,化學療法の一般事項に就て記述し,次で我領域に於ける炎症性疾患に對する應用について述べようと思う。

婦人癌のホルモン療法

著者: 坂倉啓夫 ,   荒井信造

ページ範囲:P.771 - P.780

 癌とホルモンとの關係は必ずしも新しい事ではないが,最近多くの人々により研究され特に乳癌前立腺癌等に對してのホルモン療法が發表されてからは一般に注意を惹くようになつた。いまその癌(惡性腫瘍の意味で使用した)の發生,豫防,治療でホルモンに關することのみを述べてみる。

産婦人科領域に於ける惡性腫瘍の化學療法

著者: 野嶽幸雄

ページ範囲:P.781 - P.790

緒言
 惡性腫瘍化學療法の臨床上の成績は何れの領域に於てもなお實驗的領域に止り,その完全な勝利を豫測するには時期尚早である。それにも拘らず益々現實的な重要性を帶びてきたのは惡性腫瘍に對する化學療法の登場の必然性があること,惡性腫瘍が化學療法の對象となりうることが了解されてきたことによる。その主な根據は腫瘍發生の原理と,腫瘍細胞の動態とに關する研究が飛躍的に發展し,それに伴い,必然的に對策の道が開拓されてきたからである。今日腫瘍化學療法の發展に對しては臨床家も,基礎醫學者も等しく負擔を分ち,同じ比重の役割を有する筈のものであり,相互の協力が切に要望される。從つて最終的貢献に寄與すべき積極的支持の立場をとるか否かは現在臨床家の當面する第1の問題である。特に産婦人科領域に於てはトピツクとも稱すべき多彩な對象の多くが取扱われているわけであるから,今後産婦人科醫に課せられた任務は重大である。本文に於ては主として研究の分野と方針,治療の原理に就て述べる。これらの事項の解説が,今後治療上の發展を期する上に最も必要な段階であると信ずるからである。

女子性器結核症の最近の動向

著者: 貴家寬而

ページ範囲:P.791 - P.802

 女子性器結核症の問題は前世期の末に始まる。本症に對するHegar1)(1886)の手術療法,Ber-kely2)Williams3)の結核性腹膜炎に對する開腹手術療法が賞用されて以來,數多の手術別出標本の検索が行われ,本疾の研究,特に病理解剖學的研究は一段と飛躍を途けた。當時の性器結核症は現在からみると可成り進行したものを意味し臨床的にも所見の比較的はつきりしたものに限られていたが,Sockaert及びFerin4)(1939)が子宮内膜診査組織片の検鏡法を婦人科診斷法として採用した結果,僅か9ヵ月間に7例の子宮内膜結核を發見し,過去五ヵ年の發見例5例に比して其の數の多いのみならず,所謂臨床症状の明確をがく潜在性の性器結核の多いことを強調した。其の後子宮内膜診査組織検鏡法が廣く常用され,又不妊症患者の研究が廣汎に行われるに從い本症の發見數は増加するようになつた。
 本症の臨床的確診法として開腹手術所見及び前記検鏡法の他に,結核菌の證明法として,子宮内膜組織片の磨細物,月經血,腟内容物等の動物接種法が行われていたが,これに代つて最近10年間に直接これらの被検物を培養する方法が容易に簡便に行われ,常用検査法として用いられて來うに從い本症の症例は更に増加して來ている。

塗抹標本檢査法

著者: 石川正臣

ページ範囲:P.803 - P.812

はしがき
 塗抹標本を作つて検査する方法はよほど前から血液や尿の沈渣などについて行われておつた。そして今日でも日常一般に廣く用いられているが,近年すなわち1941年にG.N.Papanicolaouによつて腟内容の塗抹標本を用いて子宮癌の診斷が出來ることを發表されて以來多くの人によつてその追試が行われ,またその改良法が發表され,本法の價値が大きいことが一般に認められるようにたり,實際面に於ても廣く用いられるに至つた,この腟内容の塗抹標本検査法は子宮癌をはじめその他の惡性腫瘍の診斷にも役立つようになつたばかりでなく,また卵巣機能によつて腟内容の所見に變化が起るものであることも明かになつたので應用の範圍はますます擴げられる傾向をもつている。私の教室では以前からこの方法を行つているが,自分たちの經驗と交献に見られろ事柄を略述して諸賢の參考に供したいと思う。

腟帶下

著者: 水野重光

ページ範囲:P.813 - P.821

I.はしがき
 帶下は獨立の疾患ではなく一つの症状に過ぎないが,出血・疾痛と共に婦人科患者主訴の代表的のものであつて,我々の外來では試みに本年7月1ヵ月間の新患に就いて調べると全患者の21.6%(454人中98人)が帶下を主な訴えとして來院している。この帶下感は個人的に甚だ差異があり,從つて訴えの強弱と帶下量の多少とは必ずしも並行しない。帶下の治療に關し現在迄諸家により幾多の業績が發表さそているが,特殊原因による場合を除けばその治療効果の必ずしも良好でないことは日常經驗するところである。帶下感は疾痛などのように甚しい苦痛はないにしても,常時存在する不快感は患者にとつては甚しい苦悩となることが多く,性的不感症の原因ともなり結婚生活に影響することもある。醫師がこれを帶下ぐらいと輕視して治療の必要がないなどと突つ放すのは當を得ていない。然し患者が帶下を言斥えていても何等病變の發見されない場合がいくらもある。生理的の腟内容増量を神經質の婦人は病的帶下と考え必配して醫師を訪れる,斯ういう場合に通院させて無用な治療を加えろことは罪惡である。また病的帶下であつても漫然と効果の上らぬ治療を行つて長く通院させるのも良心的でない。婦人科醫としては原因を速やかに掴み,最も通切な療法によつて出來得る限り速かに患者の苦痛を除去する責任を有する。

月經困難症治療の進歩

著者: 秦淸三郞

ページ範囲:P.822 - P.828

 月經困難症は治療困難なものゝ一つであり,遺憾ながらその原因について不明の個所が少くなく從つてまだ理想的の治療法はないのであるが,多くの人々により研究されつゝあるのでその跡を尋ねてみる事とする。

無月經の臨床—治療に關する最近の動向

著者: 小林隆 ,   唐澤陽介

ページ範囲:P.829 - P.833

I.緒言
 各腫婦人科疾患の中にあつて,月經異常は治療の困難なものゝ一つである。概して内分泌臓器に起因する疾患は器質的たると機能的たるとを問わす難治のものが多い。下垂體,甲状腺,卵巣,副腎皮質等の作用が或る程度判明し,各々の分泌するホルモンの抽出精製が可能にたつた今日においても尚内分泌疾患の治療法は確立されていたい。それ程ホルモンと生體との關係は複雑であり微妙なのである。月經異常も例外たり得ない。原發性無月經から出血性メトロパチーに至る迄,月經異常と名付けらるべきものゝ治療法は一つとして滿足に解決されていないと云つて良かろう。
 かゝる悲觀的な現状にあるに拘わらず,月經異常は決して尠いものではない。即ち,女子學生,女子勤勞者等を用いて行つた諸家の月經に關する調査統計を見ても明らかなように異常を訴える者が20%内外に達するのである。勿論そのすべてが治療の對象になるとは考えられないが,時にはそれが不妊症の唯一の原因となることもあり得るのである。しかるに無月經,稀發月經の類は直接生命の危険を感ぜしめたり,日常生活に支障を來たしたりすることがない爲に治療に對する熱意が薄れがちである。從つて治療は容易に進展せず,その殆んどを臨床實驗に俟たねばならぬ本疾患の治療法自體にも進歩の機會が少いのである。時には時間と經濟の許す限りと云ったような努力が患者と醫者に要求され,注意深い長期間の治療を經て初めて成果の期待出來る場合も少くない。

無排卵性月經に就て

著者: 渡邊輝彦

ページ範囲:P.834 - P.838

I.正常月經における周期的變化
 月經の機序に關する知見は最近著しい進歩を示し,解明された點が少くたい。1908年Hitschmann, Adler1)等は子宮内膜の形態的周期變化を詳述して,月經後期,中間期,月經前期,月經期の4期に分ち,ついでSchröder2)は卵巣の周期性變化,すなわち卵胞成熟,排卵,黄體形成,黄體退縮が内膜それと平行することを見出し,子宮内膜を卵巣の卵胞期に對應する増殖期と黄體期に對應する分泌期とに分けた。『排卵たければ黄體なく,黄體たければ月經たし』と云うMeyerの言葉は之等の研究成績を簡潔に表現している。更に荻野3)は排卵期が先行月經ではなく次回月經に左右される事,すなわち月經周期の長短に關せず黄體期が一定である事,換言すれば子宮内膜の分泌期が一定である事を見出した。

排卵期推定法

著者: 輿石田鶴穗

ページ範囲:P.839 - P.846

はしがき
 成熟婦人に見られる排卵は婦人生理の面に於て最も重要な現象であり,從つて其の時期の推定法に就いては多くの研究者により不斷の検索が行われた結果,各種の方法が案出され,臨床的には不妊症の治療やホルモン療法或は受胎調節等へ活溌に應用されており,社會的にも多大の貢献をなしつつある。
 斯の如き排卵期推定法に關する進歩の跡を概観することは誠に興味深いものであろう。

産婦人科の麻醉

著者: 安井修平

ページ範囲:P.847 - P.851

 終戰後アメリカ醫學の紹介せらるゝに及び麻醉學は學界の關心を惹き急速に研究が進められた。殊に外科領域に於ては胸部外科・腦外科・心臓外科等麻醉法が予後に重大な關係があるために一層研究が進んで居る。閉鎖循環式麻醉は勿論,分節脊髄麻醉 硬腦膜麻醉等の追試から更に從來からの腰椎麻醉に對する研究等枚擧に遑なき程である。
 飜つて産婦人科領域に於ける麻醉法の動向を顧みるに之亦少なからず進歩發達して居り,過去に於て麻醉のために予後不良と思われた如き事項は今や過去の夢と化した感がある。産婦人科領域に於ける麻醉法は(1)一般開腹術の麻醉(2)人工流産の如き小手術の麻醉(3)無痛分娩に對する麻醉の3つに大別することが出來る。以下之等各項に就て考察して見ることゝする。

歐米で見た「産婦人科診療の進歩」の概要

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.852 - P.855

 本年の5,6,7,8月の約4ヵ月に亘り,大急ぎで歐米の診療醫學,主として産婦人科を見學した。その中から進歩と思える部分につき,「進歩せる點の概要」を述べて,本特輯號に對する編輯者の1人としての責任を果したい。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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